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変換なしの雑食夢

ran

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恋慕する三成 6

「くしゅん」
と小さなくしゃみが聞こえる。そこで初めて寝ていたのかと自覚する。にしても、柔らかい手だ。今でも気をぬくと寝てしまいそうになる。確か、あの忌々しい猫が奥の膝を…ああ。だからか。



「奥」
「あら」
「すまん」
「?」
「膝」
「え?ああ。大丈夫ですよ」
「そうか」
「殿様?」
「ん」
「よく寝ておいででしたね」
「そう、か」
「途中左近様や刑部様もおいでになっていたのですが」
「…」
「ふふふ。珍しい事とお二人ともお帰りあそばしたのですよ」
「そうか」
「殿様」
「ん?」
「お休みになられているのですか?」
「如何した?」
「いえ…」
「今は戦終いで少しな…隈があるか?」
「はい」
「…不愉快なものを見せた」
「え?」
「憂いを嫌うお前の事だ…不愉快だろう?」
「いえ…あの。」
「なんだ?」
「暗い顔…の事なのです」
「?」
「人の噂やそういうもので一喜一憂して暗い顔をしてはならないと…殿様の様に太閤殿下の御為に滅私の心で尽くす形を憂いや不愉快などとは少しも思いません」
「…」
「殿様?」
「話せば話すごとに。会えば会うほどに。お前を愛しく思う」
「?!」
「顔が赤い」
「いえ、その」
「…眠たいな」
「おやすみなさいますか?」
「いや、ここではあまりにも良く無い」
「?」
「奥の側は落ち着くがですよ理性もなくなる」
「???」
「くくく。その意味がわかったら、ここで寝る」
「はぁ」





そう言って私は奥の頬を撫でる。くすぐったそうに目を細めて笑う奥は何にも増して愛おしい。




「殿様?」
「ん?」
「にゃー」
「ぐっ」
「あら、つき」
「この駄猫が!上から退け」
「にゃー」
「つき」
「…太々しい」
「っふふ」
「?」
「くくく…ふふふふ」
「奥?」
「もうし、わけ」
「漸く、笑ったな」
「え?」



口付けをされる。そして静かに抱きしめられて、もう一度愛おしいと言われる。



「その笑みを、守りたいと」
「殿様?」
「いつも、そう笑っていてほしい」
「っ」
「私の奥」




恋慕する三成 6






「ん…」
「目が覚めたか?」
「っ!」
「?!」
「そ、の」
「痛かったか?その、だ。私も必死に堪えてはいたのだが…」
「…」
「嫌いに…なったのだろうか?」
「い、え。その」
「至らぬところが有ったら言って欲しい」
「恥ずかしいのです…」
「は?」
「…」
「っ!」
「わっ!殿様」
「佐吉と呼んでくれ」
「…佐吉、様?」
「必ず守る。奥」
「はい」
「だから、今はこのままで」

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恋慕する三成 5

「奥!」
「殿様?」
「今日の加減は如何だ?」
「ふふふ。」
「笑っていてはわからん。苦しくないか?」
「はい」
「なら、いい。おい。猫」
「にゃー」
「貴様が羨ましい」
「え?」
「いや、戯言だ」
「…」
「これからは私が毒見をする。」
「は?」
「私の名で持ってきたものは私が食べてから食せ。」
「お待ちください」
「?」
「夫に毒味をさせるなど…聞いた事がございません」
「???」
「殿様?」
「周りは知らん。が、私はもう二度とお前に苦しい思いをさせたくはない」
「!」
「私の名を騙り…貴様を苦しめることなど金輪際あってはならない。何より」
「何より?」
「あの婚儀の折、私はお前を慈しみ守ると誓ったのだ。」
「!」
「いいか?いくら私の名を侍女が言ったとしても受け取るな。たとえ物でもだ。私が手ずから渡す。手紙は…戦の時は苦しいが左近以外には預けん。お前は…いつでも送ってくればいい」
「…ふふふ」
「如何した?」
「殿様になら、私の命差し上げてもよろしいかもしれませんね」
「は?」
「お言いつけ。お守りいたします。」
「あ、ああ!」
「殿様?」
「…その、だ。」
「?」
「刑部から聞いた。」
「???」
「側室の件、だ。」
「え?ああ。はい。佐和山の御城へ?」
「あれは嘘だ」
「?」
「刑部と半兵衛様の…すまない。私がしっかりしていないから。」
「えー…と」
「私はお前以外妻を迎える気はない。たとえ側室であったとしてもだ。」
「御気遣いしなくても…良いのですよ」
「私が好かん」
「…」
「この結婚はそもそも…私からお願いしたものだ。」
「え?」
「…天地神明に誓っても真実だ。」
「殿様」
「お願いだ」
「は、い」



手が触れる。少し冷たい手。指先だけが触れる。
顔を上げる事が出来ない。



殿様はどの様なつもりなのだろうか?私には…わからない。






「いつか、でいい」
「?」
「私の子を産んでくれ」
「は?!え?」
「…」
「殿様」
「…それだけだ」









恋慕する三成 5










「奥」
「ああ、殿様」
「口を開けろ」
「?」
「食え」
「甘い」
「金平糖だ」
「これがですか?」
「ああ。」
「ふふふ」
「…」
「にゃー」
「貴様にはない!」
「…」
「…」
「つき」
「にゃー」
「殿様」
「段々と太々しくなってきているぞ!」
「猫とはそういうものでございますよ」
「…」
「殿様?」
「退け」
「にゃ!」
「つき?…殿様」
「ふん!」
「?」
「私ですら寝た事がないのに、そう何度も使われてたまるか」
「は?」
「膝を借りる」
「っ!」
「今日は、疲れ、た」
「殿様…誰か。」
「はい…何事で御座いますか?」
「掛物を。」
「は、はい」
「隈」
「え?」
「お疲れなのね」
「それ程奥方様を大事に思っている事なのでしょう」
「私は…」
「私は下がっておりますので」
「ええ」






今日の気温は高くもなく低くもなく。丁度良い日和です事と思いながら髪を撫でてみる。細くきれいな髪だ。羨ましいとと思う。美しい顔。凛とした佇まい。文武両道であり太閤殿下の左腕に相応しい御仁。
あれから、足繁く通ってこられる。無理をなさって御いでなのだろう。表に行けない私には分かりかねるのだけれども、この方の仕事量は並大抵のものでは無いと竹中様が言っていた。だから、お休みになるのは私室であるここではなく表にある執務室。





「少し心配ですわ」






こんな、気持ちになるとは思わなかった。割り切った関係。傀儡の室として不要になったら捨てられるのだろうから。そう、思っていたのに。いつかこの方の子を産みたいと、そう思える日が来るのだろうかと思案して私は髪を撫で続けるのだった

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恋慕する三成 4

「…ん。あいわかった。引き続き調べよ」
「はっ!」
「やれ困ったこまった」


あの日より妙に感じる侍女たちの殺気に探りを入れていたら案の定、病の理由が知れてくる。毒。しかも、三成が持ち込んだ菓子に仕込んだというのだから頂けない。確か、戦支度の前か。吟味に吟味を重ねていると左近が言っていたはずだ。
何より。あれは奥方に心底惚れている。一年や二年といった短い時間ではない。故間違えてもそういう事が起きるはずはないのだ。
ただ、逆は如何か。奥方の母親。太閤の奥方は毒を煽って亡くなったと聞いた事がある。奥方の眼の前で。
其れを幼少の砌に見たのだ。なれば己が身を守るか、三成を厭うだろうが…素振りがない。訳がわからぬ





「おい」
「やれ、三成か」
「奥にこれをと思うが」
「ひひひ。凶惶も随分と丸くなったものよの」
「…」
「まぁ奥方のみだかなぁ。…その後、奥方の調子は如何か?」
「昨日、軒先に座って外を見た。」
「二人でか?」
「猫もいる。」
「左様か」
「どうした?」
「あの菓子よ」
「菓子?」
「奥方に渡した」
「ああ。あれが如何した?」
「いかにして手に入れたものかとな」
「金平糖をか?先だって下賜されただろう。以前、奥が食べてみたいと言っていたからな。」
「金平糖?」
「如何した刑部?」
「饅頭であろう?そう、聞いておるが」
「いや…まさか?!」




三成が跳ねるように立ち上がるとあの速度で奥方の部屋に向かう。まさかなのだ。あの折、忙しくて手渡した菓子の内容が違うという事実は空恐ろしいことに繋がる。何より、近づけばわかる程度に奥方の部屋は騒がしい。





「奥?!」
「あ、ら。殿様…」
「血?!」
「吐血しておいでです!今、医師を!!!」
「何故、だ!?おい!!!そこの女!!!如何なっている!」
「殿様から下賜された菓子を!!!奥方様に何を食べさせたのですか!!!」
「やれ、落ち着けおちつけ…奥方。手を出しゃれ」
「私が?!このようなもの!私は奥に渡していない!!!」
「え?!ですが…昨日もその前も…」
「にゃー」
「つ、き」
「?!奥!!!刑部!医師を呼べ!!!」
「あいわかった。…菓子を持ってきた女を捕まえしゃれ」
「は、はい!」
「お、く…」
「殿、」
「ああ、すぐに医師が来る。」
「涙」
「っ」
「お泣、遊ばしません、ように」
「無理を、いうな」
「ふふふ」








血を吐いた奥方のそばには甘味が転がっている。其れ、なのだろう。三成はひしりとその体を抱きしめて涙を流し、奥方が其の体を撫でている。
何なのか。齟齬がひどい

血を吐き、死が近しいというのに。死を呼ぶとわかっているのに。






其れでもなお受け入れるのは、何故か。










恋慕する三成 4







「ん…」
「奥?!」
「と…の?」
「ああ。私だ。…わかるか?!」
「え、え」
「奥方様。お口を濯ぎ下さい」
「ん」
「気分は如何だ?」
「殿様…ずっとおいで遊ばされたのですか?」
「ああ」
「申し訳ございません」
「当たり前だ!…お前は私の大切な妻だ」
「ふふふ」
「顔色が悪い。血を吐くなどあってはならない!」
「ええ。あら、殿様」
「何だ?」
「お召し物に…血が」
「ん?ああ。お前を…その。だ。抱きしめた時に」
「申し訳ございません。直ぐに」
「…いい。今は頼む。じっと安静にしてくれ」
「…はい」
「手を」
「?」
「寝るまで、ここにいたいが。良いか?」
「ええ」
「!」
「その様に、固まらないでくださいませ」
「いや、そのだ」
「ふふふ」
「…奥」
「?!」
「無事で、良かった」
「接吻…あら、誰か!」
「はい…殿様?!」
「しー…手を貸して頂戴。寝てしまわれたわ」
「奥方様をたいそうご心配遊ばされておりましたから。」
「…そう」
「奥方様?」
「いえ、良いわ。刑部様に連絡を。おやすみ遊ばされても大丈夫かを尋ねておいて頂戴」
「はい」

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恋慕する三成 3

「つき」
「にゃー」
「奥方様」
「はい」
「お加減は如何ですか?」
「もう大丈夫よ。私、慣れているから」
「!」
「まぁ、そろそろと思っていたし。こればかりは致し方ないわ」
「奥方様!」
「ふふふ。つきはずっと傍にいてくれましたね。ありがとう」
「にゃー」
「で如何したの?」
「殿様が凱旋との事です」
「あら、相変わらず早いわねぇ。」
「奥方様?!」
「床上げをして下さい。服を」
「ですが…」
「もう大丈夫よ」
「…」
「早く。ああでも」
「はい」
「殿様にしたら寝込んでいた方が良いのかしら」
「にゃー」
「ふふふ」
「失礼致します」
「殿様が御帰りあそばしたか?」
「はい。湯浴みしたのちこちらに」
「何とお伝えした」
「夏風邪を召して大事をとっておられると」
「…奥方様」
「お見舞いかしら?…誰か筆をとって頂戴。」
「はい」
「何と御書き遊ばされるのですか?」
「戦勝の宴の折に参りますと。其れまでにここを整えなさい。」
「はい」
「にゃー」
「つき。ふふふ。影は取り除いておかないと。あなたも少しの間侍女のところへ行って御いでなさいね」
「にゃー」







ぱたぱたと化粧をはたくと侍女が困ったような顔でやってくる。文の返事が届いたらしい。良い知らせですか?と笑ってみると曖昧にうなづかれる。曰く、宴の前にこちらに来るらしい。




「前に?」
「いえ、実は」
「ああ。少しお待たせしてしまいますね。」
「構わないとの事ですが…」
「早く準備いたしましょう」
「はい」
「…宜しいのですか?」
「何がです?」
「殿様と…御あい遊ばすのが否なら体調を崩されたとでも」
「偽りを言って如何します。」
「ですが」
「出来ましたね。参りましょう」




そう言って私は立ち上がる。少し待たせてしまったとないちん焦りながら。





「殿様」
「奥」
「今回の勝ち戦おめでとうございます」
「あ、ああ。あの程度の弱国。秀吉様の意向の前にはなす術もない…いや。其れより」
「?」
「夏風邪を引いていたのか?侍女から聞いた。熱は下がったのか?」
「はい。ですがもうすっかり」
「なら、良いが。」
「?」
「少し、痩せたか?」
「そうでございますか?」
「ああ。そうだ」
「?」
「やる」
「???」
「今回の必勝祈願をした際に受けて帰ってきた。守り札だ」
「ありがとうございます」
「やはり顔色が悪い」
「そうですか?」
「宴には無理に来ずとも良い」
「では挨拶だけ」
「ああ」
「殿様?」
「困ったことはなかったか?」
「安寧に過ごしております」
「なら、良いが。あの黒猫は?」
「侍女のところへいって何かを強請っておりましょう」
「そうか…ああ。」
「?」
「私の部屋にも花を活けてくれたらしいな」
「はい。」
「礼を言う」
「ふふふ」
「?」
「いえ…あら?」
「三成様ー!!!」
「っち!」
「左近様。如何致しましたか?」
「奥方様!三成様知らないっすか?!」
「御前に御いでですよ」
「何だ左近!」
「広間に皆様お集まりっすよ!刑部さんが探してたっす!」
「何?!急いで行く。奥」
「はい」
「行くぞ」
「え?」
「早くしろ」
「あ、はい…っ」
「?!」
「やはり先に御いでてください。私は後から参ります」
「だが…」
「三成様」
「っ!?良いか、後で迎えに来る。其れまで休んでいろ」
「はい」
「行くぞ」
「…行ってしまったわね。あら?つき。出てきてしまったの?ごめんなさいね」
「にゃー」
「そうね。此処で少し転た寝ようかしら?」
「にゃー」
「暖かいわね。あなたは私を厭わないから有難いわ」







恋慕する三成 3







「ずいぶんと痩せたようだね」
「夏風邪をひいてしまい、申し訳ございません。皆々様が命を賭して戦って御いでの時に」
「下がって良い。」
「では失礼致します。殿下。竹中様」




ふわりと頭を下げて退室する。
勝ち戦だったと聞いていたが、此処まで賑やかだとは思いもしなかった。





「やれ、奥方」
「刑部様。此度はおめでとうございます」
「いや、なに。其れより」
「はい」
「顔色が良くない。本に大事ないか?」
「皆様に御気にかけていただいて。本当にもう大丈夫です」
「なら、よいが。」
「奥」
「殿様?」
「やはり、先に休め。」
「はい。自室に下がっております。本当に申し訳ございません」
「謝る話ではない。」
「ふふふ。」
「送っていこう」
「殿様や刑部様が居ないと下のものが困りますわ。私なら大丈夫」
「だが」
「では失礼致します」





「行ってしまった」
「…」
「心配なら早々に切り上げるが良かろう」
「ああ」

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恋慕する三成 2

「あら?」
「奥」
「朝餉の支度を致します」
「いや…」
「?」
「…私が此処で食べても良いのか?」
「殿様がお嫌でなければ」
「…少なくて良い。頼む」
「はい。誰か」
「ご用意できております」
「支度の良いことですね。殿様」
「…」
「ふふふ。つきと仲がよろしいこと」
「違う…おい、女。量を減らせ」
「は、はい!」
「私が致しましょうか?」
「は?!」
「驚かれなくても…では此処に座っておきます」
「いや、その…。座っていてくれ」
「はい」
「その、だ」
「?」
「恙無くお過ごしか?」
「はい」
「…そうか」
「殿様も恙無くお過ごし遊ばれている様でございますね」
「?!」
「昨日、竹中様から文が届きまして。ご武勇を轟かせておいでとか。」
「あ、ああ」
「婚儀からずっとお忙しそうでしたので。」
「そうか?」
「お身体をお労わり下さいませ」
「ああ」
「あら、つき」
「にゃー」
「つきっきりだな」
「子猫ですから。もう少し大きくなれば心配無いのでしょうが」
「心配しすぎだ」
「はい…わきまえます。」
「…」
「…?」
「猫は」
「猫が?如何致しましたか?」
「恩を3日で忘れるそうだ」
「ええ。そう言いますね」
「薄情だぞ」
「ふふふ」
「何だ?」
「お気に入りませんか?」
「…」
「誰か。つきを奥に」
「はい」
「…奥」
「目の触れぬ場所に連れて行きます」
「いや、いい」
「ですが…つき?」
「おい」
「眠いの?」
「また膝で寝るのか?」
「…」
「…」
「やはり奥に」
「…いい。私が出る」
「朝餉は?」
「もう、いい」
「はい」
「…失礼した」
「…」
「奥方様」
「言わずに行ってしまわれたわ」
「奥方様?」
「申し訳ないことをしてしまったわね、つき。駄目よ、殿様も必死に言うきっかけを見つけているのですから」
「にゃー」








ゴロゴロと喉を鳴らすつき越しに膳を見ると手付かずである事を気づく。別段何も入れませんのにと思いながら溜息を吐くと侍女が申し訳なさそうに私の顔を見てくるので私はニコリと笑う。





「悲しい顔をしないのよ」
「ですが…」
「ふふふ。ああそうだわ。庭の花を摘みましょう」
「花ですか?」
「ええ。さすれば此処も華やぎましょう」
「はい」





憂いていても仕方がない。そう言えば益々表情を暗くするので私が困る。暗くなっても仕方ないのですよといえば涙ぐまれるのだから居た堪れない。仕方なく、席を立つ。つきを見れば大きな欠伸をして寝入ろうとするのだから憎らしいものだわと思いつつもどうともできはしない。それが猫らしくて良い、とも思うのだから





「やれ、奥方のところに行ったのでは無いのか?」
「行った」
「言えたか?」
「…」
「三成」
「言えなかった」
「そうか…いや、これは我の失策よ。あいすまぬ。ぬしのためと思うたが些か短慮であった」
「いや、貴様のせいでは無い。偏に、私が不甲斐ないのだろう」
「はてさて。違う気がするが」
「?」
「いや、こちらの話よ。…にしてもこの時になってまた戦か」
「不服か?」
「いや、何。奥方が寂しがるかとな」
「あの猫がいる。」
「ああ」
「寂しさも紛れるだろう」
「良いのか?」
「何がだ」
「誤解が解けておらん。」
「良い。私が側を娶らねば良いだけの話だ」
「…文を書かしゃれ」
「ああ」
「夕食は如何する?」
「…奥が嫌がるだろう」
「左様か」
「刑部?」
「我は心配でならぬよ。主らがこのままでは世嗣ぎも儘ならぬであろう」
「おい」
「…主は本にそれで良いのか?」
「ああ」
「はてさて。如何したものか」











「奥方様」
「はい…あら可愛い」
「殿様からの贈り物です」
「殿様から?」
「奥方様?」
「…」
「お嫌いなのですか?なら、下賜致しますか?」
「いえ…美味しそうね。一つ食べてみようかしら」
「ああ!奥方様。今用意を」
「…」
「奥方様?」
「やっぱり…」
「何を?」
「っ…」
「え?!奥方様?!だ、誰か!!!医師を!!!!!」
「奥方様!」
「奥方様がお倒れ遊ばした!殿様に!!!」
「…殿様は、良いわ。内密に」
「ですが…」
「良いですね」










恋慕する三成 2










「奥は?」
「今日はもうおやすみ遊ばされております」
「もう、か?」
「つきと夜遊んでいたようで」
「…あれをたいそう気に入っているみたいだな」
「はい」
「明日、出立する。見送りは良いと伝えてくれ」
「あいわかりました…殿様」
「何だ」
「今日お八つ刻に和菓子をいただきまして」
「ああ」
「…」
「奥は気に入らなかったか?」
「い、え。大層お気に召しておいででした。」
「そう、か」
「お礼をお伝えする様にと言付かっております」
「あいわかったと伝えろ」
「はい」










「奥方様」
「今は意識がありませぬよ」
「…御労しい」
「致し方ありませぬ。…つき?」
「にゃー」
「お前の方が、何倍も情深いわね」
「にゃー」
「お願いだから奥方様を慰めてあげてね」


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