老竹色 戦国 三成 2 終 2016年02月14日 あの頃の我は紀之介と呼ばれ、三成は佐吉と呼ばれていた。お互い太閤の側仕えでなぁ。姫とはその時に出会った。お互い今とさほど変わらぬ性格でな。ただ一つ違うのは三成は姫を姫は三成を表立って慈しんでいたことか。その頃より三成は対抗配下の武将の中より抜きんじておったし、何よりあの三成が姫の言うことだけは聞きしゃる。ぬしらはあまり見たことなかろうがあれは男だろうが女だろうが慇懃無礼でなぁ。自分の認めたもののみにだけ心を開く。太閤に賢人。我に…今はぬしらや真田が続くか。実力のあるものは認めはするが…心は開かぬ。本に面倒な男よ。その面倒な男が唯一心を開き慈しんだ女が姫なのだ。我とて理由はわからぬ。当の本人ですらわからぬであろう。出会った瞬間といえば軽々しいがそれ以外言いようがない。出会った折の印象が今の今まで変わらなかった。姫は三成の思い続けた姫であり三成は姫の思い続けた三成だったということよな。幼い、まだ髪もあげぬ折よりそうなのだから究極の青田買いよ。姫も三成も太閤も賢人も。我とて姫が髪を上げたのち、早々と祝言を挙げようとよく話していたものよ。まだままごとの様だろうけども美しい女雛男雛になろうとなぁ。。その歯車を狂わせたのは一人の女よ。ヒヒヒッ。あの堅物が浮気などしりゃるか。そう融通の利く男なればこうはならなかった故。一人の女は姫の乳母。それとその一族郎等よ。姫はこの者を実の母の様に慕っておったが、またこの女は虚栄心の強い女でなぁ。純粋な姫にはその裏の顔がわからぬ。姫を拐かし、内乱を起こそうとする其れの計画をいち早く知ったのは我よ。仲間にならぬかと打診しよった。後継者を三成に奪われて悔しくはないかとのう。ヒヒヒッ。笑を堪えるのに苦労したわ。よりによって我にそれを言う。我は何より、あの二人が夫婦になるのを楽しみにしておった。我の敵は我を害するものではなくてな。…それこそ我を厭うものはごまんとおる故きりがない。逆に我を厭わず。我を家族といってくれるものは少ない。それが三成と姫よ。故に我の敵はあの二人を害成すものよ。それからは早くてなぁ。姫を早々と奪還し、当時大阪で一番安全な座敷牢に入ってもらった。此処なれば、これ出すことはできぬでな。姫は非力故、苦渋の選択だった事を察してほしい。何よりあの姫に血溜まりを見せるのは、何より母の様に慕い仲良くしていた一族の躯を見せるのは太閤ですら憚られた。何より三成が厭うたのだ。姫も内乱を起こそうとするのなら話は別だろと気丈でな。さすが太閤の姫よと思ったものよ。事は簡単に済んだ。元々武に長けた一族ではない上に我らの逆鱗に触れた故事は早かったのだがなその乳母は何故かその座敷牢の前にやって来てな恨みごとを散々言ったのち姫を射殺そうとしよった。その時の姫は座って待っていろと太閤に言われた場所から一寸も動いておらんかったそうよ。そう、賢人に躾けられていたのを我らは知っていた故血が凍る心地だった。ただ、一人。三成が動いた。斬撃も間に合わぬ故に奴の体を盾にして。そしてそのままその女を殺した。姫の眼前で。我も三成も賢人も。兄である太閤ですら物心のついた姫が泣くところは見たことなかった。色々な種類であるが姫は何時も笑んでおられた故。姫が一筋の涙を流したのを見たのは後にも先にもその時だけよ。三成はこの涙の意味を眼前を血で汚し、裏切ったとは言え大切な人を殺した悲しみと思い、即日婚約を破棄してほしいと願い出た。そして今の通り、必要時以外は声を出さず姿を見せず。眼前に侍るのを厭う。姫の涙の真の理由は、己が力がない故皆の足手まといになり三成を傷付けてしまった事にある。日頃より力の無いものは不必要という男故その思考に拍車をかけたのだろう。婚約破棄もそれが理由と。すぐに受け入れた。そして姫として親しき臣下に接するが如くよ。昔の様に幸せそうに笑わなくなった。これはただ純朴で面倒な二人の話よ。老竹色 PR