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変換なしの雑食夢

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十二国

「まぁ、彼女が貴方に愛想尽かさないほうが奇跡に近いですからね」
「お前、自分の主に言う台詞か?」
「有体で申せば反省せずに同じ轍を踏む馬鹿と申しましょうか」
「…」
「御反論でも?」
「言えぬから悔しいのだ」
「今回は何を申されたのです?五十年前は出て行くとおっしゃりましたが今回は?」
「…すべりだ」
「はっきり申しませ」
「褥すべりだ!!!」
「…」
「なんだその顔」
「其れに近しい状態ではありませんか。何を今更」
「…どういう意味だ」
「其の儘ですよ。良くて一月悪くて半年。帰ってきて溜まった執務で忙しいですからね。同衾などしておらんでしょう。」
「誰のせいだ!帰ってきた早々括り付けられて執務させられるのだぞ、お前に!」
「ご自身の出奔癖を呪いなさい。」
「…」
「貴方の出奔癖は只の悪癖ではなく万民皆健やかであるのを知りたい為だからお許しいたしましょう」
「あいつか」
「如何にも。六官以下皆王は彼女のほうだと思いましたよ。」
「…」
「貴方がいない間官位のない彼女がいかに大変か。人格と品位のみで百官と渡り合っているのですから。その上、出奔後の貴方達の心配及び采配までしているのですから頭が上がりませんよ、実際」
「解っているがな」
「無冠無給で労しい限りですね」

ことりと置かれたお茶を忌々しく見る。仕事の合間の小言の中では過去に例を見ぬ手厳しさだと。

「それと」
「ん?」
「貴方が女を抱く粗さは如何なものか。彼女の様な華奢な女性には実際相手は不可能で御座いましょう」
「馬鹿かお前は」
「あれは俺の唯一の女だ。他のものと同じ様に扱うわけなかろう」
「はぁ?」
「食い散らかせるか?あれを」
「…」
「如何した?」
「貴方が大うつけ者と言うことを忘れておりました。」



如何いう意味だと尋ねると嫌な笑みを浮かべられる。


「自分を抱かずに他の女ばかり抱いていたら誰だって飽きられなのだろうと思うでしょう」
「?」
「時折彼女も聞いているはずですよ」
「何をだ」
「貴方が女を如何にして抱くのかを」
「…」
「風漢殿は些か女受けがよろしい上金払いが良いから女将は横の部屋に通すのですよ」
「それは…だが」
「何より」
「?」
「致命的に下手なのですよ彼女」
「何がだ」
「人に甘えることが」
「!」
「今回も思案してのことでしょうけど」


名を呼ぶと今日だけですよと返ってくる。彼女がいなくなると官が困るのですという言葉を聞いて走り出す。
きっと彼女は部屋にいるのだろう。そう思いながらかけていくのだった


寄り添いたい風

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十二国

「…」
「ん?」
「主上?」
「夢ではないぞ」
「の、様でございます」


目を覚ましたら主上がいて思わず固まってしまった。すると面白い玩具を手にした赤子の様に屈託無く笑うものだからこちらが困ってしまう。

「何を驚く」
「いえ」
「昨晩帰ってきたら寝ぼけていたな」
「お恥ずかしい限りです」
「ん?」
「急な御帰還如何致しました?」
「当分玉座を温める」
「…」
「なんだ?」
「いえ」
「如何やらお前の俺に対する信用は地の底らしいな」
「そう言うわけではありませんが」


そう言って寝台から抜け出そうとすると腕を掴まれる。どきりとする。この方の体温自体を感じるのすら久し振りなのだから

「また痩せたか?」
「?」
「手首が細いな」
「貴方様に比べたら」
「いや…」
「誰とお比べですの?」
「…昔のお前だ」
「…」



痩せたなと小さな声で言われるものだから居た堪れない。


「もう少し食べろ」
「余り食べたくないのです」
「幾ら死なぬと雖も動けなくなる」
「私のことよりも」
「今はお前の話だ」
「主上」
「延王としてお前を筆頭とするわけにはいかぬが俺個人としてはお前が一番大切だ。」
「…」
「何故額に手をやる?」
「いえ、お熱があるのかと」
「お前なあ」
「無理をなさらずともよろしいのでございますよ」
「無理なことあるか」
「主上」
「俺は」
「?」
「お前を娶ってよりどれだけ無理をさせてしまったのだろうな」
「…」
「此処まで痩せるのに気が付かなかった自分に愛想が尽きる」
「主上」
「なんだ?」
「お褥を」
「ん?」
「下がらせてくださいませ」
「…」
「愛妾をおつくりくださいませ。私には」
「それ以上言うな」
「貴方のお相手が出来かねまする」
「言うな!!!」
「っ」
「…すまぬ」
「いえ」




そういって主上がベットから抜け出す。そして少し悲しそうな顔をして名を呼ばれる


「朝議の時間だ」
「主上?」
「少し休め」
「…」


また後でくる。そういって立ち去られるのだ



孤独な野薔薇

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十二国

「初めまして」
「初めまして。この様な姿で申し訳ありませぬ。泰王陛下、泰台輔。」
「その呼び名は。貴方様にいわれると」
「ふふふ。ですがもう王で御座いましょう?」
「…」
「驍宗様。お顔が怖いですわ」
「からかわないで下さい。延王妃殿下」

ふふふと笑って泰台輔と景台輔をみる。困った様な顔をしてこちらを見るものだから苦笑しか出ない。首尾は?と尋ねることはないだろう。六太と声をかければにたりと笑うところを見ると成功したものの無茶をなさったのだろう


「主上」
「言うな」
「言わせないで下さいませ。何をしたのです?」
「叩頭礼を」
「しかも無理やりだぜ」
「主上!」
「だがよくわかっただろう?」
「ですがあの様な真似を!」
「景台輔。僕は大丈夫です」
「だけどよ」
「主上、あれ程無体はなりませぬと。」
「だがな」
「貴方様の才覚も性分も知っておりますが…それについて行けるのも延の者だけなのですよ」
「わかっている。まぁ落ち着け」
「延王妃殿下。私がお願いしたことです。落ち着いて」
「泰台輔?気分は大丈夫ですか?お苦しい所などありませぬか?」
「はい。」
「泰の白様も申し訳ありませぬ」
『いえ』
「もういいだろう。休め。」
「主上」
「無事に収まった。特に泰はお前が気に掛けていたからな。」
「はい」
「無理が祟らぬ間に少し休め。出ないと本当に大変なことになるぞ」
「…」
「わかったな」
「はい」



そう言って私は寝台に身を沈める。すると泰台輔が優しく手を握ってくださるので私はびっくりしながら泰台輔とよぶ。あどけない笑みを浮かべてこちらを見る。

「昔」
「はい」
「熱が出ていたとき寂しかったのです」
「はい」
「寝るまで手を繋いでいてよろしいでしょうか?」
「泰台輔が大変ではありませんか?」
「はい。延王妃殿下は?」
「私は嬉しく思いますよ」
「嵩里」
「驍宗様?」
「よろしいのですか?」
「貴方様が良いと仰って頂けるのなら」
「それは無論」
「本当に慈悲に満ちた良いお子です。泰も良い麒麟を迎えられましたな」
「んなこと言うなよ。俺だって」
「六太」
「あのな。チビ。こいつは俺の母ちゃんなんだからな」
「六太」
「…なんだよ」
「私の左手が寂しがっているわ」
「!!!」
「仲良くなさい。貴方は私の可愛い悪さなのですから」


そう言うといつの間にか左手をとって歌を歌っている。景台輔は微笑んでいる。

「この人たらしが」
「あら酷いわ」
「何が酷い者か。夫を差し置いて」
「可愛いお子に囲まれて私は幸せですわ」
「の様だな」
「主上?」
「泰王と話がある。」
「あちらに部屋を用意しています」
「すまぬな。…寝ていろ」
「はい。っ。主上?!」
「接吻は夫の特権だ」
「…破廉恥なことをなさいますな」
「可愛いことを言うな。では」
「良いお話し合いになります様に」
「はい」


そう言って背中を見届けるとふにゃふにゃと溶けていく意思を感じるた。不意に見た泰台輔がお優しく笑われているのを見て一安心をして私は意識を手放すのだ



微睡みと接吻

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十二国

目を覚ますと大宗伯様がいた。
凄く驚いた顔をなさるものだから思わず大宗伯様と言おうとしたものの声が酷い声で逆に驚いてしまう。
途端に酷い眩暈と吐き気だ。かたりと立った大宗伯様が女官を呼びつけながら私の背中をさするのだ。

「大丈夫ですか?」
「私は?」
「覚えておいでにならないか。倒れられていたのだ」
「あ、ああ」
「王宮の医者が見るといったものの台輔の女妖がならぬと突っぱねましてな。街の女医を呼んで診てもらいましたのでご安心を」
「主上には?」
「台輔が」
「成りませぬ」
「なにをいっておられる?」
「彼の方のなす邪魔をしてはなりませぬ。直ぐに台輔をお戻しください」
「貴方は今自分の状態がわかっておいでか?」
「これ以上役立たずの女にはなりたく無いのです」
「は?」



目が回る世界は大層気持ちが悪い。その中でいった言葉はどの様に届いたのだろうか?再び手放した意識の中で私は微睡む



「どこだっ!」
「おい、まだ寝ているんだ。少し落ち着け」
「血を少し吐いた。台輔は別室に」
「だけど」
「ここでお前まで倒れたらどうする。少し待ってろ。直ぐに知らせる」
「うん」
「心配するな。あれがお前を置いていったりはせぬよ」
「…なんかあったら直ぐ知らせて」
「ああ」


「でだ」
「…」
「医者はどこだ?」
「今彼女を診ています。ああ、戻ってきたか」
「お初に」
「いい。あいつは」
「只今寝ておられます」
「仙が病むとはどういうことだ」
「端的に申しても」
「構わぬ」
「相当お身体を悪くなされておいでです」
「そんなに悪いのか?」
「今仙籍を抜かれましたら数日と持ちませぬ」
「…」
「滋養をつけさせしっかり休息させてくださいませ。何より殿下は主上にこのことを知られぬ様私の元まで来ておいででしたから。気取られますな。彼の方は思っている以上に孤独でございます。滅私の御心がお強いのです。一層哀れなほどに」
「そうか」
「お優しい方でございます。今主上が知ったと気がつけば誰よりも傷つき精神を追いやるのは彼の方で御座います。もっと」
「…」
「もっと彼の方を愛しんでくださいませ。」







パタリという音で目を覚ますと悪戯が失敗した様な顔をした彼がいて思わず笑ってしまう。


「起こしたか?」
「いえ」
「いや。いい寝ていろ」
「誰かに聞きましたの?」
「何がだ。今彼奴らから逃げてきたところだ。」
「…」
「どうした?俺が帰ってきたら不味かったか?」
「いいえ」

そういって其の儘ベッドに倒れこんでくる。風の匂いとたまの匂い。
顔の横に主上の顔があって思わず笑ってしまう


「なぁ」
「はい」
「何時ぶりだ?」
「何時ぶりでしょう?」
「寂しかったか?」
「いいえ」
「間違えたな」
「?」
「寂しい思いをさせているな」
「主上」
「ここでは名前のはずだが?」
「もう昔過ぎて忘れてしまいました」
「名もか?」
「忘れられるはずありませんでしょ?」
「そうか」
「尚隆様」
「ん?」
「貴方は風の匂いがします」
「お前は花の匂いだな」
「ふふふ」
「なぁ」
「はい」
「後悔していないか?俺を選んだことを」
「いいえ。」
「何時もの無理ばかりさせている」
「貴方様こそ」
「ん?」
「私の様な女には縛られてお辛くありませんか?」
「バカを言うな。俺の隣にはお前しかいらん」
「もし、他の」
「諄いぞ」
「ふふふ」
「?」
「私、貴方のそばにいたいわ。だから、死ぬときも貴方のそばがいい」
「おい」
「先に私を殺して死んでくださいませ。」
「どうかしたのか?」
「だって。これはきっと夢ですもの」
「夢か?」
「ええ。貴方が私のそばで寝ているのですから。直ぐに気がつけませんでしたわ。まだまだですね、私は」
「…」
「でも」
「?」
「夢ならいい夢ですね。」
「そうか」
「寂しくないわ」



そうして私は夢のような微睡みに再び手を放つ。

翌朝起きて冷たいままのそこを見るまで。きっと私は一番の幸せ者だろうから


散りゆく野薔薇

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十二国

「風漢様ぁ?」
「んー?」
「 今迎えの者ってのがきてますけど?」
「もう少ししたら行くと伝えてくれ」
「はぁい」

多分情事の最中なのだろう。暖簾越しに聞こえる其の声に溜息をつく。きっと上客なのだろう。女将も申し訳無さげにこちらを見てくるものの返す気は無いらしい。
私は苦笑して嬌声から離れていく。きっといつもの三人が来たのだろうと思っていたのだろう。


「あんたも大変だねぇ」
「いえ。主人のためですから」
「にしても」
「?」
「あんたも風漢様の相手してるのかい?」
「は?」
「まぁこの細腰であの人の相手をする訳にはいかないか。壊されちまう」
「ふふふ。」
「うちに来ても手練れが何人も参っちまってさ。気も効くし肝も座ってる。うちにずっといて欲しいもんだ」
「私も大旦那様の命がございますから。でもまだかかりそうでございますね。」
「あの姐さんは中々離しゃしないさ。急ぎかい?」
「いえ。出直しますわ。支払いは?」
「今んところ大丈夫さ」
「なら、大旦那様が来る前に帰って来ます様お伝えください」


そういって筆を借り、手紙を書く。そして金を渡して宜しくと頭を下げると逆に恐縮されてしまった。が、仕方が無い。
一礼して門を出る。不意に今あの人がいるだろう部屋を見ると窓辺に枝垂れるあの人と女性がいて。目が少し会う。驚いた顔をして、困った顔をなさるものだからまだ知りたいことを知れてい無いのだろう。微笑んで一礼する。上げた時にはもうい無いだろう。


「王妃殿下」
「先生?」
「もう街には行きますな」
「ですが…皆忙しそうで」
「貴方様も同じではありませぬか」
「大体こうでもせねばここには参られはせぬ」
「王宮の医者がおられますでしょ?」
「主上に筒抜けでしょ?無駄なご心配をおかけする訳には参りませんし。王宮の医者はみな殿方ですもの」
「女の私がよろしいと?」
「いいえ。私、先生が好きなのですよ」
「王妃殿下」
「随分悪いのかしら?」
「仙で無ければ数ヶ月も持ちますまい」
「そんなに?」
「少し休めませぬか?湯治でもなんでも。」
「そうね」
「いくら仙でも無茶が過ぎると倒れてしまいます。」
「ふふふ」
「笑い事では無いのですよ」
「ありがとう」
「?」
「あなたがいつも心底心配してくれるから。私はあなたが好きなのね」



そういって薬をもらって立ち上がる。が、やはりうまくいか無いらしい。影から出てきた白様が私の手を取ってくれる。初めて来た時はそれもできなかったのだからさすが先生ねといえば怒られた。

ここ数年。体の不調が酷かった。来るところまで来てしまったのだろう。

『王妃殿下』
「はい」
『おやすみください』
「ありがとうございます。あと」
『誰にも申しませぬ』
「ありがとう」


そうして私は瞳を閉じてしまう。贖うことのできない睡魔の中で女将の台詞を反芻するのだった



枯れゆく野薔薇

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