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変換なしの雑食夢

ran

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幸せな眠り

「…誰も近づけるな」
「ですが」
「…寝ている」
「!」
「私も休む。…刑部にそう伝えろ」
「はい!ゆっくりお休み下さい」





ぱたりと閉まる障子の音で目が醒める。体が重いを通り越して痛い。唸りながら三成の方を見る。なんかブツブツ言いってんな。「明日が面倒だ」とか「あの喜色満面が腹立たしい」とか。なら、来んなよ。腹立たしいのは誰よりも私だ。いきなりやって来て人に盛ったのは何処のどいつだよ。ぼんやりとしつつも恨みを込めて見ていると三成と目が合う。目を丸くしていそいそと近づいてくる様は三成っぽくない。なんだ本当に。




「起きていたのか?」
「うん」
「辛くは、ないか?」
「身体中痛い」
「?!」
「初めてで徹夜コースだとは思わなかったもの」
「す、すまない」
「…」
「その、だ。」
「?」
「嫌いになったか?」
「何が?」
「わ、たしのことだ」
「?」



何言ってんだという顔で見ていたのだろう。ますます青い顔をしてやはり嫌いになってしまったか?というので別段好きでも嫌いでもないのになぁと思う。私自身頭が追っついていないのだそういう関係ではなかったはず。だ。
三成は秀吉様の私は半兵衛様の侍童として上がってからの付き合い。刑部とは普通に仲良し。家康殿は少し苦手。官兵衛さんはお菓子くれるいい人。島ちゃんはなぜか警戒されてて又兵衛ちゃんとは半兵衛様愛仲間。総括すれば部下は可愛い。上司は優しい。同期は城畜だ。そういう人人間関係で、それ以上でも以下でもない。ましてや情事香わす煤けた関係なんて一抹もない。何より相手は三成だ。そういうの本当にない。無いはず。なのに昨日こいつは私を抱いた。酔った勢いでも冗談でもましてや女武者である私を軽んじてでもなく。私を抱いた。
初めてだからそれがどのようなものか比較対象はないものの戦女を抱く様やら乱取りを取り締まる一環で行為を見ていた私はそこまでの箱入りでも無い。ある程度の知識の中で私に対するそれは無慈悲とは程遠いものだった。
合意も何もあったものではなかったものの。それこそ死ぬほどねちこく初めての私を責め立てる奴は外道ではあったが鬼畜ではなかった。
意味がわからないのだ。彼の考えも行為も何もかも。私の嫌ではなかった気持ちも妙に満たされた体も。全くもって理解不能だ。




「…」
「なんで三成がしょぼくれてるのよ」
「お前気持ちも聞かず…無慈悲なことをしてしまった」
「そう」
「いくら許しを乞うても…許されることでは無い」
「忘れたいの?」
「?!」
「ならすぐ部屋を出て。そうすれば私も忘れるよ」
「なっ」
「元どおりの同僚。」
「…すまない」





絞り出された声ん顔を見れば提案に乗ったのかと思ったのに。反して寝具に手を這わす三成は泣きそうな顔をしている。




「私が望んだことだ。一抹の後悔もない」
「悲しそうな顔しないでよ」
「私の乞許は愛しいお前を一方的に蹂躙したことだ」
「…」
「家康と親密げに話していたところを見て…そのだ。頭に血が」
「ちょっと待って」
「どうした?」
「愛しいって誰を?」
「お前をだ」
「…」
「気がつかなかったか」
「青天の霹靂ってこういうことを言うのね」
「私は侍童の折からお前に懸想している。順だってこう言う関係になる予定だったが…そのだ。お前は家康と」
「いや家康殿は苦手よ。あー言う胡散臭いの」
「の割には」
「半兵衛様の命です。」
「…」
「というより、三成を焚きつけていたのかもね。今思えばどうでもいい命が多かった気がする」
「そう、か」
「私だけ気がついてなかったのね」
「…」
「なんだかなぁ。」
「おい」
「ん?」
「私を」
「嫌ってないし。怒ってはない。ただ、腹たってはいるけどね」
「すまない」
「三成」
「?」




寝具をめくって寝ないの?と聞くといつも青白い白さの三成顔が真っ赤になる。あ、私裸だった。そう思う間も無く三成はいそいそと布団に入って来て私を抱きしめる。
いつもは無臭時々血匂いなのに今は少し汗臭くて妙に男臭い。三成も男だったんだよねと変に実感してしまって私の顔も赤いことだろう。自然と薄いと思っていたのに実はそうでもなかった三成の無理に顔を埋める。もやしかと思っていたのに実は男なんだと見せつけられるようで少し恥ずかしい




「私と」
「ん」
「私とだ。その。嘉を」
「無理」
「?!」
「眠いもん。」
「…」
「このまま寝てこのまま起きたらその時また言って」
「断る気か?」
「そんな無慈悲なこと言わないよ。でも半兵衛様には一緒に怒られてね」
「土下座する。」
「言ってたもんね…私を娶る男に土下座させて父親振りたいって。いいの?」
「それくらいは想定内だ」
「ふふふ」
「?」
「好きよ。三成」
「なっ!?」
「でも答えは後で。腹たったの仕返しはしときます」
「…」
「そんな捨てられた犬みたいな顔しないでよ」
「…」
「…もう」
「!」
「嘉通じます。浮気したら殺す」
「浮気などしない!」
「ん」
「よ、よし。私は今から」
「独り寝さす気かよ」
「いや、だが」



今は寝るのと言って擦り寄ると腕に力が入って少し痛いが許してやろう。「幸せにしてやる」とか「私は果報者だ」とかキャラクターにないことを言う程度に喜んでくれるなら。


半兵衛様はきっと土下座して色々言って「幸せに御成よ」と微笑んでくださるのだろうなぁ。幸せだなとらしくもないことを私も思って静かに眠るのだ






幸せな眠り

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昔男ありけり

「熱?!高熱か!医師を!!」
「安心しりゃれ。今は寝ておる。にしても主は…」
「?」
「あれに何故面等向かわぬ?」
「むむむむむむむむむりだ!」
「我は主があれを恋い焦がれておるのは知っておるがあれは主に嫌われておると思っているからなぁ。主が足繁く義父上のもとに通い、許可を得た上で太閤に頼み込んだことすら知らぬ故。あれでは嫌われてしまう。それに」
「?」
「主の浮名もよう知っておる」
「?!!!?!?」
「知られておらぬと思う方が面白い話よの」
「刑部」
「ひひひ。困った時み頼られるな。」
「…」
「大事にしりゃれ。漸く夫婦になった故」
「ああ」
「大体あれは普通の娘ではない故…」
「みみみみみみ三成様ー!!!!!奥方様が!」
「何?!」
「こうなるのよなぁ」





取り敢えず腹が立ったので里に帰ろうとした瞬間、異常にまで慌てる侍女たちに島殿を呼ばれる。それが益々腹立たしさを助長する。
走っていく背中を見つめて堪忍袋の尾が切れた。



「奥方様〜」
「降りてきてくださいませ」
「嫌よ」
「何であんなところに…」
「奥方様が鬼河津のご息女である事を失念しておりました…」
「ここから出ていくと先程から」
「三成様がご覧になったら…」
「あ!」
「三成様!」
「奥!?」
「ひひひ。御転婆が過ぎ様な」






玄関まで無理を通せばよかったと舌打ちをする。侍女たちに怪我をさせない様にと気を回し過ぎたわと思いながら実家の方を見る。もし門前払いを食らったら一通り呪詛をばら撒いて山にでも篭ってやろう。下から叫ばれる声を無視してそう思う。無責任な男達は危ないかそう言う。今まで無視に近しいことをして居たくせに。





「降りろ!」
「…」
「危ない!!!」
「ふふ」
「?!」





怪我でもしたら合理的に里に返されるかなと思いながら笑っていると何故か焦った様に叫ばれる。遅い遅い。遅すぎる。今更構わないでよ。




「っ」
「…きらい」
「泣く、な」
「今更…私のことなんて捨てたくせに」
「捨てて居ない!」
「秀吉様の命だったからでしょ!!!私のことなんてきらいなくせに!!!!!」





子供の様に声を出して泣く。三成なんて嫌い、大っ嫌いと呟きながら。
恋に落ちて結婚できるだなんて思っても居なかった。愛のない結婚や義務による婚姻なんて良くあることだ。でもそれを度返ししても…今のこれはひどい。




「奥!」
「っ!」
「な、泣くな」
「いつの間に!近づかないで!」
「危ない。落ち着け」
「触らないで!」
「奥!」
「嫌い!大っ嫌い。…捨て置くつもりならはじめから言って!」





「お春」





「っ」
「泣くな…頼むから」
「名前」
「?」
「知ってたの?」
「当たり前だ。…ずっと言えなかったが」
「…」
「捨て置くつもりなどない。何より、私はお前が愛しい。」
「え?!」
「…私が乞うてお前を嫁に貰ったんだ。」
「嘘だ!」
「嘘ではない…」
「ずっと私の顔見てなかったくせに!」
「それ、は…かった」
「?」
「恥ずかしかっただけだ」
「はぁ?」
「赤面するんだぞ!恥ずかしくて見れるか!」
「他のとこ行くくせに…そんな」
「他の女などどうでもいい。その、だ。」
「?」
「お前を抱き潰してはならないと…そう散々皆に言われて居たし。かといってこのまま手を出すと潰さぬ自信もないし、だ。」
「初心か!」
「五月蝿い黙れ!何年お前に懸想していると思う!…15年だ!拗らせて何が悪い!!!」
「開きなった!大谷殿!!!石田殿はこんな性格なの?!」
「ひひひっ我にふるではないわ。惚れ気なら地上でしりゃれ。猿でもあるまいに…主の三成に対するすまし顔と三成の主に対する猫かぶりは同格よ。同格」
「猿じゃないもん!」
「刑部!前言を撤回しろ!!!こんな愛らしい猿がいてたまるか!」
「(きゅん)」
「ときめく沸点が低過ぎよ…」
「奥方様、熱あるのに元気っすね」
「もう面倒よ。やれ、皆仕事にもどりゃれ。阿呆らしい故」
「はーい」






「…下に行くぞ」
「降りれない」
「?」
「我に帰ったら怖い」
「っ」
「殿」
「名前で呼べ」
「?」
「そうすれば下ろしてやる」
「…三成様」
「!」
「?」
「今までのことは謝る。」
「私も」
「…嫌いと言ってくれるなら」
「昔男!」
「もう貴様だけだ」
「っ」
「手を出せ」
「んー!!!」
「安心しろ。私がいる」
「はい」
「もう拒否は許さない」










昔男ありけり

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殿と私

「戦略結婚とは虚しいものですね」
「?」
「お茶、冷めてしまいますよ」
「なに…我は猫舌故。に、しても」
「?」
「他人の話ではなく、主は主と三成の結婚が戦略結婚であり、その戦略結婚とは虚しいといわしゃるか?」
「はい」
「目合う時が婚礼の日なれば…しかし主らは筒井筒の仲よな」
「筒井筒?」
「如何にも。」
「幼馴染ではありますけれども。それはあなた様も含まれておりますよ」
「まぁ…そうよな」
「大体、私。彼の方のお顔をもう10年以上きちんと見ておりませんもの」
「…」
「大谷殿?」
「幼馴染よな」
「ええ。」
「時折話しておったよなぁ」
「あなた様ばかり見ておいででしたよ」
「…婚礼の折」
「明後日の方向ばかり」
「初夜は!」
「床は…聞きたいのですか?」
「いや…出来れば聞きたくはないが」
「なれば良いではありませんか。彼の方の顔は良くて横顔程度を瞬間的に見るだけです。」
「…」
「昔男のように浮名を流しているのは存じておりますけど。私と彼の方は部屋に入ってすぐ出て行かれるような今の姿で良く分かられるかと」
「…あれは用があった故」
「苦しい言い訳ですね。大谷殿らしくない。」



よいしょと腰を上げて一礼する。彼の方のためのお茶はどうしますと聞けば困ったようにされるので取り敢えず下げておく。本当に良く結婚受けたなと思いながら。そんなに嫌なら断れよ。いや、殿下の言葉を聞かないはずないか。致し方ない。

彼の方事、石田殿は幼馴染である。それこそ元服前だから14.5年の付き合いのはず。然し乍ら当初から正面切って話したことがなかった。大谷殿とは普通に話していたが石田殿とは大谷殿経由の伝言ゲームか俯いて足早く話してすぐさま何処かに行くのだから徹底していると思う。ほかの童女には普通に話すのだから結果私だけそういう事をしていた。一時期離れようとしたものの大谷殿が寂しそうにしていたしで、無駄だった。私が何か考え行動したところで無意味だと悟って流されるまま石田殿との結婚をうなづいた時、内心断ると思っていたのだ。侍女との浮名を聞いていたし私とは正反対の豊満系美女を相手にしていたから尚のこと。周りにそう言えば、正室と側室とは違うからと慰められた。…案の定と言えばいいのか。断るはずないんだよ。だって殿下の命だもの。死んでも逆らうはずはない。
父上を恨もう。全力で。そういうと武の誉れ高いのに家ではいまいち威力を発揮できない父上は「仕方ないだろ。私だって姫が優しいとこのとこに嫁がせたかったのに!どうしてもって圧力がすごくて…見合いをあの手この手で潰されるんだもん!」と聞きたくない事実を言われて自分の運命を恨むことしかできなかった。殿下…なぜ私なのですか。




「奥方様」
「あー…いなかったの。片付けて置いて」
「折角手ずからお作りになられたのに」
「要らないから良いんじゃないかしら」
「その様な」
「…」
「奥方様?」
「っ…」
「?!奥方様!!!誰か!!!!!」












本当に嫌になるわ。目が覚めて一番に思った事
見慣れた天井。それに庭。私以外いない部屋。




「奥方様」
「私」
「ご気分は?熱が出ていらした様です」
「ああ。少しだるいと思ったら…風邪かしら?」
「お疲れも出たのでしょう。先程まで大谷様もいらしておられて。殿にも」
「殿?」
「城におられませんから早馬で」
「…ふふふ」
「奥方様?」
「別に良いのよ。どうせ連絡がつかないでしょう?」
「え?あ、の」
「少し」
「…奥方様」
「期待していたのだけども…もう良いわ。少し寝るから人払いをしておいて」
「はい」
「大谷殿には礼を伝えておいて。殿には連絡しなくて良いともね」
「は、い」







うんと言ったのだから最低限夫婦になれると期待したのが馬鹿だったのかもしれない。誰もいないこの部屋に慣れないと。そう思って目を閉じる。









殿と私

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飛べない鳥

刑部へ
面倒なことばっか頼んでごめんね。結構頭痛くて先に書いとけばよかったって思う程度に字が荒れて読みにくいよね。あ!安心して。半兵衛様はもちろん秀吉様にはきちんと読める字を事前に書いています。刑部は最後まで書くこと決まんなくて、こんな凄惨な状況になりました。本当にごめん。
ですので形式も何もかも無視して書いてます。
最初はね、三成お願いとか愁傷なこと書こうかと思ったけど刑部は言わなくても三成は最低面倒みるだろうから無視します。家のこととかも私が出来る範囲で準備してたけど後はここの裁量に任しています。いないと思うけど追腹は禁じてます。それくらい。後は死んでしまう私がいちいち出張る話ではないので三成と妹に頑張ってもらいたいです。子供も。名前すら聞けなかったから少し心残りかな。でも下手に情を残すより良いかもね。私の子ではなくあの人たちのことして愛してやってほしい。甘やかすだけではなくてね。一人前の男になるよう愛してやって下さい。

後、これは遺書でもなければ遺言でもありません。お願いもあくまでお願いであって願望だから無理はしないでね。

刑部。
妹を愛した三成が幸せになれるよう何も残さず私はここを去ります。残したところで変わりそうにもないけどさ、なんとなく伝えたい言葉も欲しかった言葉も今はもうありません。望めなくなった体はいい意味で慾を消してくれるのかも知りません。今はただ、三成と刑部が怪我なく過ごせることだけ祈っています。

この文は貴方にだけ当てて書いてあるから三成には秘密にしてね。

刑部。吉継。
私は少し怖いのかもしれません。たくさん人を殺しすぎたから行き着く先は恐ろしい場所なのだと思います。仕方ないけどね。怖いなぁ。
きっと私は武士だからってみんな怖がってないと思っているかな?吉継だけは知っててね。少し怖がってたって。
何書いてんだろうね、私。なんか蓋してたのがばーんと弾けたみたい。弾けついでに一個。

私が好きな三成だとみんな思ってたじゃん。初恋拗らせたのは事実だけど、今は違うの。あ!浮気とかしてないよ!そんな時間も体力も精神力も何もないから安心して。実際は恋の種程度かもしれないけど。まぁ死ぬ前のやつの妄言とでも思ってて。

長々とごめん。言いたいこと尽きないけど、吉継も無理せず長生きしてね。三成の手綱は吉継しか握れないから。

これで私の正真正銘最後の恋文を終わります。
嫌ならすぐ焼き捨ててね。はたまた鼻で笑って。
カッコいいおじいちゃんになったらまた会いましょう。それでは、また。









あれが家政の為、軍のためと残した二人の頭は四十九日を終えたのち仏門に入り彼女の菩提を弔うといってここを去った。
その折渡された文を我は何度も読む。達筆であった彼女の字が所々読みにくく潰れている。死の前日。いや当日まで痛いなどと言ったことはなかったのに。
彼女はそういう女子だった。





「にしても恋文か」





我の初恋は今実ったわと笑いながら文箱にしまう。形見分けでもらったそれは彼女らしく黒一色の味気ない箱だただ、丁寧に使われていたことがよくわかる。人にも物にも彼女は優しかった。



「おい、ここにいたのか」
「ひひひ。三成。如何した?」
「歩いていたら姿を見つけたから来たまでの話だ。」
「左様か」
「…?」
「して、主の腕におるのは太郎かえ?」
「そうだが?あれが寝込んだからな。乳母を探しているところだ」
「ひひひっちと」
「珍しいな」
「好かぬか?」
「構わん。あれも怒りはしないだろう」
「主は母御に似ておらぬな」




それすら計算のようよと笑ってしまう。




後何年、この気持ちを抱いて生きれば良いか。彼女はきっと頑張れでしまいだろうに。致し方ないと思いながら赤子を見る





『吉継』





誠似ていないのになぁ。笑顔のみそっくりとは卑怯な話よなと少し笑って涙を流すのだった





飛べない鳥

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花のない実

私は知っている。優しい笑みを柔らかな声を。
私は知っている。それは私ではなく妹に向けられていることを。

母もそうだったなとふと思う。母も妹に至極甘い人だった。父は平等という名の無関心。時より思い出したかのようになにかを与えてくれる。飼い犬でももう少し気をかけてくれるだろうと言いたい頻度で。


愛される妹は難攻不落と言われた三成を恋に落とした。


私のようにバサラものでない妹は事あるごとに熱を出したりしていた。天真爛漫な笑顔で見舞いの三成を迎え入れるための支度から案内まで面倒を見ていたのが許嫁の私だった。

社会性や一般常識から程遠い男は許嫁の私がいても変わらず妹を愛し私を友として位置付けた。妻ではなく友。秀吉様の許可さえ降りればすぐさま実現さしていただろう。





私は保険だった。





我が家と石田家を繋ぐ保険。妹に子が生まれればそれはそれでいいし。わたしに跡取りが生まれればそれでもよし。妹は三成から三成は妹から離れるわけがないから良いとして家と家同士はそうはいかないからねといったのは半兵衛様。任務だと思ってくれればいいよといつもと変わらない美しい笑みを浮かべて彼はおっしゃる。彼の中でも私は男でありどうでも良い輩だったのだろう。
家政が取りしきれぬ妹の代わりに妹のふりをして家政を取り仕切り、両家の部下に目を配る。いつの間にやら体はガタついていたらしい。寝込むことも多くなったが刑部以外に気がつくものはいなかっただろう。




「何時も刑部だけね」
「ん?」
「私が熱出したりした時に気がつくの」
「主は辛抱する故こうなるまで我にもわからぬ」
「ふふふ」
「?」
「ごめんね」
「???」
「仕事。押し付けちゃてるでしょ?」
「構わんよ。主よりちと手は抜いておる故」
「嘘つき」
「ひひひ」
「私さ」
「?」
「もう長くないのよ」
「何を」
「これは本当。お産が持つかな?ってところ。意地でももたすけど」
「三成は?」
「知ってるよ。いちいち言わなくていいから。」
「しかし」
「もう手遅れだし。それよりさ。」
「…」
「私の死んだ後の話をしよう」
「好かん!」
「しとかないと!成仏できない」
「…」
「勝手に話すよ?秀吉様と半兵衛様に文を書いてあの子を継室にしてもらう。でも家政できないから。私の腹心の名を書いてあるから。よく見てあげて。」
「聞かぬ」
「軍は刑部にお願いする」
「だから」
「お願い」
「…」
「一番信頼してるもの」
「よく寝らしゃれ。戯言と笑うてやる故」
「ふふふ」






ごめんね刑部。戯言にはならないの。






花のない実


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