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変換なしの雑食夢

ran

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銀英伝

戦争が始まると暇になった。其れこそ何カ月も。帰ってこない主人を待つ犬になった気がする。寂しいなぁと思ったところで何も変わらない。手紙は駄目だし。来るはずも無いし。案の定来ないし。大体凱旋しただろう!帰ってこいよと思いつつ言えるはず無い。とてもたいへんだろうから。
…オーベルシュタインさんの部屋で寝たら少しは寂しく無いかなと思って我に帰る。本気でミンチにされる。

情事も何もかも私の部屋だったと思案してドアの前に寝転ぶ。


もう寂しくて死ぬかもと自分で書いたオーベルシュタインさんの絵を抱いて私は眠る。彼の部屋の前で


「ん」
「起きてしまったか」
「オーベルシュタインさんだぁ」
「他の誰に見える」
「オーベルシュタインさん」
「人の部屋の前で寝るな」
「…オーベルシュタインさん」
「何、泣くな」
「オーベルシュタインさん」




抱き抱えられて寝室に向かう途中なのだろう。目を覚ますとオーベルシュタインさんの匂いがした。何度も名前を呼ぶ。辛辣ながらも声が返ってくる。其れがどんなに嬉しいか。
ベッドに置かれると自然と体が離れる。其れが何よりも辛くて、何よりも寂しかった。オーベルシュタインさんは困ったような顔をしてシャワーを浴びてくるだけだという。


「嫌」
「無茶を言うな」
「離れるの嫌」
「駄々を捏ねるな」
「なら一緒に入る。」
「…ほう」
「離れるの嫌」


言うや否や再び抱き抱えられると部屋にあるシャワールームに連れ込まれる。壁に凭れ掛かると無理矢理キスをしてくるので私は首に手を回して其れに答える。


「其の儘寝ていればいいものを」
「オーベルシュタインさん」
「楽に寝れると思うな」
「うん」
「止まらんぞ」
「其れで良い」
「…」
「其れが良い」



其れが合図だった。
初めてだ。こんなオーベルシュタインさんを見るのも。こんなに求められるのも。この痩せた体のどこにこんな力が情熱があるのだろう。そう思いながら気がつけばいつの間にか湯船にはられたお湯の中に入っていた。2人で。


「意識が飛んでた?」
「ああ」
「そっか」
「ああ」
「温かいね」
「…」
「オーベルシュタインさん?」
「お前もオーベルシュタインだ」
「うん。オーベルシュタイン夫人って呼ばれるの好きよ」
「…」
「お前が破壊的に馬鹿なのは知っていたが。」
「ああそれ!なつかしいなぁ。」
「パウルだ」
「?」
「名前だ」
「…」
「如何した?」
「は、」
「は?」
「恥ずかしい」
「お前の感性に時々だがついていけん」
「パウルさん?」
「…」
「え、いや、んーーーー!!!」
「まだ私も若いということだな」
「あの、どちらへ」
「これ以上抱くのならベッドの上がお互い楽だろう?」
「へ?あの」
「あとだ」
「名を呼ばなかったら…わかっているな」


性格が変わっていません?!と言ったところで止まることはないだろう。ただ、ついつい恥ずかしくてオーベルシュタインさんと言ってしまったが為のお仕置きはオーベルシュタインさんらしくてもう二度と逆らうものかと心に決めました。




名前呼びの破壊力

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銀英伝

「夫人」
「わっ。ミュラー中将!助けて!!!」
「何故ミッターマイヤーの絵は描けて俺の絵は描けないのだ。夫人の絵まで描いたのだろう!」
「それはお会いしたミッターマイヤー夫人がとても愛らしい方でむさ苦しい軍人ばかり描いていた私のやさぐれた心を癒して下さったからです」
「むさ苦しいだと?!」
「そりゃ、こんな可愛らしい奥さんならずっと持っていたい気持ちわかんなくも無いなって。 」
「貴様」
「大体私はあなた嫌いだし貴方も私を嫌いでしょう!」
「別段嫌っておらん!」
「叫んだり追いかけているのに?」
「?」
「真逆…」
「彼の通常運転ですよ」
「最悪だわ」



そういうとげっそりとした表情のまま背中に隠れる夫人にドキドキしてしまう。何が最悪なのだ!と叫ぶビッテンフェルト中将を宥めつつ後退する。かの人のお陰で彼女と一緒にいれる反面、顔色が悪くなるのは居た堪れない。


「あの人は私の中の一番嫌いな軍人を体現しているのです。」
「そうですか」
「ミッターマイヤー中将は愛妻家ですが其れが一番の長所で最悪の短所。ローエンタール中将は女の敵。」
「手厳しいですね」
「ビッテンフェルト中将に貴方がキルヒアイス大将閣下の爪の垢でも飲ませたい!」
「…」
「いつもありがとうございます」
「いえ」
「ミュラー中将がいないと追いかけっこばかりで仕事ができません」
「いや、その」
「本当にありがとうございます」


そう言って微笑む彼女は本当に可愛らしいと思う。くつくつと笑う彼女もいいがこう言う屈託無く笑う姿もいい。



「ミュラー中将は肖像画は?」
「いえ」
「あまり興味が無いのですよね」
「そんなことは」
「?」
「出来れば」
「はい?」
「貴方のことを描いた絵が欲しいです」
「は?」
「駄目でしょうか?」
「またなんで?」
「あ、貴方の強運にあやかりたいと」
「強運?」
「はい!」
「まあ構いませんが強運?」
「あのオーベルシュタイン大将閣下と結婚する快挙を成し遂げられたのですし」
「ああ!結婚運的な」
「そ、そうです」
「そう言われればそうですね。そう言えば私の絵が欲しいとメイドさんに頼まれたような」
「ははは」
「良いですよ。一番に差し上げます。いつものお礼です」
「ありがとうございます」



そう言えば彼女は屈託無く笑う。
嘘の噂を流してくれたローエンタール中将とミッターマイヤー中将に感謝しながら手を振る彼女を見送るのだった




ミュラー中将の負け戦

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銀英伝

「待って!」
「…」
「オーベルシュタイン夫人!!!」
「…」


元帥府恒例の行事が始まる。ミッターマイヤー中将との追いかけっこは些かな骨が折れる。絶対勝てないのでキルヒアイス大将閣下を見つけるか何処かの部屋に逃げ込むしか無い。今日は閣下が見当たら無いので必死に逃げていると人に思いっきりぶつかってしまう。
メイドさんなら大変だと思ったものの相手の服は軍服で顔を上げると困ったようなミュラー中将の顔が現れる。



「すいません。怪我は?」
「大丈夫、です」
「オーベルシュタイン夫人!」
「やだ、あの人!!!」
「あの」
「本当にごめんなさい。私逃げないと」
「お願いがあるのですが」
「は?」
「ミッターマイヤー中将を描いてあげる事は出来ませんか?」
「絶対やです!手を離してください!」
「ミュラー中将!そのまま捕まえててくれ!」
「そういうのが嫌いなの!私が何をしたっていうの!!!」
「彼には奥さんがいまして。」




何故かミュラー中将が朴訥と話し始める。何言ってんですか離してくださいよと言っても離してはくれない。但し痛くもない。
不審げに見つめると愛妻家で貴方の絵を次の戦いまでに持たせたいらしいのですと言われ目を真ん丸くする。

「踏ん反りかえった絵が欲しいのかと」
「違います」
「捕まえた!!!」
「いたーーーー!!!」
「大丈夫、ですか?」
「やっぱり嫌い!!」
「私を嫌っても良いが絵は描いてくれ」
「如何して私なんです。良い絵描き沢山居るでしょう!」
「オーベルシュタインの絵を見た」
「絵?」
「君の絵だ。とても良い絵だった」
「夫に絵は描いて無いですが?」
「そんなはずは無い。これ位の」
「あっ」
「「?」」
「だから礼か」



くつくつ笑ってミッターマイヤー中将をみる。不思議そうに見ているのだろう。


「わかりました」
「!?」
「貴方の事は嫌いですが書きましょう」
「喜んで良いのか?」
「私はとても気分が良いので」


そう言ってミュラー中将を見る。なぜか妙に顔が赤いものの気にし無いでおこう。




絵の行方

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銀英伝

「おい」
「?」
「行きたくなければ行かなくていい」
「うん」
「お前が何処ぞで要らぬことを聞いたら手間がかかる。」
「ああ、それは陛下にも言いましたよ。下手に聞いたらミンチにされるって」
「そうか」


そうですよと言いながら庭に水をやる。夏はいいな。トマトがいい色だわ。鉢から畑に返したときどうなるかと思ったけどなんとかなったらしい。今日はトマトのサラダだわと言えばすごい顔で見られた。


「怖いなぁ」
「諦めろ」
「何を?」
「一般的に優しい男というのをだ」


不意に後ろを振り返ると一寸の変化も無いオーベルシュタインさんがいて思わず笑う。本を手にして愛犬を撫でる姿は私が一番好きな姿かもしれない。どうしたと言わんばかりにこちらを見て本を閉じる。ホースを置いて横に座ると怪訝そうな顔をする。


「貴方は十分優しいわ」
「…」
「驚いている」
「馬鹿だバカだと思っていたが」
「失礼ね!」
「私を優しいなどというのはお前くらいだ」
「そうかもしれないけど。理由が違う」
「?」
「甘ったるい言葉を聞いて喜ぶ私を想像できます?」
「…」
「酷い顔」
「煩い」
「人には好みがあるの」
「?」
「私は貴方のがいい」
「そうか」
「私が貴方を好きだから。貴方が優しいことも知ってるし酷いことも知ってる。それを加味して結婚したのよ!」
「…」
「無理矢理結婚したと思ってたの?」
「ああ」
「貴方が怖いから?」
「ああ」
「今日はトマトのサラダ大盛りね!」
「…」
「貴方が大好きだからよ。覚えてて」
「…覚えておこう」


ふふふと笑って私は立ち上がる。


「貴方が言えない分私が言ってあげるわ」
「それは助かるな」
「良かったわね。」
「大盛りはいただけないがな」


キスしたら許してあげるわと言えば渋々ながらキスをくれる。
それで十分だと思えるのだからこれは愛情なのだと私は思うのだった


トマトのサラダ大盛

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銀英伝

アイスブルーのドレスを着て、物憂気に壁に立っていた彼女を見た瞬間恋に落ちたのだ。

「で直ぐにオーベルシュタイン夫人とわかったわけか」
「あの時は夫人ではなかったかな?まぁあのドライアイスの剣に女がいるとは驚いたがな。今では我が幕僚の専属画家だ」
「…」
「この間メックリンガー中将と美術について語っていたよな」
「ああ。芸術家同士馬があったのだろう?部下達が困っていたな。同じ絵描きなのはわかるが…」
「メックリンガー中将は水彩画彼女は油彩画が専門なのです。」
「「…」」



何ですか?と尋ねると女運が無いとロイエンタール中将に言われる。わかっている。でもこの人に言われたく無いものだと思いながらミッターマイヤー中将を見る。言いたい事は同じだろう。

「私も絵を頼んだのだがな」
「そう言えば」
「剣もほろろに断られた」
「また、なんで」
「オーベルシュタイン夫人の軍人嫌いは有名だ。こそこそせず嫌いだと真っ向向いて言うものだからビッテンフェルト中将と似ているかな?」
「昨日恫喝まがいに絵を描けと言った彼に絶対描くかと叫び返していたぞ」
「…」
「あそこまで行ったら筋鐘入りだ。」
「噂をすれば」


そういうと大きな音と共にビッテンフェルト中将が部屋に入って来られる。あの女という台詞と共に。


「ダメだったらしいな」
「ぐぅぅ!!!あの女!絶対描かぬと言いやがる!」
「なら無理にかかせなくても良いだろう?」
「いや、こうなれば俺にも意地がある」
「にしても私は早く描いてもらいたいものだがな。次の戦いまでにエヴァに持たせたい」
「相変わらず愛妻家ですね」
「卿も真面な相手を選べれば直ぐに愛妻家に成れるだろう?」
「いわないでください」
「大体お前だって他の絵描きに描いて貰えば良いだろう?」
「いや、そのだな」
「?」
「家族に贈る絵は彼女に描いてもらいたい。」
「はぁ?」
「威厳に満ちた今までの描き方じゃなくてな。自然で良いんだよなぁ?」
「…よく分からんな」


そういうとミッターマイヤー中将が立ち上がってもう一度頼みに行ってくるという。何故か俺の腕を取って。


「来い」
「えっですが」
「話せるチャンスだぞ!」
「…」
「帝国軍人が女1人に参ってどうする?」
「ああ、ロイエンタール中将まで」
「何か面白そうだな」



結局4人になるのかと思いながら廊下を引きずられていると件の人が現れる。こちらを見た途端この世の終わりのような顔をされたのは気にしないらしい。案の定、ビッテンフェルト中将が追い掛け、夫人は逃げ回る。それを3人掛かりで止めた頃には彼女は柱の陰に隠れてこちらを睨んでいた。



「やはり卿は連れて来るべきではなかったな」
「すまない。オーベルシュタイン夫人。怖がらせてしまって。」
「…」
「その、あなたに絵を描いてもらいたくてだな」
「…」
「夫人?」


珍しく反応がないなと思っていたらポロポロと涙を流していた。
どきりとする。
あのビッテンフェルト中将まで晴天の霹靂だったのだろう。たじろぎ、目を見開いているのだから。

「す、すまない。オーベルシュタイン夫人」
「そのだな」
「は、ハンカチ!これを使ってください」
「…」
「夫人?」
「結構です。」
「っ」
「ミッターマイヤー中将。」
「は、はい」
「頼まれた絵ですが絶対に描きません」




そういうと彼女は静かに涙を拭うと一礼して立ち去る。



「どうしょう」
「恨むならビッテンフェルト中将を恨むんだな」
「あの女でも泣くのだな」
「失礼だな。」
「ミュラー中将?」
「…」
「ダメだな。完全に灰になってる。」





ミュラー中将の無謀な戦い

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