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変換なしの雑食夢

ran

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白磁

初めてお会いしたのはいつの頃だったのか?まだ私が佐吉と呼ばれ、姫様の御髪も上げておられぬ折。半兵衛様に連れられて御前に参じたのだ。言葉をうまく紡げぬ私に何一つお責めにならず、嫋やかにお笑い遊ばし私の名を紡がれたその瞬間私は終生、この方を守る盾になろうと誓ったのだ。









ふと目を覚まし手の内にある筆を見て溜息をつく。いつの間にか寝てしまっていたのだろう。一瞬佐吉と呼ばれた時代の己が今のそれと思う程度に深く眠っていたらしい。転寝とはいつ振りか。だが、書状が汚れてしまったのは頂けない。もう一度書き直さなければならないとため息をつく。

ふと部屋の外が賑やかなのに気がつく。

華やかな、かといって姦しくないこのお声は姫様のものだろう。近くで誰かと話してる様だ。あの愛らしく可愛らしい姫様は美しく聡明な女性になられた。だが、私が自費慈愛に満ちたその姿を拝し奉ったのはいつ以来か。その原因も行いも自分自身にあるのだとため息に似た吐息を吐く。覇道を邁進する故についた穢れた血を厭う事はなかったが、姫の御前に侍る事は憚られた。故に、進軍が多くなるにつれもとより多く無い御前への出仕も少なくなっていった。ただ、姫様の慈愛は今なお続いておられて一兵卒に過ぎぬ私にまでお心を割いてくださる。またそれが、甘美で、頂けない。私の戒めを安易に解いてしまう誘惑なのだ。




「やれ、三成。起きたか?」
「…刑部か」
「珍しく転寝ておったな」
「御蔭で文の書き直しだ。」
「それはすまぬすまぬ。筆を取るとなると起きると思てな。」
「いや、良い。私が悪いのだ。で、どうした?」
「姫がな、ぬしにと言ってなぁ。如何する?」
「花か?」
「最近篭っておるのをいたく気に掛けられてなぁ。此れも姫からよ。食べしゃれ」
「ありがたく頂戴すると伝えてくれ。」
「己が口で言わぬのか?」
「まだ仕事がある。」
「左様か。」
「…」
「まぁ根を詰めぬ様になぁ。手紙も認めぬか?」
「私の字はお目汚しになる」
「ぬしも頑なよの。まぁ我から姫に伝えておく」
「…姫様は?」
「息災よ。ただ、」
「?」
「いや何。ぬしの心配することでは無い故」
「刑部」
「ひひっ。心配なら」
「会わん!」
「はぁ。また姫が悲しむか」
「戯言を言う暇があれば手伝え」
「あいわかった。と言いたいが、先に姫に会いに行ってくる」
「ああ」






きっと姫様は私が御前に侍るのを厭われるだろう。此れで良いのだ。ちらりと刑部が置いていった花と包みを見る。季節のものをと時折差し入れてくださるお心が今は恐ろしくてならない。この筆をすぐにでも置いて御前に馳せ参じたいという邪な心とこのままでなくてはならないという忠信と。



「梅が綻んだか」




可憐で美しい其れを抱いて私は彼の方の尊名を呟くしか出来ないのだ






白磁







「姫」
「刑部」
「まだ痛々しいな」
「花の精に叱られたのでしょう。邪な心で傷つけてしまいましたから。…治部には?」
「約束通り言っておらん。」
「良かった」
「捻挫に効く薬よな」
「有難うございます。」
「本にぬしも会いに行けば良かろう?我もまた忙しい身故飛脚代わりに使われては堪らぬ」
「ごめんなさい。でも、治部は私の事嫌っておいでですから」
「主もなぁ。一国の主。太閤の姫として毅然と致せ。そう弱気ではいかぬと賢人にもこくこくと言われておったを忘れたか?」
「と、申しましても。武も智も無い私が何をもって自信となすのか…」
「というがなぁ。ぬしは兵に絶大な人気があろう?傷痍軍人の慰問。婦人教育。ぬし組織の救護部隊は全線で多いな効果を発揮しておる。何を卑下することがあろう?」
「ありがとうございます」
「姫」
「ですが…治部には目障りでしか無いのでしょう。何一つとして私は己が手で出来ません。救護部隊はその長たるものがしっかりしているからであって私は名だけです」
「ヒヒッ。そう申すはぬしだけよなぁ。まあ良い。我も三成の食を頼んでおる身故」
「賄い場は好きなのですよ。夕餉を作って持って行かせます。貴方様のも一緒で宜しいですか?」
「今日くらい立たれるのを控えられよ。治りが遅くなるはよろしくない」
「…ですが」
「此処は年上のいうことを聞きしゃれ。」
「はい」
「本に素直な良いお子だ」


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