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変換なしの雑食夢

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勝手すぎる三成 3

「やれ」
「吉継さん?!」
「貴様ー!」
「佐吉。吉継さんは大丈夫よ。」
「…おい貴様」
「ひひひ」
「私の母を傷付けたりしないだろうな!」
「せぬせぬ。証拠に三成は置いてきた」
「仕事、でございましょう?」
「まぁなぁ。今はホテルでパソコンと睨めっこよ。会議に出なければならぬでなぁ」
「…」
「まぁそう威嚇せぬともよかろう…本にこういう所が似ておるな」
「とても良い子です。私が抜けていますから…助けてくれます。あの」
「此処を知っているのは我らと左近。覚えておるか?」
「一度お会いしました。島様ですね」
「ひひひ。左様。ちと話がしたい。良いか?」
「良く、ありません」
「そうか…だがなぁ」
「母の嫌がることをするな!」
「すまぬすまぬ。だがな。我とて主の母御が気かがりなのよ。」
「嘘をつけ!」
「はてさて。嘘をついてどうする。」
「貴様は私と母の敵だ!あの男の仲間だろう!貴様達が来てから母は夜まともに眠れなくなったのだぞ!そんな輩の言うことを聞くほど私は愚かではない!」
「…ぬしは父に似ずしっかりと育ったなぁ。やれ、寝ておらぬのか?」
「…」
「そうよな。ぬしにとってはあの結婚自体悲劇以外の何者でもなかったであろうに。此処の公園で良い。少し座って話をせぬか」
「公園…」
「?」
「昔貴方が私に公園で人と会うなど教えてくれました。死角が多くて危ない、からと」
「はてさて。悪意のあるものとはなぁ。我は何もせぬよ。そう警戒致すな」
「…」
「?」
「私が嫁いでから一番親切にしていただいたのは間違いなく吉継さんです。」
「なれば」
「ですが、貴方が誰よりも何よりも石田さんを大切にしていることも存じ上げております。…心苦しいですが」
「信用出来か?」
「有り体に言えば」




そう言うと吉継さんは少しため息をついて左様かという。心苦しかったものの今の私は一人ではないのだ。興信所か何かを使って私の居場所を突き止めた理由はきっと佐吉だろう。握る手に力がはいる。それを見ながら吉継さんはひひひと癖のある笑いを浮かべるのだ。




「佐吉」
「軽々しく私の名前を呼ぶな!」
「ひひひ。ぬしは甘いものが好きか?」
「施しは受けん!」
「そう言うな…其処の。ファミレスなれば如何か?」
「…」
「主らを攫うのであればとうにしておる。今日は話に来ただけよ。主が去って5年。その間の話も伝えておきたい」
「…佐吉」
「私も行く!母の隣には私が居るのだ!」
「ひひひ。頼もしいなぁ」















「飲まぬのか?」
「今は」
「左様か」
「母」
「美味しい?」
「…ん」
「良かったわね」
「さて、と。主の父親達の行く末は聞いておるか?」
「いいえ」
「軌道に乗って独立してから主が居らぬようになったからなぁ。相変わらずよ。少し気かがりなのは主の事は居ないものとなっておる。我らへの体面であろう。死んだ事になっておるわ」
「妹を後妻にと申したのではありませんか?」
「ひひひ。左様さよう」
「本当に変わりませんね」
「人はそう簡単に変われぬよ。」
「会長に社長はそれでよろしかったのではありませんか?」
「賢人は怒り心頭でなぁ。母がわりゆえ三成の事になると周りがよう見えておらぬ。太閤は…主が出奔した気持ちがわからぬでもないと。夫はああだし義母はああだしなぁ」
「そうでしたか」
「愛人は?聞き及んでおるか?」
「何人かいらっしゃるのは。4人…迄は。よくホテルから出てくる写真や贈り物など聞いておりましたし家にも来ていましたから」
「?!」
「ご存知ありませんでしたか?寝室に普通にいたり…まぁ」
「左様か…三成め」
「秘書の方もですよね。…そう言う性分は治らないと申しますし何より、好きで結婚したのはありませんから仕方ないかと」
「…」
「何故、お探しになったのですか?」
「ん?」
「一番長く続いていた方と一緒に成るとばかり。後継者など優秀な養子で良いと公言されておいででしたし、その…子供もすぐに出来るだろうと」
「あれもなぁ天邪鬼ゆえ」
「?」
「あの後、主がいなくなった後の話を少ししても良いか?」
「石田さんの事ですか?」
「左様」
「結構です」
「?!」
「あの方とは赤の他人でございますから」
「三成はまだ届けを出しておらぬよ」
「それが一番訳がわかりません」



そうよなぁというあたりで佐吉が船を漕ぎ始める。この子もあまり寝ていないのだろう。頭をさすって抱きしめてやるとすぐに寝てしまう。
寝たか?という声にうなづく。あどけない顔に似合わない隈を触りながら、吉継さんを見る。そわそわしているあたり本当の父親のようですねというと笑われる。曰く、自分の子供を持つつもりは無いらしい。彼もまた、その血に親に家族に苦しめられた一人なのだから




「やれ可愛い」
「ええ。とても」
「写真は?良いか???」
「…悪用致しませぬか?」
「この可愛い子をか?せぬせぬ。危害があるのは我とて好かぬわ」
「…」
「確かに、主の言うとおり。我は三成の味方よ、味方。我の家を知っておるか?」
「吉継さんが教えてくれた程度に」
「本に淫乱な母を持つと子が困るわ。主は身持ちがしかりとしておる分佐吉は幸せよな。…三成の愛人も事実、其処までひどいとは思わなんだ」
「最初は隠れてでした。唯、段々。何より」
「何より」
「…愛人と会った後に私を抱くのです。本当に居た堪れませんでした」
「主には同情する」
「…私のことが気に入らなかったのでしょう。それは…致し方ないのですけど」
「気に入らぬわけではないのよ」
「如何でしょうか…」
「あの後…聞きたくないだろうがきかしゃれ。三成は必死で探したのよ。主らを」
「…」
「身重の主が何かの事件に巻き込まれたのではないかとなぁ。失踪と並行して両方で探しておった。ただ、本に失踪のようでな。手紙の言葉も書かされたのではなく自らの意思で書いたのかと思うと心の臓が引きちぎられる思いだったようよ。必死に探したがなぁ。主のかくれんぼは難易度が高すぎるわ。6年もかかった」
「またかくれなくてはなりませんね」
「さすがにもうさせぬよ。…帰ってこぬか?」
「ご存知ですか?」
「ん?」
「勝手にしろ」
「???」
「石田さんの口癖です。話しかけるたびにそう言われます。最後に言われたのは…里で産んでも良いか?でした。里帰りをして良いものか否か。里に聞いて良いと言われれば帰って良いかと聞いたのです。その頃あの方は会社と愛人宅の往復でしたから話す機会もありませんでしたし、臨月に入る前にと…その時に言われたのが勝手にしろと自分の子であるか否かわからないと。この方はそういう分に思っていたのかとその時思いました…いえ、以前から薄っすらとは知っていたのですけどね。強く、思いました。里も、二度と家に帰ってこないつもりで嫁いだのだろうと言いますし。色々、その」
「箍が外れたか」
「ええ…前から大叔母には母には決して言うなと言ってお金を渡されていました。…私は今の母とは血が繋がっていませんから。あの人も私の実母を追い出して妻になった人です。母は自殺したと、聞いています。私の家も端から見る以上にぐちゃぐちゃなのです」
「…」
「私もそのうち母と同じようになるなと…でも私が死んだら佐吉はと、そう思うと死ぬに死ねませんでした。私は一人でおいだされて、佐吉は後妻と仲良くできるのかと…私のようになるのではないかと」
「だから失踪したと」
「はい」
「…」
「ここに来て、大変でしたけど。佐吉と二人暖かい生活が出来ました。何よりあそこにいては出来なかったとも思っております。…家に帰らぬ夫を待つ妻より父親のいない子を母親が育てている方が何倍も幸せです。戸籍上夫婦ですから父親はあの人なのかもしれませんが…嫡出否認をして下さい。そうすれば」
「それは、せぬよ」
「如何して」
「…その子が三成の子だからよ。この世でたった一人のな」
「…あの人の子供ではありません」
「しかしなぁ」
「そうあの人が思っているのですから。愚鈍な女の産んだ子より美しい人の産んだ子の方が良いのでしょう?もう懲り懲りです。あんな場所に帰りたくはない。私の心が持ちません!」
「…」
「話はもうよろしいですか?帰ります」
「ま、またしゃれ」
「早く、届けを出すように言ってください。では」







勝手すぎる三成 3







「ひひひ。律儀に金まで置いて行ったわ。なぁ、三成」
「…」
「大事ない。気付いておらぬよ」
「なら、良いが。」
「愛人の下りは初めて聞いたわ」
「すまん」
「われに言うセリフではあるまいよ…如何する?」
「別れるつもりなどない」
「佐吉は」
「知らん!」
「よう似ておるわ。主もああして守ってやればよかったのになぁ」
「…」

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勝手すぎる三成 2

「お前は誰だ!!!母を泣かすな!!!!」
「なっ!?」
「佐吉。落ち着いて…お願い。母から離れないで」
「母。私はここに居るぞ!母の側から離れないから安心しろ!」
「っち!」
「ひひひ。主の幼き時にそっくりよ」
「帰って、下さい」
「やれそれはいかぬよ。6年。皆心配しておった。」
「…お願いです」
「入れろ!」
「っ?!」
「そんな顔をするな!態々こんな僻地まで!!!」
「煩い!私の母に怒鳴るな!痴れ者!!!帰れ!!!」
「何?!」
「佐吉!」
「貴様!!!父親に向かってなんたる口の利き方をする!!!即刻仕置きをしてやる!」
「やれ!三成!!!」




手を挙げて振り落とされると思った瞬間、自然と体が動いた。
この人の顔を正面から見たのは初めてかもしれないと痛む頬を感じながらぼんやりとそう思うのだ。思いの外、呆然とした表情が似合わない人だ。
わっと泣かない佐吉の大泣きで私は我に帰る。母と私を呼ぶ姿が余りにも可哀想で。抱きしめて大丈夫と聞くとぐずぐずと泣くのだ。どんなことがあっても泣かない佐吉が。




「貴様…絶対に殺してやる!」
「佐吉」
「私の、母に!!!この暴虐は許し難い!!!必ずだ!必ず抹殺してやる!!!」
「佐吉」
「母は後ろにいろ!」
「お願いよ。そんな悲しいこと言わないで」
「っ。母」
「私は大丈夫だから。ほら、泣き止みなさい」
「母。大丈夫か?私が弱いから…母が」
「佐吉…」
「三成!自失している間があるか!…済まぬ。誰か氷を買ってこりゃれ」
「吉継さん…」
「やれ、坊。すまぬなぁ。主の大事な母御を」
「早く帰れ!母や私に触れるな!!!」
「そうはいかぬのよ。ちと辛抱しりゃれ。…主も父が恋しかろう?」
「私には父などいない!」
「!」
「父が何をしてくれた!言ってみろ!!辛抱強い母が貴様を見れば恐るんだ!!!何より母を傷付ける父なら尚更だ!!!私には父などいらん!帰れ!!!」
「…ひひひ。本にようにておるなぁ」
「お願いです。帰ってください。佐吉。貴方も本当に落ち着いて。ね、佐吉」
「母…泣かないでくれ。母…」
「お二人とも…私はもう帰りません。帰るつもりも、佐吉をあんな冷たい家に置くつもりもありません。離婚届も何もかも。私と縁を切るのに必要なものは置いておいたはずです」
「…」
「婚姻中の生活費まで手付かずだったのは驚いた。ぬしは如何様にしておったのよ?」
「大叔母の遺産です。仕事もしていますからこの子と二人。慎ましやかに生きていくのに何も不自由はありません」
「…左様か」
「母。大丈夫か?顔色が悪い」
「ええ」
「早く往ね!!!これ以上母を虐めるのなら私は許さない!」
「佐吉。…どうぞおかえりください。この子は私の子です。あなた方とは関わりの無い子です」
「否ことを申すな。これは三成の子よなぁ」
「いいえ」
「…どういうことだ」
「三成、落ち着きゃれ」
「あの時、貴様は私との子が出来たと…そう言ったはずだ!!!」
「あなたか仰ったのでしょう。この子の事は私が勝手に決めていいと。貴方の子か否かすらわからないと。」
「っ」
「三成…主という男は」
「ですから認知とかそういう事も考えて無いです。もう、死んだものと思ってくださって結構です。貴方は勝手にしろとすぐ仰います。だから私は勝手にさせていただくのです」
「?!」
「父母にも…そうお伝えください。不肖な娘は何処かでのたれ死んだと」
「それは」
「…」
「…許可しない。刑部」
「ひひひ。また日を改めて参ろう。坊も許せ。」
「二度と来るな」
「あいあい。またなぁ」






かつかつと革靴の音が聞こえる。それと比例して体の力が抜ける。
へたりと座り込んで佐吉を見る。困った様な顔をして私にすり寄ってきて私を抱きしめてくれる。こうやって私達は支えあってきた。
中に入ると急いでタオルを冷やしてきてくれる。相当腫れているのだろう。ずきりと痛みが出てくる。




「カレー、食べる?」
「母」
「話はそれから。ね?」
「…」
「にしてもかっこよかったわね」
「!」
「でも口汚ないのはダメって言ったでしょ?」
「…そうでもしないと友達を守れない」
「ふふふ」
「?」
「佐吉はとても優しいね」
「母?」
「ん?」
「あれは誰だ?」
「…」
「嘘偽りはいらない」
「佐吉は嫌いだものね…そうね。待てないわね。…ご飯食べる前に話す?」
「ん…」
「あの人はね、母の夫だった人よ。大きな会社の副社長さん。跡取りだから今はどうなっているかわからないけど。…貴方の父親よ」
「?!」
「でもね。佐吉にはお父さんが居ないの。…母がここまで逃げてきたから」
「如何してだ?」
「…母は怖かったの。佐吉がね、こんなに優しく育たない場所で生活することが。母と一緒に笑って泣いて…でも苦労もたくさんさせているわね。佐吉はお父さんと一緒に行きたい?」
「母も一緒か?」
「うんん。母は戻れないもの」
「なら私もここだ」
「無理しなくていいのよ」
「いくらお金があっても母がいないのなら仕方が無い。テレビで見る様な豪華な食事や家があっても母がいないと意味がない!勉学もそうだ。私が優秀ならばお金は要らんと聞いている!」
「…時々母はあなたがいくつかわからなくなるわ。無理しなくていいのよ?母も頑張るから」
「母はこれ以上頑張らなくていい!私が楽をさせてやる。それに」
「それに?」
「母が頭を撫でて褒めてくれるから…私は十分だ」
「佐吉!」
「母」
「いい。よく聞いてね。母はなんと言おうとも佐吉が大好きよ。」
「知っている」
「あの人たちがあなたになんと言おうとも。母が明日からなんと言おうとも。絶対母の側からはなれてはだめよ」
「母もか?」
「母も。…脅されたり?色々言われて母が血迷ったことを言ったら貴方が怒ってね。」
「当たり前だ!母も私が間違えていたらすぐに言ってくれ。」
「ええ」
「もし保育所に来たら先生に言って警察を呼ぶ。変質者だと叫んでやる!」
「そ、こまでするの?」
「やるからには徹底的にだ。保育園も外には出ない。私は小さくて非力だ。連れさらわれたら大変だからな。母」
「?」
「明日先生に言ってくれ。変質者が狙っているから外に出れないと…いや、暴力男が私を攫って母から金を巻き上げようとしているとでも言えばいい。佳子先生はその手の話が好きだからな!守ってくれる」
「…嘘はいけない気がするわ」
「真実だ!私の母に…許しがたき愚行!!!斬滅する許可を!!!」
「(とても5歳児の台詞とは思えない…時代劇見せすぎたかしら)怪我しちゃ駄目だからね?主任に言ってみるわ」
「!」
「佐吉?」
「大野の婆様とずっと居られるか?」
「…大野の婆様好きね」
「母の次くらいに!」
「…主任と大野さんに聞いてみるわね」
「やったー!!!!!」
「(本当に5歳児かしら)」






勝手すぎる三成 2






「大野さんも願ったり叶ったりって。佐吉ちゃん来たらすごく機嫌がいいから」
「本当にすいません」
「良いのよ!本当に偏屈な人だけど佐吉ちゃんとはウマが合うのよね。でも大変だったわね」
「ええ、まぁ」
「本当に男ってやつは…やだ。こんなところで言っても仕方ないのだけどね」
「主任」
「何?」
「本当に何かあったら言ってください…今までご恩があって。迷惑がかかる事だけは」
「ん。何かあったら言うわ。第一、今貴方に抜けられると私が一番困るんだもの」
「?」
「貴方地雷処理って言われてるのよ。気難しい人に人気あるでしょ?」
「気難しいですか?」
「…今まで本当に大変だったのね」
「???」

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勝手すぎる三成 前

勝手にしろが夫、石田三成の口癖だった。
家の為、父母の為。大学を出ですぐに私は石田三成の妻に納まった。盛大な挙式。広い新居。誰もが羨む豊臣商事の副社長。玉の輿だねと言われる度に私の心は冷え冷えとするのだ。妹でも良いのだけどね。歳が離れているから君にしたんだよ。副社長就任と同時に彼をしっかりさせたかったからねと言ったのは確か養父の一人だった気がする。石田三成の副社長就任の出し物のような結婚だなとぼんやりと思ったものだ。
好きでも嫌いでもない男だったが、縁あって夫婦になったのだからできるだけ仲良くしたいものだと安易に考えていた私に石田三成は勝手にしろと言わんばかりな態度を取り続けた。夕飯は如何しますか?会社で食べる。貴様は勝手にしろ。おかえりは?勝手に寝ていろ。という日常から結婚式のドレスに至るまで彼は潔いほどに勝手にしろとと言い続けた。無論、私の顔など見てなど一つもなかった。
だから、私の中の石田三成と言うのは後ろ姿か横向きのイメージしかない。結婚式の写真すら私の反対側を見ている有様だから筋金入りだ。愚鈍と散々蔑まれた私でもここまで来ればこの結婚自体、崇拝している会長、社長両養父の二人の命で渋々ながら受けた、本来気に入らない事なのだと理解できた。その程度に蔑まれ嫌われて居るのだと。良く暴力がなかったものだと今になって思うがそれもきっと外聞が悪いから駄目だと養父に言い含められていた為だろう。
そんな程度に冷え切っている夫婦が夫婦であり続けられたのは彼にとっては「崇拝している養父の命」であり私は「両親の嘆願」に尽きる。このどちらかが欠けたらすぐになくなってしまう脆い関係のくせに、どちらかが欠けなければ何よりも強固な関係になるのだから不思議なものだ。社会性…と言えば良いのだろうか?そういうもので私たちは繋がっている。
だから石田三成が何処で何をしていようとも愛人を作っていようとも私は平気でいられたのだと思う。否、感情を停めていたから如何とも思えなかったの方が正しいかもしれない。まぁどちらでも良い。彼女達にも蔑まれ「お飾りの妻」と言われても私は素直にうなづく事ができたし「夫をよろしくお願いいたします」と形式通り台詞を吐く事ができた。本当によろしくしていただきたかったもののそれは不可能だと理解していたし、彼も知っていたと思う。好きでも無い妻と美しい愛人。天秤にかけて傾く方など決まっている。「今日は遅い。貴様は勝手にしていろ」そう言っては愛人を助手席に乗せて何処かに行く男が心底何を思っているなんて如何でもよかったし、其の儘帰ってこなくても良いのになぁとぼんやり思ってもいた。仕事をする事も却下され趣味もない私が誰も帰ってこない上お手伝いさんまでいる家に居てやる事などたかが知れている。気が遠くなるような長い時間の中で私は深く息をして目を閉じるだけなのだ。




「子供が出来ました」




その均衡を崩したのは例年より雨の降る梅雨時期の事だ。愛人と遊ぶだけ遊んで帰ってくると石田三成は私を抱く。手酷くなのか否かは私にはわからない。私の唯一がこの男である事は悲劇のような気がするし、逆に悦びと言うものを知らない方が良い事ではないかとも思い始めた矢先の話だった。夫婦だから避妊はしないのだろう。いつかは出来てしまうその命を眼前に突きつけてもいつもと変わらず勝手にしろと言うのだ。
産むな、という事なのか否か。解りかねる判断に悩まされるのはごめんだし、避妊すらしなかったのだから産めという事なのだろうと理解はしたもののその言葉は私の心の奥底に澱となって溜まっていった。





「勝手にすれば良い」






子供の病院は吉継さんが手配してくれた。養父も同様の彼は嬉しそうで誰が父親かわからないなぁと思う。養父も父母も吉継さんも皆悦び祝福する中で彼だけはその言葉を吐き続けた。その頃には「勝手にしろ」が肯定の意味ではないのかという仮説をたてたのだが、「勝手にしろ」と言った事が彼の意思に反していたら烈火のごとく怒ったのでそうでは無いとも知った。彼の勝手にしろは至極面倒な無関心なのだと心底思ったものだ。

そして恐ろしくもなったのだ。






『勝手にしろ。私に態々連絡してくるな』
「忙しい中申し訳ありません。」
『だから貴様は愚鈍と言うのだ。』
「はい」
『わかったら切るぞ!今忙しい』
「は、い」
『?』
「では」
『おい』
「?」
『泣いているのか?』
「…いえ」
『…貴様の様な愚鈍で感情の無い女が泣く事は無いな。子供の事は貴様が勝手に決めろ!大体、私の子か否かすらわからんのだ!いちいち私に聞くな』
「…」
『なんだ?』
「いえ…失礼します」






無機質な声は何よりも無慈悲で。私の憶測は当たっていたのだなと溜息を吐く。右手には一枚の紙。この結婚で父母は羽振りが良くなっただけで私の事など如何も思っていない事を痛感した。こと母は妹に良い大学と良い就職先。恋愛をして結婚しなさいね。恋愛結婚をした私たちは幸せよというのだ。私の前で平然と。父や妹がどれほど窘めてもそれは治りはしなかった。その程度なのだ。私は。体の良い道具。まさにそれなのだと思う。
この世に私の味方などいない。この子も。大事になんてしてもらえないだろう。私の可愛い子供。きっと愛人に子供でも出来たら蔑ろにされるだろう私の可哀想な子供。
そう考えるとつらくて泣きそうになる。ただ、泣いたところで何も変わりはしない。
結婚して3年。石女とも言われた。外れとも。養父の会長や吉継さんが居たら窘めてはくれるものの社長や夫は誰よりも辛辣だった。守ってくれる者などいはしない。父母すらそうだ。帰ってくるなと婚前に言われている。妹は来月から就職だ。…もう良いだろう。もう充分だろう。何より、私の心がもうもたない
机の上に封筒と指輪を置く。気づくのはきっと大分先だろうなとぼんやり思いながら私は鞄を持つのだった








勝手すぎる三成









あれから6年。私は小さな町に住んでいる。最初は臨月間近な女がふらりと現れたものだから訝しげに見られたものの慣れてしまえばみな良い人で子育てもいろいろ手伝ってくれている。



「母!」
「佐吉。おかえりなさい。保育園で琴ちゃんと遊んでたんじゃ無いの?」
「裏のおばさんが来て野菜を貰った。」
「あら!お礼言わないと。帰りに寄って帰ろうね」
「わかった!」
「あら!佐吉ちゃん来てたの?」
「こんにちは」
「すいません。保育所で遊んでたのですけど…」
「良いのよ!保育所の先生には言っておくわ。佐吉ちゃん。大野の婆ちゃまが会いたがってたわよ」
「行ってくる」
「手洗いうがいしてからよ」
「はい!」
「ふふふ。佐吉ちゃんもしっかりしてきたわね。」
「ここに来た時は首も座ってませんでしたから…何から何まで」
「本当はみんなの方が救われてるのよ。佐吉ちゃん位でしょ?ここに来て話聞いてあげてくれるの。みんな喜んでるのよ。」
「そう言ってもらえると助かります」
「あ!」
「?」
「そんな事より知ってる?今変質者が多いの」
「え?」
「保育園も明日から外遊び減らすようよ。佐吉ちゃんも気をつけないと。外に行く時は誰でも良いから大人を連れて行ってね。」
「はい」
「そろそろ上がる時間でしょ?気をつけてね」
「ありがとうございます。では、佐吉」
「あらら。大野の婆ちゃまが離さないわね」
「…母」
「構わないわ。主任。大野の婆ちゃまが気がすむまで私も何かしておきます」
「そう?悪いわね」





結局帰れたのは夕方で。佐吉曰く大野の婆ちゃまがおいしいお茶の入れ方を教えてくれているので聞いていたら時間を忘れてしまったと。少しシュンとした様が可愛いなぁと思いながら、構わないわというとホッとするのでますますもって可愛らしい。裏の山田さんにもお礼を行って帰路につく。今日は昨日作ったカレーかなと思いながら鍵を取り出す。
つい、と佐吉に裾を引っ張られる感覚に驚いて如何したのと尋ねると誰か来たと言われるのだ。




「誰か?」
「知らない人」
「?」
「ひひひ」
「っ?!」
「ようや見つけた、みつけた」
「よ、しつぐさん」
「母?」
「母?…ではこの子が?」
「誰かと勘違いなさっているのでしょう?帰ってください!」
「母?!如何した???」
「なんでも無いよ。さぁ。行きましょう」
「何がなんでもないだ!!!!」





その怒声を聞いて息が止まる。でもカタカタと震えるのだ。草食獣と肉食獣のそれを感じる。佐吉も困ったような顔をして大丈夫か?と言ってはくれるものの私としてはうなづくので精一杯だった








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明星 2

「何ですかい?貴方が花など持って。珍しい」
「やる」
「ふふふ。どんな風の吹き回しか。明日は雨かしら?」
「それは知らん…だが」
「?」
「お前を身請けしたい」
「…は?」
「聞いて欲しい。今度万騎長に昇格する」
「あら、其れはめでたい。ようございましたなぁ」
「…」
「ダリューン?」
「伯父上に頼むつもりだ。」
「何を」
「お前を身請けして嫁に貰う事だ」
「…」
「お前にも尋ねたい。私の妻になってはくれないか?」
「ふふふ」
「?」
「思えば、5年。妾の水揚げの相手は貴方でしたなぁ。」
「…ああ」
「色々ありました。良いこと悪いこと。この小さな窓から外を見ておりましたから…世間にはうとうございますが」
「?」
「王が代わり、人が変わりましたが…奴隷が万騎長の妾になっても妻になれた話は聞きませぬからねぇ。」
「何が言いたい」
「そこまで世は変わっておりませぬという事ですね。私が貴方の妾になっても妻にはなれませんよ。絶対に」
「!」
「大体、えお父上お母上はお許しになっておられないのでしょう?」
「其れは…だから今回の褒賞と合わせて」
「妾を嫁に?」
「ああ」
「うんと言うとお思いですか?大将軍閣下が?其れこそありえない話ですねぇ。そんな無茶苦茶な事を言うだなんて疲れているんですよ。ダリューン、今日は此れを持ってお帰りなさいな」
「お前は!少しは真面目に聞け!」
「貴方は真面目すぎるんですよ。水揚げの時も責任取るっておっしゃていたけど貴方が責任を感じる事なんて一つもありはしませんよ」
「責任でどうこう思っていない。私はお前のことが」
「妾は店のものでしてねぇ。どんな男でも良いんですよ」
「おい!」
「閨の話を間に受けないこと…っ!」
「お前は」
「痛い。手を離して」
「嘘をつくと私の顔を見ない」
「っ」
「嘘をつくな。お前がそんな女でない事は私がよく知っている」
「…」
「お前は私が守る。必ずだ。だから」



絆されそうになるのだ。この手を縋れば彼は言葉通り妾を守り続けるだろう。だけれどもそれは並大抵の話ではないし、何よりいつか疲れてしまうという事を妾は誰よりのも知っている。



縋ってはならないのだ。そう、約束したのだから




「わかりました」
「?!」
「貴方の妻になりましょう」
「本当か?」
「但し一つだけ条件があります」
「条件?…何だ?」
「貴方が騎士をお辞めになられるのなら。」
「?!」
「お辞めになって私と遠くに逃げるのなら。妾は貴方の妻になります」
「それ、は」
「それは?」
「…」
「無理でございましょう?」
「…」
「それを私が一番知ってますからねぇ」
「…っ」
「貴方が騎士をやめてどこかに逃げるほどの奇跡があるならば、妾が人並みの妻になれる奇跡が起きるかもしれませんが、ね。…ダリューン」
「何だ」
「お帰りなさいな。」
「また、来る」
「さてねぇ。耳半分で聞いておくよ」
「必ずだ」
「まぁ、奇跡が起きそうなら来ておくれ。…それまで達者にね」










雨がよく降っているなとナルサスは挨拶なしに入ってきて一言言う。何時も返せる軽口も返せないのだから訝しんでいる事だろうと思ったらそうではないらしい。彼が帰って直ぐに大将軍閣下がお出でになった。その付き添いで来た時気もしないのに教えてくるのでいささか面倒臭い。





「大将軍閣下に会うのか?」
「私が?会うわけないだろう?…ダリューンにしても貴方にしても本来似合わないところに来ている事を自覚しているのかい?」
「さてね。私は知らんが、ダリューンはそうだろうな」
「何を血迷ったのか。早く綺麗で良いとこのお嬢さんをもらうこったね。そうすれば」
「そんな簡単なやつだと思うか?」
「…思わないわねぇ」
「おい」
「かと言って今の状況で妾が人並みの妻になれると思うかい?」
「ダリューンなら」
「あの人ならさ。だけどいらぬ苦労をしなければならないものさ。」
「…」
「あの人にはそんな事させたくないしねぇ」
「おい」
「絶対に…」
「…」
「…」
「そうか」
「まぁ妾の小さな意地さね。」
「わかった」
「でもねぇ。あの人が騎士をやめて一緒に逃げてくれたら…」
「そんな事言ったのか?」
「それくらい言わないと諦めつかないだろう?案の定さね」
「酷な事をしたな」
「…まぁそれほどでもなかったという事ね」
「おい」
「それだけの話さね」













「姐さん!」
「ん…」
「おはよう!お客!」
「おちびちゃん。おはよう。もう少し静かに起こしておくれ」
「起きないだろう?…上着」
「はいはい…ふぁー…眠い」
「起きて起きて!お客さん」
「ん?ダリューン?」
「すまない…待つと言ったのだが…どうした?」
「いやねぇ。随分と歳がいったと思ったのよ」
「は?」
「さっき妾の夢に出てきてたのよ。若い時のあなたが」
「そうか」
「お茶を頂戴。ダリューンは?」
「もう良い」
「そう。おちびちゃんありがとう。物のついでに、ナージンに言って人払いをお願い。火急のようは別だけどね」
「はーい」
「さてと」




そう言って妾は席に着く。少し老けたダリューンが不服そうに座ってい思わず笑ってしまう



「どうしたの?」
「歳がいったとは失礼だと思っただけだ」
「ふふふ。そういうのなら妾の方ねえ。全部白髪になっちゃったもの」
「他は変わっていない」
「ありがとう。世辞でも」
「…」
「睨まないでよ」
「癖、のようなものだ」
「良い癖ではないねぇ」
「…」
「ダリューン?」
「あの時」
「?」
「伯父上に聞いた。会ったそうだな」
「昔の事は忘れたよ」
「…」
「殿下は?元気にされてる?」
「ああ」
「王都に帰れないからお寂しい事ね」
「なぁ」
「無理」
「何も言っていない」
「お手伝いもするわ。でも。傘下には入らない。」
「…」
「些かくどいわよ。歳がいってくどくなった?」
「あの時にそれがあったら違っていたかもな」
「変わらないわよ。」
「…」
「そういうものだもの」
「そうだな」
「奥方も出来たのでしょ?お子は?」
「まだだ。結婚すらしていない」
「嘘おっしゃいな。大将軍閣下直ぐに縁談を」
「断った」
「…」
「好きでもない女と同衾する気はない。」
「呆れた」
「言っていろ」
「そこまで思われた人は幸せね」
「そうか」
「誰?あの綺麗な人かい?」
「あの時と変わらない」
「…」
「お前だ。」
「…」
「何だ?」
「冗談」
「言うように見えるか?」
「いや…」
「私が勝手に思っている事だ。気にするな」
「…そうさね」
「ナーヒード」
「…久しぶりに呼ばれたから違和感があるわ」
「そうか」
「ダリュー…っん」
「まだ時は来ていないが…必ず迎えに来る。待っていろ」
「さてね」
「ナーヒード」
「気が向いたらねぇ」











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「また振られたのか?」
「煩い」
「まぁ今のままでは無理だろうしな。なんて?」
「いわん!」
「そんな事より手紙は」
「…」
「流石だな。そろそろ動くか」
「ダリューン」
「殿下」
「首領殿は息災であったか?」
「あちらも同じく殿下を心配しておりました」
「そうか」
「??」
「いつ迎えに行くのだ?」
「…」
「また振られたようですよ。」
「そうか」
「そうだな、クバードの名前を出してみるか」
「???」
「なぜクバードなのだ?」
「ふふふ。物は試しです。やってみましょうか」
「「?」」

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よね様

御閲覧、コメントありがとうございます。

三成の基本は鬱陶し位までの「ヒロイン好き」なのですが時折馬鹿な男の三成を書きたくなります。
いるのが当たり前という言葉ほど恐ろしい事はないのではないかと思う昨今。多少大丈夫がだんだん酷くなっていくんだろうな…とか。本人は普通なんですけどね。やられた方はある程度からやってらんねぇ!みたいな?
あと、きっと孫市姉様は来るもの拒まず去るもの追わずなのかと。執着が無くてどっちでもいいみたいな。だから悪女になんないと思う。三成押し付けられたらすごい顔していらないって平気で言いそうで怖い。そんなうちの姉様ですが一番人間性が悪い気がいましてきました。悪女の方が目的あるからいいのかもしれませんね。目的無く粉々にする女ほど恐ろしいものはないですね。

本当に9割以上三成しかいないのサイトに来て頂いてありがたくおもいます。時折現れる救いのない男を見に来てください。

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