忍者ブログ
変換なしの雑食夢

ran

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

白雲の果て 4

「妾がいると言うのに!」
「…」
「どういう事か!」
「いきなり姦しい。大体何故ここにいる」
「妻の妾がいて何の問題がある!」
「郷に帰るのではなかったのか」
「!」
「時間の無駄だ」
「!?」
「失礼致します。」
「藤か」
「あ、の。太閤殿下がお呼びとのことで…奥方様?」
「妾の前に出て参るな!この下郎!!!」
「っ?!」
「貴様!」




私の主人の一人。石田様の部屋の修羅場に首を出すのは怪我の元だと思う。前回は椀を投げられたしその前は平手だった気がする。行きたくはないのだけれどもこういう時に限って仕事が言付かってしまうのは何故だろう。
今回は押されて庭まで転がってしまった。嫌な音ともに石田様の叫び声。それを聞いて駆けつけた大谷様と島様。島様の大丈夫?の声で私は意識を手放すのだった。








眼前に広がるのは赤。炎と血の赤。


父と母と兄は戦さ場とかした私の村で斬り殺された。
私は、下卑た笑いを浮かべる男たちに組み引かれているところだった。両親と兄の死体の横で。すべての絶望のうちにこの身を暴かれ殺されるのだろう。そう思って瞳を閉じる。


赤が濃くなる。それはそれは恐ろしいほどに。






「藤ちゃん?!」
「?!」
「大丈夫?」
「…し、ま、様?」
「魘されてたよ。怖い夢見た?」
「はい」
「そっか…痛いところは?」
「?」
「奥方様に」
「あ、ああ」
「?」
「大丈夫で、いたっ?!」
「やれ入る…藤」
「もうし、わけ」
「何を謝るかは聞かぬきかぬ。謝るのはぬしではなく彼方よ。背中を打ったよりその手が問題よの」
「手?」
「腕か。骨が少しな…痛まぬか?」
「?!」
「藤?」
「わた、し」
「落ち着けって」
「これでは働けません…」
「やれ泣くでないわ。落ち着きゃれ」
「ぐすっ」
「主は若い故、すぐに治ろう。それまでは休憩よ、きゅうけい。今まで良く働いておったからなぁ。」
「追い出さ、れるのでは」
「追い出さぬよ。」
「本当に?」
「そんな事はぜってーしないって!落ち着いて寝てな」
「…ですが」
「?」
「私は何も出来ない娘です。皆様のお役に少しでも立たないと。恩返ししないと」
「なら早く元気になるように休みなって!」
「…」
「藤は起きたか?!」
「やれ三成」
「今気がついたっす!でも」
「?」
「…石田様」
「な?!どうした!左近!!!」
「俺何もしてないっす!」
「ひひひ。怪我をしたから追い出されると思ったようよ」
「…何を馬鹿なことを言っている」
「我らにはわからぬ思考よな。やれ、藤。なかしゃるな。」
「大谷様ぁ」
「何時ものすまし顔は何処かに消えたなぁ。相応の顔よな。ひひひ。」
「藤」
「あい」
「…」
「?」
「いや、痛みは如何だ?」
「いたいです」
「そうか…すまない」
「?」
「あれの癇癪で…よく休め。」
「!」
「治ればまた仕事をして貰う。」
「わたし」
「休むのも仕事と思え」
「まだ、ここにいていいのですか?」
「当たり前だ。馬鹿なことを聞くな」
「いしだ、さま」
「?」
「ありがとうございます」
「…!」
「ふふふ」
「わっ、かわ…ひっ?!」
「やれ悋気は宜しゅうないな。薬がよく効いたか。ひひひ。寝た寝た」
「…」
「三成」
「少しここでいる」
「ひっ?」
「また泣いてはならないからな」








白雲の果て






「…おや?」
「やれ賢人。きりゃれたか」
「可愛い光景だね。三成君が良い顔をしている。あれが君の言っていた侍女かい?」
「ひひひ。あれは?」
「懲りないよ。また何かしそうで怖いね。…一層の事離縁させて三成君が秀吉の養子に入れば良いんだよ。」
「それがいい。我とてなにより三成も仕事が滞る」
「本当にね。やることが酷すぎるんだよ」
「あれも何度怪我をさせられたか…ん?」
「おや」
「…はぁ」
「酷いことにならないことを祈るよ」

拍手

PR