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変換なしの雑食夢

ran

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暗の妹と三成 9

白無垢を着て治部様の横に座る。出来るだけ目を伏せて。凄く恥ずかしくて目なんて上げていられなかったけど。まぁそれは良いとして、ちらりと横を見ると涼しげな表情で前を向いている治部様の横顔が目に入る。何時も通り堂々として臆することのない方だ。すると少しだけこちらを見られるので目が会う。少しだけ目を細めて如何したと囁かれる



「凄く、緊張して」
「知った顔ばかりだ」
「そうなのですが…」
「おい」
「?」
「言いそびれていた」
「え?」
「良く、似合う」
「!」
「如何した?」
「いえ、治部様も」
「?」
「凛々しくあられて。…素敵です」
「そう、か」
「はい」





そう仰ると静かに前を向いてしまう。きっと私は真っ赤なのに、治部様は涼しそうな顔のままはだろう。少しだけずるいと思うし、羨ましい。







「やれ、三成」
「何だ?」
「ひひひ。オメデトウ」
「ああ」
「もう黒田とは呼べぬなぁ」
「若輩者でございます故今までと変わらぬご指導ご鞭撻をよろしくお願いいたします、刑部様」
「あいあい。太閤が主らの祝いに離れを下賜すると申しておる。」
「?!」
「礼は後よ。今は飾りになっておれ。荷物はあちらに運んだからなぁ」
「ありがとうございます」
「久方振りの播磨は如何だった?」
「義姉上とゆるりと過ごせます様に差配して頂き、色々と教えて頂けました。」
「左様か。1週間主のおらぬ間は大変大変」
「刑部!」
「これからは三成を頼むなあ」
「足手纏いにならぬ様精進いたします」
「ひひひ。本に良き嫁御が来たなぁ」
「でだ」
「?」
「何故暗がいる?」
「はてさて。あれは荷物運びの下男よ」
「如何見ても」
「治部様…申し訳ありません。」
「?」
「今日のみは許してやってくださいませ」
「しかし」
「太閤以下皆許しておる。晴れ姿よ。冥土の土産にしたかったのよなぁ」
「冥土?!」
「ひ、ひひひ」
「揶揄うな。別段構わん。本人も仮装しているつもりだ。そういう風に見てやれという事だろう?秀吉様がそれでいいのなら私はそれでいい」
「申し訳ありません」
「相も変わらず真面目よな。ひひひ。」
「でも」
「?」
「嬉しいのです。兄にはとても目をかけていただきました。ふふふ。」
「泣き始めたよな。ひひひ」
「治部様。刑部様。本当にありがとうございます」
「私こそだ」
「?」
「妻になってくれた事、礼を言う。幾久しく」
「それは私の言葉です。私を妻にしてくださりありがとうございます。幾久しく、お側に」
「ん」
「ふふふ」





暗の妹と三成 8





「にしてもよ」
「?」
「主はこの男のどこが良くてうなづいた?」
「刑部!」
「え?」
「すぐ怒る男よ。主とて優しい男が良かったであろ?」
「悪ふざけはよせ!」
「ひひひ、冗談よ」
「私は、治部様の事、」
「「?」」
「優しくて素敵な方だと思っていました」
「…」
「左様か。よう言っておったものなぁ」
「ええ。治部様?」
「…」
「?」
「前を向いていろ。雑談する時ではなかったのを失念した」
「え?ああ。…そうでしたね」
「やれ、黒田」
「?」
「…みりゃれ。耳が真っ赤よ」
「?!」
「三成はこう見えても恥ずかしがり屋よ…ひひひ。嬉しいようよ」
「はい」
「さて。そろそろ席に帰らぬと叫ばれそうよ。」
「ふふふ」
「頼んだぞ」
「はい」

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暗の妹と三成 7

「おい!」
「兄上…?!(ぷい!)」
「(可愛いなぁおい!郷ならどんだけ言われるか!)すまん」
「…」
「お前さんは小生の一番可愛い妹だ。ひどい事を言った。すまん」
「兄上の、ばか」
「?!泣くなよ…」
「だぁっ、、て…」
「小生が悪かった。頼む。泣かないでくれ」
「あい」
「良い子だ。…でだ」
「?」
「此れが光からだ」
「義姉上?」
「ああ。前半はすげぇ怒ってる。小生をだけど。」
「ふふふ」
「後半は…泣くなよ」
「…」
「光なぁ、お前さんを放り出したみたいになって凄く後悔してんだよ。お前さんには嫁いだ時世話になったのにってな。…小生としてもだ。だが小生は会いに来れるけど彼奴は無理だろ?ああいう別れだったから手紙もかけなかったしで。許してやってくれ」
「光義姉上は…私にとって大切な姉上だもの。ずっと大好きです」
「あとは任せろ。お前の好きなようにしたら良い。嫌ならどうにかして逃がしてやる」
「…」
「?」
「治部様はどうして私なのでしょう?」
「さぁなぁ。半兵衛に聞いても誤魔化すばっかだし。ああいう奴だけど冗談で言う事はねぇな。」
「反対していたのに?」
「今でもしてる。彼奴は凶惶だ。お前に何かあったら…やっぱり反対だ!」
「兄上」
「でも」
「?」
「お前には優しい男なんだよな」
「…はい」
「侍女に手を出す男だぜ」
「今まで侍女いなかったそうです。私もこのままそばにいるようにと言われてます」
「マジか?!」
「大阪と佐和山と戦さ場のみらしいので。佐和山に行くなら共に行けば良いし、大阪でもこの通りでと。刑部様がそう。でなければ」
「?」
「刑部様の仕事が増えるそうです」
「ベタ惚れかよ」
「兄上」
「ん?」
「どうして兄上は側室を持たないのですか?」
「あん?」
「…」
「お前さんたち見てたからな。」
「そう、ですか」
「結婚なんて碌でもねぇとは思ってたぜ。このまま気ままに生きても良いかなってくらいには。だけどよ〜」
「?」
「光見たらなぁ。苦労させるだろうけど。結婚してぇとおもってな。此れがまた良い女だろ?もう光だけで良いって思っちまっただけだ。もともと小生は好色ではないからな!」
「ふふふ」
「三成には小生が言っておく」
「!」
「側室入れるんなら返してもらうって。」
「そ、それは」
「きっと彼奴はうんっていうぜ。いや、黙れか?当たり前だ!だな」
「ふふふ」
「着の身着のまま来いだぁ?そんなの小生が許さねぇ!三国一の花嫁にしてやるからな」
「…そう」
「?」
「そう望んでも良いのですか?」
「当たり前だ」
「っ」
「お前さんは小生の一番可愛い妹だからな」











という訳だと言えば福々とわらう刑部の笑みに戦々恐々する。1に側室を持たない事。2に嫁入り準備するまで婚礼は待つ事。そう伝えたらそれ位ならいう事なのだろう。




「して」
「あん?」
「嫁入り支度はいつ頃よ」
「2年」
「妥当よな」
「と思うだろ?ところがどっこい」
「?」
「小生には出来た嫁がいてなぁ」
「確かに主にはすぎた嫁御よ」
「ぐ…。まぁ良い!何時でも嫁げる様にってな準備してたみたいだ」う「!」
「今反物の仕上げをしているらしくてな早ければ来月にはこっちに持って来れる」
「出来した。流石よな」
「そっちは如何だよ!…結納支度してないだろ?」
「明日にでもいけよう。目録をやり取りしておったからなぁ」
「なにぃ!?」
「主の家老は誠仕事の早い男よの」
「あいつ!」
「やれ、三成を呼んでこようか」
「本当に良いのか?」
「それはこちらの台詞よ」
「小生はまだ反対してる!」
「左様か。黒田は?」
「…嫁ぎたいそうだ」
「ひひひ」
「引く手数多だろうに!」
「その引く手も三成に斬られよう。被害が少ない方が平和よ平和」
「まぁなぁ…真逆!」
「ん?」
「手を出しちゃいねぇよな!」
「ないない。それが出来る男ならとっととものにしておろう。くそ真面目に初夜までは手を出さぬつもりよの」
「真面目すぎんだろ!」
「ああ言う男よ。やれ、来たか」
「入るぞ…暗まで。如何した?」
「主の縁組が決まった決まった」
「?!」
「うちの妹を貰うからには側室なんて貰うなよ!」
「当たり前だ!」
「ひひひ。来月には主の嫁御よ」
「何?!」
「早くて驚くだろ?」
「遅い!」
「…ひひひ。支度は必要よ」
「そんなものはいらん!」
「そういうなよ!着の身着のまま行かせたらあいつの肩身が狭くなる!」
「っ」
「左様よ。水面下で皆が動いた故このように早いのよ。」
「すまん」
「構わぬ。が、三成」
「何だ?」
「手を出すなよ」
「あ、当たり前だ!」
「ひひひ。言うた通りよな」









暗の妹と三成 7









「やれ、入る」
「やあ吉継君!待っていたんだよ。」
「如何なった?」
「強行よ強行。今月には結納を交わして来月には輿入れよ」
「もっと早くできないかい?!」
「半兵衛」
「だって三成君の気が変わったら…」
「変わらぬよ。安心致せ、賢人」
「万事任せる。頼んだぞ」
「あいあい」
「にしても…ふふふ。僕にも孫が」
「結婚もまだよ」
「手を出してないの?!誤差じゃないか」
「三成が無体をせぬだろう。」
「そうよの。それが出来れば良かったのだがなぁ」
「唆してこようか」
「やめしゃれ」

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暗の妹と三成 6

「治部様」
「?」
「お弁当を用意いたしました」
「ああ」
「手すきの時に摘んでくださいね。」
「助かる」
「いえ。私は横に控えておりますので。何かありましたら」
「おい」
「?」
「なにをする予定だ?」
「繕い物でもと」
「ならここでしていろ。そちらの方が呼ぶ手間が省ける」
「はい。わかりました」




「ひひひ」




「刑部か」
「刑部様の分も支度しております」
「あいあい。本に出来た女よ。」
「ありがとうございます」
「嫁の貰い手も数多よなぁ」
「?!」
「ふふふ」
「刑部!」
「はてさて。もう許嫁でもおろうか?」
「私がですか?」
「左様。」
「居りませんよ」
「!」
「ひひひ。なれば三成などどうか?」
「!!!?!?!」
「ご冗談を。」
「冗談であるものか。主とてもう良い年よ。いつ嫁いでもおかしくはあるまい」
「そう、でございますけども。私の場合黒田と申しても名ばかりですから」
「?」
「私は御隠居様と遊び女の子ですので…その、兄上の温情で黒田の末座に加えていただいているのであって大奥様たちには良い顔していただいておりませんから」
「左様か」
「…」
「刑部」
「あいあい。ちとでる」
「!」
「勘違いするでない。ひひひ。主を侍女から退けたりましてや放逐したりはせぬよ。そんな事をしたら我とて…ひひひ」
「刑部」
「あいあい。弁当はそのままにしりゃれ。主の手料理は美味故」
「!」
「愛い愛い。」
「…」
「ではなぁ」







ばたりという音とともになんとも言えない気まずさが残る。ちらりと治部様を見ればじっとこちらを見てこられるのでどきりとする。刑部様はああ仰っていたもののお気に召さないのかもしれない。
自然と申し訳ありませんと呟くと不思議そうになにがだと言われてしまう。




「出自が」
「ああ」
「?」
「此方が詫びることだ。すまない。気を悪くしただろう」
「い、いえ!」
「?」
「…治部様」
「何だ?」
「その…」
「何が言いたい?」
「…」
「お前にしては歯切れの悪い。が、もし出自やそれを黙っていたことに対する件ならば気にしなくて良い。私はお前がお前であれば良いと思っているしそれ以上でもそれ以下でもないと思っている。それを無理や暴いてしまった己の至らなさの方を恥じたい。」
「そんな事!」
「ならば気にするな」
「…はい」
「…美味い」
「…は、い」
「?!」
「…ぐすっん」
「な、泣くな。気に障ったか?恐ろしかったのか???」
「いいえ、いいえ」
「ならば」




嬉しいのですといえば治部様が驚いた顔をするのでおもわず笑ってしまう。嬉しいのだ。彼方でも私にそう言ってくれる方は今まで一人もいなかったのだから。ぐずぐずと泣いてしまってきちんと言えないほど嗚咽を零す。すると、何故か治部様が困った顔をして少しうなったあと私を抱きしめるのだ。一瞬なにが起こったのかわからなかった。




「泣くな」
「嬉しくて、泣けるのですね」
「それでも。」
「?」
「お前の泣き顔は心の臓に悪い」
「え?」
「…」
「治部様?」
「先程の」
「?」
「刑部の言った件だ」
「えっと…」
「もし、反対されたとしても。嫁入り道具もなにもいらない。着の身着のまま。」
「治部様?」
「私の元へ嫁いで欲しい」









暗の妹と三成 6







「だーかーらー!小生の話を聞け」
「主の話は本にわかりにくい。是非のみで答えよ」
「なら、嫌だね!小生の可愛い妹は優しい男に嫁ぐんだよ!」
「なれば三成が最良よ」
「何処がだ!大体…彼奴の母親は遊び女じゃなくてれっきとした側室だ。うちのお袋がトチ狂って虐めただけだよ。」
「左様か」
「親父がお袋の許可なく貰っちまったからなぁ。彼奴産んですぐ里に帰って…あいつはちいせぇときから苦労してんだよ!」
「あいあい。では三成が愛でで幸せよの」
「だから!!!」
「諦めよ…ん?」
「?!」
「初々しいの」
「何故じゃー!!!」

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暗の妹と三成 5

あの後、刑部様と侍女頭様にご相談したら朝夕は治部様付き昼は今まで通りで、治部様主体の侍女になる様に仰せつかった。治部様の侍女がいない事と昼間は基本今まで通りに成ろうということでこの配置らしい。出世したのうと刑部様に言われてもピンと来なかったのは治部様の筆頭侍女と雖も一人であることとあまり出世に興味が無いせいだろう。



「治部様」
「?!」
「お召し物をお持ち致しました」
「な?!」
「?」
「何故、お前がいる?」
「え?刑部様から御聞きになっておりませんか?」
「刑部?いや…何も聞いていない」
「今日から朝夕は治部様付きの侍女になりました。昼は今まで通りですが…」
「?!」
「よろしくお願いいたします」
「あ、ああ」
「御召し替え手伝います」
「頼む」




そう言ってしゃがむとひしひしと視線を感じる。不意に顔を上げると治部様と目があったので如何致しましたか?と尋ねると眉間の皺が深くなっていく。不手際があったのだろうかおどおどしてしまうと不思議そうに見られた。



「不手際がありましたか?」
「いや、無いが?」
「至らぬところが有りましたら仰って下さいね」
「無い。」
「治部様」
「そもそも私は遠慮なく直ぐ言う。」
「なればいいのですが」
「?」
「眉間の皺がひどくなって御いででしたから」
「?!」
「きつくありませんか?」
「あ、ああ…その」
「?」
「刑部の悪癖を思ってだ。お前では無い」
「ふふふ。刑部様もお忙しいですから。お忘れになったのかも知れませんよ?」
「そう思うか?」
「ふふふ」
「おい」
「はい」
「…嫌ではないか?私付きなどになるのは」
「私がですか?」
「ああ」
「嫌ではありませんよ。何より治部様」
「ん?」
「衣食住を整えるものがいなければ治部様も大変でございましょう?」
「それは、そうだが…」
「刑部様のように治部様も豊臣になくてはならない方なのですから。精一杯お役目果たさせていただきます。刑部様が寝込まれたら手伝いに行かないといけませんのでそれだけはお許し下さい」
「…ああ」
「目下、きつかったり緩かったりしていませんか?」
「丁度良い」
「良かった」
「っ」
「お食事は刑部様のところでなさいますか?」
「あ、ああ」
「治部様?」
「聞きたい事がある」
「?」
「私はお前を何と呼べば良い?」
「?」
「黒田は暗を思い出すから…違うものが良い」
「ならばここに上がった折に立川と名付けられましたが」
「いや、そうではなく」
「?」
「名前をだ。まだ聞いていなかった」





「三成!!!!!!テメェ!!!!小生の妹を!!!!」







「…」
「兄上!?」
「暗…貴様」
「おい!うちの可愛い妹に何しようとしてんだよ!」
「兄上!朝から何を…」
「お前もお前だ!態々志願しやがって!!!こいつはなぁお前かへぶし!」
「はてさて騒がしい限りよなぁ」
「刑部!」
「ひひひ。朝から良い思いができたであろう?」
「…早めに言え。」
「驚きもたまには必要よ。なぁ、暗」
「うるせぇー!!!」
「兄上」
「大体!お前かいけねぇんだ!小生に相談なく!!!」
「兄上は数日行方不明でしたから」
「ぐ…それでも待つのが妹だろう!」
「…」
「そもそも大阪にも勝手についてきやがって!」
「おいっ!」
「ひひひ。ちと三成またしゃれ」
「何がだ!」
「こんな事なら又兵衛にでも頭下げて押し付ければ良かったぜ」
「…」
「お前さんなんて兄でもなけりゃ妹でもねぇ!!!とっとと播磨に帰りやが…」
「わかりました」
「れ?!あれ?」
「もう兄でもなければ妹でもないのでしたら態々播磨に帰る必要はありませんね。義姉上にはおって文を書きます。」
「いや?!待て!!!!これは言葉の」
「刑部様」
「はてさて?」
「黒田のものではありませんので…大阪において頂けますように竹中様にお願いしてもよろしいでしょうか?」
「必要なかろう。主の三成付きは太閤たっての命よ。縁は切れても出自は変わらぬでなぁ」
「ですが…治部様にご迷惑が」
「私は構わん。お前が付いてくれるだけで良い」
「ふふふ」
「お、おい!」
「…」
「す、すまん!」
「あら、黒田様」
「「?!」」
「如何致しましたか?」
「ひひひ」
「御用でございますか?」
「い、いや」
「なれば失礼致します」








暗の妹と三成 5







「時折あるのよ。前は何時だったか?」
「刑部様が身体を壊されて寝込まれた折です」
「ああそうよそうよ。あれは阿呆にも通夜と言いよったのよなぁ」
「?!」
「やれ色めき立つでないわ。随分と此れが怒ってなぁ。あれも過ぎた冗談だっただろうに」
「知りません。言って良い冗談か否かわからない年でもありませんでしょうに」
「言うてやるな。だから阿呆なのよ」
「…お茶のお代わりは?」
「頼む」
「ひひひ」
「怒るな」
「すいません…」
「いや、あれを怒るのは仕方ないが…」
「?」
「お前に眉間の皺は似合わない。」
「!」
「わざと難しい顔をしなくて良い。」
「…お気付きでしたか?」
「ひひひ」
「ですが。ああでもせぬと兄上はもっと酷い事になりますから…申し訳ありません」
「構わない。ただ」
「?」
「…いや、いい。不具合があればすぐ言ってくれ」
「ありがとうございます」
「ひひひ。」

拍手

暗の妹と三成 4

「今から時間は空いているか?」
「今からですか?」
「ああ」
「少しお待ちくださいませ。上に聞いてみないと」
「刑部からは許可を貰った。侍女頭というものの許可もだ」
「そうなのですか?」
「刑部のところへ行って話している時に来たからな。刑部が話をつける前に直ぐ許可を得られた。」
「では大丈夫なのでしょうね。あと」
「?」
「どの様なご用件でございますか?」
「ああ。馬には乗れるか?」
「少しなら。余り上手ではありませんが」
「なら私と共に乗れば良い。城下に行くぞ」
「ああ。このあいだの」
「半兵衛様から恐れ多くも休息を取るように言付かった。」
「休息?」
「?」
「治部様」
「何だ?」
「お急ぎで入り用なものはございますか?」
「いや…ないが」
「ではゆるりと致しませぬか?」
「?!」
「あ、城下に行きたくないわけではなくて…あのですね」
「っ」
「お顔の色が優れません」
「な」
「あ、ご無礼を。」
「いや良い。だが…」
「また機会はありますよ。少し横になってください。刑部様もご心配されておいででした」
「…」
「治部様?」
「では私の」
「?」
「私の部屋に、来るか?」
「治部様のですか?」
「ああ」
「…私がいればかえって煩わしくありませんか?」
「ない」
「ですが」
「…誰かがいないと仕事を、してしまう…から」
「!」
「見張っていて、欲しい」
「ふふふ」
「笑うな」
「そうでしたね。治部様の殿下好きは天下に鳴り響きておりました。ふふふ」
「…」
「茶櫃とお菓子を頂いて参ります。一緒に参りますか?」
「ああ」
「今日は治部様のお部屋に遠出ですね」




そう言うと私の前を歩いて行かれる。この人は本当にわかりやすいわかりにくさを抱いて生きられているなあと思う。今まであったどの方よりも繊細で儚い。何よりとと思った瞬間意識を止める。如何したと言わんばかりの顔でかの人がこちらを見るのだから。



「不都合があるか?」
「いいえ、違うのです」
「やはり私が持つ」
「お重を持っていただいているのにですか?本来なら私が持たなくてはならないのに」
「私が好きで持っている」
「ありがとうございます」
「…」
「この間」
「?」
「左近様が治部様にお礼を申し上げていたら鼻を鳴らされているのをみました」
「?!」
「治部様?」
「い、や…」
「仲がよろしい侍従でございますね。先程も」
「喧しい男だが…」
「お弁当の用意をして頂いたりとても気の付くお方なのですね」
「あ、ああ」
「治部様?」
「何だ?」
「やはりお疲れの様ですね」
「すまない」
「?」
「播磨から来て城下に連れて行くと言ったのになかなか連れて行ってやれん」
「ふふふ」
「何だ?」
「その様にお疲れな顔をされていては心配の方が先に立ちます。」
「…」
「私も侍女の端くれですから。治部様や刑部様がどれだけ忙しいのが存じ上げております。特に最近は…その様な時は休んでいただくのが一番かと」
「だが…」
「ではこう考えませんか?」
「?」
「雨の日に行けないのと同じです。貴方様が健やかならば何時でも。お声をお掛け下さいませ。それまで仕事以外で城下に行きませんから」
「!」
「無理はなさらないで下さい。ね?」
「分かった」
「ふふふ」




ここだと言ってはいる部屋は思いの外黴くさい。曰く、ここに帰ってきたのは数か月ぶりらしい。侍女は?と尋ねてもあーとかうーとか、珍しく歯切れが悪くて首をかしげる。




「辞めさせた」
「?」
「私付きの侍女はいない。刑部にも再々言われているが…そのだ」
「その?」
「明らさまに色目を使ってくる奴もいたからな…好きになれん」
「にしても…治部様」
「?」
「…少しお掃除しても?」
「?」
「いえ、いけないのでしたら…ですけど」
「それはですけど助かるが」
「幸いあまりものがありませんから。少し縁に。火鉢に火をいれますから」
「あ、ああ」
「一刻あればあらかた終わるかと。其処からゆっくりいたしましょうね」














「…」
「あらかた」
「いや、十分だ。」
「布団も干しましたし。今日はゆっくり休めますよ」
「そうか」
「ですが」
「?」
「誰か侍女をつけませんと…恐れ多くも執務室は刑部様と同室ですから私たちがお世話しておりますけども」
「基本あちらで休むから不具合はない」
「…」
「如何した?」
「お気に召していただけるかわかりませんが刑部様にお願いして治部様の侍女を致しましょうか?」
「?!」
「時折になるかと思いますが」
「頼む!」
「治部様?」
「い、いや。刑部にも私から言っておく。…頼む」
「はい」
「…」
「では召し上がりましょう?ふふふ。お茶を淹れますね。」
「ああ」







暗の妹と三成 4









「城下に行かなかったのかい?」
「さようさよう。ひひひ」
「しかも三成くんの部屋かい?」
「あいあい」
「だー!!!!!」
「煩い椅子だね!動かないでおくれよ」
「何がだ!暴れずにいれるか!!!」
「床入りしていた?」
「?!」
「それがなぁ」









(出歯亀だが仕方あるまい…庭先から様子を伺うか)
「…刑部様?」
「!?」
「しぃー」
「ひひひ」









「とまぁ。この様な次第よ」
「あの三成くんを寝させるだなんて!」
「火鉢の暖かさに眠気を誘われたのだろうがなぁ。ひひひ。我が来たことすら気づかぬ深い眠りは珍しい」
「ふふふ。繕い物をして居る彼女の横がそんなに居心地が良かったのかな?官兵衛君」
「何だよ!彼奴はやらねぇよ!」
「知ってるよ。ただし彼方から来たら受け入れるからね」
「ぐ…」
「はよう妹離れいたせ」
「うるせぇ!」

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