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変換なしの雑食夢

ran

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哀れな三成

私は誰にも愛されないのと彼女は悲しそうに笑って、そして泣いた。
あれからは十数年間見つからなかった彼女はひょんなことから再会することができた。ライバル企業の事務員。其れももうやめるのだと彼女は言う。何故、と尋ねたところで答えてくれることはないだろう。その悲しそうな笑みを浮かべて有耶無耶にしてしまうだろうから。彼女はそういう所がある。言わないのだ。其れは私も同じかもしれない。私たちは若さで済まない程度に己のことを語らなかった。



「秘書の方が呼んでますよ」
「あ、ああ」
「ご出世したみたいで」
「ああ。」
「大谷さん達も元気そう」
「…」
「では、私も仕事に戻ります」
「おい」
「?」
「この後…昼食でも。いや、今日の晩空いていないか?」
「は?」
「ずっと探していた」
「…ふふ」
「おい」
「もう終わった話ですよ」
「終わってない!お前が一方的に」
「十数年前の話をしているのですか?石田社長」
「!」
「失礼致します。」
「まっ」
「?!」
「待ってくれ!話をして」
「私は誰にも愛されてないんです。だから」
「そんな事はない!私は」
「誰も愛さないことにしたんです」
「は?」
「本当に失礼致します。」
「ま、」




いくら呼び止めても、抱きしめても。彼女は私の両手からすり抜けていく。明確な拒絶に愕然としながら追いかけていく。その頬を伝う涙を拭う許可を私に得られるはずはないことを知っていたとしても、其れを無視する事はできない。
エレベーターホールでどうにか追いつき名前を呼ぶ。振り向いてすらくれない事実に心臓が引き裂かれる気がする。


あの美しい笑みを。幸せそうに、蕩けるほどの甘い笑みを浮かべたこいつをここまで傷つけて、粉々にしてしまったのはまちがいなく己なのだ。





「花」
「何かご用ですか?」
「すまなかった」
「?」
「あの時の私はどうにかしていたんだ。」
「…」
「私にはお前しかいない。私が結婚したいと願うのは」
「なら、早々に私のことを忘れて誰かと結婚したほうがいいですね」
「?!」
「…」
「は、な?」
「時間を無駄にお過ごし遊ばさないでくださいね」
「っ」
「話を!」
「何のですか?」
「私と!お前のだ!」
「ふふ」
「?!」
「私は誰も愛さない。…愛せない。愛したく無い。もう、構わないで」
「嫌だ!」
「一人で生きていくと決めましたから。本当に…あなたの事は私にとって終わったことです。」
「花」
「そんなに」
「?」
「そんなに大事なら…そんなに私が愛しいと思うのなら」
「思う!そは今でも変わらない!!!」
「何故、貴方は私を見つけてくれなかったの?」
「っ」
「何故貴方は私を裏切ったの?」
「それは…」
「愛するなんて都合のいい言葉。私を止めておくには十分すぎるほどに…でも貴方は私の事など愛してはいなかったのですよ」
「私を否定する気か?!」
「貴方が私を否定したのですから」
「…」
「本当に、失礼します」
「謝罪すら」
「?」
「謝罪すら。弁解すら。その機会を与えてはくれないのか?」
「私たちは大人ですから」
「…」
「謝って全て許される子供の時代は過ぎてしまったんですよ」









哀れな男











一人で生きると私は決めたのだ。失踪したとは大げさで、前から一緒に行こうと話して、ようやく取れた一緒の休みの日に合わせた旅行先で迎えを待ちながら、最初は薄っすらとそして確信を持って私はそう思ったのだ。
一人で生きていこう。有難いかな仕事につける資格は人並み以上にある。今の貯金を切り崩さずいけるだけの給与があれば、退職金を貰えなくてもなんとかなる。
6日間。その意思が強く明確になる程、彼が迎えに来るという希望は消えていった。どこに行こうか言う話も何もかも。彼にとっては記憶にすら残らない事だったのだろう。彼の言った「何もしても側にいる女」きっと「何もしてもいい都合のいい女」だったに違い無い。
きっと雑賀さんと仲良くしてきいる事だろう。連絡すら無い彼を見ると都合のいい女は用済みになったようだ。




帰ったらまず、携帯電話を解約して家も引っ越そう。
憧れの東京暮らしは恐ろしく惨めなまま終わりを告げそうだ。
憧れは憧れのままのほうが良かったのかもしれない。





東京も、三成さんも。





どこに住もうか。一人で生きていくのは東京の方がいいのかもしれない。憧れでは無い地に足をつけて住めばこんな気持ちにならずに済むだろう。
猫を飼おうか。…いや、それこそ猫にまで見捨てられたら私は生きていけない。
最低限。生きているのに必要なものだけ持って私は生きるよう。そう、すば何も辛くは無いのだから。
失う辛さ、得れない辛さ。…裏切られる辛さを感じ無いためなら私は何もいりはしない

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勝手過ぎる三成 10

「花」
「あら、綺麗ですね」
「土産だ」
「え?」
「受け取れ」
「ありがとうございます」
「…」
「石田さん?」
「あれは?」
「え?ああ。佐吉はお隣様に行ってます」
「刑部の所か?」
「本当に仲が良くて」
「…何か不便な所はないか?」
「特には…でも」
「?」
「何も思い出せないのが申し訳ないです」
「…それは」
「あ、すいません。立ち話で話すことではありませんね。…お茶でも?」
「いや、いい」
「お食事の時に。今日は寒いですからシチューにしますね」
「ああ」
「石田さん」
「?」
「お花、ありがとうございます」
「…気に入らなければ言ってくれ」
「いいえ。ですけど」
「?」
「私なんかに送らなくても良い人に贈ってくださいね」
「…」
「石田さん?」
「今は、私が選んでいる」
「はぁ」
「お前に似合うものをと。だから…他の奴には贈りはしない」
「!」
「失礼した。また、後で」
「え、あ。…また後で」






退院した後、私はマンショに移り住んだ。ただ、ワンフロアーがこの人たちの持ち物らしくその一部屋をお借りしているので恐縮するばかりなのだ。東京に来て半年。何も思い出せない私にここまでよくしてくださる理由を聞いても教えてはくれなかった
ただ、すべき関係なのだとだけ大谷さんは言う。気にしなくてもいいと言われてもきっと想像もできないほどの生活費がかかっているだろう。食費も何もかも。気にしなくていいと言われ週末には買い物に連れて行かれる。有難くもあり息苦しさを感じた時に大谷さんに食事の準備をして欲しいと頼まれた。掃除に洗濯。それを仕事として受けてくれれば少しでも気紛らわしにならぬか?という心遣いを私は二つ返事で了承したのだ。



その頃から。石田さんは定期的に花を買ってきてくれるようになった。食卓を彩る花は思った以上に可愛らしい花が多い。少し笑いながら花瓶にさす。きっと佐吉が嫌な顔をするだろうな。大谷さんとは仲がいいものの石田さんとは頗る仲が悪い。それも一方的なのだからひどい話なのだけど。



「只今」
「お帰りなさい」
「また、あのもやしが来たのか?!」
「ふふふ。可愛い花でしょ?」
「…ものには罪がない」
「佐吉らしくて好きよ」
「母は今の暮らし楽しいか?」
「?」
「…」
「佐吉は?辛い?」
「辛くは、ない。唯、母が心配だ」
「ありがとう」
「…」
「佐吉」
「?」
「母はもう少ししたら此処を出て行こうと思います」
「え?」
「こんなに良くして頂いていますけどやっぱり変だわ」
「変?」
「何の所縁の無いの。其れに」
「母」
「此処には居てはならない気がするの」
「…」
「すぐというわけでは無いわ。大谷さんはとても仲良しでしょ?嫌なら」
「刑部は好きだが母の方が好きだ。母は忘れているけど利用しようと言ったのは私だ」
「まぁ」
「用が済んだら出ていけばいい」
「…佐吉」
「だけど私を捨てるのは許さない。絶対に」
「絶対に捨てないわ。」
「母」
「どんなに記憶を辿っても他の事は思い出せないのに貴方の事は忘れられないの。母にとって貴方以上に大切な人は居ないのよ」
「ん」
「さてと…あら?」
「?」
「石田さんの忘れ物?」
「は?」
「封筒。さっきいらっしゃった時に忘れたのね」
「後で渡せばいい」
「だって…豊臣?」
「母?」
「…え?!ああ。ごめんなさい。お仕事のものでしょ?届けてくるわ。お困りになったらいけないでしょ?」
「私が行く」
「そう?なら一緒に行きましょう?」
「母」
「洗濯物もお届けしないといけないし。帰り、大谷さんの部屋にも持って行きましょうね」
「…ああ」






勝手過ぎる三成 10






チャイムを押す。合鍵は頂いているものの使う時間はお伝えしているから其れ以外は基本チャイムを鳴らして開けてもらう。大谷さんは開けしゃれと言って私が開けなくてはならないことが多いもののの石田さんは其れが無い。いつも静かに扉が開いて私の名前を呼ぶのだ。其れが何故だか焦燥感にかられる




「開かないね」
「居ないのだろう」
「そう、みたい」
「刑部に預ければいい」
「食事の時に渡してもいいわね。さあ、大谷さんの所に」





そう言って踵を返そうとした瞬間のそりと石田さんが現れる。
ぎょっとした。




「石田さん?」
「すまない助かった」
「ちょっと待ってください」
「?」
「失礼します」
「な?!」
「母?」
「ひどい熱。さっきは気づきませんでしたけど…佐吉。大谷さんを呼んできて」
「ああ」
「石田さん、体温計は?熱は」
「…」
「薬は」
「…」
「確かにありそうに無い部屋でしたけど…来てください」
「な?!」
「やれ、如何した」
「何でこいつと手をつないでいるんだ?!」
「佐吉も後ろから押して」
「…嫌だ」
「なら大谷さんを連れてきて」
「ひひひ。やれ行こうか」
「…」
「むすりとならしゃるな。今誰よりも困惑しているのは三成よ」
「もやしの分際で!!!」
「佐吉!」
「ぐ…」
「ソファに座っていてください。」
「あ、ああ」
「体温計を渡して」
「使え」
「…」
「何度でした?」
「38.9とあるなぁ…我から連絡しておく。医者の手配もよ。」
「部屋に暖房入れてきますから。これ取り敢えず飲んで。」
「あ、ああ」
「ここで寝さすのか?!」
「え?!ああ。そうか。彼方の方が良いですか?看病してくださる方がいるなら」
「居ない」
「ひひひ。佐吉よ、我からも頼む。」
「…」
「佐吉は我と歴代大河でも見ようなぁ」
「?!」
「大谷さんもお泊りになりますか?佐吉の部屋にお布団引いて」
「やれ、其れは良い」
「刑部は良い!だが」
「佐吉」
「…変なことを母にするなよ!」
「?」
「するか。この阿保が」
「何を!」
「こ、こら」
「ひひひ。男同士はこんな物よ。」
「…石田さん。お部屋に行きますか?」
「…」
「ソファで寝てても良いですよ」
「そう、する」
「意外と寂しいですものね。」
「…」
「おかゆか何か作ります。其れまで寝ていてくださいね」
「…すまない、幸」
「!」
「す、すまない。頼んだ」
「え?!あー…寝ちゃった」

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大谷兄妹と三成と私 12

前ふりが欲しかった。



「やれ」
「吉継さん?」
「聞こえておったか?」
「一、応」
「さようか」
「…」
「もう一度言う。我は主に結婚を前提に交際を申し込んでいる」
「え?!」
「何が不服でも?」
「急すぎて…」
「何度か匂わしたが」
「え?!えー…あう」
「主は判らぬようでな。致し方ない」
「…」
「ひひひ。やれ困った」
「?」
「その様に辛い顔をされるとは思わなんだ」
「これ、は!」
「…やれ忘れしゃれ。今まで通り春のためだけにいてくれれば良い。無理なら通いで」
「違うってば!聞いて!」
「何を」
「困惑!耳から水状態なので!」
「ひひひ」
「私の中では前振りなかったの!…もう!」
「断るならとっとといたせ」
「?」
「そうなると思うておるゆえ安心致せ」
「はぁ?」
「…」
「あのね!私本当に男運ないの!周りはシスコンこじらせた兄妹ばっかだし!主夫とかさ!信奉者とか!!!」
「まぁなぁ」
「恋人は…DV男だし。」
「それは聞きたくないが、聞いた」
「だから!」
「二の足を踏むか?」
「そうなの!」
「押せば転がってくるか…ふむ」
「…ん?」
「左様か」
「ちょっ?!吉継さん!今怖いこと言ってない?!」
「安心致せ。」
「聞いて!」
「端的に言えば主に捻り殺されても我に無理よ」
「何その言い分!」
「我は病弱故…ひひひ」
「う…それは否定出来ない」
「何よりなぁ。我は主が笑っているのが好きなのであって泣いているところに快感を覚える性壁など持ち合わせておらん」
「おお?!」
「今までの男がどうか知らぬが我は主を大切にすると誓えるし苦労もさせん。主に災いするものなれば悉く塵に」
「怖い!」
「ひひひ。故に安心して我のものにならしゃれ」
「…」
「何ぞ?」
「いや…意外と私のこと好きなのかなぁと」
「…心外よ」
「うひひ」
「笑うな」
「だって」
「とっとと転がってこりゃれ」
「ふひひ」
「春の義姉になれる特典付きよ」
「何そのご褒美!」
「結婚式には親族席よ…あれには母がおらぬから主への手紙を読んでくれよう」
「うぉぉぉぉぉ!まだ許しません!」
「鼻血を止めしゃれ。どうよ」
「…」
「?」
「意外と破れかぶれ?」
「捨て鉢よ!」
「えー?」
「?」
「そんなにいい女ではない気が」
「良い女よ」
「?!」
「我にとって主は唯一無二の良い女よ」
「うへ…」
「変な声を出すでない」
「だって」
「?」
「そんなこと言われたの初めてで」
「なれば今までの男が節穴なのよ。秋」
「は、はい!」
「返事」
「…嫌になったら嫌って言ってくださいよ!」
「嫌になるか」
「だって」
「自信をもたしゃれ。主は我が見初めた女よ」
「っ!」
「秋」
「よろしく、お願いします」
「ひひひ」








ということがありまして婚約者になりました。あんまり変わんないけどさ!そう言って三成さんに攻撃を加える。恥ずかしいのかと揶揄う彼奴が悪いのだ。さやかさんに至っては煽ってくるだけだし。流石、三成さんのお嫁さん。弱点を知り尽くしている!





「にしてもだ」
「何をのんきに言っている!この馬鹿女を止めろ!」
「私は身重でな。何かあったらよろしくないのだ。」
「抑三成さんが揶揄うからでしょ!」
「ひひひ。やれ、秋。落ち着きゃれ」
「無理!」
「春」
「秋姉様!頑張って!」
「春?!」
「ふははは!ついに私も姉様呼び!」
「ぐ…」
「兄妹のようだな」
「左様よなぁ。」
「秋姉様が来て家が明るくなりました。さやか姉様が来てもっと!ね!兄様」
「これからは益々騒がしくなろう。やれ、秋。プロレス技はやめよ。いくら三成でもそれは痛い」
「ふふふ。秋の照れ隠しは痛そうだな」
「秋ぃ!きさまぁ!」
「揶揄うからだ。鴉め」
「ぐ…」
「さやかさーん!」
「ふふふ。確かに良い嫁になりそうだな」
「そうであろう?」
「私も!」
「何これ?!幸せ!!!両手に花!!!」
「…これがなければの話だ!」
「そこもまた愛いのよ」
「意外とベタ惚れだな」
「でなければ欲しがらぬよ」
「まぁ。そうだな」





大谷兄妹と三成と私 12







「そう言えばおめでとう」
「?」
「ん?」
「何の話?」
「言っていないのか?」
「失念しておった」
「それどころではなさそうだったからな」
「何の話?」
「これを見ろ」
「七起き賞?あの有名な賞でしょ?如何したの?」
「受賞者のところだ」
「ん?『大谷刑部』…?」
「秋?」
「え?!は??!えー!!!」
「本当に知らなかったのか」
「知らな?!えー!!!」
「いいリアクションだな」
「だ、えー!!!?」
「別にとったからとてかわりはせぬよ」
「そうだけど」
「ん?」
「おめでとうは言いたかったです」
「すまぬすまぬ。実際それどころではなくてな」
「?」
「秋を嫁にする方に神経が入っていたのだから仕方がないだろ!刑部が珍しく思案していたのだからな!貴様が鈍感すぎなのがてなんだ?刑部?」
「烏め…」
「本当のことだろう。なぁ春」
「それをあえて言わない兄上の美学を…」
「ひひひ」
「吉継さん」
「いや、何。…ひひひ」
「今度は教えてください」
「ん」
「おめでとうございます」
「ありがとう」
「授賞式は如何する気だ?」
「暗に行かす。我はああいう所は好きではない」
「そういうものか」
「じゃあ!お祝い会!」
「あいあい」
「春はお花作ります」
「っ!天使!花園!」
「まだ天国に行くのは早かろう。落ち着きゃれ」
「へい!」
「秋…」
「いや、だって」
「ひひひ。」

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大谷兄妹と三成と私 11

「吉継さん」
「ん?」
「電話機外れておりますが…何?おまじない?」
「朝からちとうるさいのよ。」
「あっちの仕事用携帯もひどいことになってますが」
「我の眠りを邪魔するからよ」
「真っ二つ…データーは?」
「こちはいらぬものばかりよ」
「こっちのスマホは無音になってる…何したの?」
「ひひひ」
「?」
「もし闇が来たら嘘をつこう。追いだせ」
「えー?」
「良いな」
「ふぁい」



大福のようよなとふにふにとほっぺたを引っ張ると面白い顔をする。そのついでに外出禁止令を出すとえー!と叫ぶもののPCがあれば良いとのことを伝えればぐずぐずし始める。2.3日のことなので若干不服ながら頷くので危険故春も休ませておると言えば春が嬉しそうに抱きつくので興味はそれたらしい。相変わらず仲の良いことよとひひひっと笑うとウフフと笑う。たわいのない時間を過ごしながら秋がふと時計をみた。






「もうこんな時間」
「ほんにな。」
「今日の昼は何にしようかなーと」
「ここで少し仕事をする。何かあったらよばしゃれ」
「はーい」
「…」
「…」
「春?」
「行きました!」
「左様か。」
「良いんですか?」
「良い良い。もう少し内緒にしたい」
「でも明後日には決まるんでしょ?」
「ああ。その時に言うつもりよ」
「姉様になりそう?」
「さあなあ」
「兄様のことだから策があるのでしょ?」
「ひひひ」
「?」
「主にも秘密よ」
「酷い!」
「我とて自信がないのよな」
「そうなのですか?」
「当たり前よ。このような姿の男に添いたい奴がどこにおる。おぞましい顔を好む女子はおらぬよ。しかも賢人が障害になってしもうたしなぁ。…勝算は低かろうから姑息なことも考えてしまうわ。それでももし駄目なら我はどこぞに逃げる」
「えー」
「どの顔をしておれば良い?1年逃げる」
「…」
「主は秋とおりゃれ。生活費と給与はとどこおらせぬからな」
「はい!」
「…」
「?」
「来ぬのか?」
「行きません」
「…さようか」
「だって私は秋お姉ちゃんが良いんだもの」
「?」
「ここで一緒にいられれば邪魔者を排除できます!」
「ようできた妹よなぁ」




というとガンガンいう音がする。きっと暗だろうが無視しておく。
すると案の定で最終秋に喧しいと追い立てられてしまったらしい。あの一件より警戒が増したのは良いことだが若干強くなりすぎてきたなぁと思う。まぁそれはアレらしいのだろう。ふふふと笑いながら物を暗に投げつける我が妹とは違って強く美しい。

なぜこんな気持ちを抱いたのか。あれが馬鹿なくせに聡明で、雑なくせに優しく、我に、二心なく笑いかけてくるからだろう。


言葉にすれば色々あるだろうがそれすら無駄なことのように思えてするのはアレが恐ろしく自然に我らのそばに居ついたからだろう。




ごはんできましたよーと呑気な声が聞こえてくる。それが聞き続けるために通る道は相反することも起きる道だ。




「煩いから退治してましたけど」
「ん?」
「兄様、いつもこんなに美味しい昼食なのですか?」
「左様よ」
「秋お姉ちゃんおかわり!」
「聞きました?!吉継さん!美味しいって」
「いつも言っておるよ。…おかわり」
「炊き込み御飯するとお米すぐになくなっちゃいますね。私のもつけてこよう」
「美味しい!」
「今日の三成さんの夜食はそれで焼きおにぎり茶漬けにしよう」
「「?!」」
「おやつそれにする?」
「うん!」
「我は三成と食べる」
「はーい。」
「秋お姉ちゃん」
「ん?」
「大好き」
「私もー!!」
「やれ食事中よ」
「吉継さんも好きですよ」
「…ん」




その言葉が我と同じ意味ならどれほど良いか。






大谷兄妹と三成と私 11





「帰った」
「お帰りなさい!」
「あーお帰り。ありゃ?さやかさんは?」
「仕事が押した。お前に会いたがっていたからな。悔しがっていたぞ」
「そっか」
「明日弁当を二つ作ってくれるか?」
「?」
「さやかに会うからな。最近まともに食べていないらしい」
「そりゃいけませんぜ!作るって言っておいて」
「助かる」
「三成兄様、これは何?」
「さやかから二人にだ。」
「ケーキだ!」
「あらま。申し訳ない。」
「夕餉を食べたあとこれが食べたかったらしい。このあいだの紅茶が気に入ったらしくてな」
「あらま〜。ぎりぎりしてるのが目に浮かぶわ。ちょっと待ってね。食事の支度するわ」
「ああ頼む」





そう言って踵を返すとひょこりと吉継さんが部屋から顔を出してくる。はよ持ってこりゃれ。というところを見ると美味しいところらしい。先に三成さんの食事を温めて、薬缶に火をかける。




「三成さんのお土産」
「なれば夕餉ののちともにいただこう」
「はー…ん?」
「如何した?」
「…」
「?」
「三成さん!何処!!!」
「ひ?」
「こっち来い!」
「や、やれ」
「何だ騒々しい」
「ととととととととととととととと」
「貴様、鳥になったつもりか?」
「ちが!…落ち着いてくださいね!」
「?」
「やれ、秋。落ち着きゃれ」
「だってぇ」
「?!」
「なぜ泣き始める?」
「…三成。」
「何もしていない!」
「取り敢えず!そこ座って!雑賀さんに電話する支度!」
「?」
「これ!」
「何だ?このちゃちな写真用…っ!何をする!!!」
「馬鹿!酷い父親!!!馬鹿三成!!!」
「何が馬鹿だ!この馬鹿女!腹が減った!はやく!」
「目出度い!そういうことか!」
「そ!さすが吉継さん!」
「何々?」
「春ちゃん!明日はお赤飯よ」
「だから!」
「この!おめでとう!」
「秋!」
「やれ、ぬしも父親になるのよ」
「えー!赤ちゃん!」





「…」






「電話!電話して!!!(吉継さん動画準備!)」
「落ち着きゃれ。(あいあい)」
「おめでとう!」
「あ、ああ……もしもし。さやかか?ああ。今、確認した。…ん。ああ。当たり前だ。私とお前の子だ。嬉しいに決まっている。…ん。泣くな。明日、雑賀殿に挨拶に行く。あ?馬鹿を言うな。きちんとお前を嫁にもらう許可をもらいに行くだけだ。ああ。吉継はニヤニヤしている。秋か?春と飛び跳ねて喜んでいる。…心配するな。皆喜んでくれている。ああ。今から迎えに行く。当たり前だ。そこにいろ。ではな…」
「なんて?」
「三ヶ月だ」
「ひゃー!」
「迎えに行ってくる」
「やれ、タクシーを呼ぶ」
「構わん」
「事故にあったら大変よ」
「だが…」
「あの車(スポーツカー)に乗せて大丈夫?」
「もしもし。はい。一台。一番上手な人で!」
「春!」
「すぐ来るから。急いで!」
「ああ」
「…やれ」
「刑部?」
「良かったなぁ。…しあわせにならしゃれ」
「!ああ」

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大谷兄妹と三成と私 10

「おい」
「何?」
「刑部が落ち込んでいるが…何をした?」
「え?!何もしてないけど…毛糸買ってもらったくらい?」
「毛糸?」
「¥1000位だったけどやっぱり買いたくなかったのかな?」
「高々¥1000であの刑部が落ち込むか!高給取りだぞ。大体その内我が社に帰ってくる予定だ。」
「我が社?」
「私が勤めている会社だ。豊臣商事。彼奴は私の補佐だ」
「…そうなの?」
「そうだ!そして秀吉様と半兵衛様の為に」
「?!」
「如何した?椅子からころげ落ちて」
「はははははははははんべえ?!」
「貴様!半兵衛様を呼び捨てするとは!」
「竹中、半兵衛!?」
「一度ならず二度までも!」
「?!???!!??!」
「お、おい」
「…」
「何荷物を纏め始めている?!」
「実家に」
「長曾我部が如何した?」
「実家に帰らせていただきます!」
「は?!」
「でわ!」
「お、おい!!!ま、」
「離して!きゃー!!」
「叫ぶな!」
「やれ如何した?…三成。」
「何だ!」
「やれ、それは我のと言うたはずよの」
「馬鹿を言うな!私にはさやかがいる!そんな事よりだ!」
「ん?」
「離して!」
「…何ぞ、その荷物は?」
「実家に帰る!」
「…は?」
「離してってば。」
「離せるか!おい刑部!」
「やれ、秋よ」
「っ」
「ひひひ」
「…やだ」
「何をそんなに怯えてる?安心致せ。怖いものは何も無い」
「よし、つぐさん?」
「なかしゃるな…ほれ、こちにこりゃれ」
「う…」
「秋」
「うわーーーーん!」
「うぐっ…飛びつかりゃるな」
「吉継さんー!!!」
「やれ、落ち着きゃれ。」
「猛獣使いだな」
「ひひひ。可愛らしい猛獣よな…やれ、秋。主は我らが嫌にならしゃったか?」
「ちがう…ううう」
「なら此処におりゃれ。我とてぬしが居らぬのは好かぬ」
「吉継さん…」
「急に如何した?」
「半兵衛様の話をしたら急にだ」
「賢人の?」
「…」
「そう怯えるな。」
「だって…」
「賢人が如何した?」
「…にいちゃんに聞いてください…」
「顔が真っ青よ。ひひひ。少し横になりゃれ。三成」
「出前を取ればくるだろう。」
「…吉継さん」
「ん?昼食は安心致せ。主は食べれるか?」
「うんん。」
「ちと食べぬとならぬよ」
「ん…」
「手でも繋ぐか?為れば寂しゅうないな。」
「吉継さぁん」
「ひひひ。よしよし。安心致せ。我がおるからなあ。」







「で如何いうわけよ!」
「あー…それなら吉良の所為だな。昔家庭教師させてたんだよ」
「?!」
「吉良と同卒でよー。そんとき秋の成績落ちてたから。まぁ吉良が自分で教えても良いんだろうけど甘いだろ?だからってな。其れまで成績真ん中くらいだったのが主席になったくらいだぜ」
「其れなのになぜあんなに怯える?あの能天気な女がだぞ」
「まー有り体に言えばトラウマだな。うまいか春」
「はい」
「よっし!良い子だ」
「…やれ。トラウマとは?まさか?!」
「変な関係じゃねぇって。かてきょうでそういう関係なら俺が許さん!…純粋に勉強でだ」
「?」
「問題間違えるだろ?宿題がでるんだよ。10倍…とか言ってたか?週三来てたからよ。10冊なんて出来るわけねぇじゃん。」
「は?」
「手製と言えば良いのかね?20枚のプリントを一冊にしてたっけか?テストで間違えりゃならこーんな束だぜ?可哀想でよ。吉良にも言ったんだけど今勉強させないと馬鹿になるって言われたらなんともな。俺も人のこと言えねぇし。良いところに入って選択肢を広げてやりてぇっていう吉良の気持ちも分かるしな」
「といってその量如何してこなしておった?」
「あとから知った話2時間睡眠はざらだったらしいな。うちのチビどもの面倒みてそれだろ?あいつもぜってぇ弱音いいやがらねぇし」
「愚かな!よう止めなんだな!」
「彼奴も意地になって。2年続けたんだけどな、最後に高熱出して10日入院してな。二人とも即呼び出されて毛利に絞られてたぜ。まぁ大学生以上のところまでさせてたみたいだからよ。そのあと主席でい続けたけど。竹中も加減がわからなかったんだろ?ぶっ倒れたとき彼奴らしくないけどすげぇ謝ってて。其れ以来目の前に現れてねぇもんな。此処にいるのも彼奴知ってるから来ないだろ?」
「そうよな」
「今度半兵衛様にお伺いしてみ…春?どこに電話している?」
「やれ春?」
「もしもし。はい。春です。今、秋お姉ちゃんにひどいことをしたと聞きました」
「「?!」」
「え?それは言い訳ですよね。…見苦しいです。私半兵衛様が嫌いになりました。もしこれで兄様お嫁さんにならなかったら一生恨みます。ええ。半兵衛様なんて大嫌い!」
「春ーーー!」
「お前?!何て事を!」
「秋お姉ちゃんをいじめる奴は万死あるのみです!」
「ははは。吉良に言っとくわ」
「やれ、頼む。…春」
「謝りませんよ」
「いや…秋が聞いたら喜ぼう」
「手紙書きます!私がお守りしますって」
「ひひひ」
「ちっちぇーナイト様だな」








大谷兄妹と三成と私 10







「駄目、目眩がしそう」
「さようか」
「春ちゃんが私のためにあの極悪男に…!!!」
「そこまで嫌いか?」
「歯医者みたいなものですけどね」
「なんとのう、わかる」
「にしても…」
「ん?」
「春ちゃん」
「ひひひ。ほんに春に好かれておるなあ」
「本当?!」
「ああ」
「ふふふ」
「…なぁ」
「はい?」
「秋」
「何ですか?」
「…」
「?」
「…」
「…」
「…秀吉公は知っているか?」
「豊臣さんはすごく良い人です!」
「左様か」
「?」
「…」
「?!」
「違う」
「なにも思ってませんよ」
「嘘つきはいかぬな。あれを崇拝しておるのは三成よ」
「部屋の掃除したら豊臣さんのポスターが貼られてましたから…さやかさん可哀想」
「彼奴は彼奴で雑賀の当主のオタクよ。似た者似た者」
「へー…」

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