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変換なしの雑食夢

ran

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十二国

「ご無事のご帰還何よりです。主上。特に台輔」
「…朱衡」
「無事に戻った。で、あれは?」
「彼女でございますか?」
「あの心配ようは凄かったからな。迎えに来ていると」
「まぁ、そうなのですが」
「「?」」
「御覚悟なさいませ」
「どちらがだ?」
「勿論、台輔でございます」


そう言い終わるか否か、すごい足音が聞こえる。珍し事もあるものだと思いながら不意にそちらを見ると甘い色の髪が見える。
なのにだ。いつもとは違い眉を潜めて厳しい顔をしている。息を整えかつかつと歩いて六太の前に立つとペチリいう音が聞こえる。決して痛くないだろう音。


「…」
「皆がどれほど心配したと思っているのですか」
「うん」
「運良く、帰ってれたものの。何かあったら」
「?」
「あなたに何かがあれば、どれだけ悲しいか」
「な、なぁ泣くなよ」
「台輔。彼女は貴方がかどわかされたと知ってこの方碌に食事も休息も取っていなかったのですよ」
「え?」


そう言って再び六太が顔を上げると座り込んで涙を流す彼女を見てオロオロするのを見て内心笑ってしまう。どうにかしろよと言わんばかりの視線を自業自得さというそれで返すとおどおどと彼女の名前を呼び始める。何度も何度も。


「お顔を」
「え?」
「お怪我は?」
「少しだけ。でも大丈夫」
「顔色が悪いわ」
「血に酔っただけ」
「黄医を呼びましょう。でも」
「わっ」
「本当に、本当に無事でよかった」
「うん」


そういって抱きしめるのだ。最初はどうすれば良いのか分からなかったのだろう。宙を彷徨った手が彼女の背中を掴む頃には六太自身が泣いていた。


「怖かったわね」
「うん」
「本当に無事でよかった」
「ごめんなさい」
「無事ならそれで良い」
「!」
「お願いだからもうこんな心配はさせないで」
「わかった」


そういうと二人は一層強く抱きしめ合う。


「親子の様ですね」
「ああ」
「俺も帰ってきたのだがな」
「仕方がないでしょう。母親とはそう言うものです。」
「そうだな」
「何も出来ないのは寧ろ彼女の方だがな。」
「それを差し引いても可愛いのだろう」



ぐずぐずと泣いていた六太が寝てしまったらしい。いつの間にか現れた女妖に如何しましょうと言いながら抱き上げるあいつはまさに母親だろう。
近ずくとお帰りなさいと微笑む落差に肩を竦め心配は六太だけかと尋ねると口を尖らせて貴方の心配もいたしましたよと言う様は幼さが残る。



「ただ」
「ん?」
「子を喪う親の気持ちはわかった気がします、ほんの少しですが」


そうかと言って六太を受け取る
きっとこいつも同じだろうと思いながら



母と子

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十二国

「…」
「起きたか?」
「な、しゅ」
「真っ赤だな」
「っ」
「何時迄も初々しい奴だ」


眼が覚めると主上がこちらを見ていたので驚きつつも、繋いだ手に思わず赤面する。離そうとしてもあちらの方が大きくて、離すことが出来ない。ちらりと見つめると離すなと言っただろうという事。益々持って居た堪れない


「如何した?」
「恥ずかしいのです」
「そうか?あの後自分から」
「しゅ、主上!」
「…」
「?」
「それは止めろと言っただろう?」
「…尚隆様」
「それで良い」
「今何時ですか?」
「ん?」
「そろそろ起きませんと…」
「起きられそうか?」
「知っておいででしたね」
「お前のような細腰に無理をさせたら誰でもそうなる」
「きゃあ」
「美しいなお前は」
「貧相な体ですが」
「そういじけるな」
「だって」
「なぁ」


そう言うと背中に口付けを落とされる。ぞくりと体を震わすとくくくと笑われるものの仕方がない。じとりと見つめると名前を呼ばれる。

「此処から出たくなくなるな」
「御冗談を」
「ん?」
「だって」
「本当にお前は」
「見ないでくださいませ」
「泣くな」
「…だって」
「お前だけだ」
「と言いながら美しい人の元へ参るのでしょう?」
「…」
「尚っんー!!!」
「可愛い」
「何を」
「お前だけなら良いのにな」
「?」
「そうすればこんなにお前を苦しめずに済む」
「…本当に?」
「嘘は言わんさ」
「…」
「お前ももっと甘えろ。そんなに頼りないか?」
「いいえ。だってあなたは私だけのあなたでは」
「王だからな。だがなお前我儘位聞けるし聞きたい」
「…」
「俺はお前の夫なのだからな」
「もう少し」
「ん?」
「もう少しだけで良いですから王宮に居てください」
「ああ」
「たまにこうしてあなたの顔を見て目覚めたいです」
「うん」
「あなたの妻でずっといたい」
「勿論だ」


そう言って私は泣きじゃくるのだ。抱きしめてくれる腕も何もかも偽りではないのが嬉しくて縋って鳴くのだ



愛しい野薔薇と風

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十二国

「相当信用が無いな」
「?なんの話だ」
「これをやる」
「…?」
「お前の愛妾…早々に破るな」
「下らぬ事を」
「王妃殿下のお願いだったからな」
「はぁ」
「まぁ数百年の実績と言うものだな」
「言うな」
「わしとしては真っ当な王となってくれてありがたいがな」
「お前な」
「ん?」
「夫婦の危機を笑うな」
「今までが奇跡に近いだけだろう」
「…優しい臣下に恵まれて俺は嬉しいよ」
「そりゃあ良かった」
「で」
「ん?」
「どうだあいつの状態は」
「まだ顔色が悪いな。玉雪からは?」
「根が深い分しばらくかかるとは聞いた」
「そうか。お前」
「なんだ?」
「見舞いに行ってやって無いのか?」
「…」
「寝ている間に行って直ぐ帰ってきてる」
「成笙」
「馬鹿だな」
「…」
「寂しがっていたぞ。これ以上拗らすな」
「だがな」
「後宮の一室でいいるあいつの事を考えてやれ」
「少し出てくる」





先ほどから庭に出ていると散っていく花々が顔の上に降り注ぐのがわかる。眠たい。暖かい日差しの中微睡んでいると視界が暗くなる。誰か来たのだろうか?


「おいっ!」
「え?」
「…寝ていただけか?」
「主上…?」
「すまん。何かあったのかと」
「大丈夫ですか?」
「っ」
「主上?」



急に揺さぶられて目を開けるとなぜかお辛そうな主上がいて逆に驚いてしまう。主上?と声をかけても花びらを取ってじっとこちらを見つめる。少し視線が痛いのだ。

「如何致しましたか?」
「お前が儚くなったのかと思ったのだ」
「まぁ」
「体はどうだ?」
「元気ですわ」
「強がるな。顔色が悪いな」
「擽ったい」
「動くな」
「しかし」
「うん」
「?」
「愛している」
「…」
「どうかしたのか」
「いえ。本当にどうしたのですか?」
「どういう意味だ」
「半年もここに留まっておいでですから」
「ここは俺の家だ」
「それは」
「今はここでいたいからな。あと」
「難民でございますか?」
「ああ。増えそうだ」

そうと言った瞬間抱きかかえられるのだから小さな悲鳴が上がる。
主上は素知らぬ顔だが私にとっては恐ろしい

「如何した。珍しく縋ってくるな」
「視線が高くて。恐ろしいのです」
「ははは。お前は小さいからな」
「主上が偉丈夫なだけで御座いましょう」
「褒めるな」
「真実を申した迄です」
「おまえなぁ」


そういうと六太の様に抱きかかえられる。益々持って視線が高くなるものだから主上頭にしがみついてしまう。
クククと笑うものの仕方が無い。


「いい加減下ろしてくださいませ。」
「いや、まて…。あそこなら良いな」
「ああっ!こんな高いところに置かれては私降りられませぬ」
「いやいい。あとで降ろす」


そう言いながら庭木の一番高い枝に座らされる。視線が高くて主上と同じなのだから何か縋るものを探す。結局はなくて、主上の肩にすがらせていただくのだが自分でもわかる。かなり泣きそうな顔をしている事だろう。

「ここなら逃げられまい」
「主上」
「お前は俺が嫌いか?」
「は?」
「夫婦としてやっていけぬか?」
「一体?」
「答えろ」
「私が一番愛しい方は貴方様だけで御座いますよ」
「嘘偽りないな」
「はぁ」
「…なら何故褥滑りなどいう?」
「!」
「答えよ」
「いえ、それは」
「ではずっとこのままだ」
「っ!」
「言えぬか?」
「…偲んで」
「ん?」
「恥を忍んで申し上げます」
「許す」
「あの、ですね。」
「…」
「その」
「…なんだ?」
「主上がご満足できる様なお相手は私には無理で御座います」
「…は?」
「いえ、覗き見した訳では有りませぬが、その私の様な。貧相な、体では」
「見たのだな」
「っ」
「クククッ。初々しいな」
「おからかい遊ばさ無いでくださいませ。私は貴方様しか知りませぬゆえ」
「知っている」
「あの様な和合などとても…」



そう言って顔を主上の肩口に沈める。死ぬほど恥ずかしいのだ。
すると再び抱きかかえられる。でも絶対に顔などあげられるはずがない。クククという笑い声を聞きながら羞恥に染まっていく


「お前には求めておらんよ」
「…」
「だがな。お前の目てどう映るか知らぬが一番抱いて満足するのはお前だ」
「嘘!」
「おっ茹で蛸だな」
「お戯れを」
「まぁ嫌いではないがな。あれも」
「…」
「だが、いつもお前を抱いているつもりで抱いていた」
「…」
「一度情事の時にお前の名を呼んで大変だったことがある」
「…」
「そう膨れるな」
「嘘つき」
「嘘をついてどうする」
「だって」
「では試してみるか?」
「は?」
「確かにお前を壊さぬ様に力を抑えていたからな。いつもより相手をしてもらうぞ」
「いえ、私」
「お前がいるのに他の女を抱きながらお前を思えというのか?」
「ですが」
「手取り足取り教えてやる」
「っ」


今の今まで抑えていた嬌声が抑えられると思うなよとそう言った瞬間とんでもない方を愛してしまったのでたないかと眩暈を覚えながら。
それでもしっかりとかの人の首に腕を回すのだった



驚く野薔薇

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十二国

あれからは半年。私の周りで劇的な変化があった。一つは玉雪先生が市街の医師から王宮医師になられたこと。絶対仙にはならぬと固辞していたのを説き伏せたのは、あの大宗伯様で。その上意気投合して結婚までしてしまったのだ。毒舌家と毒舌家の夫婦かと太宰様がたじろいでいたのが記憶に新しい。
そして何故か主上が出奔せずに真面目に執務にあたられているのだ。


「当たり前の話だろうに」
「私からすればあの2人の結婚以上に青天の霹靂です」
「まぁわしもそうだがな」
「何か悪い病気でしょうか?」
「真面目に執務をすることがか?」
「…」
「普通のことなのになぁ」
「普通のことですのにね」

太宰様に書簡を渡しながら私たちはため息をつく。
実際だ通常の王が行うことを半年されただけなのだがと苦笑すると気づいた太宰様がお互い大変だというのだから延という国は不思議なところだとおもう。

「でだ」
「はい」
「体の調子は如何だ」
「平気でございますよ」
「わしにまで強がらなくていい。きちんと言ってくれた方が内々で済ませてやれるから皆助かる」
「…」
「如何した?」
「いえ」
「気味悪がるな。今までの行いが身に染みる。」
「そう言うわけでは」
「今までが異常だ。皇妃に対する対応も何もない。済まなかった」
「…」
「次は絶句か」
「本当に皆様如何致しましたのでしょうか?」
「まぁ改心だ」
「はぁ」
「で」
「体調は以前よりは」
「そうか」
「鳩尾近くにある臓がいけないのだろうと。其処が爛れると他と臓を傷付けて死に至るそうです。仙故になまじ死なずと仰っておいででした。申し訳ありませぬ」
「何がだ」
「何の手伝いもできず。後宮で寝ているばかりで」
「今は病を治すのが先だろう。大体今までの仕事の大半は彼奴がやるべき仕事だろう?何もお前さんが気に病むことではないな」
「はい」
「元気になれば慰安はしてもらいたい。現場からの要請が凄いからな」
「手紙を書きます。」
「そうしてくれると助かる」


そういって私は硯箱を取る。そして言うか言うまいか思案してじっと太宰様を見る


「…」
「如何した」
「主上は如何お過ごしで越しでございますか?」
「あの馬鹿か?内殿と正寝を往復しているな。時折此処に?」
「いえ。あまり。」
「そうか?てっきり」
「太宰様」
「ん?」
「よき人が居るでしょうか?」
「そりゃあお前のことだろう」
「いえ、そうで、はなく」
「なんだ。歯切れの悪い」
「その、お相手を」
「相手?」
「伽の」
「あ?」
「あの主上が禁欲な生活ができましょうか」
「…」
「恥を忍んで申し上げますがあの様な事とても私には…ですから」
「まぁ、なぁ。いや、そんな事よりもだ」
「?」
「お前さん、あれの何処が良くて結婚したんだ?わしには其れが最大の謎だ」
「私が御慕い申しているだけです」
「其れがわからん」
「不誠実な男だぞ」
「目的の為にやむ終えないのは理解しておいででしょ?ご自身の賄える範疇の行為を怒る事は出来ませぬ。」
「だがな」
「彼の方は私に約束をして下さいました。他に後宮に女は入れぬと。其れを違えずお守り遊ばしてくださるだけで私には十分でございます」
「本当にお前さんは」
「?」
「致命的に甘えるのが下手だな」


そういうと呆れたような顔をして太宰様が笑う。下手なのではなくわからないのですと言えば無欲だからなと付け加えられる。決して無欲ではないのだ。失った寵愛を如何にして戻せるのだろうかと何度も思案して無理だと知っただけですと言えば否定も肯定もなくただ有るのはため息だけだった



野薔薇の吐露

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