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変換なしの雑食夢

ran

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山葵

「足を痛めたんだって?」
「あら、半兵衛」
「もう君は!いったい幾つになっだと思っているんだい!」
「ふふふ」
「笑っても無駄だよ。ほら!」
「痛いわ」
「ふーん…思ったよりひどい有様だね。」
「ええ」
「痛みは?」
「今」
「其れは其れは」
「相も変わらず酷い男ですね。」
「開城説得に行って欲しかったんだけど」
「行きますよ」
「その足でかい?」
「其れが私のお役目でしたら」
「そうだね。君に一存するよ。でもその足だから…誰かつけよう」
「いつも通りで良いですよ」
「もしもがあってはいけないからね」
「もしもなんて隣り合わせですもの」
「まぁ。そうだけど」
「今回は何処に?」
「信州武田」
「あちらは確か…信玄公がよろしくありませんでしたね。誰か。滋養に良い薬を。人参がよろしいわ。あと食す物も。甘味にえー、と」
「君らしいね。田舎のおばば様では無いのだから。」
「あら、忠をつくせばきっとわかりあえまする」
「ん。そういうものかな?君の異常なまでの勝率にかけるだけだよ」
「はい。任されました。では行って参りますので降ろしてくださいませ」
「では。誰に見てもらおうか…うん」
「?」
「どうせそのままだよね。そこで待ってて。要るものは其処のものにいい給え」
「はい。すみませんがお願いいたしますね。」



そう言って私は縁側座る。紙に必要なものを書いて渡すと私にやることは無い。ふふふと笑いながら足をぶらぶらとしていると矢張り、痛い。足袋を履けるかしらと足首を撫でると少し腫れているものだから困ってしまう。素足はよろしく無い。年甲斐もなく枝を手折るのがよろしくなかったらしい。と思ったあたりで私に誰かの影がかかる。誰、かしらと見上げれば銀髪の男が立っていて瞠目してしまう。





「治部…?」
「…」
「…如何、致しましたか?」
「私が供に」
「…は?」
「ああ。いたいた。姫用意出来たよ」
「今、治部が」
「ん?君の人誑しぶりを見せる良い機会だろう?」
「人聞きの悪い。刑部を」
「と思ったけど。今忙しくてね。いないから説得できないよ。三成君」
「は!」
「姫を頼むよ。君は姫の命にだけ気を配れば良い」
「神明を賭して」
「…では参りましょうか。誰か。杖を」
「杖?」
「あと大きな足袋も」
「用意してる。」
「?」
「庭の花を打とうとして落ちて捻挫さ」
「花?」
「知っているのかい?」
「さあ参りましょう!」
「…三成君」
「は、い」
「よく見て勉強しておいで。彼女にしか無い武器と力をね」
「…」







山葵







「…」
「…」
「馬に乗れ、ば」
「お手を」
「ですが…」
「…」
「っと。」
「矢張りその足では」
「では誰か口取りを」
「私の馬に」
「?」
「何かありました困りますので」
「では。貴方の部下の何某かに」
「私では心許ないと?」
「い、いえ!そうでは無くて。お邪魔でしょう」
「…半兵衛様の命でございます」
「そう、ですか」
「はい」
「貴方が、私の命を聞くとは思えませぬが…。これはお願いです」
「願い?」
「もし、別した折何かありましたら何かありましたら貴方は単騎で兄様の元へおかえりくださいませ」
「は?」
「私は時間を稼がなくてはなりません。故に貴方では供はならないのです。ですが、命とのこと。お願いでございます。」
「…半兵衛様の命に神明を賭しております故。そのような事にならぬようお祈り申し上げます」
「矢張り、ですか。いよいよもって成功致しませんとね」
「お手を」
「いえ。自ら参ります」
「ですが…」
「参りましょう」

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白磁

初めてお会いしたのはいつの頃だったのか?まだ私が佐吉と呼ばれ、姫様の御髪も上げておられぬ折。半兵衛様に連れられて御前に参じたのだ。言葉をうまく紡げぬ私に何一つお責めにならず、嫋やかにお笑い遊ばし私の名を紡がれたその瞬間私は終生、この方を守る盾になろうと誓ったのだ。









ふと目を覚まし手の内にある筆を見て溜息をつく。いつの間にか寝てしまっていたのだろう。一瞬佐吉と呼ばれた時代の己が今のそれと思う程度に深く眠っていたらしい。転寝とはいつ振りか。だが、書状が汚れてしまったのは頂けない。もう一度書き直さなければならないとため息をつく。

ふと部屋の外が賑やかなのに気がつく。

華やかな、かといって姦しくないこのお声は姫様のものだろう。近くで誰かと話してる様だ。あの愛らしく可愛らしい姫様は美しく聡明な女性になられた。だが、私が自費慈愛に満ちたその姿を拝し奉ったのはいつ以来か。その原因も行いも自分自身にあるのだとため息に似た吐息を吐く。覇道を邁進する故についた穢れた血を厭う事はなかったが、姫の御前に侍る事は憚られた。故に、進軍が多くなるにつれもとより多く無い御前への出仕も少なくなっていった。ただ、姫様の慈愛は今なお続いておられて一兵卒に過ぎぬ私にまでお心を割いてくださる。またそれが、甘美で、頂けない。私の戒めを安易に解いてしまう誘惑なのだ。




「やれ、三成。起きたか?」
「…刑部か」
「珍しく転寝ておったな」
「御蔭で文の書き直しだ。」
「それはすまぬすまぬ。筆を取るとなると起きると思てな。」
「いや、良い。私が悪いのだ。で、どうした?」
「姫がな、ぬしにと言ってなぁ。如何する?」
「花か?」
「最近篭っておるのをいたく気に掛けられてなぁ。此れも姫からよ。食べしゃれ」
「ありがたく頂戴すると伝えてくれ。」
「己が口で言わぬのか?」
「まだ仕事がある。」
「左様か。」
「…」
「まぁ根を詰めぬ様になぁ。手紙も認めぬか?」
「私の字はお目汚しになる」
「ぬしも頑なよの。まぁ我から姫に伝えておく」
「…姫様は?」
「息災よ。ただ、」
「?」
「いや何。ぬしの心配することでは無い故」
「刑部」
「ひひっ。心配なら」
「会わん!」
「はぁ。また姫が悲しむか」
「戯言を言う暇があれば手伝え」
「あいわかった。と言いたいが、先に姫に会いに行ってくる」
「ああ」






きっと姫様は私が御前に侍るのを厭われるだろう。此れで良いのだ。ちらりと刑部が置いていった花と包みを見る。季節のものをと時折差し入れてくださるお心が今は恐ろしくてならない。この筆をすぐにでも置いて御前に馳せ参じたいという邪な心とこのままでなくてはならないという忠信と。



「梅が綻んだか」




可憐で美しい其れを抱いて私は彼の方の尊名を呟くしか出来ないのだ






白磁







「姫」
「刑部」
「まだ痛々しいな」
「花の精に叱られたのでしょう。邪な心で傷つけてしまいましたから。…治部には?」
「約束通り言っておらん。」
「良かった」
「捻挫に効く薬よな」
「有難うございます。」
「本にぬしも会いに行けば良かろう?我もまた忙しい身故飛脚代わりに使われては堪らぬ」
「ごめんなさい。でも、治部は私の事嫌っておいでですから」
「主もなぁ。一国の主。太閤の姫として毅然と致せ。そう弱気ではいかぬと賢人にもこくこくと言われておったを忘れたか?」
「と、申しましても。武も智も無い私が何をもって自信となすのか…」
「というがなぁ。ぬしは兵に絶大な人気があろう?傷痍軍人の慰問。婦人教育。ぬし組織の救護部隊は全線で多いな効果を発揮しておる。何を卑下することがあろう?」
「ありがとうございます」
「姫」
「ですが…治部には目障りでしか無いのでしょう。何一つとして私は己が手で出来ません。救護部隊はその長たるものがしっかりしているからであって私は名だけです」
「ヒヒッ。そう申すはぬしだけよなぁ。まあ良い。我も三成の食を頼んでおる身故」
「賄い場は好きなのですよ。夕餉を作って持って行かせます。貴方様のも一緒で宜しいですか?」
「今日くらい立たれるのを控えられよ。治りが遅くなるはよろしくない」
「…ですが」
「此処は年上のいうことを聞きしゃれ。」
「はい」
「本に素直な良いお子だ」


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白藤色

「わぁ」
「うむ」
「兄様、半兵衛」
「凄く綺麗だよ。本当に本当さ」
「泣くな半兵衛」
「だって秀吉。あんな小さかった僕たちの姫がこんな綺麗なお嫁さんになるなんて…」
「そうだな」
「ふふふ。今生の別の様におっしゃりませんように。帰る場所はお二人のあられる場所ですもの」
「そうだね」
「ええ。お二人にはいつまでも健やかで…御指南いただかないと」
「ん」
「兄様、半兵衛」
「何だ?」
「あちらの事かな?」
「ええ。凄く、騒がしくて」
「今、片倉君と佐助君を送ったよ。」
「式前から大変ですね」
「さあ、秀吉。そろそろ行かないと」
「ああ」
「ん?」
「半兵衛も」
「バージンロードを二人がかり?」
「意外と淋しがり屋でしょう?」
「姫もね」
「ええ。私のためだと思って。お願いします」
「うん。秀吉がいいというのなら…仕方ないね」
「兄様」
「二人ともさあ行くぞ」







神前には後で行く。この内府大講堂はある意味、お飾りだ。大国の後継者としてを内外に示す。わかっているのだがそれでも心が乱れる。




「やれ三成」
「何だ刑部」
「落ち着きゃれ」
「落ち着いている」
「他のものにはそう見えてもなぁ」
「姫様がもう少しで来られる」
「ん。そうよな。」
「どの様な衣装なのかも聞けなかったが…」
「美しかろうな…ん。来よった」
「!?」





大きな扉が開くとお二人が入って来られる。
そしてその後ろから姫様が見える。




「!」
「これは、見事よな」
「美しい」
「ひひひ」
「三成」
「三成君」
「は!」
「ああ。新郎がひざをついてどするんだい?さあ立って」
「ですが…」
「三成…姫?」
「姫様?!」
「石田様」
「どうぞお立ち遊ばしてください!私などに」
「今日。今この時から私はあなたの妻です。」
「っ」
「石田様」
「もうそれもおかしいね」
「?」
「君も石田だよ」
「あ…」
「まぁそのうち豊臣だけどさ」
「姫様?」
「三成、様?」
「!」
「三成、姫を頼むぞ」
「御転婆だから気をつけてね」
「終生慈しむ許可を」
「…許す」




そう仰ると手を出す様に促される。私の手の上に姫様の小さな手が置かれる。手袋越しに震えているのがわかる。きっと、私もだろう。
茶番だろうが何だろうが、今私はこの世の誰よりも幸せな男に違いない









白藤色






「三成様?」
「ん?」
「凄く素敵です」
「姫様も。美しい」
「っ…」
「もう少しで終わりますから」
「ええ」
「草臥れましたか?」
「少し、でもそれ以上に嬉しくて」
「私もです」

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石竹色

「そう言えば」
「ん?」
「日頃姫様は何をしてお過ごしなのだろうか?」
「…」
「知らぬのか?」
「婚約者の主が知らぬ事を我が知るはずなかろう」
「…そうか」
「つけてみるか」
「…それは」
「知らぬ間にいらぬ虫が付いていたらのう…」
「?!」
「今の世。姫が主を慕っておっても関係なく襲う下劣な輩もおると聞いておる。確かめるのもまた良かろう?」
「行くぞ!刑部」
「ひひひ。全て義のため主のため」







「女学校では看護学に力をお入れ遊ばしています。また、どの科目も成績は優秀です。ご本人様におかれましては医術のこともう少し詳しく知りたいそうですが…あの方をご満足される知識は上の学校で学ぶものかと。」
「そうか」
「然し御婚礼との事。それも難しいかと思います。」
「?」
「医学科は家に眠りに帰る様なものと聞き及んでおりますので。」
「…」
「先達てより陛下、宰相殿下とおいでくださりました。」
「?!」
「皆様内密にと。ご安心下さいませ。姫様におかれましては学を治ること。ご学友との関係に至るまで何一つ難にあられるところはございません。御心も優しく先輩後輩に好かれておいでです」
「其れを聞いて安心した。」





「ひひひ。結果何もなかったなぁ。」
「当たり前だ!」
「にしても嬉しそうもな…次は慰安か」
「行くぞ!」





「傷痍軍人、寡婦、孤児。何件回るおつもりか?」
「我とてわからぬが…相も変わらずよなぁ。怪我人であろうが気にせず包帯交換しておるわ」
「?」
「嫌がらぬ訳よな」
「刑部?何を言っている?あれらと貴様は同列なわけあるまい!」
「さてな」
「家族と言い切ったのだぞ!恐れ多くも姫様が。貴様と松の部屋も用意すると楽しみにしていたのだ。」
「…初耳ぞ」
「そうなのか?」
「ひひひ。相変わらず変わり者の夫婦よな」
「夫婦?!」
「やれ、反応するのはそこか?」




「…他家に挨拶回りに荘園の管理。」
「流石に姫よなぁ」
「お疲れめされないのだろうか?」
「この上ぬしの食事の管理か…」
「…」
「無理をすな。主とて姫の料理なら食すが他は雀の涙。」
「くっ!」
「にしてもこんなにも忙しいとはなぁ。時折様子伺いをせねばな」
「ああ」






石竹色





「姫様」
「石田様!申し訳ありません。お帰りあそばしたのを気づかずに」
「いえ、無理をなさらず」
「ですが…」
「?」
「その…」
「姫様?」
「石田様は一年の大半を戦地で過ごされる事もしばしばあられるお忙しい方です。ですから一回でも多くお帰りなさいが言いたいのです」
「姫様!!!」
「きゃ!石田様?!」
「っ!!!」
「ふふ。冷たいですね。ご苦労様でした」
「(全身全霊を賭してこの方をお守りする!!!)」







「やれ、帰った」
「おえりなさいませ」
「熱い熱い。なぁ松」
「尾行されていた様ですけど?」
「ひひひ。姫の忙しさをな知る故よ」
「そうでございましたか。今日は特に忙しくしておいででしたから」
「結婚式もそろそろ故。のう、松」
「はい」
「姫様が我らに部屋を下賜遊ばすのは知っているか?」
「は?」
「の様よ」
「初耳です」
「どうよ。せっかくのお心遣い。無碍にするのはいささか…」
「!」
「使うのであれば我はぬしが良い」
「…そう、ですか」
「ではそういたそうなぁ」
「ええ」

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唐紅

「姫様」
「はい」
「…もう痛くありませんから」
「本当にごめんなさい。なんとお詫びすれば良いか」
「いえ、私の不配慮が原因です。」
「あんな…子供の様に。貴方にご迷惑どころか…お怪我をさせてしまって」
「この様ものは怪我には入りません」
「ですが…」
「姫様」
「…」
「…」
「一層…」
「姫様?」
「…」
「まさか?!」
「私を罰して下さい!」
「婚約を破棄にはしないでください」
「え?」
「は?」
「石田様?」
「破棄はやめて下さいませ!私は貴方以外の方と添うつもりもありません!」
「破棄は…私もしたくありません」
「姫様!」
「ですが…私は。どうぞ!同じ様に打っていただいても!引っ掻いていただいても構いません!打ち据えられても切り刻まれても致し方ないことをしております!どうぞ私を罰して下さいませ!」
「打ち据え…斬り刻む?私が姫様を?」
「はい!」
「無理です!!!」
「ですが!」
「貴方の美しい肌に擦り傷一つ付けたくないのです!それ以前に…打ち据えることなど!貴方は私がお守りするものであって!傷つけることはありません」
「私は貴方を」
「いや、痛くありません!怪我ではありません」
「ぐす…」
「姫様?!」
「やれ、仲直り…まだの様よの」
「刑部!助けてくれ!!!」
「ん?」
「かくかくしかじか!」
「…デコピンでもいたせ。」
「!」
「姫も。あまり無理を申すな。もし、誰ぞ主にデコピンして見よ。冗談ではすまぬのよ。」
「ですが…」
「まぁ、終わり次第例の部屋に。婚礼の晴着を決める故」
「石田様…」
「デコピンなど!許されるわけがない!!!」
「だめか。なれば姫、頬に接吻などでもしりゃれ」
「「?!」」
「元々罪ではあるまいが、姫からなさる羞恥は同等よな」
「で、すが」
「三成も打ち据える趣味はなかろう?ここらで手打ちせよ」
「だ、が」
「嫌か?」
「嫌なわけがない!」
「口にするのはぬしから折を見てすればいい。故に姫からは頬よな。」
「…」
「では。あとで。三成。ぬしもとっとと済ませて参れ。丈合わせがある故」
「おい!…姫様?」
「!」
「ご無理をなさらず」
「い、え」
「…」
「あの、」
「(愛らしい)」
「そ、の」
「目を」
「はい?」
「閉じてください」
「?」
「…」
「なっ?!」
「接吻は私からしたいものです」
「う…石田様」
「なさいますか?」
「!」
「そのご尊顔を拝しただけで充分…!」
「っ!では!行ってまいります!!」
「…」








唐紅







「茹で蛸が二つよな」
「可愛いなぁ」
「賢人も骨抜きか」

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