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変換なしの雑食夢

ran

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明星

「ねーえーさーん!!」
「返事がありませんね」
「可笑しいわ!ここに居るはずなのに!」
「ねーえーさーん!!!」
「んがっ?!」
「あ、いたいた!」
「こんな所に?!風邪引いても知りませんよ!」
「大丈夫よ。んー!眠いわ」
「お客様です」
「えー…」
「えーじゃありませんよ!用意用意!」
「用意って…客は誰?」
「万騎長のダリューン様とえっと。」
「ラーダン姐さんはナルサス様と言っていたわ!」
「其れと何人か!」
「面倒」
「姐さん!」
「ラーダンとナージンに頼むわ。ふぁ」
「ね、姐さん!」
「寝ないで!」
「絶対寝るから連れて来いって!」
「えー…」
「あの二人ムキムキで怖いの!」
「ムキムキ見慣れてるでしょ?」
「顔が違う!」
「キアーとプーリヤーが可愛く見える!」
「あー…」
「「ラーダン姐さんが凄く怖い!!!」」
「まぁ良いよ。二人ともこっちへおいで」
「「わ!」」
「妾は難しい話が嫌いだよ。少し一緒に寝ようねぇ」
「「首領!!!」」




あららうるさいのが来ちまったと布団へ潜り込むとむんずと捕まえられだ。うちの男衆其れではない。痛いと唸れば笑い声しか聞こえない。背後からは心配そうな妹達の声。心配しなくとも良いといえば一段と悲鳴が上がる。



「あだ?!」
「あいも変わらず品のない声だな」
「それが嫌いなら妾に会いに来ないでおくれ。あいたたた。布団が邪魔だねぇ」
「早く顔くらい出せ」
「煩いわ。…ん?」


顔を出すと憎々しいまでに見慣れたそれと見慣れない顔と堅物が固まった顔と。急いで妹達が服をと直してくれる。肌蹴ていたらしくでかい弟たちが盾になる。良い弟妹を持って嬉しいわと言えば気が抜けているのはお前だけだと辛辣な言葉。ナルサスめ




「お茶を持ってきておくれ」
「あい」
「人払いをしてくれ」
「姐さん」
「大事せんよ。今日は他の客人がいるし。」
「何かあったら私が止める」
「ダリューン閣下…本当にお願いします。首領は無茶しますから」
「あらあら、妾より信用ある」
「違います!ナルサス様が関わると本当に碌でもない」
「本当に…」
「ラーダン殿!プーリヤー殿!!!」
「何度うちの建物を壊したのですか!一度や二度ならず…出入り禁止にしないのも首領の慈悲です」
「本当に請求書回したいくらい!」
「ぐ…」
「ふふふ。幾ら口のたつ男でも女には勝てんよ。…ん?」
「私のマントだ。着ていろ」
「あいも変わらず真面目だねぇ…ラーダン、プーリヤー。お茶もきたし良いというまで部屋に近づくなよ」
「はい」
「良い子だ。夜の支度は頼んだよ。」
「首領は?」
「こちらさんによりけり。…食事も用意しといておくれ」
「はい」




さてとと言いながら座り直す。随分と可愛らしい子らを連れてきてるねえと言えば何故か怒られる。可愛らしい男の子の一人に。




「エラム」
「ですが!」
「…頼みがある」
「何?」
「奴隷を無くそう考えている」
「あら、また昔の二の前を?」
「…貴様はどう思う?例えばこの王国全ての奴隷を解放しなら」
「何故私に聞くの?」
「お前ほどよくわかっている奴は居ないからな」
「親切に言ってあげたのに悪態ついで実行して失敗したものね…坊やに聞かせたいの?」
「ぼっ?!」
「やっぱり可愛い」
「ナルサス様!!!」
「落ち着けエラム」
「まぁお茶でも飲みなさい。ナルサスの若いときに似ているねぇ、ダリューン」
「エラムの方が良いだろう」
「そりゃそうだ。」
「な?!」
「そちらの…良い顔をしているね。聞きたいのは貴方のようだ」
「ああ」
「…とんでもない人を連れてきたわけないよね。良い加減出入り禁止にしてやろうかしら」
「す、すまない。私が無理に」
「アルスラーン殿下ですね。」
「?!」
「よくもまぁ。こんな移動娼館に」
「何故?」
「?」
「私の名前を?」
「風の噂ですかね。…弟妹が出来が良いのでね」
「?」
「奴隷の女王。大層な二つ名を持っております。」
「奴隷の?」
「この馬鹿はパルスどころか絹の国まで情報網を持っているのです。」
「そうなのか」
「勘違い致しますな。妾は別段奴隷商人でもなんでもありゃしませんよ。ただの娼館の主人。皆は好き勝手呼ぶだけですよ。ナルサスなんざ、妾を妖怪やら寝太郎やら好き勝手呼んでくれますし。きっと妾のきちんと呼ぶのは亡き両親と後ろの堅物だけでしょうさ」
「ダリューンも知っているのか?」
「昔馴染みです」
「腐れ縁って言うんでさぁ。ねぇ」
「…」
「あいも変わらず。だんまりが好きねぇ」
「?」
「で」
「あ、ああ。貴方に意見を聞くのが最適と言われたのだ」
「ふーん…。面倒な事をしようとしなさるか」
「面倒というのか?」
「そりゃあねぇ。奴隷が身分のみで終わるのなら簡単な話だけどねぇ。」
「?」
「目的がないのさぁ。奴隷のほとんどはね。帰ってきたのだろう?当たり前さ。仕事の概念が違いすぎるからねぇ。等価交換すら知りゃあしない。己の価値を知らぬものがおのれを評価できるものか。…殿下」
「何だ?」
「…物事の本質は理由さ。何故、奴隷がいるのか。わかりなさるか?」
「労働の為か?」
「そりゃあね。でも妾から言わせりゃ暗愚な王に仕える騎士達も奴隷さ。自由民も其れこそ、貴族ですら」
「?!」
「命のある道具とは昔の人間は上手に言ったものさ。誰か知らない者の盤上の駒にしか過ぎないのさ。誰かは誰かのどれにしか過ぎない。言っている自分が嫌になっちまうね。」
「…だが」
「何だい」
「私は臣下をそんな風には思えない。彼らは私の友でもある」
「ふふふ。」
「?」
「それが理由さね。友なのだから奴隷ではない。当たり前の話さ。逆を言えば奴隷階級だから奴隷。これが理由の一つ。何より、本質なのはステータスさね」
「ステイタス?」
「地位が高い者の見栄、さ。財産だからねぇ。」
「意味がよくわからない」
「どう言えば良いか…そうさね。奴隷をどれだけ使って大きな商いをしている。これは商売人がよく使う言葉の一つよ。大きな商いには大量の下手間がいる。大きな家に住む者も同じさ。買う値段のみ考えてそれが己の基準に満たしていれば其れでいい。元金が回収されれば其れで十分なのさ。」
「?!」
「それに膨大な税を掛けたらどうなる?雇った方が元が取れると思ったら奴隷を捨てて人を雇うさ。より優秀な者をね」
「そうなのか?」
「次は多くの人間を雇用しているのがステイタスになる。より優秀な者を高額で雇うだろう。それに対しての縛りも今までとは比にならないだろうね。誰しも一城の城持ちになりたいものさね。城持ちなら良い人材をと思うのが世の常さ。まぁ結局の所名が変わっても実は変わりはしないよ。そういうものだからね。真実、無くしたいいうのなら先ずはその価値を無くすことからだね」
「価値を無くす…」
「税でも何でもいい。もし即位した後なら王たる貴方が奴隷を撤廃したらそれを考えて見なさいな。後は職業の斡旋。食扶持稼がないと。家事一般どころか結構何でもするからね、妾達は」
「?」
「さてと。食事の支度ができた様だけど…食べる?」
「ああ、頂く」
「妾はその前に夜見世の火を入れに行かないと」
「???」
「この娼館が開く合図さね。色んなとこから色んな理由でここに来る。来てみるかい?」
「お待ちください!殿下」
「私は、」
「この世の最下層。まぁ、一番下ではないよ。階級は下だけどね」
「行きたい」
「?!」
「ではいらっしゃいな。ダリューン卿」
「来ていろ」
「皆が驚く。返しておくよ」
「…」
「ダリューン」
「わかった」
「誰が来るの?」
「皆で行くさ」
「あんたもかい?」
「悪いか?」
「見せもんじゃないんだけどね」
「私は…構わないのか?」
「ああ。彼奴だけだねぇ」
「???」
「若い時からの犬猿の仲なのです」
「ああ…」








明星









「姐さん!」
「頭!!!!!」
「はいはい。吠えなさんな。今日お客は?」
「並んでますゼェ!」
「商売繁盛はいいけどムリはしまいよ。妹達は1-4は夜見世を頼むよ。5は休み。どうしても奴は上に言って休みを替えてもらいな。弟達は2-5が警備。1は休み。賄い、会計方は任しているから上のいうことよくお聞きよ。適度にあしらってよく儲けておいで。医師達も頼んだよ。病気の奴をここにいれんじゃないよ暴れて手がつけられない時は妾をお呼び。決して解決しようとは思いなさんな。妾はそのためにいるんだからねぇ…さてさて。キアー。プーリヤー。」
「首領。」
「ありがとう」
「さあ、夜の始まりさね」
「さぁ!御前達行くよ!」
「こっちも行くぞ!首領の館に不埒者を入れるな」










「すごい数だ」
「ここにいるのは全て奴隷さね。」
「?!」
「口減しで捨てられた子もいるし殺されそうになったのもいる。」
「そう、か」
「まぁ、妾もその一人さ」
「?!」
「吃驚したかい?」
「ああ」
「母親は奴隷でも美しくてね。お手つきになって孕ったら其の儘捨てられてねぇ。病気ですぐに死んじまったのさ。妾はここの先代に拾われてね。」
「移動娼館のか?」
「首都の娼館さ。まぁ色々あってこんな風になっちまったけど。」
「そうか」
「?」
「ここの者達は良い瞳をしていると思う」
「皆いい子さ。客の中には養子を探していたりもするからね。斡旋したりもする。まぁ何でも屋さ。乗れの好きなことで自立することもできるしね。ただ、偏見は辛い」
「そうだな」
「?」
「私は何も知らない」
「当たり前さね。」
「?」
「妾は王室なんて知らないよ。知らないところがある。当たり前のことで悩んでどうすんだい?そこから如何するかだろう?」
「…そうだな」
「大丈夫さね。ナルサスの馬鹿もいるし、あの堅物もいる。あの侍童も良さげじゃないか。美人も軽薄そうなのも。まだ色々いるんだろ?」
「ああ」
「何より殿下は若いんだ。色々学べばいい。知らなかったら知らないで当たり前さという顔をしてればいい。上の奴はハッタリが必要さ。其れこそナルサスの十八番さ。」
「ふふふ」
「?」
「ナルサスが其方を宮殿に呼びたいと言っていた。」
「はぁ?また、なんで」
「良い師になると」
「師はナルサスがいるだろう?」
「統治者としてだそうだ。今日其方にあって私もそう思う。」
「お役所仕事は嫌だね。」
「そこを」
「大体まだ王都は痴れ者どもの巣さね。」
「ああ」
「頑張ってねぇ…ああ。そうだ」
「なんだこれは?」
「差し上げる。これを見せればわが弟妹達が助けてくれる」
「?」
「奴隷の王と呼ばれなくなったら。そのときは暇になるだろうからね。其れまでは相談においで」
「!」
「殿下にかける訳ではないよ。ただ。」
「ただ?」
「面白い男にかけてやるさ」

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馬鹿な三成

今日はいつもより仕事が早く終わったのだ。今なら三成も帰ってきてないだろうし食事でも作って待ってようかな?と思いながらラインを入れる。返事が返ってこない。あれ?如何したんだろ?と思いながら到着した彼の部屋。鍵を貰って、いつでも好きな時に来いと言われているものの連絡が取れないままきたのは初めてかもしれない。




「あれ?」





靴がある。明らかに三成のものではない…というかパンプス。
寝室へ行く道中は三成の服がヘンゼルとグレーテルよろしく点在している。そして所々の女性の服。
これは見ない方が良いかもしれない。帰ろうと思った瞬間に運悪くスマホが鳴る。不運を背負い込むのはあの男だけで良いだろうと思いながら私は急いで電源を切る。逃げよう。とりあえず見なかったことにしよう。そうおもったのに






「三成…客だ。…起きろ」
「あ、の!」
「すぐ起こす」
「いいいいいいいえ!結構です!」
「孫市…」
「?!!!?!」
「烏が。早く起きろ。貴様に客だ」
「な…客?」





全裸の二人の会話は恐ろしく酒臭い。如何やらまだ強かに酔っているらしい。




「誰…花?」
「っ?!」
「如何した?何の用だ?」
「…」
「?」
「これ」
「?」
「じゃ」
「???」







材料を手渡して私は走ってその場を後にする。
酔いが覚めたのだろう。鬼の様になる電話もラインもメールも全て無視して私はビジネスホテルに移動するのだ









馬鹿な三成











「花!」
「っ」
「捕まえた!!!」
「離してください!」
「話を聞いてくれ!」
「聞くことなんてないです。離して」
「逃げるだろう!」
「もう関係ありませんから」
「っ」
「孫市さんでしたっけ?末長く」
「馬鹿を言うな!私は!!!」
「?」
「…」
「おい」
「何ですか?」
「決めたのか?」
「無理矢理でしたけど。最近確かに会っても三成さん困っていたでしょ?」
「…」
「潮時なのでしょ?」
「私は」
「鍵」
「…お前は側にいると」
「浮気、されてまでですか?」
「酒に飲まれていた。…お前だと…」
「孫市って呼んでたのに?」
「あれは」
「無理しなくていいですよ。私もしませんから」
「おい!」
「荷物も、捨てて下さい。私のところには何もないですけど、鍵は変えましたから。それも捨ててください」
「っ」
「では」






追いかければ良かったのだと後から悔やまれる。

彼女が会社を休んで失踪するなどその時は思いつきもしなかったのだから。

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暗の妹と三成 7

「おい!」
「兄上…?!(ぷい!)」
「(可愛いなぁおい!郷ならどんだけ言われるか!)すまん」
「…」
「お前さんは小生の一番可愛い妹だ。ひどい事を言った。すまん」
「兄上の、ばか」
「?!泣くなよ…」
「だぁっ、、て…」
「小生が悪かった。頼む。泣かないでくれ」
「あい」
「良い子だ。…でだ」
「?」
「此れが光からだ」
「義姉上?」
「ああ。前半はすげぇ怒ってる。小生をだけど。」
「ふふふ」
「後半は…泣くなよ」
「…」
「光なぁ、お前さんを放り出したみたいになって凄く後悔してんだよ。お前さんには嫁いだ時世話になったのにってな。…小生としてもだ。だが小生は会いに来れるけど彼奴は無理だろ?ああいう別れだったから手紙もかけなかったしで。許してやってくれ」
「光義姉上は…私にとって大切な姉上だもの。ずっと大好きです」
「あとは任せろ。お前の好きなようにしたら良い。嫌ならどうにかして逃がしてやる」
「…」
「?」
「治部様はどうして私なのでしょう?」
「さぁなぁ。半兵衛に聞いても誤魔化すばっかだし。ああいう奴だけど冗談で言う事はねぇな。」
「反対していたのに?」
「今でもしてる。彼奴は凶惶だ。お前に何かあったら…やっぱり反対だ!」
「兄上」
「でも」
「?」
「お前には優しい男なんだよな」
「…はい」
「侍女に手を出す男だぜ」
「今まで侍女いなかったそうです。私もこのままそばにいるようにと言われてます」
「マジか?!」
「大阪と佐和山と戦さ場のみらしいので。佐和山に行くなら共に行けば良いし、大阪でもこの通りでと。刑部様がそう。でなければ」
「?」
「刑部様の仕事が増えるそうです」
「ベタ惚れかよ」
「兄上」
「ん?」
「どうして兄上は側室を持たないのですか?」
「あん?」
「…」
「お前さんたち見てたからな。」
「そう、ですか」
「結婚なんて碌でもねぇとは思ってたぜ。このまま気ままに生きても良いかなってくらいには。だけどよ〜」
「?」
「光見たらなぁ。苦労させるだろうけど。結婚してぇとおもってな。此れがまた良い女だろ?もう光だけで良いって思っちまっただけだ。もともと小生は好色ではないからな!」
「ふふふ」
「三成には小生が言っておく」
「!」
「側室入れるんなら返してもらうって。」
「そ、それは」
「きっと彼奴はうんっていうぜ。いや、黙れか?当たり前だ!だな」
「ふふふ」
「着の身着のまま来いだぁ?そんなの小生が許さねぇ!三国一の花嫁にしてやるからな」
「…そう」
「?」
「そう望んでも良いのですか?」
「当たり前だ」
「っ」
「お前さんは小生の一番可愛い妹だからな」











という訳だと言えば福々とわらう刑部の笑みに戦々恐々する。1に側室を持たない事。2に嫁入り準備するまで婚礼は待つ事。そう伝えたらそれ位ならいう事なのだろう。




「して」
「あん?」
「嫁入り支度はいつ頃よ」
「2年」
「妥当よな」
「と思うだろ?ところがどっこい」
「?」
「小生には出来た嫁がいてなぁ」
「確かに主にはすぎた嫁御よ」
「ぐ…。まぁ良い!何時でも嫁げる様にってな準備してたみたいだ」う「!」
「今反物の仕上げをしているらしくてな早ければ来月にはこっちに持って来れる」
「出来した。流石よな」
「そっちは如何だよ!…結納支度してないだろ?」
「明日にでもいけよう。目録をやり取りしておったからなぁ」
「なにぃ!?」
「主の家老は誠仕事の早い男よの」
「あいつ!」
「やれ、三成を呼んでこようか」
「本当に良いのか?」
「それはこちらの台詞よ」
「小生はまだ反対してる!」
「左様か。黒田は?」
「…嫁ぎたいそうだ」
「ひひひ」
「引く手数多だろうに!」
「その引く手も三成に斬られよう。被害が少ない方が平和よ平和」
「まぁなぁ…真逆!」
「ん?」
「手を出しちゃいねぇよな!」
「ないない。それが出来る男ならとっととものにしておろう。くそ真面目に初夜までは手を出さぬつもりよの」
「真面目すぎんだろ!」
「ああ言う男よ。やれ、来たか」
「入るぞ…暗まで。如何した?」
「主の縁組が決まった決まった」
「?!」
「うちの妹を貰うからには側室なんて貰うなよ!」
「当たり前だ!」
「ひひひ。来月には主の嫁御よ」
「何?!」
「早くて驚くだろ?」
「遅い!」
「…ひひひ。支度は必要よ」
「そんなものはいらん!」
「そういうなよ!着の身着のまま行かせたらあいつの肩身が狭くなる!」
「っ」
「左様よ。水面下で皆が動いた故このように早いのよ。」
「すまん」
「構わぬ。が、三成」
「何だ?」
「手を出すなよ」
「あ、当たり前だ!」
「ひひひ。言うた通りよな」









暗の妹と三成 7









「やれ、入る」
「やあ吉継君!待っていたんだよ。」
「如何なった?」
「強行よ強行。今月には結納を交わして来月には輿入れよ」
「もっと早くできないかい?!」
「半兵衛」
「だって三成君の気が変わったら…」
「変わらぬよ。安心致せ、賢人」
「万事任せる。頼んだぞ」
「あいあい」
「にしても…ふふふ。僕にも孫が」
「結婚もまだよ」
「手を出してないの?!誤差じゃないか」
「三成が無体をせぬだろう。」
「そうよの。それが出来れば良かったのだがなぁ」
「唆してこようか」
「やめしゃれ」

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暗の妹と三成 6

「治部様」
「?」
「お弁当を用意いたしました」
「ああ」
「手すきの時に摘んでくださいね。」
「助かる」
「いえ。私は横に控えておりますので。何かありましたら」
「おい」
「?」
「なにをする予定だ?」
「繕い物でもと」
「ならここでしていろ。そちらの方が呼ぶ手間が省ける」
「はい。わかりました」




「ひひひ」




「刑部か」
「刑部様の分も支度しております」
「あいあい。本に出来た女よ。」
「ありがとうございます」
「嫁の貰い手も数多よなぁ」
「?!」
「ふふふ」
「刑部!」
「はてさて。もう許嫁でもおろうか?」
「私がですか?」
「左様。」
「居りませんよ」
「!」
「ひひひ。なれば三成などどうか?」
「!!!?!?!」
「ご冗談を。」
「冗談であるものか。主とてもう良い年よ。いつ嫁いでもおかしくはあるまい」
「そう、でございますけども。私の場合黒田と申しても名ばかりですから」
「?」
「私は御隠居様と遊び女の子ですので…その、兄上の温情で黒田の末座に加えていただいているのであって大奥様たちには良い顔していただいておりませんから」
「左様か」
「…」
「刑部」
「あいあい。ちとでる」
「!」
「勘違いするでない。ひひひ。主を侍女から退けたりましてや放逐したりはせぬよ。そんな事をしたら我とて…ひひひ」
「刑部」
「あいあい。弁当はそのままにしりゃれ。主の手料理は美味故」
「!」
「愛い愛い。」
「…」
「ではなぁ」







ばたりという音とともになんとも言えない気まずさが残る。ちらりと治部様を見ればじっとこちらを見てこられるのでどきりとする。刑部様はああ仰っていたもののお気に召さないのかもしれない。
自然と申し訳ありませんと呟くと不思議そうになにがだと言われてしまう。




「出自が」
「ああ」
「?」
「此方が詫びることだ。すまない。気を悪くしただろう」
「い、いえ!」
「?」
「…治部様」
「何だ?」
「その…」
「何が言いたい?」
「…」
「お前にしては歯切れの悪い。が、もし出自やそれを黙っていたことに対する件ならば気にしなくて良い。私はお前がお前であれば良いと思っているしそれ以上でもそれ以下でもないと思っている。それを無理や暴いてしまった己の至らなさの方を恥じたい。」
「そんな事!」
「ならば気にするな」
「…はい」
「…美味い」
「…は、い」
「?!」
「…ぐすっん」
「な、泣くな。気に障ったか?恐ろしかったのか???」
「いいえ、いいえ」
「ならば」




嬉しいのですといえば治部様が驚いた顔をするのでおもわず笑ってしまう。嬉しいのだ。彼方でも私にそう言ってくれる方は今まで一人もいなかったのだから。ぐずぐずと泣いてしまってきちんと言えないほど嗚咽を零す。すると、何故か治部様が困った顔をして少しうなったあと私を抱きしめるのだ。一瞬なにが起こったのかわからなかった。




「泣くな」
「嬉しくて、泣けるのですね」
「それでも。」
「?」
「お前の泣き顔は心の臓に悪い」
「え?」
「…」
「治部様?」
「先程の」
「?」
「刑部の言った件だ」
「えっと…」
「もし、反対されたとしても。嫁入り道具もなにもいらない。着の身着のまま。」
「治部様?」
「私の元へ嫁いで欲しい」









暗の妹と三成 6







「だーかーらー!小生の話を聞け」
「主の話は本にわかりにくい。是非のみで答えよ」
「なら、嫌だね!小生の可愛い妹は優しい男に嫁ぐんだよ!」
「なれば三成が最良よ」
「何処がだ!大体…彼奴の母親は遊び女じゃなくてれっきとした側室だ。うちのお袋がトチ狂って虐めただけだよ。」
「左様か」
「親父がお袋の許可なく貰っちまったからなぁ。彼奴産んですぐ里に帰って…あいつはちいせぇときから苦労してんだよ!」
「あいあい。では三成が愛でで幸せよの」
「だから!!!」
「諦めよ…ん?」
「?!」
「初々しいの」
「何故じゃー!!!」

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暗の妹と三成 5

あの後、刑部様と侍女頭様にご相談したら朝夕は治部様付き昼は今まで通りで、治部様主体の侍女になる様に仰せつかった。治部様の侍女がいない事と昼間は基本今まで通りに成ろうということでこの配置らしい。出世したのうと刑部様に言われてもピンと来なかったのは治部様の筆頭侍女と雖も一人であることとあまり出世に興味が無いせいだろう。



「治部様」
「?!」
「お召し物をお持ち致しました」
「な?!」
「?」
「何故、お前がいる?」
「え?刑部様から御聞きになっておりませんか?」
「刑部?いや…何も聞いていない」
「今日から朝夕は治部様付きの侍女になりました。昼は今まで通りですが…」
「?!」
「よろしくお願いいたします」
「あ、ああ」
「御召し替え手伝います」
「頼む」




そう言ってしゃがむとひしひしと視線を感じる。不意に顔を上げると治部様と目があったので如何致しましたか?と尋ねると眉間の皺が深くなっていく。不手際があったのだろうかおどおどしてしまうと不思議そうに見られた。



「不手際がありましたか?」
「いや、無いが?」
「至らぬところが有りましたら仰って下さいね」
「無い。」
「治部様」
「そもそも私は遠慮なく直ぐ言う。」
「なればいいのですが」
「?」
「眉間の皺がひどくなって御いででしたから」
「?!」
「きつくありませんか?」
「あ、ああ…その」
「?」
「刑部の悪癖を思ってだ。お前では無い」
「ふふふ。刑部様もお忙しいですから。お忘れになったのかも知れませんよ?」
「そう思うか?」
「ふふふ」
「おい」
「はい」
「…嫌ではないか?私付きなどになるのは」
「私がですか?」
「ああ」
「嫌ではありませんよ。何より治部様」
「ん?」
「衣食住を整えるものがいなければ治部様も大変でございましょう?」
「それは、そうだが…」
「刑部様のように治部様も豊臣になくてはならない方なのですから。精一杯お役目果たさせていただきます。刑部様が寝込まれたら手伝いに行かないといけませんのでそれだけはお許し下さい」
「…ああ」
「目下、きつかったり緩かったりしていませんか?」
「丁度良い」
「良かった」
「っ」
「お食事は刑部様のところでなさいますか?」
「あ、ああ」
「治部様?」
「聞きたい事がある」
「?」
「私はお前を何と呼べば良い?」
「?」
「黒田は暗を思い出すから…違うものが良い」
「ならばここに上がった折に立川と名付けられましたが」
「いや、そうではなく」
「?」
「名前をだ。まだ聞いていなかった」





「三成!!!!!!テメェ!!!!小生の妹を!!!!」







「…」
「兄上!?」
「暗…貴様」
「おい!うちの可愛い妹に何しようとしてんだよ!」
「兄上!朝から何を…」
「お前もお前だ!態々志願しやがって!!!こいつはなぁお前かへぶし!」
「はてさて騒がしい限りよなぁ」
「刑部!」
「ひひひ。朝から良い思いができたであろう?」
「…早めに言え。」
「驚きもたまには必要よ。なぁ、暗」
「うるせぇー!!!」
「兄上」
「大体!お前かいけねぇんだ!小生に相談なく!!!」
「兄上は数日行方不明でしたから」
「ぐ…それでも待つのが妹だろう!」
「…」
「そもそも大阪にも勝手についてきやがって!」
「おいっ!」
「ひひひ。ちと三成またしゃれ」
「何がだ!」
「こんな事なら又兵衛にでも頭下げて押し付ければ良かったぜ」
「…」
「お前さんなんて兄でもなけりゃ妹でもねぇ!!!とっとと播磨に帰りやが…」
「わかりました」
「れ?!あれ?」
「もう兄でもなければ妹でもないのでしたら態々播磨に帰る必要はありませんね。義姉上にはおって文を書きます。」
「いや?!待て!!!!これは言葉の」
「刑部様」
「はてさて?」
「黒田のものではありませんので…大阪において頂けますように竹中様にお願いしてもよろしいでしょうか?」
「必要なかろう。主の三成付きは太閤たっての命よ。縁は切れても出自は変わらぬでなぁ」
「ですが…治部様にご迷惑が」
「私は構わん。お前が付いてくれるだけで良い」
「ふふふ」
「お、おい!」
「…」
「す、すまん!」
「あら、黒田様」
「「?!」」
「如何致しましたか?」
「ひひひ」
「御用でございますか?」
「い、いや」
「なれば失礼致します」








暗の妹と三成 5







「時折あるのよ。前は何時だったか?」
「刑部様が身体を壊されて寝込まれた折です」
「ああそうよそうよ。あれは阿呆にも通夜と言いよったのよなぁ」
「?!」
「やれ色めき立つでないわ。随分と此れが怒ってなぁ。あれも過ぎた冗談だっただろうに」
「知りません。言って良い冗談か否かわからない年でもありませんでしょうに」
「言うてやるな。だから阿呆なのよ」
「…お茶のお代わりは?」
「頼む」
「ひひひ」
「怒るな」
「すいません…」
「いや、あれを怒るのは仕方ないが…」
「?」
「お前に眉間の皺は似合わない。」
「!」
「わざと難しい顔をしなくて良い。」
「…お気付きでしたか?」
「ひひひ」
「ですが。ああでもせぬと兄上はもっと酷い事になりますから…申し訳ありません」
「構わない。ただ」
「?」
「…いや、いい。不具合があればすぐ言ってくれ」
「ありがとうございます」
「ひひひ。」

拍手