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変換なしの雑食夢

ran

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野菊と荊棘

香炉を見てそっと近ずく。寝転ぶ片倉様を見て横に腰掛ける。
寝たのだろうと彼人の髪を撫でる。馬鹿げた。でもそれ以上に辛い時間だった。死者には声はいらないと自ら決めたのにと自重したところで変わりはしない。声を出して言いたいこともたくさんあった。でも言えるわけがない。何より、こんな茶番。今日で終いだ。


「貴方がただの嫌な殿方でしたらどれほどに楽だったでしょうか?」



眠る姿はあどけないと思う。眉間にしわを寄せて威嚇するような顔しか見たことのない私にとってこの顔は別人のようだと思う。それ程、穏やかで何処と無く息子に似ている。



「息子は穏やかな優しい子に育ちましたが、矢張り貴方の子です。あの歳で漢詩を諳んじておりますし、木刀もお気に入りのおもちゃです。」



ふふふ笑って頬を撫でる。そろそろ退室したほうがいいだろう。院主様にお声をかけないとと思った瞬間、腕を取られる。



時間が、止まったかと思った。



私の腕を掴んでいるのは間違いなく片倉様で頭を抱えて起き上がって居るのだから。まだこちらを見ていないその目はきっと怒りに満ちているのだろうと、ぞくりとする。




「っち。お高のやつ。なに混ぜやがった…」
「…」
「着付け薬を仕込んでいて正解だった」




そう言って眉間を押すと顔を上げる。
刀をお持ちだったはずだ。最悪の場合を考えなくてはならない。あの子は逃がしてもらわなくてはならないと思案して眼前の人を見ると、怒りも何もない。片倉様の顔で私は唖然とする。




「…本当に」
「…」
「生きているんだな」
「…」
「…っ」
「え?」




良かったと絞り出された声とともに静かに抱きしめられる。
離してくださいといえば無理だと言われ、髪をすかれるものだからどうすればいいのか硬直してしまう。どうすればいいのだろうかと思いながら背中に腕を回すとびくりと体を震わされたので思わず手を引っ込めようとすればそのままがいいとの事。如何したのだろうとおずおずと背にまわす。



「いや、な。」
「はい」
「まさか手を回してくれるとは思いもしなかったから」
「すいません」
「謝って欲しいわけじゃねぇ。喜んでいるだけだ」
「…」
「あったけぇ。」
「はい」
「生きてるんだな」
「…」
「嬉しい」
「は?」
「?」
「お怒りではないのですか?」
「…怒るも何も。この数年お前さんの事をずっと考えてた。生きていたらどんなに幸せだろうと。出なけりゃあの女の胡散臭い香なんてつかわねぇ」
「私は」
「死んでいようがお前さんを見た瞬間どんなに嬉しかったか。たった数度の逢瀬でもいい。…月に一度の満月がどれ程楽しみだったか」
「っ」
「…連れて帰りてぇなぁ。」
「貴方が」
「ん?」
「貴方があの時のまま、最低な人ならどれだけ楽だったか」
「…」
「貴方が、其の儘ならここであの子の成長を見届けて死んで行くつもりでしたのに。何で、」
「すまねぇ」
「優しくするのですか?あの文なんて。私は如何すればいいのですか?」
「最初から慈しめば良かった」
「慈悲も慈愛も。幼き時に欲しかった貴方が眼前に現れたら、如何贖えばいいのですか?」
「贖わなくていい。もう十分だ」
「っ幼い砌、貴方に恋をしていたのですよ。」
「…両思いだったってわけだ」
「なのに意地悪ばかり私にして」
「すまない」
「手酷く抱いて、変な責任で、」
「泣くな。本当にすまねぇ。ただ、抱いた時は」
「?」
「後悔はしなかった。いや、そんな顔で見ないでくれ。手酷く抱きたかったんじゃねぇ。そのだ。箍が外れてだな」
「そんなかわいいものじゃなかったです!」
「な、何年我慢してたと思ってんだ。これで俺のものにできると思ったのにお前さんは…いや、普通そうなるんだが。子が出来た時本気で喜んでだな。婚儀の支度をと思ったら」
「…側と言われましたが」
「あれは!姉上が。何より、姉上も落ち込まれてだな」
「…」
「大嫌いと言われるわ出家されるわ。挙げ句の果てには…死んだと」
「あんまりにも貴方がしつこくて」
「どうせお高の入れ知恵だろうが。すごくだ」
「?」
「堪えた」
「…」
「頼む。後生だ。」
「片倉様?」
「妻になってくれ」




きゅと抱きしめられてそう言われる。
頑なだった心を作ったのがこの御人ならこの心を溶かしたのもまた、この人だ。こちらにいる間じゅう日参し、戦の最中は手紙を送ってきてくれた。事の次第を明かしても怒りもせず涙を流してくれたのは間違い無く、此の方なのだ




「実は」
「あ?」
「もう他に相手が」
「!」
(絶句したの初めて見た)
「誰だ…」
「は?」
「ふふふふ」
「え?!じょ、冗談でございます」
「あ?!」
「いえ、あの。本当にあの、片倉様ですか?」
「…どのかしらねぇが。片倉は間違いなく俺だ」
「呆れた」
「頼むからそういう冗談はやめてくれ」
「はい」
「…わかっているのか?」
「これまでの仕返しはしないとと」
「もう十分だろう」
「それもそうでございますね」
「なぁ」
「はい」
「答えをくれ」
「おいおいに」
「…」
「怒ってもダメです。家柄も考えて」
「そういう外堀は全部俺がする」
「…」
「もう着の身着のままでいい。子供を連れて帰るぞ」
「…はい」
「…」
「片倉様?」
「はいと言ったな」
「え、ええ。」
「妻に、なるんだな」
「はぁ」
「っ!!!」
「えっ?!痛いです!!!」




寄り添う野菊と荊棘





「…父上様ですか?」
「ああ」
「わっ」
「今まですまなかった」
「っ」
「あらあら泣かないの。父上様にお会いできたのですから。」
「これからは一緒にいられますか?」
「ああ」
「っ」
「泣くな。……お前のガキの頃によく似てる」
「そうですか?」
「ああ。よしお高の礼はまたあとで」
「はいはい」
「院主様」
「また何かあったら坊とともに」
「いらん事いうな!」
「…院主様と父上様は知り合いなのですか?」
「「親戚だ」」
「通りで」
「?どういう意味だ」
「笑い方が良く似てらっしゃいます」
「「…」」
「嫌なものを見る目つきも」

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蛍火

「ん…?」
「おはよ。」
「おはようございます」
「んーふふふ」
「まだ眠い?」
「いや、昼寝るから」
「…」
「あ、その顔いいね。」
「鬼の形相の山本さんがいるよ?」
「えー陣内野暮はな…」
「急な仕事で泊まり込んで。嬢まで駆り出して。」
「えーんふふふ。昨日頑張ったでしょー?」
「高坂と尊が死に体になりましたがね」
「若い時の苦労は買ってでもしろっていうし?」
「私は貴方より年上ですが?」
「…」
「ご飯作ってきまーす」
「あ!行かないで!!!」



尸を乗り越えて給湯室へ行く。怒った山本さんの声が聞こえるので相当大変だったのだろう。あの人の下へつくというのは凄いスリルを味わうことかもしれない。



「お嬢様」
「あ、ご苦労様でした。」
「いえ、ご苦労様でした!」
「お茶入れたらパン食べましょうね」
「大丈夫ですか?」
「いや、高坂さんたちの方が乗り込んだり叫んだりで大変そうですけど…」
「?」
「いや、怪我しませんでしたか?」
「はい!!!」
「ならいいんです。無理しないでくださいよ。あの人、きっと恐ろしいことし始めるだろうから」
「???」
「ふふふ。お茶湧いたわ。いきましょ?」
「はい!」




お盆は高坂さんが持って行ってくれたから私はパンを持つ。あの人との婚約は成立した。結婚も実は済んでいる。ここ重要。婚約という名において出てくる膿を取り出したいのだろう。婚約を望んだのは雑渡さんだったが結婚を望んだのは私とお父さんだった。同盟派閥を直轄にして奥原なのだろう。実は婿だったというのは後から報復する口実だろうし。私としては大きな保険だけど。


「お茶入りましたよ」
「…」
「何ですか?」
「陣左と仲良いね。」
「仲良いですよ。あなたの大事な部下だもの。」
「ふーん」
「でも一番大切なのは雑渡さんなの知ってるでしょ?」
「…」
「疑うの?」
「疑わない、けど」
「ふふふ。おはよーございます」
「っ」
「おはよーのチューまだだったから。」
「っっっっっ」
「嬢」
「とりあえず食べて仕事しましょう!仕事する雑渡さん素敵だなぁ」
「陣左。それ終わったら例の事務所行くよ」
「はいっ!」
「ありがとうございます。」
「もう尻に引いてますね」




この人が私を守るというのならば私もこの人を守りたい。




「んふふ。それ良いね」
「朝から変態ですよ。」
「てめぇ!!!」
「高坂さん座る。雑渡さんが変態なのは今に始まった話じゃないですよ。」
「…」
「さてと」
「ん?何処か行くの?」
「家。山本さん貸してくださいね」
「いいよ」
「わーい」





蛍火





「以外と忘れてましたが」
「何?」
「あなたは会長のご息女でしたね」
「そうよ。だから、あの人を守るためならなんでもするの」
「…」
「照星さんにはお願いしてます。後は、これをばら撒いてください」
「恐ろしい人だ」
「女はそういうものよ」
「貴方が、ですよ」
「そうね。ね、山本さん」
「はい」
「ざ、私のこと嫌わないかな?」
「喜ぶんじゃないですか?変態ですし」
「そうね。」

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蛍火

「雑渡さん」
「今日は早かったね」
「雑渡さんが来るってメールあったから走ってきた」
「そうなの?」
「うん。雑渡さんも仕事大丈夫?」
「んーふふふ」
「聞かなかったことにするね」
「うん」


そう言って雑渡さんが車のドアを開けてくれる。ありがとうと言うといいえーとヘラリと笑うものだから私もこの人の真意を掴めずにいる。ただ、好きなのだ。これは私の素直な気持ちで嘘偽りない。


「今日はどっち?自宅に向かう?」
「んー?如何したの?」
「会長寂しがってたよ。」
「自分は赤坂に入り浸ってたのに?飽きたのかな?」
「飽きっぽいからね」
「お母さんも大変だな」
「趣味の人だしなんだかんだで仲良いよね」
「帰って来る場所がわかってればいいらしい」
「ふーん」
「でも」
「ん?」



私は無理だなーと言って背凭れに体を倒す。そうと言いながらこちらを見る雑渡さんにウンとうなづく。タバコの臭い、コロンなんて付けたことないだろうから整髪剤か何かかなと思いながら目を閉じると名前を呼ばれる。

何と尋ねると私はしないよと帰って来るので私は素直にうなづく。



この世の誰よりも信頼している男の言なのだから、疑うことなどできない。いくらちゃらんぽらんでひどい男だとしてもだ。




「好きだよ」
「私も」
「生まれ変わっても、きっとその時の君を好きになる。」
「うん。」
「だから、好きって言って」
「如何しようか?」
「おじさんを虐めないで」
「雑渡さんはおじさんじゃないよ。素敵な人だよ。昔から」
「…如何したいの?悶え死ねるよ」
「死んじゃ嫌」
「ならいって」
「雑渡さん」
「何?」
「好き。好きよ、雑渡さん。」
「うん」
「誰よりも愛してる。」



そう言うと私もだよとヘニャリと笑うものだから嘘くさいと笑って言ってしまう。この人が何をしていても嘘くさいのだ。


「あのさ」
「ん?」
「君が如何思おうとも私はすごく好きだよ」
「妹として?」
「妹の為に左の顔くれてやらないよ。ま、居たことないからわからないけど」
「そう」
「左の顔の所為?」
「の訳ないじゃない。その前から結婚するって言ってたでしょ?」
「父親的な?」
「父親は凄いのがいますが?」
「まぁねぇ」
「執着?」
「愛情も元を正せば執着だよ」
「反対は無関心だもんね」
「そう言うこと。」
「雑渡さん」
「ん?」
「すっごい父親とすっごい自営業と柵ばかりの小娘だよ。」
「これを自営業というの?」
「…自由業?」
「まぁそうだよね。」
「うん」
「はっきり言って面倒だよ。私自身、こっち側の人間だから入りは良いとしてのし上がっていく為の根回しとか、いろいろ」
「知ってる」
「其れと君を天秤にかけるとね、すっごい勢いで君の方に傾くの」
「…」
「全ての煩わしさも全部引っくるめて鞄に入れて。着の身着のままおじさんのところに来なさい。」
「…」
「早く、お嫁においで」
「…雑渡さん」
「ん?」
「キャバクラの同伴まで許すけどそれ以上は無理」
「うん」
「泣くと思う」
「それ、嫌だな」
「一人にしないでね」
「うん」
「目指せ山本家だよ」
「あー」
「?」
「威厳のあの父親は…」
「無理だね」
「即答?!」



そう言うと車が止まる。どこだろうと思ったら自宅で血の気が引く。雑渡さんの方を向くと鉄は熱いうちに打てっていうでしょう?とのこと。やっぱりヘラリと笑うものだから私も思わずうなづいてしまったのだ




蛍火




「で、婚約者にジョブチェンジと」
「うん…」
「如何したんですか?お嬢様」
「いや、ね。以外とあっけらかんと終わったから。」
「ああ」
「?」
「雑渡さんも頑張ったということです」
「???」



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蛍火

「…」
「あ、陣内」
「何をしているのか聞いたほうがいいですか?」
「嬢の気持ちをね」
「もういいです。」
「え?ここからだよね。」
「聞くなら普通に聞いてください。若干引きますよ、その格好」




珍しく高坂さんを加えてお昼ご飯を食べる。雑渡さんはお父さんの所で食べたらしい。高坂さんの分は?と尋ねると偉い人の会議だったそうで出なかったそうだ。尊君ならぶつぶつ言う所なのに。高坂さんは大人だなぁ



「で、鰻ですか?」
「尊!その先ず文句言うのを止めろ!」
「真っ当な食事してなさそうだし。最近顔色悪かったから…あっ。胃腸崩していることは無いよね?」
「はい。」
「仕事のし過ぎです」
「尊…」
「まぁ無理せずにこの後休んで下さい。今日はこれであがりですよ。」
「え?」
「山本さんには話つけてますから。でないと連休入れるそうです」
「…わかりました」
「嬢」
「ん?」
「この鰻、マジ美味い」
「あは。でしょ?」
「…」
「大盛りにしてもらって正解でした。」



すごい勢いでなくなるそれを見ながら私もお茶を啜る。にしても綺麗に食べるよなぁ。雑渡さん以外。山本さんの教育が行き届いているお陰だなぁ。と思ってふと手を止める。


「高坂さん」
「あ、はい。」
「高坂さんは如何して雑渡さんなんですか?」
「尊敬しているからです」
「はぁ」
「?」
「いや、尊君はおじ様の命の恩人だし私は私自身の恩人だから」
「?」
「高坂さんは知らないと思いますよ」
「あ?!」
(なぜ威嚇?!)
「尊君のお父さん助ける話は?」
「知ってます」


有名ですものねと言って尊君に鰻をあげる。食べて午後から頑張れという頃には元私の鰻は齧られていた。遠慮しろと椅子を蹴っている高坂さんの器の中にも入れる。無理しなくてもいいけどと付け加えるとまだいけるということ。これが無理ゲーでもなければ罰ゲームにならないのが若さなのだろうとしみじみしながら骨煎餅を食べる。私はこれで十分だ。



「雑渡さん私のボディガードだったの。今は違うけど。」
「聞き及んでいます」
「幾つだろ?雑渡さんが20歳の時に大間時の若いのが私を誘拐しようとした事があって。あの人今でこそなっかなか動かないけど元々武道派で相手薙ぎ倒してたのは良いんだけど、私は運動音痴の弱虫で。逃げればよかったんだけど怖くて動けなかったの。あ、これは秘密ね。」
「はい」
「火炎瓶投げつけられそうになったのに逃げれなくて。その時、雑渡さんが庇ってくれてないと今頃どうなってたか…その時の傷で顔と左目を火傷したの。」
「どこのどいつですか?」
「あは。本当に好きだね。」
「大丈夫ですよ。雑渡さんが撃ち殺しましたから。」
「は?」
「顔半分焼けてたのにね。今思えば暴発してもおかしく無いのに。」
「…」
(感動して震えてる?!)
「馬鹿みたいに泣いて大丈夫?って叫んでたら怪我ないですかって。今では想像できないほどカッコよくて」



好きになったんだけどと言ってお茶を取ると今は違うのですかと言われ苦笑する。



「男惚れね」
「はい」
「良いな〜純度が高い感じ。私はやっぱり相手の気持ちも欲しいな」
「それはそうでしょ」
「?」
「ほら、リア充の高坂さんはわかってないよ。絶対そのうち刺されるわ」
「???」
「まぁ雑渡さんもいいかげんな気持ちで嬢の相手してるとは思えませんよ。」
「この方しか見えてないって言え。後は案山子のようだと」
「ふふふ。ありがとう」
「でも嬢は如何したいんですか?」
「…考えた事なかったわ。」
「恋人になりたいとか結婚したいとか」
「…端的に言って私の結婚相手次の親玉でしょ?年齢的に見ても雑渡さんか吉井さんくらいかなぁ。まぁ吉井さんは婚約者いるから」
「嬢がずっと雑渡さん以外結婚しないって言ってたから」
「にしたってあの人が…」
「だいたい考えてみてくださいよ。洗脳調教が得意なあの人が嫌なら口八丁で如何にかしますよ。地位のためとかで結婚するのも。この人みてくださいよ。良い例です。20年以上あったら間違いなく完了してます。」
「てめぇ。その指へし折るぞ。…嬢何納得されているんですか」
「いや、今までのどのセリフより説得力が」
「でしょ?あの人はそういう人です。昔からあなたの前だけ普通の人になるんですから。」
「うん」
「好きなら好きって言ったほうが良いです。あれでももてますから」
「てめぇ」
「俺は、生まれた時から嬢の幼馴染なんです!だからこの人のうじうじしたところを知ってるんです。」
「がつんて言ってくれるの尊君位だもん」
「うな重代くらいは働きます」
「おまえ!」


なら、1人1万ねと言うと違う意味でドン引きした2人の顔を見て笑うのだった




蛍火




「き、聞いた?」
「はい」
「かっこいいって」
「昔はですよ」
「好きって!!!」
「よかったですね。」
「お前、言いたい事あるの?」
「足を揃えて伺わないでください。あと仕事してください」

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蛍火 インモラル

「ねーねー。」
「…」
「いいでしょ?君、聖女大の子じゃん。俺らと遊ぼうよ」
「人を待っていますから」
「うわっ。かっわいいなぁ。」
「なっ!マスク返してください!!!」
「いーじゃん。かわいいし。でさーあっちで美味しいケーキ屋知ってんの。如何?」
「結構です」
「いいじゃん別に」
「いい事ないよね」
「ぁあ?!何だテメェ」
「雑渡さん。」
「言ったでしょ?こういう場所で待っちゃダメって」
「てめっ。何勝手に!!!」




そう言ってチャラ男が雑渡さんの肩をつかもうとした瞬間、蹴り飛ばされていった。流石忠犬高坂さん。尊君も意外と慣れててびっくりだなぁと思いながら雑渡さんを見る。ヘラリと笑っているものの止める気はないらしい。財布から身分証とスマホのデーターを抜き取る手際のよさが怖いよなとさめざめと見ていると尊君がこちらに来る。



「如何しますか?」
「いやーねー。うちの嬢に手を出して、そう簡単にいいよって言えないじゃん。」
「てめーら!!俺がどこのもんか知ってんだろうな!!!」
「あらら。陣左、まだ元気じゃない。」
「すいません!」
「雑渡さん。こいつのアドレスから面白い人の名前が出てきましたよ。」
「えー?誰々?」
「嬢もみてください」
「…あら」
「陣左〜。事務所連れてって」
「はい!」
「事務、所?」
「そう。君さぁ、下手打ったよね。」
「ひっ。」
「この人、うちの会社の会長の一人娘だから」
「へ?」
「た、そ、が、れ」



にたりと笑う雑渡さんを見ると目が笑っていない事に気が付く。ハァとため息をつきながらよれよれの背広を引っ張ると面白くなってきたよねーと笑うのだった。




蛍火




「久しぶりー。真逆4人で来るとは思わなかったよ」
「…」
「あらら、反応なしなの?」
「…すまん。うちの若いのが大変失礼をした」
「本当にね。」
「雑渡、黄昏ご息女は?」
「んー…今気分悪いから横の部屋にいるけど?あわす気ないから。」
「詫びをだな」
「鬼蜘蛛。あんた、うちの嬢をなんだと思ってんの?只でさえあんたんとこの若いののせいで気分を害してんのに、無理にでも出して来いって?」
「いや、そういうつもりじゃ」
「何?あんたんとこではうちの嬢はそこらの売女と同じ尻軽な訳?」
「落ち着け、雑渡。そういう話をしに来たわけじゃない。…上に秘匿にしてくれた礼と詫びに来ただけだ。…あれは俺が責任持って処分する」
「あらら。いいの?」
「うちのオヤジに害するものはたとえ仲間でもいらねぇ。」
「流石由良の旦那」
「後、この間の件はあんたの言う通りにする。9:1。それで良い」
「譲歩するね。」
「お前の逆鱗に触れてそのままにしておける程馬鹿じゃねぇ。それで許しちゃくれねぇか?」
「…雑渡さん」
「足はないよ。」
「「「っ」」」
「まぁ、止められちゃたからそこでやめただけだけど。返してほしい?」
「化け物」
「あぁ?!今何言いやがったテメェ!」
「蜻蛉!」
「陣左も落ち着いて。化け物かぁ。良いね、それ。」
「すまん。」
「隣のも9:1ね。失言がなけりゃそこで手を打つよ。」
「…構わん。」
「由良の兄貴?!」
「うふふふ。あんたのそういう所嫌いじゃないな」
「雑渡さん…」
「尊?…いいよ。通して」


かちゃりという音とともに彼女が現れる。美しい姿中に、恐ろしい獣を飼っているのだろう。眉一つ動かさないで、美しく笑っているのが恐ろしいと思うのだ。



「雑渡さん」
「大丈夫?」
「ええ」
「今回の件、うちの若いのが」
「ふふふ。良いんですよ。雑渡さんとお話ついたんでしょ?」
「…」
「共栄丸のおじ様によろしくお伝えください。」
「は、い」
「いいの〜なんか言いたいこととかない?」
「んーないかな。あ、」
「何か?」


そう言うとニコニコ笑いながら、蜻蛉の前に立つ。ゆっくり、右目を指差して名前を紡ぐ。ぞくりとする。



「蜻蛉さん」
「は、い」
「何をそんなに怯えていらっしゃるのかしら」
「い、え」
「嬢」
「何もしないわ。私只の女子大生だし。只、」
「っ」
「次は無くてよ」



ヒッと喉を鳴らすこいつは決して三下でも無能でもない。うちの3番手だ。それを虐めて微笑む彼女は何者なのだろうか


「それくらいにしてやって下さい」
「うふふ」
「嬢。陣内」
「はい」
「うふふふ」
「可愛いねぇ。本当に」
「恐ろしいな」
「それ以上はやめといたほうがいいよ」
「当たり前だ。俺も命が惜しいからな」

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