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変換なしの雑食夢

ran

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日常 16

「入るぞ」
「兄上」
「佐和山の資料だ」
「ありがとうございます」
「治部様、お茶をお持ちし致しました」
「相模」
「相模?」
「私付きの侍女だ。相模。私の兄上だ」
「相模でございます」
「ああ。お前の嫁候補か」
「兄上?!」
「ふん。早く祝言を挙げて父上を安心させろ。」
「何を?!…相模?」
「はい?」
「この男の言うことは気にするな!」
「お前が遅いから私が来ているのだろう?!」
「誰も頼んではいない!!!
「ふふふ。治部様とお声がよく似ておりますね」
「兄弟だからな」
「話し方も。ふふふ。お羨ましい」
「貴様がこれの嫁になれば、兄弟の一員だ」
「あら。ふふふ。やっぱり治部様にそっくり」
「おい」
「お優しい。」
「…」
「兄上。相模は私のものです」
「知っているが…本当にこれでいいのか?能吏だが人間しては最悪な部類だ。」
「…どういう意味ですか?」
「ふふふ。仲良しということで御座いましょう?」
「「何故そうなる?」」
「そういうところがです。ふふふ。兄弟水入らずにお邪魔してはいけませんから失礼致します。それと、石田様。嫁候補になれるほどの身分ではありません。早く良い縁組を」
「相模」
「おい、どういうことだ?」
「?」
「貴様も愚弟のそばに居れば自ずと分かるはずだ。無欲さと人間として最低な男であることを」
「兄上…貴様」
「黙れ愚弟。」
「キサマァァァァァ!!!」
「ほら見てみろ!実の兄ですらこの所業だ。普通とか一般的とかこいつには無理だ。我々も鬼ではないからな!こんなのの嫁になって貰う荒業を他者に求めん!今の今まで父上始め皆縁組など夢のまた夢だと思っていた。それがだ。他国にまで才色兼備に聞こえた貴様を嫁にしたいと良い、太閤殿下にまで願い出だというのだから諸手を挙げて喜んだのだぞ!?なのに貴様は何を思ってまだ主従の関係にある?!とっとと求愛でもなんでもして縁を結べ!!!そのすぐに叫ぶのをやめろ!!!父上ですら手を焼くからお前は才が有っても寺に入れられるのだ!!!五つの魂そのままで成長するな!!!」
「黙れ!相模には無理は言わん!たとえ私に子がなくとも佐和山の城は貴様の息子に継がせればいいと何度も言っただろう!」
「このドアホ!!!私たちは城代だ!継ぐ気はない!!!」
「何?!」
「あ、あの」
「相模も何かこの痴れ者に言え!」
「貴様はとっとと嫁げ。家名も地位も。貴様には他国にまで鳴り響くその名があるだろう!何を戸惑う?!これはバカだが人を見る目はある。結婚してもこのバカのそばにいて世話を焼いてくれればいい!城は私たちでしっかりと…何が可笑しい?」
「相模?」
「だっ、て。怒り、かたま、で」
「笑う場面か!!!」
「貴様!!!相模に叫ぶな!!!」
「ほら見ろ。こういう分かりやすいほどの馬鹿だ」
「ふふ。馬鹿ではありませんけど。治部様は純粋ですから」
「何も気にせず嫁いで来い。父始め家中皆楽しみに待っている」
「?!」
「強いて言うなら最初で最後だと思っている。…父上ですら私を送るほどだ。…相模殿。嫌なら言ってくれ。如何なる手を使ってもこの愚弟を諦めさせる」
「ふんっ!」
「治部様?」
「相愛なのだからな!…こいつは私を裏切らん」
「そういう所が面倒なのだ。」
「何?!」
「真実だろう」
「あ、あの」
「「?」」
「…」
「「おい」」
「や、っぱり、そっく、り」





日常 16





「やれ、兄上殿」
「吉継殿」
「どういう塩梅か?」
「似ていると言って笑ってしまいだ」
「ひ、ひひひ」
「本当にうちの愚弟でいいのか?出自程度ではお釣りがくる」
「本人はそう思っておらぬのよ。お互い大事すぎてなぁ。今一歩踏み出せん」
「そうか…にしても」
「?」
「あんな三成を見るとはな」
「如何した?」
「あれの笑う顔を他に見せたくなかったのだろう?出て行けと追い出された」
「左様か…随分と人らしい」
「本当だな」
「して親父殿は?」
「あの人も文化人だからな。無作法の息子より多才の嫁殿を楽しみにしている。数年前の宴に出ていたおりからファンでな。まさか嫁後になるとは夢にも思わなんだと御自身の嫁取りのごとく喜んでいる。ゆえに私がここまで来た」
「ひひひ。親父殿らしい」
「実際如何だ?親父殿に諦めるように言ったほうがいいか?」
「いや、何。外堀を埋められているからな。存外早いかもなぁ」
「なら、いいが」

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日常 15

「見ました?先日の宴の席」
「ええ」
「羨ましいわ。私は奥向きで見れなかったのよ」
「まぁこれは残念でしたわ」
「治部様が徳川様の差し出した杯を取り上げて御自身がお飲みあそばしたのでしょ?」
「そうなのよ。あの御気性ですから他の方の杯を交わすのが許せなかったのでしょう?」
「きっとそうよ。其れに徳川様はお万様の事が有りますし益々、ね」
「あの細身で抱きかかえる姿は身悶えましたわ」
「本当に、十二単を着た相模様を抱きかかえて連れさる治部様のお姿なんて絵巻物のようで」
「ええ。まるで昔男のよう」
「ほんにほんに」
「でいつ祝言を?」
「…」
「…」
「其れは、相模様次第で御座いましょ?」
「身分など関係ない実力主義の豊臣であの方ほど身分を気になさる方はおりませんでしょうに」
「ほんに…大体彼の方以外嫁げると思います?」
「無理でございますね」
「其れを早うお気づきになられればいいのに」





「…姦しいな」
「今私と貴方様が二人きりなのが問題なのでございます」
「刑部が忙しいからな。ならばお前くらいしかついてこれないだろう」
「そうでございますが…噂が広がりますわ」
「くだらん」
「あら」
「真実にしてしまえば問題ないだろう?」
「ふふふ。ご冗談を」
「ふん!」
「…如何いたしましょう…」
「私に聞くな」
「本当にもう…まさか一献頂ける譽れがあるとは」
「…酒は飲むな」
「もう二度と飲む気はありません」
「なら、いい。おい其方の紙を取ってくれ」
「此方ですか?」
「ああ。助かる」
「其れより、治部様も否定してくださればいいのに」
「何がだ?ここの計算を頼む」
「了解しました。私の、ものなど言いますから」
「当たり前だ。私はお前が好きなのだからな。お前もだ。私を慕っているのだろう?相愛なのだから間違いではない」
「…そう言うものですか?ああ。此方の訂正は如何いたしましょう?」
「斜線で横に書き入れろ。早く許嫁になれば話は早いのだ」
「ではその様に…ああ違いますよ。訂正の話です。大体、許嫁は名家の姫君でございましょう?」
「そんななよなよした女が私についてこれると思うか?」
「来させればよろしいかと。あら、珍しい刑部様が間違っておられますよ」
「何?…ああ。本当だな」
「…後で様子を見に行ってきます。かなり、無理をされているかと」
「ああ。そうだな。無理をするなというのに」
「其れこそ無理でございます。刑部様は治部様が大好きでございますから」
「…そう、か」
「ふふふ。なれば急いで済ませましょう」
「ああ」
「…」
「でだ」
「?」
「何時になったらうんという」
「…さぁいつの話でございましょうか」
「お前を娶らぬ限り私は誰も娶らぬし。お前を娶れば他はいらん」
「純粋でございますね」
「そうだ!」
「ふふふ」
「うんと言え」
「本来お慕いしているのも恐れ多いのですよ」
「煩い」
「まだうんとは言いません」
「…まだか!」
「まだ、と申しますか」
「何か不服だ!」
「不服ではありません。一般的にそうだという話でございますもの」
「そんなものは知らん」
「ふふふ。あら」
「如何した」
「此方も…此方も」
「?」
「誰か。左近様と八代を」
「??」
「ふふふ。」
「三成様。入りますよ」
「相模様…お呼びでございますか?」
「あ、ああ」
「ひっ!」
「如何したの?」
「あ、う…申し訳ありません!!!」
「「????」」
「八代。お手伝いするのでしたらしっかりなさい」
「如何いうことだ?!」
「左近様の書類。八代が手伝いましたね」
「何?!」
「す、すいません!俺が計算間違ってて…その」
「左近!!!」
「私が手伝うと…その」
「手伝うのはいいのです。ですが隠れて手伝っているのですよ?書くのは左近様が書くか貴方が書くか統一なさい。」
「「あ」」
「貴方のを知らぬものでしたら改竄されていると思うでしょ?これは兵の人数などを書いた大切な書類です。代筆なれば最初に書いておくべきですし、ましてや二人の文字で書くものではありませんよ」
「すいませんでした」
「治部様」
「すぐに書き直せ!」
「はひ!」
「八代。あなたは墨をするなり必要な手伝いをなさい」
「はい」
「すぐ行け!!!」
「「失礼致しました!!!」」
「…行ったか?」
「ふふふ。八代は仕事が早いですから。すぐに持ってきますよ。ふふふ。」
「なら、良い」
「治部様?」
「続きを」
「はい」





「あのさぁ」
「早く手を動かせてください。最終勧告を受けたのですから」
「いやぁさ。さっき部屋にお二人いたじゃん」
「?」
「ご結婚されたらあんな感じなんだね」
「?!」
「早くそうなりゃ、三成様も落ち着くのになぁ」
「ええ」







日常 15






「と言うわけよ。ひひひ」
「私に言うな」

「そんな目で見ないでくださいませ。私に申されても」
「はてさて。にしても二人してわざわざすまぬなぁ」
「飲めるか?」
「ささ」
「すまぬなぁ。」
「お疲れが出たのでございますよ。先日のお疲れも抜けきれておられぬのでしょう。今日はゆるりとお休みください」
「しかしなぁ」
「急がば回れと申しますもの。ね、治部様」
「…これだな」
「やれ、ぬしの方が」
「私の方はもう済んでいる。相模が手伝ってくれたからな」
「ふふふ。お手伝いいたしますわ」
「頼むが、先に」
「ええ。刑部様。」
「やれすまぬ」
「包帯も一度替えますよ」
「ぬ」
「頼んだ」
「はい。あとで参ります」
「ひひひ。ほんに我とてその姿が見たいものよの」

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日常 14

「相模。此方に」
「はい」
「今年は一段と素晴らしかった。ね、秀吉」
「うむ」
「ありがたきお言葉。人命をとして一層お仕え致します」
「ふふふ。相も変わらず真面目だね。ほら、一献」
「!」
「秀吉直々だよ」
「ありがたく頂戴いたします」


そう言って杯に少しの酒を飲み干す。その姿に感嘆するのは私だけではないようだ。
女楽は成功したのだろう。良し悪しの云々だけで言えば今回の宴の中で群を抜いていたし、いつも以上に着飾る相模を見れて何も文句はない。ただ、俗物や下衆にその姿を晒すのは頂けない。きっと顔に出ていたのだろう。刑部にこの上段と中段までよと諭された。


「さぁ。三成君からも」
「はっ」


いつの間にか私の番になったようで眼前に彼女が現れる。掲げられた杯を見る前に彼女の顔を見ると苦笑を通り越して困った顔をしている。どうしたと思えば小さな声で私の名を呼ぶものだから顔を寄せる。ふわりと香と化粧の匂いがした。


「治部様」
「如何した?」
「お助けください」
「?」
「私、お酒駄目なのです」
「は?」
「佐渡様を見てください」
「顔を横に振っているな。…あの程度でか?」
「ええ。もうかなり。ぼうっとしてまいりました。」
「…入れる真似をしてやる」
「お願いしましゅ」
「…刑部が済めば退室しろ」
「ですけど」
「何かな?二人して。」
「ひひひ。」
「仲が良いことは知っているよ。でも後も有るからね。」
「!」
「相模」
「ありがとうございます」
「…刑部」
「あいあい」
「刑部様。ありがとうございます」
「秀吉様」
「如何した?」
「暫時席を離れます」
「?」
「んー…そう言う事かい?では皆に示しておきなね」
「はい。相模!」
「治部様」
「貸せ!」
「お、おい!わしも一献!」
「黙れ禿げ狸!これは私のだ。勝手にものを与えるな!相模。失礼するぞ」
「あ」
「私は私の女が秀吉様半兵衛様刑部以外の目に晒されるのを良しとは思わん。佐渡」
「どうぞ。当分の間お預けします」
「秀吉様」
「これもまた宴の一興よ。三成、許す」
「ありがたき幸せでございます」







「本にまぁ。この状態で抱きかかえていかれましたね」
「ひひひ。本に三成らしい」
「きっと手は出さないのでしょうけど。」
「酔うた女を眼前にしてもそうよな」




日常 14





「じぶしゃま」
「舌が回ってないぞ。杯2献程度で」
「うふふ。じぶしゃま」
「下すぞ。」
「はい。…んー」
「良かったぞ」
「?」
「女楽」
「ふふふ。しぇいこうして、よかった」
「こら、脱ぐな!」
「きちゅい」
「(連れてきてよかった)」
「じぶしゃま」
「ん?」
「じぶしゃま!」
「…破顔して抱きつくな」
「きょうのおしゅかだ、すてき」
「お前は!」
「?」
「其の儘私のものにするぞ!」
「ふふふ」
「お、ん?!」
「えへへ。」
「おま、え?!接吻?!!」
「ちゅー」
「っん!」
「んー…」
「お、おい?!相模!!!…寝てしまった」


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日常 13

「相模様、益々苛烈になられましたね」
「あらら、絞られているわね」
「5年前も一度。あの時は二つ目でしたから、今より苛烈でしたけど。ね、八代様」
「私その時…相模様の凄さを見ましたもの」
「其処、黙る」
「はい」
「相模、青菜に塩状態よ」
「自分の練習不足を怨みなさいね。ほら、ずれた」
「はひ!」
「背筋は伸ばす!」
「あら」
「あ!千曲様」
「助けてください!」
「まだこの程度?しっかり躾けなさい」
「「え?!」」
「このままで御前に出れるとでも?」
「ふふふ。そろそろ本気を出しましょうか」
「?!」
「あーあ。相模が本気を出しましたわ」
「ふふふ。」
「相模様ってお優しい方だから」
「千曲様よりマシと思っていましたのに」
「ふふふ。ですって」
「相模は名の通っていますから私の時より客人が多いと思いなさいよ」
「そうですよ。座にも座れぬほど人が来たと聞き及んでますわ」
「大げさですよ」
「…本当の話です。今回は和琴で御座いましょ?何人にも聞かれましたもの」
「其処で失敗したら末代の恥よ」
「うへー…私の淡い期待が」
「ふふふ。」
「婚約者が来るのでしょ?」
「はい…楽しみにしていると文で」
「そうね。下手な琵琶を聞かせて破談にさたいのなら良いですが」
「ひっ?!」
「あんた、あの状態の相模様にいらないこと言わないで!」
「小谷、淡道。」
「「はい!」」
「そろそろ寝言はやめて本気にかかりなさい。破談にしたくないのは親御様達も同じですよ。貴方達のお父上様お母上様からようよう言われておりますからね」
「ひー…!!!」
「ふふふ。あら?」
「まぁ、治部様だわ」
「…」
「しっ!少し休憩いたしましょう。相模。二人は少し預かりますわ」
「え」
「お茶を飲ますだけよ」
「…もう」
「おい」
「これは、治部様」
「ああ。女楽か」
「はい」
「楽しみにしている」
「ふふふ」
「蜘蛛の子を散らしたようだな」
「皆面白がっておりますもの。」
「そうか」
「部屋付きは…滞りなくお仕えして居りますか?」
「…」
「もう少ししたらまた通常に戻りますから」
「なら」
「?」
「少し弾いてみてくれ」
「良いのですか?」
「?」
「では少し。ふふふ」
「意外と好きなのだな」
「ええ、最近は指導の方が多いので」
「そうか」



そう言って嬉々として爪弾く。その姿がとても美しくて口元が緩む。今度の宴に相模が引くと聞いて何人もの武将から出席の許可を請う書状が届いた理由がよくわかった。じっと凝視し過ぎたのだろう。弾き終わるとくつくつ笑って如何でしたかと問うものだから良し悪しはわからないとだけ告げておく。



「まぁ」
「ただ今まで聴いた中で一番良いと思う」
「世辞でも嬉しい」
「世辞を言うと思うか?」
「いいえ」




そう言うと和琴から身を乗り出して私の顔を見る。じっと見つめる目は漆黒。くらりとする。なんだという声は変ではないだろうか?ふふふと笑って髪の毛を撫でられる。小さな、手だといつも思う。あの夜、握ったあの手は小さく、華奢で美しかった




「癖が」
「ああ」
「また頬杖をついて寝ていらっしゃったのですか?」
「…」
「きちんと寝てお休み下さい」
「お前が帰ってきたらな」
「宴が済みましたら直ぐに」
「では、善処する」
「隈」
「お前もだ」
「あら、嫌ですわ」
「相模」
「あら、近い」
「他には?」
「お綺麗な御顔です事」
「それは貴様だ」
「あら、嬉しい」
「…くくく」
「?」
「早く私の妻になれ」
「今は女楽で精一杯ですもの」
「そうか」






「あー…」
「死ぬ気で頑張りなさい」
「はい」
「お似合いなのに」
「お二人の子供なら美しいでしょうに」
「ねー」





日常 13




「今年は相模君かい」
「はい」
「初めて女楽に入った時の事が思い出されるね。君の扱きについていける猛者が現れたって」
「何も知らないあの子が今や四楽器全て一流なのですから…感慨深いものでございます」
「そう言うところまでよく似ているね。」
「二人とも良い子よヨイコ」
「にしてもあの子が治部様に嫁ぎましたら…」
「やれ佐渡」
「この癖のある皆々様に対応できる者がおりませぬ。やはり私が直々」
「それは遠慮したいね」
「左様サヨウ。主は総括者がよう似合う。」
「小言が嫌なだけでございましょう」
「四角四面なのは表だけでいいよ。君も。これくらいの関係がいいだろう?」
「本当に。睡眠薬を何度仕込もうかと思った事が…ですけれども。皆様我慢お出来に?」
「当分。昼間は我らの事はしてもらおう。仕事は身の回りの世話だけだから量は減るだろう?子が出来たら致し方ないよ。当分、君で我慢する」
「それまで扱きゃれ」
「それもそうでございますね」




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日常 12

「相模」
「ああ、治部様。本当に昨日は申し訳御座いませんでした」
「い、や。それより」
「?」
「刑部と話したのだろう?」
「ええ」
「…どう、答えた?」
「もちろうきちんと否定して参りました。恐れ多くも殿下の左腕たる治部様と私だなんて…言って良い冗談と悪い冗談がありますわ。そう申し上げて参りました」
「…」
「治部様」
「何故」
「?」
「何故冗談という?!」
「治部様」
「…答えろ」
「では申し上げます。貴方様はご自分のお立場を理解されておられますでしょうか?」
「どういう意味だ」
「恐れ多くも殿下の左腕。貴方様がいかに尊く、この城になくてはならないか。それを理解した上で、私の様な一侍女とあらぬ疑いをかけられることが醜聞がお判り遊ばされておいででございますか?」
「な?!」
「貴方様がお優しいのを良い事に領分を犯した私の失態でございます。いま刑部様と佐渡様に処分をお願いしてきた帰りでございます」
「どういう意味だ!」
「そのままの意味で御座いますよ。…では」
「待て!」
「?」
「私は元々長浜の土豪の次男だ。たいそうな地位も身分でもない」
「…」
「だから」
「私は、生まれが何処で父母が何をしていたものかすら知りません」
「…は?」
「只管、戦火から逃げ惑い、野党に殺されました。私の父母兄弟姉妹に関して唯一の思い出は惨殺された姿でございますから…ただそれだけ覚えております。」
「そ、うなのか?」
「嘘を申したことはございませんよ。ふふふ。手を」
「相模」
「治部様はとても優しくて…真っ直ぐな慈悲をお持ちの方で御座います。どうぞ、皆に等しく慈悲を向けてやってくださいませ」
「ま、て」
「では失礼いたします」




小さな頭を下げて歩いていく。どういう事なのか?と回らぬ頭で思案しながら部屋に入ると刑部が難しい顔をしていた





「刑部」
「はてさて。困った、コマッタ」
「どういう事だ」
「主との関係を聞いたら、案の定よ。ひひひ。本に素直な娘よなぁ」
「…あれは何処かの娘ではないのか?」
「違うなぁ。あれは乱取りで父母兄弟姉妹全てを殺されてなぁ。あれも刺されておるはずよ」
「何?!」
「佐渡」
「あの子はたまたま命拾いした様なものですから…ここに下女から上がって。それは一生懸命尽くしておりました。万の事もあり」
「万?」
「相模が初めて持った部下です。徳川様のお手つきになって」
「子を成したが、結局は部下に押し付けた様よ。身分の違いは如何にも出来ぬからなぁ」
「…下衆な話だ!」
「ひひひ。主らしいがあれにとっては身につままれる思いであったのだろう。後ろ盾もない身分のない己のいく末は万以下になろうとな。」
「あの子は…此処を家の様に思っていましたから。帰る場所も身寄りもない子ですのでより一層。慰み者になって此処を失うのは避けたかったのでしょう」
「?!」
「主にすれば本気故…まぁ良い関係と思うたが。主以上に素直で真面目故己の立場を弁えたのよなぁ。哀れよアワレ」
「刑部」
「ん?」
「私はあれ以外は娶らんぞ!」
「知っておる」
「室も側もない。私の唯一の番だ」
「わかったワカッタ。皆知っておるわ。知らぬはあれだけよ」
「…」
「何処に行かれます?」
「相模のところだ」
「無体は」
「するか!」
「出来ぬの間違いよ。できるものならとうにしておるわ」
「ぐ…」
「ほんに朴念仁同士の恋は草臥れますなぁ」
「ひひひ」
「佐渡!貴様!!!」







日常 12






「やれ、相模」
「はい、刑部様」
「主は三成になんというた?」
「?」
「いじけて部屋から出てこん」
「は?」
「本に…どうにかして出してきりゃれ」
「ですが!」
「三成が主に懸想しているのは下は下男下女から上は太閤まで皆知っておるから安心いたせ」
「は?!」
「特に長浜組みはなぁ。主にちょっかいをだすと三成が殲滅し始める故主にちょっかいをだす男などおらぬだろう?」
「はい」
「再起不能にされたのは一人や二人ではない。ひひひ。」
「…」
「身分で言えばそうよの。しかしなぁ。主とて嘘は方便よ。何処ぞのご落胤とでも言えば」
「それは私には無理でございます」
「左様か…なればもう何も言わぬ故。三成だけとはあわしゃれ」
「ですが」
「良いな」
「…は、い。」
「相模」
「すぐに参ります」





部屋の前について正座をする。あの、と声をだすと入るなと帰ってきて驚く。


「相模でございます」
「去れ!」
「お食事どころか水すら」
「私に構うな!」
「治部様」
「…貴様にとって私は下衆の一員なのだろう!構うな!!!」
「それはて違います!」
「何が違う!」
「っ?!」
「…頼む。向こうに行け」
「行きません」
「相模!」
「いけ、ま…せん」
「何故だ!」
「…」
「…っち!」
「貴方様が心配なのです」
「此の期に及んで!」
「ですが…だって」
「?」
「…ぐす」
「泣くな…」
「泣いておりません。大体!障子越しではわからぬでしょう!」
「解る」
「治部様?」
「いや、わかりたいと願っている」
「っ」
「私が恐ろしいのなら」
「恐ろしくありません」
「…貴様に下衆な感情を抱いている一人と思うのなら近づかないでくれ」
「…」
「私はお前が愛しく思う」
「?!」
「嫁を娶るのならお前と昔より決めていた」
「それは!…身分をお考え下さい」
「知らん!」
「治部様」
「私はお前以外娶る気はない!」
「それは」
「家康の様なことはしない」
「!」
「あれは寄るもの拒まずだ」
「知ってます…あの方だけが悪いわけではないことも」
「私はそうではないということをお前が知っているだろう」
「…ですから」
「相模」
「貴方様の様な身分の高い方はふさわしく優しい方だいると。わかっておりますのに…そんな事をおっしゃるから。醜聞であなた様にとって良くないことと私が一番理解しているのです…なの、に」
「泣くな」
「恋などしては身を滅ぼす事も理解しておりますのに。…何故」
「すまん」
「私なのですか?」
「私が求めているのも。この胸に抱くのも。…お前だけだ」
「いつか捨てるのに」
「それはこちらの台詞だ。」
「酷い人」
「己を知らんお前が悪い」
「…治部様」
「醜聞と言うのならば、妻一人娶れず、右往左往している今の状況だ」
「…ふふ」
「笑うな」
「だって」
「相模」
「はい」
「私の妻になれ」
「…それとこれとは別の話です」
「な?!」
「でも」
「なんだ!」
「貴方様をお慕いしてもよろしいですか?」
「…」
「治部様?」
「お前…理解している様で理解していないな!」
「?」
「…まぁ良い。これからは手加減をしない」
「???」
「部屋から出てしまった。…っち!」
「取り敢えずお食事いたしましょう」
「いらん」
「…」
「…」
「…」
「…わかった。用意してくれ」
「はい」
「…先が思いやられる」






「すげぇ。三成様を言いくるめた」
「純粋って怖いよね」
「はてさて。如何するか。我らとてなんの不服もないのだがなぁ」
「彼女みたいに三成君を飼い慣らせる子いると思うかい?」
「無理よなぁ」
「居ないっすね」
「抑。女の子に興味を示したの後にも先にも彼女だけだもの。下手に外陰部がない分良いと思うけど?」
「ほんになぁ」







日常 13





「刑部」
「はてさて」
「お食事は?」
「佐渡!貴様の入れ知恵か!」
「何のことやら。大体、あなた様ほど分かりやすい殿方に…」
「どうにかしりゃれ」
「それは本人達次第で御座いましょう。ふふふにしても」
「左様サヨウ」
「?」
「随分と柔和に笑われること」

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