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変換なしの雑食夢

ran

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父と母と子 7

「やあ」
「竹中様」
「仕事中?」
「はい。衣装の整理を」
「君らしいね」
「?」
「いや、褒めてるから気にしないで」
「はい」
「ふふふ。如何かな、新婚は?」
「?!」
「持ってたものが着物でよかったね。三成君なんて無名刀を落としかけたよ」
「竹中様」
「からかい甲斐があるよね。」
「…」
「いや、ね。君とは一度二人で話してみたかったんだ。…僕は君と同じ何だよ。彼が其れこそ佐吉と呼ばれた頃に彼を養育したのは僕だから」
「私はそのように大層なことをしておりません。旦那様と竹中様の関係よりずっとお粗末なものかもで、其れこそ身の回りの世話をしたのみでございます」
「ふふふ。僕はね、ありとあらゆる事を彼に教えたよ。豊臣の…秀吉の後継者として何の不足のないように育ってくれた。けどね。後継者というより、崇拝者だ。其れは当たり前だからいいけれども、彼の精神支柱は思った以上に細くてね。家康君が離反した折は見ていられなかったよ」
「荒れておられましたから。」
「君はその頃に来たんだよね?」
「はい」
「佐吉の事を見る間もなくなったというのが本音だよ。でも、それだけではなくてね…僕は僕では与えられないものを君に求めていたんだよ」
「?」
「君のことをこの子だと思ったのは君島を罰した折、其の儘佐吉に触れようとしただろう?錯乱していたから全てを敵だと思い込んでいたと珍しく反省していたよ。」
「そんなこともありました。其れからは、佐吉様にご無体をする事はなくて…」
「其れは君のせいだよ」
「?」
「忘れてしまったかな?怯えた佐吉が逃げ出せもできずにいたら、君が庇って…三成君に手を挙げたの」
「…」
「と言っても避けられていたけど。ふふふ。佐吉様に刃を向けるのならたとえお父上君でも許しはしない。過去の呪縛で今が見えない者に未来があるはずもない。いい加減今を見なさい!と啖呵をきってね」
「…お忘れください」
「ふふふ。そのお陰で勝てたと言っても過言ではないよ。彼は彼の意思で戦さ場に赴いた。逆に家康君は違ったみたいだね。そういうちょっとした事が全てを変えてしまうものなんだよ」
「…」
「あの時、母親というものは何て強くて恐ろしいのだろうと驚嘆したよ。だって考えてごらん?刀を持った鬼のような男に君の様なおっちょこちょいが立ち向えるのだから。」
「あれから旦那様が凄く恐ろしい方だと思いましたもの。確かに、よくやりましたね」
「そうだね。無条件ではないとしても僕にはないものだ。お陰で佐吉は人間としても豊かかな?まぁ、君に良いところを見せたいのは二人して同じだけどね」
「…」
「?」
「旦那様とこのような縁になりまして熟思います。旦那様は本当に皆様から愛されていると」
「そうだね」
「ただ、殿方の中で住まわれておりましたから如何すれば表現できるのかがお分かりにならなかったのでしょう。少しずつ、表現されるのでは?」
「其れは」
「?」
「凄く面白そうだね」
「ふふふ」
「まぁ、目下君に頼みたい事がある」
「?」
「石田軍の訓練が苛烈でね。いや、左近君だけかな?助けてあげて」
「あらあら」





父と母と子 7






「失礼します」
「奥方様?!」
「…奥?」
「旦那様。竹中様から火急の用と」
「っち」
「奥方様ぁぁぁ〜!」
「左近様?!大変!医師を」
「捨て置け」
「旦那様!」
「な、何だ?!」
「…」
「今すぐ行く!誰か医師に見せてやれ!奥」
「はい」
「行くぞ」

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父と母と子 4

「やれ、奥方殿」
「…」
「噂にたがわずよの。乳母殿」
「は、い…刑部様?」
「ちと良いか?」
「良いのですが…」
「ん?」
「(目が笑っていない)急用でございますか?」
「いや、何」
「?」
「半分の行方を聞くだけよ」









居た堪れない。とは言え、席を立つ事すらできない。
眼前には怒っていらっしゃる刑部様で、半分の行方を聞くまではこの場から出さないという事を先に言われたので、益々逃げ出せない。




「言う気にならしゃたか?」
「あ、の」
「取り立てて、半分は佐吉から離れるのが嫌だというので相違無いか?」
「は、い」
「ひひひ。ぬしは知らぬからなぁ」
「?」
「元々、乳母殿始め5人の世話役は見目よりも家柄とその人となり、勉学で決めていた。だがなぁ。どれを取っても隠そうとすればいくらでも隠せらるる。常に忍びが見張っておったのは知っておるか?」
「忍び?!今もですか???」
「今は必要なかろ?まぁ初期のヘマぶりは聞き及んでおるわ」
「っ!」
「それは良い。一人目は早々と尻尾を出したが小物でな。所謂玉の輿というやつよ。ひひひっ。世話をせずになぁ。そこを踏み込まれて早々よ。二人目三人目も似たり寄ったりよ。此処までは太閤や賢人が親元に言うて早々引き取ってもらったが…主とあの四人目は献身的に佐吉に尽くしておった。いや、主は今でもなぁ」
「四人目の方は…君島様は其れこそ!」
「三成の逆鱗に触れたあれか?」
「よく尽くしていらっしゃいました。其れなのに、あんな」
「主は」
「?」
「主は己が善人故…皆己のようだと思う気来があらしゃる。そこが良いところで悪いところよ。…いや、面倒なところか」
「???」
「あれがこの城から放逐される前夜、佐吉が熱を出したのは?」
「ええ。原因不明で…医師も手を焼いていたので良く」
「ひひひ。主は例にも漏れず水籠りをしておったなあ。看病して水を被り。良く病を得なかったものよ」
「元来の構造が単純なのでございましょう」
「ひひひ。誠主らしいが…あれは違った」
「?」
「あの病があれのせいで、あれが徳川の間者だったとしたら?」
「…は?」
「疑うか?」
「…」
「…」
「…いいえ。」
「ほう」
「佐吉様に対して皆様誠実でいらっしゃいます。今、合点がいきました。何故、石田様があれ程お怒りになられたのか」
「合戦の前だった故。普通なら馘いていても不思議が無いが…主が、身を挺して佐吉を守っていたのを見て我に帰ったそうよ。」
「…」
「ぬしも、どこぞの間者かと思いはしたが…無理よなぁ。」
「無理です」
「我とて主のその鈍臭さが芝居なら驚嘆の域よ」
「…」
「ひひひ。怒らしゃるな。まぁ、主の警戒を一番に解いたは他でも無い三成よ」
「其れは」
「ん?」
「私が一番鈍臭いからですか?」
「ひひひ。すねしゃるな。今は我とてそうは思っておらぬよ。…三成は主を見て美しいと思ったそうだ」
「?!」
「ひひひ。心根よの。まぁ主は己を否定するが見目も良い方よ。頭も悪く無い。家柄もよ。…三成が嫌いが半分なら理解もできるがな」
「っ」
「いわしゃれ。」
「残りの理由の半分…一つに正室となれば佐吉様に会う時間が月に何度もなくなってしまうからです」
「はてさて。如何してそうなる?別段今と変わらん」
「???」
「主の母御がそうであったか?此処は奥方がおらぬ故…左様か。そのようは心配は無駄よ無駄。好きにしりゃれ。其れは我らではなく太閤も賢人もそう思っておる。まぁ今のように勉学の時間が増えると自ずとなぁ…子の成長とともに離れる程度よ」
「…」
「やれ、まだあるか?いわしゃれ」
「実家も…」
「妹御はいらぬというた。あれはいかん。佐吉が嫌い故。」
「…」
「もう無いか?」
「…」
「ひひひ。観念しりゃれ。三成が落ち込んでおる」
「石田様がですか?」
「あれは本にわかりにくい男でなぁ。主と夫婦になるまでも密かに主のため色々動いておる。まぁ。主に災いする者を近づけぬようにしたりなぁ」
「?!」
「ようや、嫁にしたかと思ったら拒絶されたと。主が人身御供の様に三成の元に来たと落ち込んでいた。初夜は意気揚々と行き、落ち込んで帰ってきた故な。ひひひ。主に嫌われたと嘆く故、我も出張ったのよ。でなければ…態々こんなことはせぬよ」
「お戯れかと、思ったのです」
「ん?」
「お戯れに…其れこそ何かの冗談かと」
「ひひひ。三成が聞けば泣くなぁ」
「私は」
「…」
「生まれてこの方美しいなど言われたこともありませんでしたから…石田様にああ言われましても、疑っておりました。刑部様」
「何?」
「間違いなく、本心なのでしょうか?」
「間違いなく、本心よ」
「…石田様に会ってお伝えいたします。今までのご無礼を」
「で」
「?」
「それだけか?」
「!?」
「ひひひ。主とて悪い気はしておらぬ様よなぁ…ん。三成は執務室よ。」
「ありがとうございます」







父と母と子 4










「誰だ?」
「わ、たくしでございます。」
「?!ま、待て!!今は誰もいない!」
「え?」
「私と二人きりは恐ろしいだろう?」
「い、いいえ!」
「無理をするな」
「…でしたら此処より、失礼致します」
「?」
「今までの勘違いをお許し頂きたく参りました」
「???」
「私の早計で勘違いを…あなた様が、佐吉様や私をお守りいただいていたことを知らずに」
「刑部か」
「本当に申し訳ございません。そしてありがとうございます」
「あ、たりまえだ。子を守るのは親の仕事だ」
「何故、私まで」
「…其れはだ。嫁に迎えたかった」
「!」
「そう言ったはずだ!」
「はい」
「お前にとっても都合のいい話だろう?…これで死ぬまで、佐吉のそばにいれる」
「あ、の!!!」
「な、何だ?!急に!!!」
「私は、あまり器用ではありません!」
「?」
「5年も乳母殿と言われていましたから…其れに」
「何が言いたい?」
「…」
「おい」
「だ、んな様と呼ばせていただいてもよろしいですか?」
「?!」
「私も!奥方とか母上というのに反応する努力を致しますの、で…石田様?」
「違う」
「旦那、様」
「っ」
「?」
「私が、恐ろしく無いか?」
「少し」
「!」
「君島様の時は本当に…」
「そう、か」
「ですが…」
「?」
「理由がわかれば!其れに知っていたら私も平手の一つでも!」
「お前がか?」
「…そういう意気込みです!」
「…そうか」
「石田」
「違う」
「旦那様」
「触れてもいいか?」
「は、い」
「奥」
「っ」
「お前と佐吉は私が必ず守る。それだけは信じてくれ」
「は、い」







「上手くいったかな?」
「やれ賢人。覗き見はいかぬなぁ」
「だってね。」
「半兵衛様!これで大丈夫ですか?」
「ままごとの様だけどね。」
「ひひひひひ」

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父と母と子 3

「おい」
「は、い」
「そんなに嫌か?」
「そ、のような訳では」
「顔色の悪い、震えた女に言われた所で真実味の低い話だ。興が逸れた」
「?!」
「佐吉を呼んで…何だ?着物を掴むな!」
「佐吉様の世話役から、外されるのでしょうか?」
「は?」
「…」
「…一つ聞く。」
「?」
「佐吉と離れるのが嫌で私の妻になったのか?」
「…」
「答えろ」
「半分は」
「…もう半分は?」
「…」
「答えない気か?」
「申し訳ございません」
「…そう、か」
「?!」
「佐吉を呼ぶ。暫時ここで待て」
「石田様?!」
「今日からお前も石田だが、もういい。好きに呼べ」
「?!」
「安心しろ。この程度で離縁はせん」








その日を境に石田様は私と二人きりになることはなかった。








「やれ、三成」
「何だ」
「機嫌の悪いこの上無しよな」
「…悪くは無い」
「漸くいとしき嫁御を娶ったというのに…ひひひ。三成。筆が折れよる」
「心配するな」
「主の心配はしていない。心配なのは左近たちよ。」
「あれしきでへこたれはならない!」
「ひ、ひひひ。鬼の所業よな。やれ、恐ろしい恐ろしい」
「!」
「三成?」
「私は、恐ろしいか?」
「まぁなぁ」
「…そうか」
「やれ如何した?」
「…」
「?」
「拒絶された」
「???」
「奥にだ」
「ああ。そう言えば、まだ他人行儀よなぁ。…初夜も迎えたのに」
「…」
「迎えておらなんだか」
「青い顔をされて、震えられたのだ。…無理意地はできまい」
「それは、そうよの。」
「佐吉と離れたく無いためと言われた。あれはここに来た時より佐吉にしか意識がいかぬようだ」
「ひひひ。あれらを罷免した理由を勘違いしたか。まぁここに来た折の主は徳川の所為でかなり荒れていたからな」
「…」
「太閤賢人両名が生きておったから良かったものの。主の暴れっぷりを知っておれば仕方ないか」
「言うな。だが、あれには何もしたことは無い」
「同僚を強かに打ち据えていたところは見ただろうに」
「…」
「特に4人目は酷かった」
「あれは!家康の間者だ」
「それをあれは知らぬ故。急いで佐吉を庇っておったものなぁ」
「…」
「身を挺してという点においてはまこと母親よ」
「刑部」
「ん?」
「姉上が喪してこの方。私は佐吉を我が子と思ってきた。佐吉は私が嫌いか?」
「ひひひ。佐吉主を嫌いではあるまい。あの幼子の心は父を主に母を乳母殿にしたいのだろうからなぁ。」
「だが」
「ぬしもぬしよ。ある程度は致し方無いとしても、初心な娘がそのまま床を終いにはできぬものよ。少し強引にならしゃれ」
「無理だ!」
「…萎えるか?」
「嫌われてしまう!」
「…本にぬしは」
「如何したらいい?!私も佐吉と同じだ!佐吉を子にあれを妻にしたい」
「ままごとのようよ」
「それでも良い」
「左様か」
「刑部?」
「致し方無い。…我も少し動くか。ついては他に何か言わなんだか?」
「他に…半分と」
「?」
「私との結婚を受け入れた理由は佐吉が半分と」
「して残りの半分は?」
「答えなかった」
「…まずはそこからよの」






父と母と子 3







「おい!」
「え?あ!はい」
「父上と仲が良く無いのか?」
「?!」
「…えっと、ですね。また如何して?」
「左近が言っていた!訓練が鬼気迫ると」
「(左近様、ごめんなさい)」
「嫌い、なのか?」
「いえ!めっそうも無い!!!」
「…お前がそう言うのは苦手な証拠だ!」
「佐吉様」
「父上が苦手か?」
「…恐ろしい方と知っておりますが、それだけで無いとも知っております。苦手ではありませんよ。尊敬しておりますから」
「なら」
「私が一番恐ろしいのは佐吉様の近くにいられなくなってしまうことです」
「何故だ?!」
「正室は正室の役割がありますから。今までのようにはいきません。それが一番寂しい」
「っ!泣くな」
「元より、里はこの縁談を喜んでおりますし。…というより、美しい下の妹を側室に入れようと画策しておりますから。」
「私はあいつが嫌いだ!いつも意地悪をする」
「ですが…見目も大切ですよ」
「いつも父上は言っている!」
「?」
「お前はお前が思うよりずっと美しいと。心映えも見目も。なのにいつも自信なさげに俯いているから困っていると。あと…私と共にいるときは本当に幸せそうだと」
「…」
「早く!お前を母と呼びたい」
「?」
「この間からいくら呼んでも振り向かん!不義理だし不自由だ!」
「ふふふ」
「泣くな!笑え!」
「はい」
「お茶を淹れてやるから待っていろ」
「ありがたい事でございますね」

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