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変換なしの雑食夢

ran

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蛍火

「雑渡さん」
「今日は早かったね」
「雑渡さんが来るってメールあったから走ってきた」
「そうなの?」
「うん。雑渡さんも仕事大丈夫?」
「んーふふふ」
「聞かなかったことにするね」
「うん」


そう言って雑渡さんが車のドアを開けてくれる。ありがとうと言うといいえーとヘラリと笑うものだから私もこの人の真意を掴めずにいる。ただ、好きなのだ。これは私の素直な気持ちで嘘偽りない。


「今日はどっち?自宅に向かう?」
「んー?如何したの?」
「会長寂しがってたよ。」
「自分は赤坂に入り浸ってたのに?飽きたのかな?」
「飽きっぽいからね」
「お母さんも大変だな」
「趣味の人だしなんだかんだで仲良いよね」
「帰って来る場所がわかってればいいらしい」
「ふーん」
「でも」
「ん?」



私は無理だなーと言って背凭れに体を倒す。そうと言いながらこちらを見る雑渡さんにウンとうなづく。タバコの臭い、コロンなんて付けたことないだろうから整髪剤か何かかなと思いながら目を閉じると名前を呼ばれる。

何と尋ねると私はしないよと帰って来るので私は素直にうなづく。



この世の誰よりも信頼している男の言なのだから、疑うことなどできない。いくらちゃらんぽらんでひどい男だとしてもだ。




「好きだよ」
「私も」
「生まれ変わっても、きっとその時の君を好きになる。」
「うん。」
「だから、好きって言って」
「如何しようか?」
「おじさんを虐めないで」
「雑渡さんはおじさんじゃないよ。素敵な人だよ。昔から」
「…如何したいの?悶え死ねるよ」
「死んじゃ嫌」
「ならいって」
「雑渡さん」
「何?」
「好き。好きよ、雑渡さん。」
「うん」
「誰よりも愛してる。」



そう言うと私もだよとヘニャリと笑うものだから嘘くさいと笑って言ってしまう。この人が何をしていても嘘くさいのだ。


「あのさ」
「ん?」
「君が如何思おうとも私はすごく好きだよ」
「妹として?」
「妹の為に左の顔くれてやらないよ。ま、居たことないからわからないけど」
「そう」
「左の顔の所為?」
「の訳ないじゃない。その前から結婚するって言ってたでしょ?」
「父親的な?」
「父親は凄いのがいますが?」
「まぁねぇ」
「執着?」
「愛情も元を正せば執着だよ」
「反対は無関心だもんね」
「そう言うこと。」
「雑渡さん」
「ん?」
「すっごい父親とすっごい自営業と柵ばかりの小娘だよ。」
「これを自営業というの?」
「…自由業?」
「まぁそうだよね。」
「うん」
「はっきり言って面倒だよ。私自身、こっち側の人間だから入りは良いとしてのし上がっていく為の根回しとか、いろいろ」
「知ってる」
「其れと君を天秤にかけるとね、すっごい勢いで君の方に傾くの」
「…」
「全ての煩わしさも全部引っくるめて鞄に入れて。着の身着のままおじさんのところに来なさい。」
「…」
「早く、お嫁においで」
「…雑渡さん」
「ん?」
「キャバクラの同伴まで許すけどそれ以上は無理」
「うん」
「泣くと思う」
「それ、嫌だな」
「一人にしないでね」
「うん」
「目指せ山本家だよ」
「あー」
「?」
「威厳のあの父親は…」
「無理だね」
「即答?!」



そう言うと車が止まる。どこだろうと思ったら自宅で血の気が引く。雑渡さんの方を向くと鉄は熱いうちに打てっていうでしょう?とのこと。やっぱりヘラリと笑うものだから私も思わずうなづいてしまったのだ




蛍火




「で、婚約者にジョブチェンジと」
「うん…」
「如何したんですか?お嬢様」
「いや、ね。以外とあっけらかんと終わったから。」
「ああ」
「?」
「雑渡さんも頑張ったということです」
「???」



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