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変換なしの雑食夢

ran

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好みではない夫の三成 12

「月」
「殿…吉継様」
「ひひひ。今帰った」
「おかえりなさいませ」
「すべて済んだ」
「はい」

そう言って月は頭を下げる。手が震えているのだろう。私が握ろうとする前に刑部が月を抱きしめて心配せずにおりゃれとつぶやく。側から見ればこちらの方が夫婦だなと漠然と思いながら横に座り込む。



「隈」
「本にな」
「…」
「月」
「はい」
「言いたいことがあるか?」
「三成」
「貴様の里は灰塵に帰した。一族は皆殺しだ。家臣団は早々にこちらに着いた。」
「皆は?」
「一族のことか?」
「い、え」
「…しのの一族は家臣団の筆頭。主が内通して反旗を翻した故生きておるが。元々数人の一族よ」
「?!」
「私たちが行く前に先代は殺されたらしい。元々、しのを側室にと言うのを主につけて逃した咎よな」
「そうでしたか」
「月」
「…はい」
「貴様の処分は無い。」
「!」
「私心を捨てた良い判断と」
「それは!」
「?」
「大義です…私は」
「ひひひ。主は許嫁殿の為。しかし、結果として我らのためになっている」
「しかし…しかし。それでは」
「泣くな!」
「三成」
「…それが私心なれば私の此れも私心だ。結果が全て物語っている。それで良い。気に病むな。わかったか!」





月の大願は殺された許嫁の仇討だった。従兄弟であり赤子の折より決まっていた先代の城主。全てであり最愛の方だと言い切るその男を卑劣な手で亡き者にした城主とその母親、一族に対する復讐を遂げるためだけに今まで生きてきたと月は言う。それのためだけに生きてきたと。嫁ぐのも何もかもその為だけだと言った。

なんと酷い女かとは思わない。ただ、合点がいったのだ。

私が都合が良い理由。刑部ではいけない理由。





お互いが他者のために縁を結ぶ。子を成すこれをなんと呼べば良いのか。






「三成?」
「いや、何でもない。月は?」
「寝ておるわ…ひひひっ。寝ておらなんだろう」
「そうか」
「?」
「これからどうする気か」
「これの子を成さぬなるまい。…後継は両家にいる故な」
「わかった」
「まぁ、無体はすまいよ。自刃させぬようにせねばなぁ」
「ああ」








好みではない夫の三成








「月」
「?」
「口」
「自分で食べられます」
「口を開けろ」
「んぐ…」
「…」
「匙を貸してください」
「食べなかった貴様が悪い」
「…」
「大体、匙だが食べ方が汚いわけではないのになぜ私と食べなかった?!」
「普通は箸で食べるからです。…殿」
「三成」
「…三成様」
「何だ?」
「…いえ」
「今日、夜来る。…刑部は知らん」
「わかりました」
「寝るぞ」
「?」
「何もしない。ただ寝るだけだ」
「…は?」
「口を開けろ」
「三成様」
「何だ?」
「い、え」
「数日はそのつもりだ。」
「…」
「訝しむな。私も人並みの情は持ち合わせている」
「はぁ」
「取り敢えず寝て隈を治せ。話はそれからだ」

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好みではない夫の三成 12

「奥方様」
「?」
「殿と大谷様がお帰り遊ばしました」
「そう…表に参りましょうか」
「いいえ。こちらに御出でになるということです」
「お二人で?」
「宴の前にお顔を拝見したいそうでございます。宜しいですか?」
「ええ」
「では私はお茶の支度をしてきます」
「お願いね、しの」






しのとは赤ん坊の頃からの付き合いだ。侍女としてでは無く私の幼馴染として共に居た。ここに上がる際の侍女として。慣れたものの方がいいだろうと勝手に決めたのが愚兄だ。引く手数多のしのが私の侍女になるのは反対したのだが覆されることは無く。なれば寵妾として栄華を極めて欲しいと頼んだものの答えは何時もいいえなのだ。寵妾より、侍女の仕事が性に合っていると笑って私に告げるのだから私はため息交じりで納得するしか無い。そういう人なのだ。曰く、幼馴染で姉で、戦友なのだ






「はいる」
「殿…と」
「我もよの」
「吉継様。」
「おい!名前を呼べと言っただろう!」
「ふふふ。ご無事でよろしゅうございました」
「ふん!」
「ひひひ。主は如何か?」
「日ノ本一安全な場所で恙無く」
「左様か…ん?」
「お茶をお持ちいたしました」
「ありがとう。しの」
「いえ」
「ああ、お願いがあるの」
「?」
「今、お二人に出されたお茶を飲みなさい」
「!!?」
「やれ、月」
「どういう事だ?」
「それはしのが飲めばわかりますわ」
「っ」
「しの」
「…三成」
「おい、女」






逃げようとしたのだろう。茶碗の割れる音はすれども血の匂いはしない。きっと吉継様か殿が取り押さえたのだろう。



「奥方様!」
「何?」
「何かの間違い」
「なれば飲みなさい」
「それ、は!」
「何より…私のしのは?」
「っち!」
「?」
「忍びか」
「ああ。そういう事か。…命乞いは許さない。死ね」
「やれ、三成。ここは我と賢人の出番よな。…月よ。これを我にくれるか?」
「ええ」
「ひ、ひひひ」
「この世の苦しみを全て味わいなさい」






好みではない夫の三成







「にしてもよくわかったな」
「しのとは長い付き合いでございます。」
「?」
「声や癖を真似て香まで共にしても心音迄は共にできませんもの」
「…は?」
「目が見えにくい時は特に耳や鼻がきくのですよ」
「そういうものか」
「あといくら無臭の毒と言ってもお茶の入れ方まで一緒は無理ですしね」
「凄まじいな」
「ふふふ…あら」
「やれ、入る。月」
「しのは…」
「今米蔵の裏で見つかった」
「…」
「弔うのは」
「いいえ」
「?」
「これで大願が叶うのでございます」

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好みではない夫の三成 10

「…」
「何だ」
「え、ああ。殿」
「?」
「…」
「おい、如何した?」
「ああ。そちらでしたか」
「?」
「すいません。ぼうっと」
「また熱か?」
「いいえ」
「貴様でもそういう時があるのだな」
「ふふふ。私も人の子ですから」
「にしてもだ…」
「!」
「刑部からだ」
「吉継様から?」
「数日後に出兵する。来たがっていたが無理だから…致し方ない」
「?!」
「私もだが…出陣が数日遅いからな。ことつかってきた」
「…良い香り」
「花が好きだな」
「ええ」
「こちらは私からだ」
「?」
「気に入らないか?」
「いいえ」
「…」
「…」
「やはり熱が」
「?」
「…月」
「はい」
「一つ尋ねる」
「はい」





「目が見えないのは嫁ぐ前かそれとも後か?」







「!」
「今確信を得た。私が触れるのを厭わない。…どちらだ?」
「見えないわけではありません。人より見にくいだけで…その。今日は調子が悪いから」
「生まれつきか」
「…一応お伝えはしたのですが」
「半兵衛様にか?」
「嫁ぐ前にです」
「…そうか」
「郷に返してくださっても…殿?」
「…」
「っ」
「…」
「と、の?…あ、の」
「…」
「三成、様?」
「?!」
「何方に?」
「あ、ああ!すまん。」
「叩き切るなら嬲るのはやめてください」
「?!だ、れがそんなことをするものか!」
「…」
「刑部の花を花瓶に入れていたところだ。後で直してもらえ。月」
「?」
「見えるか?」
「…近いです。」
「眼を細めるな」
「こうすればよく見えますから…」
「そう、か」
「殿?」
「私からの贈り物だ」
「?」
「見えていないのだろう?もう一度見てみろ」
「はぁ…鳥?」
「香炉だ。珍しい色をしていたからな。」
「綺麗」
「気に入ったか?」
「はい」
「そうか」
「殿」
「三成でいい」
「ですが」
「さっきは呼んだ」
「叩き斬られると思いましたから」
「何故だ」
「偽るのを嫌いますでしょ?」
「好かん!が、今回は半兵衛様のご判断だ。私の推察を挟む余地はない」
「あなた様らしい」
「?」
「普通なら叩き切るか、郷に返されるかのどちらです」
「知らん!」
「ふふふ」
「?!」
「三成様?」
「い、や。何でもない」
「???」
「それにだ。貴様が何であれ、娶れと命が下されたのだ。それが全てだ郷に返したりするのも叩き切るのも許可を得てからだ」
「…え?」
「私の一存では決まらない」
「そう、ですか」
「だから…月?」
「…」
「何故泣く?」
「さぁ」
「おい」
「戦さ場に行くとなると…当分は会えませんね」
「え?」
「女身では…里がそうでしたから。此処も」
「そう、だな」
「ご武運を」
「あ、ああ。…それ、より」
「側室の方は?」
「…は?」
「お会いに行かれるのでしょ?」
「如何いう意味だ?」
「そのままの意味ですが」
「っ」
「吉継様からの手紙確かに受け取りました。お怪我などなさらぬように無事おかえりくださいませとお伝えください」
「っち!」









好みではない夫の三成








「やれ」
「?!」
「こちよ。こち。」
「吉継様?!」
「ひひひ。我以外の何者でもないなぁ。月」
「出陣と聞きましたが」
「如何にも。」
「なれば」
「女が穢れなら戦場に立つ輩は如何する?」
「でも」
「でももへちまあるまい。月」
「?」
「見えておるか?」
「…」
「近いなぁ」
「今日は本当に見にくくて…吉継様」
「ん?」
「すり潰すのですか?」
「敵をなぁ」
「私は?」
「主には致さぬよ」
「…」
「ひひひ。やれ、月」
「?」
「我が見えるか?」
「近いです」
「醜い我が」
「?」
「故に主は我を受け入れたか?」
「吉継様」
「ん?…やれ月。なかしゃるな」
「馬鹿」
「ひひひ」
「馬鹿ぁ」
「やれ。そう声をあげて」
「私は貴方が大切なのです」
「月」
「兄様は戦に行ったまま帰らなかったから…貴方が、そう、なったらと」
「兄…あぁ主の許嫁だった男か」
「もう二度と大切な人なんて作らないと心に決めたのに!吉継様、がそうだから!」
「ほれ、なかしゃるな」
「他の人と同じにしないで」
「…」
「私は貴方を…っん!」
「やれ月」
「はい」
「この醜い我をか?」
「貴方をです」
「おぞましい我をか?」
「悍ましくはないです」
「左様か」
「?」
「 なぁに。無事に戻る。主は心配せずに三成と我の帰りをまたしゃれ」
「はい」
「本に愛い。」
「!」
「我の愛い、嫁御よな」

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好みではない夫の三成 9

「何をしている?」
「餌付けよ。餌付け」
「…」
「ほれ口を開けしゃれ」
「…」
「美味か?」
「ひゃ、い」
「?!」
「ちと座りしゃれ。なぁ、月もそう思わぬか?」
「つ、き?」
「本に主は。己が妻の名も知らぬか…ほれもう一口」
「うぐ。無理矢理入れないでくださいませ」
「雛にはこうして食べさすものよ…ん?三成???」
「おい!」
「はい」
「月というのか?何故教えない!何故刑部にだけ伝える?!」
「婚儀の際にも…それ以前にも家中を通してお伝えしたと思います」
「我も賢人が主に伝える席で聞いた。…本に主は」
「だ、大体!二夫に仕えるというのは」
「太閤の意思よ」
「き、拒否したと聞いていた!」
「拒否されたよの。ひひひ。我とて棚ぼたよ。ほれ」
「も、う」
「も、し!子ができたら!!!」
「ぬしと我の子なればすぐに見分けがつく故。あとは賢人の差配よな」
「ぐ…貴様はそれで良いのか?」
「今日知らぬ女から夜伽狂いと言われてしまい…些か遺憾で御座いますが。殿下の命なれば致し方ありません。」
「この、淫婦が!」
「致し方ありません。太閤殿下の命を私などが覆せるはずもありますまい」
「刑部」
「我とて同じ。なぁに、我との子は出来ぬだろうしなぁ。主もよう知っておろう?」
「?」
「はぁ…主とて嫌よの」
「???」
「この夫婦は」
「それより、おい!」
「?」
「絵草紙は気に入らんのか?!」
「え?」
「見ていないそうだな」
「そんなことはありませんけど…手が使いにくいので」
「…これをやる」
「?」
「秀吉様から賜ったものだ。」
「良い香り」
「…」
「殿?」
「い、や。なんでもない!有名な香らしい。」
「やれ何か書いてある…蘭、奢待………」
「……」
「如何した?不具合があるのか?!」
「あ、るもないも。」
「太閤もまた…月?」
「時折吉継様が殿のことを案じておる理由がわかりました。」
「であろう?」
「どういう意味だ?」
「とりあえず…お預かり致します。」
「焚けばいい」
「この一欠けでどれ程の兵糧が賄えるとお思いか」
「?」
「故に三成よ」
「…その前にだ」
「?」
「私を呼べ」
「殿?」
「刑部を呼べ」
「吉継様?」
「やれ悋気か」
「??」
「何故名を呼ばん!」
「特に理由はありませんが…名前を呼ぶのは少し。ああ、吉継様は旦那様とお呼びいたしましょうか?」
「ひひひ、御免被る」
「お、ま、え、は!!!」
「っ」
「やれ怒りゃるな。月が怯えて可哀想よ」
「な?!ぐ…もう良い!」









好みではない夫の三成 9






「良いのかい?」
「吉継が女に興味を持つこと自体珍しい。基盤を強化するには仕方がない」
「三夫に仕える女、か。面白いね」
「あれが男なれば面白かっただろうが…仕方がない」
「本当にね。さてと。何方が孕ますかな」

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好みではない夫の三成 8

「今日は絵草紙です」
「殿から?」
「はい」
「…困ったわね」
「寵愛されているという事です。」
「ふふふ。ああしの」
「はい」
「お礼の手紙」
「あの、ですが」
「そういうのがお好きみたいだし」
「奥方様に書いて欲しいのでは」
「私が?浅ましい字など見て欲しくはないもの」
「…」
「それにしても」
「?」
「ここから見える庭はいつも綺麗ね」
「それは!…奥方様が御療養中は特に気にかけるようにと」
「そう…ふふふ」
「奥方様?」
「貴方の方が随分と大阪に馴染んだみたいね」
「?!」
「あ、怒っているわけでも悋気でもないの。早く殿も貴方に手をつければ万事解決するのに」
「それは」
「?」
「無理かと…奥方様を大変」
「しの」
「っ」
「…ごめんなさいね」
「いえ」
「何はともあれ。紅葉も色づいてきたわ」
「…」
「嫌な色」
「…?」
「少し休みます」
「はい」
「お手紙お願い」







「昔の許嫁が忘れられないんじゃないかな」と言った賢人の顔を見る。失念していた。というよりも興味が無かった。あれには昔許嫁がいた。




「忘れていたのかい?」
「ひひひ。もう耄碌してしもうたわ。…確か」
「今の当主の兄さ。温厚な武人だったよ」
「知っておるのか?」
「少しね…戦さ場で討たれた。というか暗殺かな?」
「血なまぐさい話よ」
「まぁ、それは良いとして。仲の良い許嫁だったらしくてね。これはちょうど良いなと」
「…」
「彼女もよく理解しているみたいだしね」
「ふむ…故に三成がちょうど良いと」
「君が気に入ったのなら二人で愛でても良いよ。子が出来ればそれで良い。彼女も名ばかりの母になりたいみたいだしね」
「ふむ」
「如何したの?」
「あれの孤独はそこからか」
「そうというわけでもないけど…君は気づいていないのかな」
「?」
「まぁ、そのうちわかるよ」
「意味深よな」
「彼女は復讐のためにここにあるのかもしれないね」
「…」
「だからこそ、三成君が都合が良いのさ。君では惹かれあってしまうだろう?無論僕もだ」
「孤独なもの同士がよく似合う。三成がほって置けないのもそのせいか…ひひひ。」
「仲睦まじくここで生きてくれても良いんだけどね」
「我にも嬲られてか?」
「乗り気かい」
「少しなぁ」
「君らしくもない」
「捨て猫を飼いならしてみたいと思うのもまた人の常よ」








好みではない夫の三成







「…あ、ら」
「やれ、起きずにいりゃれ」
「ふふふ。大谷様」
「矢張り腫れたか。熱も高いなぁ」
「如何、なされましたか?」
「喋りにくいか?うなづくだけで良い。先ほど太閤の下知で我も主を嬲る要員になった」
「?」
「話を早く行って仕舞えば早く子供を産ん仕舞えという事よな…ん?そのような顔をしりゃるな。まぁ我から言った手前そういう顔をされても悲しいかなしい。」
「二夫に仕えるのですか?」
「それはちと違う。主は三成の嫁よ」
「?」
「我は抱けぬ故な…人肌寂しいときに共寝をしてくれれば良い。それもなかなかあるまい。」
「大谷、様?」
「吉継よ。よしつぐ」
「吉継、様」
「主にそう呼んで欲しかったのとこう看病する口実よな」
「!」
「口を開けしゃれ。少し苦いが…薬よ」
「あ、う」
「主はちと、人の優しさにならしゃれ」
「私は」
「我とて主に何かあればかなしい。」
「?!」
「其れに美花よりも仇花が好みよな」
「…」
「やれ、泣かしゃるな」
「私のこと」
「主が思っておる以上に知っておって思っておる以上に知らぬよ。それはお互い様よ」
「…」
「にしても主は愛いな」
「!」
「すまし顔も良いが年相応にしりゃれ。それの方が可愛い」
「か、わ?!」
「ひひひ。我も大義を貰うたからな。存分に可愛がろうよな」

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