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変換なしの雑食夢

ran

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銀英伝

「何ですか?」
「姉上が大層夫人の絵を気に入ったからだな」
「しれっと何言っているんですか。私は美人の絵を描きたいのであってむさ苦しい軍人の肖像画を描きたいわけではないんですよ」
「むさ苦しいわけではないだろう?」
「自分の美貌を知ってらっしゃる。これだから美人わ!」
「今まで聞いたら激怒したセリフが夫人が言うと面白いのは何故かな。キルヒアイス?」
「キルヒアイス大将閣下の優しさを少しはみならってくれればいいのに!」
「オーベルシュタイン夫人」
「?」
「お茶は?」
「入ります」




陛下にそのようにしゃべるものが居ないので良い休息になっているのでしょうとあの人畜無害そうな顔で言われたら何も言えなくなる。キルヒアイス大将閣下も大変ですねといえばふふふと笑ってみせるのだから。にしても私と同年代の人がこんなに偉いのだから並大抵のことは無かっただろう。陛下も大変ですねといえばついでのように言うなと足蹴にされた



「でも、陛下と大将閣下の絵はいいとして他は嫌ですよ。」
「如何してです?」
「軍人だからです」
「夫人は軍人嫌いと見える。」
「大嫌いです」
「良い方ばかりですよ」
「初めて来た時に取り囲まれましたから!」
「ああ。そういえば」
「あの高圧的で値踏みをする感じが生理的にダメです。」
「でも夫は軍人だが?」
「あの人は良いのです」
「贔屓ではないか?」
「情と言ってください」
「くくく」
「大体陛下と大将閣下も特別枠ですから」
「…」
「あっ照れてますね」
「煩い!」




ローエングラム派閥の専属画家になれと言われて固辞している。
特にあの4人は頂けません。紅茶を飲みながら視線に気がついて顔を上げる。


「前から不思議に思っていたのだか。」
「はい?」
「何故そこ迄軍人を嫌う?」
「あー」
「ラインハルト様!」
「夫人のこれは私のそれとよく似ているからな。キルヒアイスも気になるだろう?」
「お茶が不味くなりますよ」
「よい」
「私の父は知りません。」
「は?」
「まぁよくある話ですよ。母は売春婦でしたから。それも妹が小さな時に死んでしまいましたから、よく覚えていません。覚えているのはメアンコリーな表情を浮かべて夜の街に出ていく顔だけかな?」
「…」
「母が死んで娼館の奥さんとか姉さん達が育ててくれて。まぁ店にいつかは出ないとと思ってましたよ。それが15の時かな?その時のことは一緒忘れられないな。きっと。」
「軍人か?」
「ええ。しかも凄く嫌な奴で首を絞めるの。私はなんとか生きていたけど妹はダメだった。」
「酷い」
「よくある話。娼館ではね。ただ、醜聞を揉み消すために私達はいない事になって。私は裸一貫。捨てられたの。そのまま死ぬかなぁって時に肉屋の夫婦に拾われて。今に至ります。って凄い顔!」



麗しい顔をそこ迄歪まさなくてもと思いながらふと思う。オーベルシュタインさんが変わり者すぎて違和感なく居たものの元娼婦で何処の馬の骨とも分からない女が同席してはいけないのかも‼︎そう思っていそいそと席を立とうとすると低い声で座れと言われる。いや怖いですよ。ちらりとキルヒアイスさんを見るといつもと違って怖い顔をしている。助けが居ない!


「何をしている」
「いや、退室」
「如何してだ?」
「夫が変わり者過ぎて忘れていましたが同席してはならないのかなぁ…顔が怖い!」
「オーベルシュタインは知っていたのか」
「一応」
「なんと言っていた?」
「それが如何したと」
「は?」
「あと、妹の墓を作ってくれました。無いのは不便だと言って」
「あいつらしいな」
「?」



そういうと同じ様に「だから如何した?」と急に言われる。鳩が豆鉄砲食らった顔をしているのだろう。珍しくくくくとキルヒアイス大将閣下が笑われる。

「夫人が何であろうとも別に興味は無い」
「其れも如何いう言い草なんですか」
「ただ、良き友だ」
「…」
「あと其奴の顔を覚えているか?」
「ラインハルト様」
「八つ裂きに」
「ふふふ」
「?」


ありがとうと言うとなんとも言え無い顔をして構わんという。
そして些かな間があって我が幕僚にはその様な輩はい無いとぼそりという。



「?」
「気が向いたら描いてやってほしい」
「…」
「無理にとは言わん。」
「陛下と大将閣下はいいです」
「ん」
「他の方はおいおい」
「わかったが、ミッターマイヤーが描いて欲しいと言っていた。妻に渡したい様だ」
「あー、どの人だろう」
「…」
「まぁ良いや。会ってから考えます。」



そう言って絵を描き始めるとキルヒアイス大将閣下に行儀が悪いと叱られる。破壊的だなと陛下はくくくと笑うのだ





若輩者達のティータイム

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銀英伝

絵筆を取りながら何が起こったのだろうと思案して眼下の人たちを見る。元帥閣下とキルヒアイス大将閣下。楽しげな雑談中である。ただ何故そのに私が行かなくてはならないのか?呆然としながらスケッチブックと鉛筆を出そうとした瞬間銃口がこちらを向く。2人のではなく護衛と呼ばれる軍人さんから。もう無理。


「銃をさげなさい」
「しかし、」
「鉛筆とスケッチブックで殺せるものなら見ものだな。ただし、オーベルシュタイン夫人だからな」
「は?」
「些か見ものではあろうがな」
「…」
「ああ。大丈夫ですよ。夫はここで私が殺されても眉毛ひとつ動かさずに仕事を続けますから。ただ、私としても銃口は向けないでいただければうれしいかぎりです。」
「それも如何なのだ」
「…」
「オーベルシュタイン夫人?」
「…」
「喋らぬか!」
「ラインハルト様」
「だって、」
「「???」」
「私は庶民ですから。こう、高貴な方と話せるエスプリなど持ち合わせていませんし」
「はぁ?」
「大丈夫ですよ。私は元々庶民の出ですから」
「私もそのような…ここはいい。下がれ」
「は」


パラパラとちってこのだだっ広い部屋に3人とは如何なものか。そう思っていたら顔に出ていたのだろう。くくくと元帥閣下が笑われて、これで堅苦しくないといわれる。少々の警戒を持ちながら道具を取り出しても?と尋ねる。燃えるような赤い髪の人がニコリと笑うのだから良いのだろう。談笑でもなんでもしててくださいと言いながらスケッチをすすめる。



「そちらを見なくてもオーベルシュタイン夫人」
「今日はスケッチの予定ですから」
「ほう」
「あっでも聞いておきたいことが。大将閣下」
「何ですか?」
「これは私的なものですか?公的なものですか?」
「?」
「私的なものなら…まあ必要はないのですがある程度の美化をお尋ねします。」
「美化?」
「ええ。女性に送られるのなら雄々しくとか。まあ色々。背を高くとかいう詐欺まがいな事をする者も居ましたが。」
「そうですか」
「ただ、凛々しく書いていいものか雄々しく書くのか自然に描くのかによって描き方が変わりますから。」
「自然でいい」
「わかりました。」
「それと至極私的なものだ。姉上にお送りするものだから」
「そうですか」
「…」
「?」
「何も言わぬのだな。流石オーベルシュタイン夫人という事か」
「ラインハルト様!」
「何がですか?」
「寵妃に贈るとなると大口のパトロンを得るに等しい。世辞を言うか悪言を言うか楽しみにしていたのだがな」



そうやってくつくつ笑うものだから私は片眉を吊り上げじっとそちらを見る。灰汁の強い我が主人の上司はなるほど意地が悪いらしい。スケッチブックを閉じて鉛筆を片付けると何故か慌てたような顔をする大将閣下がそれを制す。


「何を」
「帰ります」
「ほう」
「元帥陛下は場末の娼婦書きの女絵師で遊びたいとお見受けいたします。そういうのはどうぞ他で!」
「何?!」
「ラインハルト様!貴方も落ち着いて」
「落ち着いて入られますか!手を離しなさい!!!」
「「は?」」
「世辞を聞きたいなら言う人を悪言が聞きたいなら言う人を連れて来なさい!だから軍人なんて嫌いなのよ。」
「…」
「私はただ絵が描ければそれでいいの。もし公的なら辞退するつもりだったし」
「如何いう意味だ?」
「言わない!」
「そう臍を曲げるな」
「私が男でないから。女だというだけで描かれたものまで足蹴にされるんですよ。」
「そうなのか?」
「私のない頭で必死に考えてきたのに試すような事言われるし。鉛筆を出そうとしたら銃口をこっち向けられるし。もう、嫌!帰る!!!」
「お、おい」
「お待ちください。決してそういうつもりは」
「…」
「ラインハルト様も!だから申し上げたのです。幾らオーベルシュタイン卿の夫人といえども一般のご婦人にしていい行為ではないと」
「…」
「すまない」
「!」
「なんだ?」
「大将閣下、謝りましたよ」
「私も己の過ちに対して謝罪くらいする。」
「…私こそすいませんでした」
「何故謝る?」
「いや、軍人と一括りにして嫌いましたから。」
「そうか」


そういうと椅子に座って頬杖をつく。絵になるなぁと思いながら鉛筆を出していいか再び許可を得る。


「…」
「…」
「…」
「…何が話せ」
「談笑でもしててください」
「何かあるか?」
「あるでしょう?隣の家のあの子が可愛いとかこの子のスタイルがいいとか。」
「はぁ?」
「軍事機密はやめてくださいよ。貴方たちより夫に殺されます」
「…変わっているな」
「だからあの人と結婚できたのですよ」
「っ」
「あっ大将閣下が笑いましたよ。陛下」
「ラインハルトだ。」
「は?」
「ラインハルト様?」
「それでいい」
「嫌ですよ。それこそ夫にミンチにされる」
「…」
「あら、怒っても麗しい」
「オーベルシュタイン夫人」
「大体親しさを名前で表すなんてナンセンスですよ。どんな呼び方をしても友はともでしょ?キルヒアイス大将閣下」
「…」
「訂正する」
「?」
「壊滅的に変わっているな」
「よく夫に言われます。」



そういうと少し柔和な顔をなさるものだから私もつられてヘラリと笑う。後でお茶にいたしましょうというキルヒアイス大将閣下がその姿を如何思ったのか知らないが此処に夫が居なくて(お仕置き的な意味で)本当に良かったと思うのだった。




変わり者のオーベルシュタイン夫人

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銀英伝

絵を描いていた。娼婦の絵だ。以前頼まれていた自画像は半裸の美しい金髪の女性で娼婦館に飾る為に頼まれたものだ。サディスティックでアンニュイな雰囲気はきっと彼女の内面から出ているのだろう。もう少しで完成といった所でワンという声がした。主人のお帰りらしい。
結局あの後情にほだされてここに住み着いた。大口のパトロンと思えば良いですかねと入った瞬間の凶相を私は忘れられない。冷凍人間とかなんとか。あれは嘘だ。この人は不器用なだけだ。壊滅的に。現に疲れているだろう体は寝室でもダイニングでもなく私のアトリエと化した一室にやってきては座っているのだから。


「出来たか?」
「もう少し」
「食事は?」
「待っていました」
「そうか」
「先食べますか?」
「いや後で良い」
「食べられなくなりますよ」
「ああ」


そう言って私の後ろにいつの間にか置かれた椅子に腰掛ける。
奇妙な雰囲気。本当に変わった人だなこの人はと思案して筆を置く。もう終わったのかという台詞の前に膝の上に座ってぎゅーと彼の頭を抱きかかえる。犬と飼い主のそれのようだなと思いながらもどちらが犬でどちらが飼い主か?存外私が飼われている方なのだろう。恋愛なのか何なのか。分からないけれどもこの人が居ないと思いの外寂しい。だからたまに帰ってくるとこうしてしまうし。中々帰ってこない時でも椅子は片付けない。劇物のような人だ。


「重い」
「言うに事欠いて!」
「出来たか?」
「ええ。」
「そうか」
「すごく美人で今一番の売れっ子ですよ。」
「それが如何した?」
「こっちの方が良いんじゃないかと」
「趣味ではないな」
「そうですか」
「如何した?静かだと不気味だ」



いやですねぇと言いながら膝から降りる。降りてじっとオーベルシュタインさんを見てお腹が空きましたといえば呆れられた。
如何言えば良いのだろうか?好きとか愛しているとか???
なんかズレているようなそうでないような。


「気持ちが悪いな」
「そう冷静に言わないでください。」
「事実だ」
「はぁ」
「?」
「婚約って嘘でしょう?」
「如何いう意味だ」
「今一番のキラキラしている時期じゃないですか。うふふあははの時期なのに!」
「…」
「何が目的ですか?何もできませんよ、私」
「想像できるか?」
「?」
「お前が言う頭の中が湧いたような高揚感に満ちた私とお前の図だ」
「…」
「如何だ」
「それこそこの世の終わりだわ」
「そういうことだ」


そういうとオーベルシュタインさんは何故か私の手を取ってするりと金の指輪をはめてくださる。


「何ですかこれ?」
「首輪だ」
「わん!」
「老犬と駄犬の世話か…」
「如何いう意味ですか」
「…」
「ええいっ!もっと優しくて良い人見つけ…」
「何か言ったか?」
「いえ何も」
「人には向き不向きがある。私のお前もそういうのは無理だから早々に諦めろ」
「そう言われると厳しいですが否定できない!」
「これでお前もオーベルシュタインだ」
「は?」


妻になれと抑揚のない声で言われてうなづく奴がいたら見てみたい。


「はい」
「食事だ」
「手、洗ってきます」
「顔もだ」
「ひっ」
「洗ってこい」
「はいっ!」



ああ、バカは私自身らしい




金の指輪

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銀英伝

「美しいご婦人だ」
「そうですか」
「だがいいのか?向こうで絡まれているぞ」
「大丈夫でしょう。あれをどうこうしようと思う輩はそうはいませんでしょうから」
「もし其の輩なら」
「叫ぶなりなんなりしましょう」
「可哀想に相手を見誤ったな」




そんな会話があったなんて私は知らなかった。気が付けば夜中も夜中。血の気が引く音を初めて聞いた。そしてベットの横で寝ている男を見て絶叫しそうになる。しなかったのはオーベルシュタインというのがいつもは気難しく恐ろしい程に冷静な男が気持ちよさげに寝ているのだから。仕方がないと思いながら思案する。きっと起き上がったら起きてしまうだろう。それはなんだか可哀想だ。だからと言って起きないでいる義理もない。但しここはこの人の家でこのベッドはこの人のものだ。…仕方がない諦めようと思考を停止して不意にオーベルシュタインさんを見る。いつもは軍服だったからシャツというのは目新しい。肩口まで布団を引き上げるとゆっくりとした動作で瞳が開く


「ん…」
「…」
「寝ていたか」
「…」
「今何時だ?」
「まだ明けてませんよ」
「そうか」



そう言って目を押さえる。調子が悪いのかなぁと頭を撫でると何も言わないあたりしても構わないのだろう。よしよしと撫で続けるともう良いと返される。もう良いあたりがこの人らしい。


「なんかもう、怒るタイミングを見失ったわ」
「そうか」
「もう少し寝てはいかが?」
「其のつもりだ、が」
「…?」
「不気味ではないか?」
「何が」
「この目が」
「いえ、別に」
「…」
「気を使って言う必要ないでしょう?大体妙齢の女性のベッドに潜りこんできて其の顔はないと思いますが?」
「…」
「貴方は思った以上に表情豊かよね。」
「初めて言われたな」
「冷凍人間って言われれたし」
「否定しない」
「貴方が今まで話していた貴族の娘様はどう考えていらっしゃるか知りませんが。貴方を不気味とか冷凍人間とは思えないわ。実際」
「…」
「で、何が言いたいのかよくわからないのですが」
「私もお前のそういう所が理解に苦しむ」
「なら、ベッドに潜りこむのも、無用な贈り物もしないでください。今日だってガタイの良い男に取り囲まれたのよ。ああ!思い出しても腹がたつわ!」
「あれは花形だ」
「あーいうの嫌いなのよ。人を値踏みして。」
「そうか」
「オーベルシュタインさん?」
「どうした?」


なんで抱きしめていらっしゃるのかなぁといえば寒いとだけ帰ってくる。何なのだ。この人は。


「恋人は?」
「いるように見えますか?」
「いや」
「即答も辛いわ」
「婚約しないか」
「…」
「お前もそういう顔ができるのだな」
「いや、寝ぼけてます?」
「寝ぼけていない。」
「私、庶民ですよ」
「だからどうした」
「…」
「今日からこの部屋で暮らせば良い。」



そう言って再び瞳を閉じる。何なだろうこの人は!と憤慨しつつも冷凍人間の暖かさでついつい微睡んでしまう自分が一番愚か者かもしれない



闇夜の会話

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だと思ったよ。というのが感想だ。似合うも似合わないもないのだろう。結局執事さんが予定より早く現れて着替えとメイクの手配をしてくれた。旅に出ようとするまさにその時に。
あれよあれよと着替えさされて車に押し込まれて。着いた先は王宮で。士官のパーティーがあると言われはのが会場に入った瞬間だった。嵌められた!と判明したは会場を占めたざわつきと「賭けに負けた」と嘆く声だ。


「食べてこい」
「食べれませんよ」
「?」
「コルセットが痛いんです。」
「そうか」



その会話をしたのちオーベルシュタインさんは喧騒に消え、私は壁の花になる決意をする。が、何かの拷問だろうか?お腹は減った。ご馳走はある。食べたい。けどコルセットがそれを許さない。本当に酷い話だ。


「君が?」
「?」
「あの冷凍人間が女性を連れてくるだなんてな」
「はぁ」
「にしても若いな」
「ビッテンフェルト」
「これがあの男の女か?氷の女王でも連れてくるかと思ったがな」
「提督」
「高級娼婦でもなさそうだが」
「…」
「まあいい。いくらでも買われた?倍出してやる。」
「おい」
「今日こそあいつの鼻を明かしてやる!」


なぜだか無性に腹が立つなぁと思いながら目の前のお偉いさんを見る。4人。困ったように笑う人とクールな色男。凄く失礼な奴に、なぜか慌ててそれを止めている人。プラス部下の人。
だから軍人は嫌いなんだ


「いくらとは一体何の話ですか?」
「ん?」
「すいません。フロライン」
「友情も愛情もお金で換算できますか?強いて言うならプライスレスです。」


空気が止まるのでくくくと内心笑う。ビッテンフェルトと呼ばれた人は硬直と言っていいだろう。


「だから軍人なんて嫌いなのよ。自分の名前も言わずに人を値踏みして。ふんぞり返らないでくださる?」
「あ、ああ。すまない」
「くくく。フロライン。嫌いな軍人の中にはオーベルシュタインも入っているがな」
「あら、聞いていませんでした?あの人は軍人以前に私の大切な人ですから。失礼な人のカテゴライズに入れれませんよ」
「それはそうだな」
「ああ、何方へ?」
「近年稀に見るほど腹立たしいので帰ります。…彼にもそう言っていてください」



かつかつと慣れない靴で歩く。だだっ広い!それにも腹を立てながら外に出ると驚いたような顔をして運転手さんが私の前に走ってくる。
かえる告げれば送って行ってくれるらしい。御主人様は良いのですか言えばそう言いつけられているらしい。気がきくのか効かないのか。
よくわからない人だ。



ドレスはどうすれば良いのだろう。庶民に手入れの仕方などわかりはしない。脱ぎ方だって危うい。よく貴族はこんなもの着ているなぁと思って執事さんの奥さんに脱がしてもらう。手入れはしてくれるらしい。のでそのままお返ししてしまおう。


「眠い」
「疲れになったのでしょう。食事は?」
「食べられませんでした」
「慣れるまでの辛抱ですよ」
「慣れる必要ありませんから」
「食事を作っています」
「いえ、そこまでして頂かなくとも」
「我が主の我儘に付き合っていただいたお礼です」
「本人にその気があるのかないのか。些か疑問ですが」
「…」
「では少し休ませてください」
「は?」
「凄く疲れて。駄目なら帰らしてください。お願いします。」
「寝室を用意いたします。」



有難いなぁとうつらうつらする体に鞭打ってベッドへ入る。薄布の夜着が気持ち良いなぁとぼんやり思いながら眠りにつくのだった



毒舌家の眠り姫

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