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変換なしの雑食夢

ran

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初恋と三成 9



「ん?!」
「シー!静かにしな」
「…」
「あんただろう?三成の野郎が惚れ込んだ女って!くくくっ!小生ついてるぜ!すまねぇがこのまま人質になってくれ」
「!」
「そうすれば小生は鍵を手に入れてあわよくば!」
「…」
「石田をギッタンギッタンにしてやって首も取れるし!何なら天下だって!!!」
「…」
「だからよ…ん?」
「今、石田様は療養中で御座いますし」
「静かにしろって!」
「その寝込みを襲うのですか?」
「あー…」
「卑怯者!」
「へ?」





取り敢えず私の口元を抑える腕を取って思いっきり投げる。巨体が宙を舞い、庭石が粉々になろうとも今は関係無い。ゆらりと火炎が体を纏う。
こいつは敵だ





「雪ちゃん!」
「手出し無用!!!」
「雪殿!?官兵衛!!!貴様!!!」
「み、三成!助けろ!!!」
「きぃさぁまぁぁぁぁぁ!!!!」
「よ、よく見ろ!一方的!!!」
「首を垂れろ!その首!」
「止められよ!三成殿!」
「何故止める!?」
「ああなった雪の邪魔はしてはああと面倒で御座る!雪!」
「兄様…」
「行け!甲斐武田が騎馬武者隊筆頭の本領!見せてこい!」
「げ?!お前さん!!!真逆!!!」
「覚悟!!!」




そうこうしているうちに騒ぎを聞きつけた刑部様と竹中様がいらっしゃる。頑丈な男はぐるぐる巻きに拘束したもののまだ話ができるようで…腹がたつ。そう口に出せばそれしか取り柄が無いということ。確かにと納得してしまう



「馬鹿だろねぇ。官兵衛君も。この僕がいて何も策を講じてないはずはないなろう」
「だけどよ!!今なら石田の奴も弱ってるって思ったのによ!!!」
「言いたい事はそれだけですか」
「ひっ!」
「まだ足りないのならお相手しますが!」
「まままままままてって!勘違いだ!!!」
「…石田様の寝室の前で寝首やら天下やら言っていた癖に。女々しいですね!」
「まっ!それは!!!言葉のあやだ!刑部!!!半兵衛助けろよ!!!!!」
「いやぁ、真田よ。雪殿は徒手も嗜むか」
「いかにも。雪は甲斐武田の武者でござれば。武具なくしても戦さ場を駆けられまする!」
「雪殿」
「石田様は其方でお待ちくださいませ!この不届き者の首必ずや」
「ぎゃー!!!!!!」
「あーあ!不運だねぇ」







気がすむまでには及ばないけど刑部様があとはまかされよとおっしゃるので渋々了承する。するといつの間にか横にいた石田様に名前を呼ばるのだから私は驚いてお顔を見る。怒っているような辛そうな。真逆熱でもと思い駆け寄って額に手を当てる。熱は無いようだ…





「雪殿」
「はい」
「怪我は?」
「無いですよ」
「…手を」
「?」
「腫れている…暗め…私は決して許さない」
「駄目です!」
「な?!」
「今度こそ首をとりますから。ね?」
「…だが」
「石田様の首を取ろうとしたのですから」
「しかし」
「大将格がそうやすやすと動いてはなりません。何より今は療養中。お加減は?」
「私よりまずはお前の方だ。包帯を」
「ほって置けば治ります」
「雪殿」
「?」
「今、私の五臓六腑は煮え繰り返る程怒りに満ちている。私は大切な者に傷を負わせて平穏にいられる程おとなしくは無い。本来なら今すぐ暗の五体を切り刻みたいが…まずはあなたの手当てだ」
「なら、自分で」
「手を」
「嫌です」
「雪殿!」
「だって私の手」
「?」
「美しくありませんもの」
「は?」
「所謂白魚の手ではありませんし…石田様?」
「くく…」
「笑わないで」
「すまない、が。私にとっては美しい。」
「!」
「手を」
「…はい」
「痛いか?」
「いいえ、石田様?」
「何だ?」
「ふふふ」
「?」
「もし、ですよ」
「???」
「戦さ場に立つような奥方なら、」
「!」
「如何いたしますか?」
「…如何もしない」
「え?」
「先程のやり取りで実力はよくわかった。あなたの性格上待っていろと言っても頷かないだろう。」
「そう、ですね」
「ただ」
「ただ?」
「こうして手当てするのは私の仕事だ。緊急時以外、それは譲らない」
「!」
「何だ?」
「石田様はやっぱり優しい」
「雪殿だけだ…その」
「?」
「申し出を受けてくれるのか?」
「もし、武田と豊臣が敵同士になれば」
「その時考えればいい。そうならないよう最善を尽くす」
「!」
「?」
「刑部様にも言われました」
「なら安心しろ。そうはならん」
「はい」
「おい」
「はい?」
「答え、は?」
「ふふふ!」
「顔が赤い。落ち着け」
「落ち着けられません。それに石田様だって」
「落ち着いていられるか」
「ふつ、ふつつ」
「雪殿」
「…不束者ですがよろしくお願いいたします」
「!」
「ただ、」
「?」
「佐助兄様が」
「忍びが?」
「面倒なのです」








初恋と三成 9








「一年、だと」
「そうよな。一年よ」
「何故!すぐに!」
「石田様、落ち着いて!!!」
「支度にその程度はかかるんだもん!俺様だってもう少し時間欲しいくらいだよ!」
「何?!」
「大体!行儀作法もちゃんとって言ってんの雪ちゃんだしね!」
「…本当か?」
「はい」
「そんなもの」
「ちゃんと、しておきたいのです。あなた様の妻になるのなら…一層」「?!」
「一年よ、一年」
「長い!」
「手紙でも何でもすればよかろう?それでなくとも確かに期間としては短い」
「刑部!!!」
「お願い致します」
「…ぐ」
「駄目、ですか?」
「私は」
「できるだけ頑張ります。1日も早く帰ってこれるように」
「っ!」
「その時はあなた様の妻にしてください」
「その、だ。…わかった。但し」
「?」
「できるだけ早くしてくれ」
「はい」





「あの、三成くんが折れた!」
「ひひひ。やはり作戦勝ちよな」
「さて、佐助」
「はいはいっと」
「明日には我らは引き上げまするが…すぐに使者を。婚儀の話を煮詰めましょう」
「本人は早く早くというけれどね。本当に短い期間だよ。」
「何とかするのも我らの力量よ」
「本当にね」

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初恋と三成 8

「雪」
「はい…あ!幸村兄様」
「石田殿は如何だ?」
「治ったと思うのですが…許可が下りないので困ってます」
「竹中殿か」
「まだ駄目だとばかりで…今日なんて暇だから休めと。石田様も少しイライラしてます」
「大事ないか?」
「私ですか?」
「ああ」
「何も。いつも通りですよ。」
「そうか…」
「あ!」
「何だ?」
「日にち決まりましたか?帰る日!」
「ん?」
「私、まだ看病してますし…如何しましょう」
「如何しましょうとは?」
「中途半端に投げ出す訳には…それに」
「それに?」
「やっぱり心配です」
「くくく」
「兄様?」
「お前のそんな顔が観れるとはな」
「!」
「両想いは良いことだ」
「そういう、訳では」
「奥方として支えるのも良いだろう?」
「でも!」
「?」
「私は…行儀作法もままなりませんし。針子も」
「そうだな」
「それに甲斐が好きですから」
「それ以外知らんだけだろう。食わず嫌いはならんぞ」
「大阪は知ってます!」
「城の中と海だけな。知ったうちには入らんし住めば都ともいう。」
「それは、そうですけど」
「実際だ」
「?」
「今甲斐に帰ったとして、お前はこれから如何したい?」
「え?」
「帰ったとしても間違いなく何処ぞには嫁がなくてはならん。さすれば、お前は見知らぬ男の元へ行く。それで良いのか?」
「嫌です!」
「急な話だが、そういう話はいつでも急だ。そして、決定されれば嫌とは言えん。辛抱もしなければならんし、耐えなくてもならん。そういう相手でなくてもだ」
「…」
「まだ帰らんがそろそろ考えろ。」
「はい」
「佐助を説得するのに時がかかる。あれはお前を嫁させない為姉上とはかって虫食いの教育をした節があるからな」
「あー…」
「良いか?よく考えるのだぞ」
「はい」






失礼しますと声をかけると中から刑部様の声がする。少し驚いた様子で私も戸惑いながらお話してもよろしいですかと返してみる。よく、考えてみたのだ。実際、彼の方は私を大切にしてくださるし、私も心が移っていってきていると思う。乞われる事は女としてありがたい。ただ、私はただの妻にはなれない。甲斐武田の女武者なのだから






「やれ、如何した」
「少し」
「三成が何かしたか?」
「?」
「賢人が力技に出た故…」
「石田様は何も…強いて言うなれば今回お伺いしたのは至極個人的なものです」
「?」
「その、ご相談…といいますか。お伺いしたい事が。」
「あれは品行公正で女遊びも一切致さぬ。真面目な男よ。気の短いのを除外すればな」
「…」
「その気にならしゃったか?」
「その件で色々かんがえさせていただきました」
「ん」
「まだ、迷っています。…でももう時間もあまりない事も理解しています。此処か甲斐か。先程幸村兄様に帰っても見知らぬ地へ嫁す事になる。と言われました」
「それは、そうよの」
「それは嫌だ、と思いました。見知らぬ男の元へ行くのは嫌です。石田様となら…」
「!」
「私は石田様とともにいる空間が好きです。」
「そうか」
「でもそれは妻となりたいのか。甲斐の国に帰らなくても良いほどなのか…と考えれば考えるほど訳が分からなくなってしまいます。」
「雪殿」
「私は、如何してしまったのでしょうか?普通の女なら有無の言わさぬのでしょう。考える事すらできません。私は恵まれているのです。それは、良く分かっているのですが…」
「ひひひ。ぬしにも過ぎたる感情なのかもしれぬなぁ」
「?」
「我から見れば、の話をしても良いか?」
「はい」
「主がこのまま甲斐に帰ってしまっても三成は明確な拒絶をせぬまで会いに行くと思う。まぁ、行きたくてもいけぬか。今はあれにとって異常事態であって本来仕事の虫よ。それが…おとなしく主の看病を受けている。その事実は我らを驚かし、いかに本気かを知る術にもならしゃる。しかし。もし主が三成を拒絶したら…食わぬし、寝ぬし。面倒な事になりよるなぁ」
「あれ以上ですか?」
「元々そうよ。無理矢理せねば寝ぬし、食わぬ。ひひ。主が困った顔をするから致し方なく食べておるのよ。寝るのものう。故に治りが早くて助かるたすかる」
「幸村兄様の10分の1以下ですよ!?寝るのだって…」
「とは言うてもなぁ。2日何もとらんし寝ぬのもざらよ」
「?!」
「人らしゅうなったと思う。随分とな。良い事か否かは分からぬが…我は良い事と思っておる。またあれに戻るのは我とて勘弁してほしい話よの」
「?」
「生き急ぐのはあれには似合わん。し、してほしゅうない。少しは落ち着いてほしいものよの」
「ふふふ」
「?」
「石田様は皆様に大切に思われておいでですね」
「左様。あの性格故煙たがるものもおるがな。我らにとっては。ひひひ。…実を言うとなぁ。何度か見合いをさせた事があるのよ」
「え?!」
「まぁけんもほろろよ。入って見合いと知れた瞬間の凄まじい形相…思い出しただけで笑うしかない。普通の姫は怯えるか媚びるか。女武者も2人したが一人は仕事の依頼か?と聞きもう一人は犬猿よ。犬猿。ずっと口論しておったわ」
「はぁ」
「主は如何して三成を見て怯えなんだ?」
「?」
「普通は恐ろしいものよ。男の武者でもそうよ。三成の戦う姿は?」
「ありますけども。戦さ場に是が非もありませんから」
「そうよな」
「私もそういう意味では普通の女子ではありません、し」
「ふむ」
「刑部様?」
「主は三成がそうであるように武田に忠誠を誓うのよの?それか?」
「…はい」
「豊臣と武田が敵同士になったらか。…ひひひ。左様か。なしとも言えぬなぁ」
「このまま妻になることより、その時に別れなくてはならないのがとても不安なのです」
「左様か。ひひひ。」
「刑部様」
「本音は離れとうないか」
「あ」
「なら、それでよかろう。敵にならぬよう我とて全力で対応するし、真田もしよう。誰も主を流せとうないからな。それでも。敵味方に別れたら」
「別れたら?」
「主の思った通りにしりゃれ。我は必ず手助けをする。し、誰も恨まんよ。そういうように先に言っておけばいい。両家の話で必ず我が言って双方に理解させよう。故に」
「?」
「もう離れがたいのよ。主の中の三成は。…諦めて嫁にこりゃれ」






初恋と三成 8









「さてと」
「吉継君?如何したかい?」
「はてさて。ひひひ」
「良い事か…何の音だい?!」
「彼方は…三成の部屋の方角よな!」

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初恋と三成 7

「逃げぬのだなぁ」
「何がだ」
「いつもならとっくに逃げている頃よ」
「秀吉様の勅命に逆らえるわけがない」
「それだけか?」
「刑部」
「雪殿は?」
「…」
「やれ、脹れても主は禍々しいだけよ。やめしゃれ。で、今何処よ?」
「時雨のところに行っている。」
「ああ。それでか」
「なんだ」
「馬に悋気とは可愛いものよの」
「…ふん」
「にしても」
「?」
「主にしては実に丸い」
「私は今まで通りだ」
「元来主は素直故。心を開いたらそうではあるが」
「…」
「まぁ厩からの再三の申し出を蹴ってまで主の看病をしていたせいで、あの暴れ馬の機嫌は頗る悪いらしいからなぁ。若虎が前代未聞の珍事と笑っておったわ」
「そう、なのか?」
「(随分と嬉しそうよ)ひひひっ。先程偶々通りかかったら説教をしておったよ。主が調子の悪い時には辛抱せよと」
「!」
「ひひひ、馬に勝ったなぁ」
「あれはただの馬ではない」
「ん?」
「一番妹離れしていない兄弟だ」
「言えてて妙よの…ん?」
「大谷様。石田様。今帰りました」
「おお、雪殿」
「すいません。お風呂まで入らせていただいて」
「ゆるりとできたか?」
「はい」
「後は頼むなぁ」
「刑部」
「お仕事頑張ってください」
「あいあい」




刑部様が退室して振り向くとやっぱり顔が赤い三成様がいて私は少し怒りながら熱が上がりますよという。するとあーとかうーと歯切れ悪く言った後、横になるのだ。仕事の虫だからよく見張ってねと竹中様に言われて、時に実力行使も致し方なしと太閤殿下に言われていたから張り切っていたものの肩透かしだ。





「もう少ししたらお薬の支度してきてくださいますから」
「ああ」
「横で弓の手入れしてます。何かあったら言ってくださいね」
「…」
「三成様?」
「い、や。」
「???」
「時間は構わないのか?」
「はい…煩かったですか?」
「煩くない」
「すいません。松様とか佐助兄様は看病するときは繕い物したりしたりして物音たてないのですけど…私はそういうのが苦手で」
「苦手なのか?」
「というより…妹離れできていなくて。あっ!これはすごくありがたい事なんですけど。針で指を指してはいけないとか…料理はなんとかやらせてもらって掃除も。でも何故か繕い物はさせてくれませんでした。」
「そうか」
「行儀作法も…まだまだですね。大阪の人を見ていれば恥じ入りばかりです」
「そうか。私は元々近江出身だからよくわからん」
「そうなのですか?」
「まぁ、きかん気が強いしな。こういう性分だ。小さな時に寺に入って其処で秀吉様に出会った。」
「そうなのですか」
「そんな顔をするな。今も昔も交流はある。佐和山の城は父と兄が通常見てくれているしな」
「…」
「?」
「石田様は不思議ですね」
「?」
「水のようです。山にある、湧き出たばかりの」
「水源か?」
「はい。怒らせて仕舞えば大変そうなとこも。」
「言うてくれるな」
「左近様が吹っ飛ばされるの見ましたから」
「…あれは」
「左近様叩いちゃ駄目ですよ」
「っち」
「うちも人の事は言えませんけどね〜。殴り合ってますもん」
「真田か…あれも嫁が居ないのだろう?」
「え?!」
「破廉恥と言って女を避けていると聞いたが?」
「幸村兄様あれで情熱的だから。ふふふ。子供いるんですよ」
「は?!」
「知りませんでした?元々今回の同盟で幸村兄様とこちらの姫君をとの話を兄様お断りしたのです。娶るのはただ一人と。同盟を反故にするつもりはない。説明は己が自ら大阪に行くと。」
「そうだったのか」
「逆にこちらの方が誰も娶られていなかったからできた話ですけど…石田様」
「ん?」
「まさか」
「???」
「…そういう事出来る人ではないか」
「なんの話だ?」
「いえ、石田様。それをご存知で手っ取り早く私を」
「違う!!!っごほごほ!」
「ああ!お水です。」
「すまない、が」
「石田様?」
「もう二度というな」
「…」
「何だ?」
「やっぱり水みたいな人」
「お前は」
「?」
「花だ」
「花?」
「ああ。」
「移ろうものですよ」
「人は移ろう。ともに移ろえば良い」
「!」
「心変わりをせんように私が努力すればいいだけの話だ」
「意外と」
「ん?」
「情熱家ですね」
「お前だけだ」







初恋と三成 7








「時に、だ」
「?」
「時折帰っても良い、と言えば」
「???」
「嫁いでからだ」
「そんな良い加減な」
「…」
「とりあえず、お薬来ましたから飲んでください」
「…」
「石田様」
「…不味い」
「ご苦労様でした」
「…」
「石田様?」
「あ、ああ」

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初恋と三成 6

「ん…」
「三成君?…気がついたかい?」
「半兵衛…様?」
「もー!何をしてるんだい。雨の中一晩中座り込みをするだなんて」
「申し訳ございま…ごほごほ」
「ずっと休んでいなかったからね。丁度いいよ」
「あ、の」
「ん?」
「私は何故ここに?」
「ふふふ。雪君が朝っぱらに君を背負って医務室まで連れて行ってくれたんだよ。」
「雪…殿が?」
「ふふふ。泣くわ叫ぶわ大変だったんだから。下手に力強いから離さないし。」
「…」
「絶望的な顔をしなくていいよ。どちらかと言うと、逆かは?」
「は?」
「逆」
「ぎゃ…な?!」
「手を離さないのでね。ここに居るって泣くし、目覚めないって泣くし。死んじゃったら如何しようってまた泣くし。あの秀吉が必死に慰めるなんて僕でも見たことなかったよ。」
「申し訳ございません」
「いや、ね。呆れるとか嫌悪するとかじゃなくて純粋に嬉しかったんだよ。僕達は。」
「???」
「こんなにも君のことを想って泣いてくれる女性がいた事。そして、それを君がちゃんと選んだ事」
「いえ、その」
「泣いて寝て、君が目覚めていないの聞くとさ泣きながら看護するんだから。…もう泣かしてはいけないよ」
「はい」
「さて、君も起きた事だし。僕は退散するよ」
「ありがとうございます」
「ふふふ。雪君」
「んー…はんべえさま?」
「早く起きたまえ」
「…石田様?!」
「雪、殿?」



ガバリと起き上がって雪殿は私の頬を撫でる。撫でて明らかに怒った顔で馬鹿ですか!死にたいんですか!と怒り始めるのでたじろいでしまう。謝りたかっただけだと言えばポロポロと泣き始めてしまうので慌てる。
すまんと言いながら涙を拭うと死んじゃうかと思ったんですよと言ってまた泣き始める。これには本格的に困ってしまった





「冷たくて何度呼んでも目は覚めないし」
「そうか」
「死人みたいな顔色になっていくし。私が」
「?」
「童みたいに怒ったりするから」
「それは違う」
「石田様ぁ」
「泣くな。私が悪いのだ。私の言は人を傷付けるという事を忘れていた」
「そんな事ありません!…私が馬鹿なのがいけないんです」
「雪、殿」
「?」
「不快になったらすまない、が。単刀直入に言う。叶うなればお前と夫婦になりたい」
「?!」
「甲斐の地を離れる辛さ。親兄弟、慣れた場所から離れる事がお前にとって耐え難い事も分かっている。」
「ごめんなさい」
「然し、いつの日か覚悟ができる日が来たらば。私の妻になって欲しい」
「!」
「その日まで私はお前を待っている」
「…」
「もし、それすら不快ならばもう二度と相見えるのはやめよう」
「…」
「…」
「…」
「無理は」
「?」
「無理はしなくていい」
「!」
「雪殿」
「あの、ですね。」
「?」
「覚悟ができるか否かわかりません。いつか漠然とどなたかのもとに嫁ぐのだろうと思っていましたが、急すぎで」
「そうだな」
「頑張って考えてみます」
「?!」
「その間石田様が駄目でも仰って…石田様?」
「良かった」
「え?」
「まだ別れを言わずに済む。それだけで今は十分だ」
「…」
「雪殿。少し寝ろ。目の下の隈が酷い」
「はい」
「治ったら」
「?」
「また海に行こう。」
「ふふふ」
「時雨を連れてだ。」
「はい」






初恋の三成 6






「という事で」
「?」
「私が看護します!」
「な?!」
「というより…えっと、あった!」
「秀吉様から?!」
「という事で!」
「…秀吉様、お許しください」

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初恋と三成 5

「…時雨の厩で寝てるよ。」
「では相当か。2.3日…長くて数ヶ月出てこんな」
「…」
「三成よ。本に主は言葉が足りぬなぁ。」
「刑部」
「時雨も殺気立っているな少し様子を見た方が得策でござろう」
「すぐに詫びを」
「やめときなって…もう嫌われてっていたー!!!!」
「申し訳ござらぬ」
「はてさて、非はこちらにある故致し方なき話よ」
「太閤殿たちは何と?」
「賢人がなぁ。主と同じ事を言っておったわ。ひひひ。骨をおる我の気も知らぬでなぁ」
「すまん」
「良い良い。主とて未練断ち切るために篭っていたのがあれでは致し方無いやもしれぬ。が、相手は慣れた我らとは違うでなぁ。まぁ。そこまで読めなんだ我の失策よ」
「刑部!」
「はてさて。如何致すか」
「…」
「雪は某から見た所。男女の好はよう分からんのでござろう。然し、憎くは思うておらぬようでござる」
「?!」
「誠か?」
「只、まだ前髪を上げたばかり故中身は童なのでござろう。周りにいた唯一の女子である我が姉上は佐助に似て心配性にて、そう言う事は教えておらなんだ様でござる。故に好きという枠が大雑把なのだ」
「本にその様よのう。」
「其れでも」
「石田殿?」
「私は私に臆すことなく媚びることなく話しかけてくるものを刑部以外知らん。うらも表もなくああ笑われて如何したものかと悩みもした。女など…不要と思っていたから益々だ。只、あの笑みは好ましいと思う。只それだけだったのに、浅ましくも私のものにしたいと思ってしまった」
「変わりませぬなぁ」
「本当に!もー!!!!もっとあんたが嫌な奴なら色々入れ知恵できたのに!」
「?」
「あれは家族が無い分、家族を持って欲しい。それが、お館様と某、佐助…それに時雨の気持ちでござる。女子だからといって軽んじられることもなく、大事にしてくれるだろう御仁をと皆で考えていた折某は貴殿を思い出したのでござる。相性があり申すがそれさえ大丈夫で有れば貴殿を置いて他には無いと」
「…そうか」
「これは至極私的な話でござる。」
「っていうか顔見せて大丈夫だったら今回の同盟の礎って名目で筋を立ててと思ってたのにさー」
「我等とて同じよ。雑賀には皆目反応せんし姫は罵詈雑言の嵐。主の所の女武者は如何かと思っておったら反応してなぁ。これはしめた、目出度いと早々に縁談をと思っておったのに」
「ぐ…」
「然し、まだ甲斐の地から離れたくは無い様よ」
「な?!」
「致し方ござらぬ。結婚となれば話は違う、そうそう帰れぬこと位弁えておるのでござる」
「そうか…」
「絆されば大事ないが…」
「その前にこれだもん。俺様無理だと思うけどな」
「ぐ」
「佐助」
「…やれ、三成よどこにいかしゃる?」
「厩だ」
「危のうござる!」
「雪殿は直ぐに謝罪をしたが私はしていない」
「三成よ、太閤殿たちは我が言っておく」
「すまん」








そう言って席を立ち厩の前に座る。中から時雨の嘶きが聞こえるが後は静かなものだ。寝ているのか。出てこない時雨を見ても寝ていることが知れる。




「会って貰えるまでここで待たせてもらう。無体はせん。そちらに入ってもいかん。ただ、ここで待つことは許して欲しい。謝らなくてはならん」






そう言うと鼻息だけ聞こえる。
きっと許してもらえたのだろうと思いながら目を閉じるとポツリと空から落ちてくる。額上の雲行きは怪しい




「雨か」




まあいい。降りたければ降ればいいと瞳を閉じた





初恋と三成 5





ざあざあという雨の音で目を覚ます。雨が降ってきたのねと言えば時雨が嘶く。但し、私の近くではなくすでに起き出していて何故か外を睨みつけていた。




「時雨?」




如何したのとひょこっと顔を出すと雨の中座っている石田様がいて心臓が止まるかと思った。何時、からなのか?かなり降っているこの雨の中、何故座っているのか???頭の中がこんがらがる。
とふいに石田様の顔が上がって目があう。



にこりとは言い難いのに笑ったのだと私は理解した。そして少し口を動かしてふらりと倒れそうになった。




「石田様!!!!」
「…濡れる、ぞ」
「いつから?!いえ、体が冷たい!!!」
「おい」
「ごめんなさい!嫌でしょうけど辛抱してください!!!誰か!!!兄様!!!石田様が!!!」
「すまん」
「?!」
「嫌では無い。寧ろ、お前の顔が再び見れただけありがたい話だ。」
「石田様?」
「酷い事を言って、しまった」
「!」
「すまない。お前の笑みを見たら…この想いが断ち切れなくなる」
「目を開けて下さいませ!!!!寝てはいけませぬ」
「お前の言う通りだ。邪な想いはお前にとって、不快だと」
「そんなことありません!私は」
「許してくれ」
「当たり前です!私こそごめんなさい!本当に本当にごめんなさい!!!」
「雪…」
「石田様?」
「また泣かしてしまったなぁ」
「っ?!石田様」
「すま、ん」
「嫌です!!!兄様!!!刑部様!!!誰か!!!!」

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