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変換なしの雑食夢

ran

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月子の話 8

「ギター?」
「弾いてみて」
「…」
「…」
「駄目だ駄目だ駄目だ!!!!!」
「あ!」
「これは俺のうちにある理想の音とは程遠い!!!!!!!!」
「あー。壊れた」
「月子!」
「ん?」
「駄目だ!」
「どういう風に?」
「む?」
「どういう風に!」
「高音が悪い。低音とのバランスが至極悪い!」
「低音は?」
「そのものはいいがバランス!」
「ウルフトーンは?」
「これか?」
「そう」
「…」
「場所が悪いのね。よくわかった」
「駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ」
「んー…こっちは?」
「…ましだが!違う!!!!」
「わかりました」
「?」
「ネックが悪いのかと思ったけど…根本的に改良しようかしら。内部構造から…いやでもなぁ」
「お、おい」
「ありがとう」
「つ、月子」
「?」
「俺は何か言ったか?」
「うんん。助かってます」
「しかし…」
「?」
「難しい顔をしている」
「そりゃ、ね」
「…」
「あ!ルートさんの言葉で困っているわけではなくてね。逆よ逆!ルートさんのおかげで問題点わかったから」
「問題点?」
「これが私の本業」
「?」
「楽器製作家」
「…?」
「初めて作ったからやっぱり問題ばかりか。どうしようか…ルートさん?」
「…」
「何指差してんの?」
「これは、お前が?」
「うん。初めて作ったやつ」
「?!??!?!?!!」
「顔芸してるけど大丈夫?」
「お、れは!!!なんということを!!!!」
「?」
「月子のギターを!」
「試作品だから」
「壊して」
「覚えてるから大丈夫。」
「だが」
「ルートさん」
「?!」
「わたし、ルートさんのそういうところ一番信頼してるのよ?音に対してのあくなき情熱と妥協しないその姿勢。」
「だ、が」
「その誇り捨てたら本当にただのダメンズよ」




「?!!?!?!」







ガリガリと木を削る月子お姉様とその部屋隅でジメジメと体育座りをするベトさん。…体育座りって世界共通なんだ。そう思っていたらりっちゃんさんが笑っている。

いわく、初めて作った月子お姉様のギターを壊す→それに落ち込む→音楽しかない男がそれすら妥協するならただのダメ男と言われる→信念と愛で揺らぐ→悲愴。らしい。暗い。というか月子お姉様そういうところあるよ。と言えば面白そうだからこのままでいいとのこと。





「えげつない」
「だって」
「ベトさんもあそこまで落ち込まないでも」
「仕方ないわよ。唯一実った恋ですもの」
「唯一?」
「そっ。身分のない時代でよかったわね」
「あれでも?」
「あれも愛よ」
「…」
「子猫ちゃんにはまだ早いわね。」







「ルートさん」
「なんだ」
「暗い!」
「ぐ…」
「いつもの行動見てたら壊すのくらい予想済みですから」
「が!」
「?」
「お前が作ったものならば置いておきたかった」
「試作品を?」
「…」
「駄作を後世に残していたいですか?」
「拒否する」
「わたしの其れも同じです」
「?!」
「最善ではなく最高を。それだけを差し上げたいの。」
「月子」
「付き合ってくれますよね」
「勿論だ!」




「なにこのリア充」
「そういうものなのよ」
「心配して損した」
「本当にね。でも」
「?」
「ベトには最高のパートナーかもしれないわね」





月子の話 8


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月子の話 7

「ムジーク見たことない」
「あ、そういえば」
「見てみたい」
「無理を言わない、月子ちゃん」
「むー。あ!」
「ん?」
「私、明後日から出張行ってきます」
「脈絡ないわね」
「顔色、悪い」
「出張って何だ?」
「出張とは、会社のために私の貴重な時間を割くという拷問です」
「目付き、悪い」
「違うだろう。…そう言えば、月子お姉様、仕事大丈夫なの?」
「時々見に行って血の雨降らしに行けばそれでいいのよ」
「…」
「何?」
「月子お姉様目、笑ってない」
「笑えないわよ!業績下げやがって…うちの馬鹿親父がそんなに好きなら私を解任してくれればいいのよ!殺意を超えて何か違うものが出てきそう!」
「む?月子!」
「ベトさん過剰に反応しない。これ、月子お姉様の通常だから」
「…だが」
「で」
「?」
「貴様はっあ!申し訳ございません、ベートーベン先輩!」
「月子ちゃんは何の仕事しているの?」
「えー…ちょっちゃんさんしか言ってなかったっけ?あれ?ルートさん、怖い!」
「いや、続けろ」
「えー。えーと。あー…楽器作ってる会社の」
「会長してます」
「「え?!」」
「パトロンじゃん!」
「違います。赤字会社の責任を塗りたくられて、私を金で売ろうとした父親の尻拭いとかさせられてるだけです。拘束時間と人間関係と改正法案とかで殺意という殺意を体験できる拷問です」
「本当に身内に振り回されると大変ですね」
「ねー…」
「ダメンズウォーカーね」
「違います!男性に対しては不幸体質なの!」
「喜んでいうセリフではない」
「ちょちゃんさん?!」
「私は?!」
「無職のやつが何言ってんのよ」
「十分ダメ男ですね」
「?!」
「他を指ささない」
「ちょっちゃんさんはインターネットの方手伝ってもらってるから。助かってます。」
「無給?!」
「高給取りです。引き落としで家賃頂いてます」
「法律に引っかかることしません。後手に回るもん」
「…大変ねぇ」
「今までは三味線に逃げてたけど今は家事に生きてます。本当にマジでムカつく」
「口より顔!」
「あ」
「?」
「シューベルトさん暇ですか?」
「?!」
「仕事しません?」
「?!」
「ピアノの慣らしをして欲しいんです。変な癖がつくとダメだから。他の人では…」
「いくらだ!」
「歩合です。ただし、1日8時間頑張れば3カ月頑張れは保険つけます。家賃と食費払っても十二分な生活費を約束します。」
「…のった」
「やった!…ん?」
「…」
「ルートさん?」
「私は」
「ダメンズじゃないですよ。大丈夫!私が養いますから」
「?!」




「ヒモね」
「ヒモですね」
「ヒモだー!」
「ヒモ…」
「パトロンと芸術家と言え!」
「愛人…」
「まぁ!愛ね」




「おい、こら!」






月子の話 7

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月子の話 5

「ルー…」
「起きたか?」
「ん。ルートさんは?」
「?」
「何でここに?」




目が覚めたら自分の部屋で。なぜかルートさんがいる。今何時だ?と思いつつも目覚めて一番最初にルートさんって言うのは好ましい話かもしれない。色素薄いくせに自己主張は激しいんだよね。





「ソファーで寝ていたから連れてきた」
「ありがとう」
「手を離さなかった」
「ありゃ」
「あんなところで寝るな」
「だって」
「だって何だ?」
「ルートさんの音楽が聞こえてたんだもの」
「っ」
「良い声ね」
「なっ?!それをいうなら、お前こそ」
「ありがとう」
「…」
「?」
「月子」
「はい」
「何故、私の前に現れた?」
「?」
「お前が現れた時から私は暗闇に立たされたしがない男に成り果てる。心のざわめきも嵐のようにやってきて私の心を苦しめる。なのに、」
「ルー…」
「お前に触れると、声を聞く、髪に触れる、いや。共にあるだけで美しく晴れた日の田園にあるが如く。俺の心は満たされる。…月子」
「はい」
「あ」
「?」
「愛している」
「?!」
「Meine Göttin」
「ルートさん」
「…」




顔に触れる。怒られた子犬みたい。怒ってもないのに。苦悶し過ぎ。本当に告白してるつもりかしらと言いたくなるもののやめにしておこう。野暮だし。私の矜持に関わるわ。

頬にキスを落とす。見開かれた翡翠の瞳がとても綺麗だからついつい瞼にもキスをしてしまう。




「な?!」
「これを運命と言うのでしょうね」
「月、子」
「私が、あなたに与える苦しみも喜びも痛みも怒りも悲しみも。全てあなたの喉元を締める運命ならば。あなたはそれに立ち向かって、糧にして。全て音楽にかえてしまうのでしょうね。」
「…」
「例え、私がそれを厭い、苦しみ、涙してもあなたは決してやめることはしないわ。」
「そう、かもしれん」
「そう、なのよ。それがあなただもの。そして」
「月子」
「音楽そのものであるあなたの生み出す音に。あなたの血肉になるのならば。私は喜んであなたにこの身を捧げるわ」
「っ」
「愛してる。よく知りしないのに。強情で癇癪持ちなのに。」
「ぐっ」
「私にだけ優しいあなたを私は愛しているわ。」










と言うことがありましてとりっちゃんさんとのティータイムに伝えると思いっきりお茶を吐き出していた。




「な?!え!」
「運命って怖いわ」
「良いの?!あの男!働いていないわよ!」
「良いのよ。」
「よくないでしょ」
「ふふふ。養えない甲斐性なしだと思う?」
「あなたのそう言うところ好きよ」
「ま。相変わらずああ言う人だから」
「(ピー)とか相性は?」
「歌苗がいないとグイグイ来るわね。」
「当たり前よ。で?」
「知らないわ」
「?!」
「そこも好きなのよ。」
「シャイだものね。」
「ええ」
「…ふーん」
「?」
「愛ね」
「そうかもね。あら」
「?」
「コーヒー美味しい」
「そう?」
「?」
「あ、そう言うことね」
「ルートさん…覗いてたのね」
「あなたの飲み物はあいつが淹れたのよ」
「ふふふ。」
「重いわね」
「わかってるから良いのよ。ありがとう、ルートさん」







月子の話 5

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月子の話 3

「…だ、れ?」
「う、あ!ちょっちゃんさん」
「え?!あ…ひっ?!」
「爪、割れて」
「血?!」
「絆創膏を…探してたので。…ごめんなさい」
「?」
「知らない人怖いのに。部屋に」
「ま、って」
「?」
「手伝う、から」
「あ」
「…」
「っう」
「ご、ごめん」
「い、え」
「…出来た」
「あ」
「薬。塗ったから」
「…」
「?」
「ありがとうございます」
「?!?!?!!」








ってな事があったらしく、ちょっちゃんさんが妙に月子お姉様を怖がらない。そして




「ルー君」
「…なんだ。ヴォルフ」
「こーんな顔してたら怖いって」
「黙れ」
「月子ちゃんに嫌われちゃうよ」
「…黙れ」






ご機嫌が最悪なベトさんが居る。月子お姉様は気がついていない。一族の中で一番しっかり者で最大級の鈍感と定評のある人だ。気がつくはずもない。
ベトさんはどうやら月子お姉様を好きらしい。三味線を聞いてからよく近くに陣取って居る。私の時にはしない手伝いまでして居る。マジでなんだったんだよあの告白。
その状況を誰よりも楽しんで居るりっちゃんさんが直球勝負で月子お姉様に「付き合ってるの?」と聞いてみたらキョトンとしていた。それも可愛かったのだろう。顔が真っ赤になって悶えていた。マジでなんだったんだよ。
月子お姉様いわく「あの脂ぎったの思い出すから嫌」との事。おい、よく聞けよ。悶えるところではない。マジで(以下略)





「爪」
「ありがとうございます。もう大丈夫です」
「洗い物」
「手袋してるから」
「…痛くない?」
「ふふふ」
「?」
「本当に…ん?」
「ひっ」
「代わる」
「ルートさん」
「貸せ」
「あの」
「…何だ?」
「割らないでね」
「知らん」
「ふふふ」






割り込むベトさん。逃げ出すちょっちゃんさん。勝負あったわねと笑うリストさん。確かに。ただし、勝負にすらなっていないと思う。




「割らなかったぞ」
「流石ルートさん」
「…」
「ん?」
「Meine liebe Frau.」
「???」



「「「?!」」」
「え?!どういう意味?」





「ルートさん?」
「何だ?」
「ドイツ語?」
「そうだな」
「わかる言葉で言って下さい」
「そのうちだ」
「?」
「今はこれでいい」
「???」






月子の話 3

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月子の話 2

「歌苗。おはよう」
「お姉様?」
「月子って呼んで」
「月子お姉様」
「もー!」
「いや、それより」
「?」
「朝ごはん作ってくれたの?」
「うん。あ!朝パン派?パン見当たらなかったから」
「違う!」
「嫌いなものあった?」
「違うのぉ」
「嬉しいのよね。子猫ちゃん」
「あらりっちゃん。おはよう。嬉しいって?」
「朝からぁ」
「ふふふ。これから無理な時は頼むけど朝くらいは私が作るわよ?ほらお弁当も作ったから。早く食べなさい。ね?」
「ありがとう」




めっちゃ可愛い!姪ラブ。顔に出ていたらしくりっちゃんに愛ねと言われたので激しく同調する。姉さんもお義兄様も。こんな可愛い子にくろばかりかけて。
そう思いながらご飯をよそう。いつもより美味しいというピンク頭を威嚇しつつ(歌苗の食事が一番だ)賑やかな食卓を楽しむ。本当こういうの久しぶりだわ。



「月子お姉様」
「ん?」
「これから」
「仕事はここでもできるから落ち着くまでお家賃払います。取り敢えず1年分昨日振り込んだから確認して」
「いち?!」
「月子ちゃん凄く金持ちなの?」
「働いてるから、それなりに。」
「何をなさっているのですか?」
「月子お姉様は」
「秘密よ秘密!歌苗」
「ごめんなさい」
「ぶー!狡い」
「ずるくないわよ。私はここに仕事できてるんじゃないの。かわいい歌苗を愛でるために来てるんだもの」
「愛ねぇ」
「愛よ」
「演奏家だろう」
「へ?」
「指にたこが出来ている」
「あ?!あー…おかわり入ります?」
「貰う」
「演奏家?」
「何何何?!なに弾くの??!ヴァイオリン?フルート?」
「三味線」
「三味線?」
「趣味でね」
「趣味?」
「趣味じゃないでしょ?」
「んー」
「弾いてみろ」
「そのうち、ね」
「何故だ!」
「ちょっとベトさん!」
「今は少し怖いから。」
「怖い?」
「そっ。ごちそうさま。食べ終わったら流しにだけ持って行って。歌苗。早く行かないと遅刻」
「え?!あ!」
「私部屋の片付するから。またお昼ね」
「な?!おい!」






食器を持って台所に向かうと後ろからけたたましい音がする。何事?!と振り返れば恐ろしく姿勢の良い男がこちらに向かってくるので喉が変になってしまう。食器置いた後でよかった。びびって落とすとこだったわ。何?と尋ねても翡翠色の目が私を睨む。視線で背が縮むだなんて知らなかったわ。





「おい」
「は、はい」
「俺、は」
「?」
「その、」
「???」
「シャミセンを聴いてみたい」
「…は?」
「…」
「…」
「…」
「ふっ。くくくっ」
「何が、可笑しい?」
「だっ、て」
「未知なる音が有るのなら聴きたいと思うその欲が罪というのか?いや、そうではないだろう!聞ける」
「長いし、くどいし…意味、わかんない、し」
「何?!」
「…」
「なんだ?」
「聴きたい?」
「そうだから言っている!」
「…馬鹿馬鹿しくなっちゃった」
「何がだ!」
「父に結婚したらやめろって言われて。趣味がたまたま当たっただけでのぼせあがるなって」
「そうか」
「確かに調子に乗っていたのね。その程度でいじけて」
「いや…おれに経験がある」
「そう。でも」
「?」
「好きなのね。」
「…は?」
「だからここに来たのよ。色々理由つけてたけど」
「なっ?!は!」
「ベトさん?」
「…ルードヴィヒだ」
「ルートさん」
「なんだ。」
「三味線、聞く?」
「ああ」
「なら聞いてちょうだいな。」













「ベートーベン先輩!」
「ルー君顔真っ赤」
「私に告白したくせに」
「…あれは」
「愛、ね!」





月子の話 2

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