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変換なしの雑食夢

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白雲の果て 5

「島様」
「藤ちゃん?どったの?」
「お忘れ物です」
「え?!わー!!!」
「賽を忘れるなんて…お疲れですか?」
「いやぁ…三成様には?」
「大丈夫です!」
「助かったぁ」
「程々にしてくださいよ」
「えー…」
「もう!」
「わかったって。そんなにプンプンしないって」
「島様」








「失礼致します」
「ひひひ。藤か。良いところに」
「?」
「菓子よ菓子」
「わっ」
「我には多くてな。ほれ、ぬしの茶も持って参れ」
「えっ?!」
「ひひひ。早うはよう」
「です、が」
「なれば我も食さぬか」
「?!」
「美味らしいのにのう。朽ちて土に帰るか」
「あ、う」
「藤」
「はよう持って参れ」
「はい」
「ひひひ。褒美よ褒美」
「ん?!美味し!美味しいんです!!!」
「愛い愛い」







あれが貴様らの前と私の前とで態度が違う!と三成が叫ぶので我はため息をつく。当たり前だ。何度叫び手を上げておると思う?という台詞は聞かぬふりをしりゃる。あの後。全力で塩対応していた男の台詞とは思えない。心を開きかけたのになぁと言っても無駄だろう。器用な男ではない




「ぬしも如何いたしたい?」
「?」
「側に置こうがぬしの勝手よな」
「…」
「侍女にしておくのならもう少し優しくしりゃれ」
「無理だ」
「?」
「顔が緩む」
「ひっ?!」
「笑いたいのなら笑え」
「面倒な男よな。」
「大体!あれの父母兄弟を殺した私に…何が出来る?」
「あれは知らぬよ」
「私が知っている」
「…なら一層離れ」
「出来れば苦労しない」
「拗らせておるな」
「はぁ」
「主とて…ん?」
「如何した?」
「しもうた。」
「?」
「聞かれたか」






白雲の果て







「下郎!」
「は?っ!」
「殿様の首を狙うてきたか!」
「何の話でございますか?」
「父母兄弟を殺された女が仇の側使いに興じる理由は他にはない!」
「…は?」
「そこになおれ!妾が直々に!!!」
「私の父や母。兄弟は、織田の残党にやられたのでは無いのですか?」
「よくも白々しい!織田の残党征伐の拠点として貴様の村が選ばれそこに居る下郎を駆除しただけの話だ」
「…駆除?」
「死ね」






赤い炎。
赤い血。


父と母と兄弟達。



私たちを虫けらのように殺していく兵士。





その旗印は










「止めろ!」







大一大万大吉

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白雲の果て 4

「妾がいると言うのに!」
「…」
「どういう事か!」
「いきなり姦しい。大体何故ここにいる」
「妻の妾がいて何の問題がある!」
「郷に帰るのではなかったのか」
「!」
「時間の無駄だ」
「!?」
「失礼致します。」
「藤か」
「あ、の。太閤殿下がお呼びとのことで…奥方様?」
「妾の前に出て参るな!この下郎!!!」
「っ?!」
「貴様!」




私の主人の一人。石田様の部屋の修羅場に首を出すのは怪我の元だと思う。前回は椀を投げられたしその前は平手だった気がする。行きたくはないのだけれどもこういう時に限って仕事が言付かってしまうのは何故だろう。
今回は押されて庭まで転がってしまった。嫌な音ともに石田様の叫び声。それを聞いて駆けつけた大谷様と島様。島様の大丈夫?の声で私は意識を手放すのだった。








眼前に広がるのは赤。炎と血の赤。


父と母と兄は戦さ場とかした私の村で斬り殺された。
私は、下卑た笑いを浮かべる男たちに組み引かれているところだった。両親と兄の死体の横で。すべての絶望のうちにこの身を暴かれ殺されるのだろう。そう思って瞳を閉じる。


赤が濃くなる。それはそれは恐ろしいほどに。






「藤ちゃん?!」
「?!」
「大丈夫?」
「…し、ま、様?」
「魘されてたよ。怖い夢見た?」
「はい」
「そっか…痛いところは?」
「?」
「奥方様に」
「あ、ああ」
「?」
「大丈夫で、いたっ?!」
「やれ入る…藤」
「もうし、わけ」
「何を謝るかは聞かぬきかぬ。謝るのはぬしではなく彼方よ。背中を打ったよりその手が問題よの」
「手?」
「腕か。骨が少しな…痛まぬか?」
「?!」
「藤?」
「わた、し」
「落ち着けって」
「これでは働けません…」
「やれ泣くでないわ。落ち着きゃれ」
「ぐすっ」
「主は若い故、すぐに治ろう。それまでは休憩よ、きゅうけい。今まで良く働いておったからなぁ。」
「追い出さ、れるのでは」
「追い出さぬよ。」
「本当に?」
「そんな事はぜってーしないって!落ち着いて寝てな」
「…ですが」
「?」
「私は何も出来ない娘です。皆様のお役に少しでも立たないと。恩返ししないと」
「なら早く元気になるように休みなって!」
「…」
「藤は起きたか?!」
「やれ三成」
「今気がついたっす!でも」
「?」
「…石田様」
「な?!どうした!左近!!!」
「俺何もしてないっす!」
「ひひひ。怪我をしたから追い出されると思ったようよ」
「…何を馬鹿なことを言っている」
「我らにはわからぬ思考よな。やれ、藤。なかしゃるな。」
「大谷様ぁ」
「何時ものすまし顔は何処かに消えたなぁ。相応の顔よな。ひひひ。」
「藤」
「あい」
「…」
「?」
「いや、痛みは如何だ?」
「いたいです」
「そうか…すまない」
「?」
「あれの癇癪で…よく休め。」
「!」
「治ればまた仕事をして貰う。」
「わたし」
「休むのも仕事と思え」
「まだ、ここにいていいのですか?」
「当たり前だ。馬鹿なことを聞くな」
「いしだ、さま」
「?」
「ありがとうございます」
「…!」
「ふふふ」
「わっ、かわ…ひっ?!」
「やれ悋気は宜しゅうないな。薬がよく効いたか。ひひひ。寝た寝た」
「…」
「三成」
「少しここでいる」
「ひっ?」
「また泣いてはならないからな」








白雲の果て






「…おや?」
「やれ賢人。きりゃれたか」
「可愛い光景だね。三成君が良い顔をしている。あれが君の言っていた侍女かい?」
「ひひひ。あれは?」
「懲りないよ。また何かしそうで怖いね。…一層の事離縁させて三成君が秀吉の養子に入れば良いんだよ。」
「それがいい。我とてなにより三成も仕事が滞る」
「本当にね。やることが酷すぎるんだよ」
「あれも何度怪我をさせられたか…ん?」
「おや」
「…はぁ」
「酷いことにならないことを祈るよ」

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白雲の果て 3

「如何様にしたとしても」
「藤ちゃん?」
「墨はいただけません」
「まぁ…使えなくなったねよね。この部屋」
「片付けが…終わりません」
「本当になぁ。」
「島様?」
「刑部さんが来いって」
「?」
「話があるからって」
「はい。」





墨に黒ずんだ手を洗う。のきはしないと思ったものの…思った以上で私は苦笑する。
私の主人の一人、大谷様はあの件以来働き詰めなのだから私の比ではないほどに疲れていらっしゃるだろう。葛湯をお持ちしよう。




「やれ気の利く」
「大丈夫でございますか?」
「ひ、ひひ」
「申し訳御座いません。お手伝いできましたら」
「無理を言う。ぬしとてあの後終いに四苦八苦しておろう」
「…ふふふ」
「にしても女子の悋気は我には理解できんなぁ。」
「はい」
「はてさて。主は女子であろう?」
「恋い焦がれる事はありませんので。…見方を変えれば。奥方様も石田様に恋い焦がれておるやもしれませんね」
「…そう、思うか?」
「よくわかりませんけど」
「主らしいわ」
「其れより御用とか」
「ああ。賢人が今回のことをいたく怒ってしまってな」
「まぁ」
「佐和山にやるという名目で母御に返すと相成った。行儀見習いのやり直しよの。しばらくすれば帰ってきやる。そのつもりに致せよ」
「はい」
「…」
「?」
「凄い色よの」
「畳は替えられますが柱やら敷居は」
「手間をかけりゃる」
「致し方ありません。以前下女が手伝っていたのですが石田様のお怒りを買いましたので其れからは私一人でやっておりますので日がかかるのです。大谷様」
「?」
「御不自由をおかけしております。何か至らない点はございませんか?」
「ひひひ。我は大事ない故安心いたせ」
「ならば良いのですが…」
「主はまこと真面目よなぁ」
「?」
「良い良い。」
「刑部、入るぞ」
「ひひひ」
「…藤か。部屋はどうだ」
「もう少しすれば…ですが着物の方はもう」
「そうか」
「そうよ。太閤から一式下賜されておる。また縫ってやりゃしゃれ」
「!」
「明日よりかかります。…石田様?」
「爪」
「は?」
「黒くなっている」
「え?ああ。墨にございますので」
「そう、か」
「?」
「これをやる」
「???」
「菓子だ」
「わっ」
「主は菓子を見ると年相応の顔になるなぁ」
「も、申し訳御座いません」
「はてさて。我は怒っておらぬよ」
「ですが…石田様。宜しいのでございますか?」
「私は食さん。」
「…」
「初々しいものよの」




白い包みの中には色々な色の砂糖の塊が入っていて私はおもわず微笑んでしまう。美味しそうだなと思いながらもこの指では食べれないと思い後で頂きますといえば石田様の眉間に皺がよる。指先がと言っても理解いただけないだろう。そう思っていたら大谷様がその旨を伝えてくださる。




「馬鹿馬鹿しい。口を開けろ」
「え?んっ」
「美味いか?」
「!」
「やれ、そう喜色満面で頷くな。三成が」
「刑部」
「?」
「恐やこわや」
「???」
「いつもの礼だ」
「!」
「気に入らんか?」
「いへ。」
「?」
「口に入ったまま喋ってはならないと…教わりましたから」
「ひひひ。真面目よなぁ」
「ありが、とうございます。とても。嬉しいです」
「そうか」






白雲の果て








「藤ちゃん!」
「?」
「なにそれ」
「石田様に頂きました」
「いーな!美味そう」
「御一つ」
「今無理だって。」
「なら。はいあーん」
「ん!うめ!」
「ですよね!すごく美味しいんです?」
「???」
「石田様」
「げ?!」






「やれ、子犬が戯れておるなぁ」
「左近…」
「ひひひ。あれは兄妹よ」
「っち」
「主とて妻を持つ身で懸想とは…」
「そういうものではない」
「では」
「だが、離れることは許さん」
「面倒な男よの」

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白雲の果て 2

「…」
「…」
「おい」
「はい」
「食事をしてこい」
「石田様のをお持ちしてから」
「私はいらん」
「では私も後でいただきます」
「そう言って朝から何も食していないだろう」
「?」
「食べて休んでこい」
「…」
「藤!」
「で、すが」
「何だ!」
「主人が休まず私の様な侍女が休むなど…」
「私が許可している!」
「…」
「何だ!」
「では暫時休憩してまいります」
「ふん」
「…」
「早く行け!」







急いで一礼して私は廊下に出る。この声は恐ろしい。手が飛んでこなかっただけマシだと思いながら廊下を急いで歩く。厨は見慣れた老爺が私に握り飯を渡してくれるので大谷様と島様の食事を聞きながら立って食べる。行儀の悪いと怒られないのは私の仕えている3人のうち2方の所為だろう。ほって置くと食事をしないなんて当たり前の方達だから。案の定島様はとっくに済ませていて、大谷様は食べられていないということ。急いで椀物を流し込むと大谷様の膳を持つ。






「また掻き込んだか?」
「?」
「先我の部屋の前を通ったのになぁ」
「美味しくいただきました。…大谷様」
「ひひひっ」
「書類を置いてくださいませ。厨の者が丹精込めて作ったものでございます」
「それはぬしにも同じことよの」
「私が箸も使わず両手で喰ろうておったときからのつきあいでございますから。安心して下さいませ。成長したと喜んでくださいましょう」
「可愛くない口よな」
「大谷様」
「あいわかった。三成は?」
「まだ書類を…食事も全く」
「左様か。我の膳を持て。三成のもよ」
「ありがとうございます」
「ひひひ」
「?」
「主はそれが済めば少し休みゃれ」
「!」
「目の下のクマが酷いヒドイ」
「…申し訳ございません」
「あれの相手は男とて草臥れる。明日も早かろう。少し休まぬと倒れるわ」
「…墨をするくらいなら」
「藤」
「ですけど…何もしておりませんとその」
「心配か?」
「はい」
「なれば少しの間のみよ。まずは…ん?」
「大谷様?」
「またか」
「?」
「やれ、左近」
「なんっす…またっすか?」
「藤と後で参れ。我は彼方に行く。草臥れる話ばかりよなぁ」
「本当っすね。半兵衛様には?」
「忍びが行ったわ」
「???」
「何も分かっておらぬなぁ。いたしかたない。主はしばしここで待機よたいき」
「あ、の?」
「奥方様だよ」
「!」
「また仕事が増え様なぁ。三成も我も…主も」






白雲の果て






「書類は無事だ」
「その代わりに主が酷い有様よ」
「藤は?」
「きにかかるか?」
「…」
「坊主憎ければと言うが。藤に悋気か」
「ああ」
「身勝手な話よ」
「其れが通ると思っている女だ。…誰だ?」
「俺っす!うわ…スゲェ」
「藤は?主と一緒ではないのか?」
「背中に居ますよ。ありゃ?」
「此方です。次ぐの間に膳を…石田様」
「何だ」
「墨だらけではございませんか。お召し替えを」
「…」
「失礼いたします。御髪まで…お怪我は?」
「ない」
「ならば良いのですが。島様」
「はいはいっと。うへぇ。お気に入りの一張羅が台無しっすよ」
「洗えばいい」
「のきませんって。なぁ藤ちゃん」
「ええ。」
「な?!」
「一応頑張って参ります。島様。後片付けは私が致しますので食事をお願いします」
「分かったけど…どうにかなりそう?」
「…頑張ります」






「あれが縫った物なのになぁ」
「黙れ」
「まぁ良い。また縫ってもらえ」
「その前に片付けっすね」
「…はぁ」
「ぬしを疲れさすとは流石よの」

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白雲の果て

私の仕えている殿様の名は石田様と申します。其れは其れは苛烈で不手際の為に折檻を受けた者の数は新参者の私ですら両の手を三巡しても足りないほど知っております。故に辞めていくものも後を絶ちませんし、噂を聞いてお仕えしたいというものも相当の理由がなければ居ないのが現状です。
私といえば何度か折檻を受けたものの未だこの大阪にて仕えております。それはひとえにご恩に報いる一念のためです。
その昔。私は戦さ場で死にかけているところを助けられました。石田様ではなく、島様にでございます。島様への御恩を返しているうちにいつの間にやら大谷様の雑用侍女として、ひいては石田様の雑用侍女として働くご縁を頂きました。大谷様は私の顔を見ては良く不幸は女子やらそういう言葉をお掛け下さいますが私としては不思議でなりません。屋根のついた日の本一安全な場所でお仕えできる自分が幸せでありはしても不幸ではないはずなのです。そう言うと癖のある笑で一頻り笑った後、幸せな頭をしておるなとまた笑われるのでございます。
そして、私に石田様の雑用侍女も兼務するようにとお告げ遊ばしました。



「藤ちゃん」
「島様」
「その堅苦しい挨拶やめよって!」
「命の恩人ですもの。…怪我」
「え?あー…へへっ。三成様に稽古をつけてもらってたのよ。」
「少し沁みますよ」
「あーがと。…ん?」
「?」
「あれって」
「ああ。奥方様の…いつもの」
「次は随分細い男だな」
「楽師のようでございますよ。動かないで」
「いてて。色狂いの嫁さんねぇ。三成様に相応しくないって」
「私たちでどうこういうものでもありませんよ。…島様」
「そうだけど!…まぁ三成様に至っては寝所に一度も行ったことないって話だし。」
「島様」
「刑部さんが黙っているとも思えねぇし」
「島様!」
「ん?」
「やれ、我が何と」
「げっ?!ってー!!!」
「要らぬ詮索は身を滅ぼすは世の常よ…ひひっ。なぁ藤」
「はい」
「ひでっ!命の恩人に」
「何度か合図を送っていたのになぁ」
「へ?そうなの」
「…次はわかりやすくいたします」
「聡い女子よ」
「っていうか!」
「ん?」
「あれ!」
「ひ?やれ、雌豚が如何した?」
「雌?!一応三成様の奥方っすよ?!」
「知らぬ知らぬ。畜生の行いで一喜一憂する間は我にはない」
「ひでー!…ん?藤ちゃんどったの?」
「いえ」
「藤?」
「…石田様はお辛くないのでしょうか?」
「三成様が?」
「縁あってご夫婦に御成遊ばしたのに。」
「そういう機微がわかるやつではなかろ?」
「ですが」
「戦略結婚とはそう言うものよ。」
「なれば」
「?」
「いつかあのお方を支えてくださる方がお側にお仕えできますよう、お祈り致します」
「ひ?」
「藤ちゃんらしいね。」
「ですけれどもお二人がおられますから大丈夫でございますね」
「…ひひひ。人の心配をする前に主とてもう年頃よ」
「そうっすね。藤ちゃん良い人いんの?」
「いません。」
「はてさて我が良き縁を見つけてこようなぁ」
「いえ。」
「?」
「私は、命の恩人である島様とここに置いてくださるよう働きかけていただいた大谷様。そのお二人の大切な方であられる石田様のご恩に報いたいのです」
「ひひひっ。誰とも添わぬか」
「出来れば最期までこちらに置いていただければ」



「藤!」




「やれ、三成」
「刑部。藤をみなかったか?」
「私はここに」
「何をしていた!」
「島様の手当てを」
「ひひひ。主の稽古は苛烈故」
「ふん!」
「御用でございますか?」
「墨をすれ」
「あ!俺がやるっす!」
「貴様の墨は濃淡がばらついて使えん!」
「乱暴なのよ。…藤」
「お手伝いに参ります。その後、包帯を替えます。大谷様」
「まだ替えていなかったのか?」
「何時も巡が悪くて…申し訳ありません」
「刑部」
「ひひひ。」
「先に済ませろ。良いな」
「はい」
「主は本に不幸よなぁ」
「?」
「我の呪われた身に触れるか」
「何をおっしゃいますか」
「…」
「先ほど申しました様に御三方に支えられるのは私の望みでございます。幸せなことであって不幸ではございません」
「相も変わらず幸せな頭を持っておるなぁ」
「気温も高くなりましたから毎日替えないと…直ぐに替えます。」
「あいあい。では三成。暫時借りる」
「わかっている。藤」
「はい」
「…」
「?」
「貴様はその命が尽きるまで尽くせ。拒否は認めない」
「!」
「わかったな」
「はい」
「…ならば良い。行け」
「はてさて。本に機微のわからぬ二人よな」
「本当っすね」







白雲の果て









縁故故致し方なかろうと仰ると大谷様は煙管箱を寄せられる。白い煙の果てを見ていれば藤と名前を呼ばれるので私は包帯を片付けながら返事をする。奥方様は太閤殿下の縁故。所謂後継者の証として嫁がれてきた方なのだ。そのため何をしても離縁はできないし、干渉してはならないと暗に言われている様で私は小さくうなづく。



「あれが阿婆擦れなのは太閤賢人共に知っておるが他におらぬ故仕方がないのよ。ひひひっ。苦虫を噛む様に我らに言え賢人の顔をぬしも見ておればようようわかっただろうなぁ」
「私は尽くすのみですから」
「左様か」
「はい…大谷様?」
「主は孕みたくはないのか?」
「は?」
「三成の子よ」
「…」
「ひひひ。驚いておるなぁ」
「呆れているのです。」
「冗談ではないのだがなぁ」
「奥方様が御許し遊ばされません」
「許せば良いと?」
「大谷様」
「やれ膨れるな。あの三成が主には折檻も致さぬからなぁ。もしやと思うてな」
「最初はお叱り遊ばして御いででした」
「左様か」
「今は私しかおりません故諦められたのやもしれません」
「ひひひ。」
「?」
「まぁ、いい。さて我の方は終わった故三成の方へいかしゃれ」
「はい」






石田様の部屋に大谷様も用があったらしく二人でお部屋に向かう。







「石田様」
「藤か」
「我もおる」
「早く入れ」
「はい…!」
「やれ、三成。嵐にでもあったか?」
「奥だ」
「直ぐに片付けます」
「頼む」
「また如何した?」
「知らん!」
「まぁ、いつもの癇癪か。藤」
「はい」
「彼方の侍女頭に話をつけるわ。後で共に参るぞ」
「はい」
「何故藤を連れて行く?」
「藤は表の侍女頭故。抗議の折は共に参るのよ。我だけではあの女狐は腰が折れる」
「私は座っておりますだけですが…」
「主の無表情が良く効くのよ」
「石田様」
「?」
「書類が…」
「っち」
「後で我も手伝う。…いや、我のみで行ってくる。あまりの態度なら賢人に言うが良いか?」
「好きにしろ」
「本に…主のことよ。まぁ良い。藤、やはり主は三成の手伝いをいたせ」
「はい」
「…」
「石田様。文机を次の間に用意いたします」
「ああ」
「しばしお待ちくださいませ。少し席を外します」
「急げ」
「はい」





「よく働く子よの」
「知らん」
「そろそろ年頃故。縁組…ひひひっ。すまぬすまぬ。」
「…刑部」
「主を揶揄うのは命懸けよの。ここに来て3年。我とて賢人とて疑ってはおらん故安心いたせ」
「ふん」
「?」
「あれが私を想うと思うか?」
「ひひ」
「それこそ無理な話だ」

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