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変換なしの雑食夢

ran

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恋慕する三成 2

「あら?」
「奥」
「朝餉の支度を致します」
「いや…」
「?」
「…私が此処で食べても良いのか?」
「殿様がお嫌でなければ」
「…少なくて良い。頼む」
「はい。誰か」
「ご用意できております」
「支度の良いことですね。殿様」
「…」
「ふふふ。つきと仲がよろしいこと」
「違う…おい、女。量を減らせ」
「は、はい!」
「私が致しましょうか?」
「は?!」
「驚かれなくても…では此処に座っておきます」
「いや、その…。座っていてくれ」
「はい」
「その、だ」
「?」
「恙無くお過ごしか?」
「はい」
「…そうか」
「殿様も恙無くお過ごし遊ばれている様でございますね」
「?!」
「昨日、竹中様から文が届きまして。ご武勇を轟かせておいでとか。」
「あ、ああ」
「婚儀からずっとお忙しそうでしたので。」
「そうか?」
「お身体をお労わり下さいませ」
「ああ」
「あら、つき」
「にゃー」
「つきっきりだな」
「子猫ですから。もう少し大きくなれば心配無いのでしょうが」
「心配しすぎだ」
「はい…わきまえます。」
「…」
「…?」
「猫は」
「猫が?如何致しましたか?」
「恩を3日で忘れるそうだ」
「ええ。そう言いますね」
「薄情だぞ」
「ふふふ」
「何だ?」
「お気に入りませんか?」
「…」
「誰か。つきを奥に」
「はい」
「…奥」
「目の触れぬ場所に連れて行きます」
「いや、いい」
「ですが…つき?」
「おい」
「眠いの?」
「また膝で寝るのか?」
「…」
「…」
「やはり奥に」
「…いい。私が出る」
「朝餉は?」
「もう、いい」
「はい」
「…失礼した」
「…」
「奥方様」
「言わずに行ってしまわれたわ」
「奥方様?」
「申し訳ないことをしてしまったわね、つき。駄目よ、殿様も必死に言うきっかけを見つけているのですから」
「にゃー」








ゴロゴロと喉を鳴らすつき越しに膳を見ると手付かずである事を気づく。別段何も入れませんのにと思いながら溜息を吐くと侍女が申し訳なさそうに私の顔を見てくるので私はニコリと笑う。





「悲しい顔をしないのよ」
「ですが…」
「ふふふ。ああそうだわ。庭の花を摘みましょう」
「花ですか?」
「ええ。さすれば此処も華やぎましょう」
「はい」





憂いていても仕方がない。そう言えば益々表情を暗くするので私が困る。暗くなっても仕方ないのですよといえば涙ぐまれるのだから居た堪れない。仕方なく、席を立つ。つきを見れば大きな欠伸をして寝入ろうとするのだから憎らしいものだわと思いつつもどうともできはしない。それが猫らしくて良い、とも思うのだから





「やれ、奥方のところに行ったのでは無いのか?」
「行った」
「言えたか?」
「…」
「三成」
「言えなかった」
「そうか…いや、これは我の失策よ。あいすまぬ。ぬしのためと思うたが些か短慮であった」
「いや、貴様のせいでは無い。偏に、私が不甲斐ないのだろう」
「はてさて。違う気がするが」
「?」
「いや、こちらの話よ。…にしてもこの時になってまた戦か」
「不服か?」
「いや、何。奥方が寂しがるかとな」
「あの猫がいる。」
「ああ」
「寂しさも紛れるだろう」
「良いのか?」
「何がだ」
「誤解が解けておらん。」
「良い。私が側を娶らねば良いだけの話だ」
「…文を書かしゃれ」
「ああ」
「夕食は如何する?」
「…奥が嫌がるだろう」
「左様か」
「刑部?」
「我は心配でならぬよ。主らがこのままでは世嗣ぎも儘ならぬであろう」
「おい」
「…主は本にそれで良いのか?」
「ああ」
「はてさて。如何したものか」











「奥方様」
「はい…あら可愛い」
「殿様からの贈り物です」
「殿様から?」
「奥方様?」
「…」
「お嫌いなのですか?なら、下賜致しますか?」
「いえ…美味しそうね。一つ食べてみようかしら」
「ああ!奥方様。今用意を」
「…」
「奥方様?」
「やっぱり…」
「何を?」
「っ…」
「え?!奥方様?!だ、誰か!!!医師を!!!!!」
「奥方様!」
「奥方様がお倒れ遊ばした!殿様に!!!」
「…殿様は、良いわ。内密に」
「ですが…」
「良いですね」










恋慕する三成 2










「奥は?」
「今日はもうおやすみ遊ばされております」
「もう、か?」
「つきと夜遊んでいたようで」
「…あれをたいそう気に入っているみたいだな」
「はい」
「明日、出立する。見送りは良いと伝えてくれ」
「あいわかりました…殿様」
「何だ」
「今日お八つ刻に和菓子をいただきまして」
「ああ」
「…」
「奥は気に入らなかったか?」
「い、え。大層お気に召しておいででした。」
「そう、か」
「お礼をお伝えする様にと言付かっております」
「あいわかったと伝えろ」
「はい」










「奥方様」
「今は意識がありませぬよ」
「…御労しい」
「致し方ありませぬ。…つき?」
「にゃー」
「お前の方が、何倍も情深いわね」
「にゃー」
「お願いだから奥方様を慰めてあげてね」


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