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変換なしの雑食夢

ran

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歌う花

「ごめん」といつも妻は言う。妻は妻であり、元々は武家のでの勇猛な武将だった。幼馴染だった。私の愛した女の姉だった。

彼女は体が弱く世継ぎを望めなかった。嫁ぐのではなく侍女として家裁を取り仕切っている。そして私の側室でもあり、寵妃でもある。月のように儚い女を私は知らない。





「どう言う意味だ」
「いや、さ。懐妊したらよう無しなのに。見舞い来てくれて」
「減らず口をきくな。妻を見舞うのに謝罪はいらん」
「ん」
「長の行軍が堪えたのだろう。少し休めば良くなる。しっかり寝ろ。子は乳母が見ている」
「妹もでしょ?」
「当たり前だ。」
「そう…ね、三成」
「?」
「私をさ、死んじゃったことにしなよ」
「…は?」
「有難いかな跡取り生まれたし。半兵衛様も許してくれるって。側室持ってさ…なんなら私と妹が入れ替わって。」
「馬鹿を言うな」
「最後のチャンスかもよ」
「何がだ」
「妹と公然に夫婦になれる。」
「…」



ほら、望んでるじゃないと言って布団の中の妻は笑う。結婚してからは昔のように笑わなくなった彼女は事あるごとにそう唆す。私もすぐに否定するもののその甘い話は惹かれるものを感じる。


あれと夫婦になる。子も出来ている。何も咎められない。



その魔を妻は汲み取っていたのだろうか。今となってはわからない。ふふふと笑って私も協力するよと言う言葉を吐く彼女の顔を私は一度も見たことがなかった。






「やれ、三成」
「どうした、刑部」
「主の愛妾が来ておる」
「あれがか?…珍しい」
「急いでおるようよ。今左近が対応しておる。」
「…行ってくる」
「我も行こう」
「?」
「何やら不幸が燦ざめく気配よ」
「どう言うことだ?」
「三成様!」
「左近!騒がしいぞ!!!」
「それどころじゃないっす!奥方様が!!!」
「?」
「姉様が自害を!!!!!」
「…は?」





為任務終了、御役御免候。





そう書き遺して彼女はこの世から居なくなってしまった。



傍に置いていた文箱からは秀吉様、半兵衛様。そして刑部宛の文があり私に子にもは何も残してはいなかった。

太陽のように明るくいつも笑っていた彼女との決別はあまりに突然で。それこそ。土に還したのちでも頭は理解していなかった。



何故、とは言わない。あの言葉が全てなのだろう。







「ちと食べやれ」
「いらん」
「寝ても居らぬようよな」
「眠くない」
「左様か」
「…」
「あれも黄泉路に迷うなぁ」
「?!」
「ひひひ。なれば幸せにならしゃれ」
「馬鹿を言うな」
「跡取りはある。最愛が妻になった。何を苦しむ必要がある」
「それは…」
「我は言うたぞ、三成。我は言うた」
「?」
「あれは主が思う以上に儚くボロボロよ、と」
「だが」
「何にせよ。後はもうない故の凶事…?」
「どう言う意味だ?」
「あれはお産に持たぬ体よと何度も…主は聞いておらなんだか」
「…」
「昔からちっとも変わらぬなぁ。我らの幼馴染は」








歌う花

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優しい三成

「あー」
「どうした?」
「んー?」
「おい」
「吉継」
「?」
「ごめん。風邪ひいた。」
「ひひひ。我の心配などいらぬいらぬ。よく効く薬を運ばず故暫し寝りゃれ」
「そうする。三成」
「なんだ?!」
「吉継をお願い。もしうつってたら即医者に診せて。隠すから」
「あ、ああ。いや、待て」
「?」
「お前はどうする気だ?」
「寝る」
「は?」
「一に睡眠というからなぁ。」





寝てれば治るよと言って部屋を出たのは何時時だったか。ぼんやりとした思考で周りを見ると吉継の手配してくれただろう薬瓶が見える。あれを火にかけたら良いのだろうなぁと思いながら起き上がる。水も着替えも完備だわ。さすが吉継。




「熱あがってるわ…」
「おい」
「…なんで三成いるのよ」
「先ほどきたら寝ていたからな。見に来た」
「そう」
「顔が赤い」
「本当にねぇ。あー…寒い」
「着替えろ」
「んー…」
「おい」
「面倒臭い」
「おい!」
「着替えさせて」
「わかった」
「優しい」
「私はいつも貴様には優しくしている」
「吉継に言われて?」
「違う。秀吉様だ」
「ふふふ。それでもありがとう」
「ふん」




手慣れた具合で服を脱がせて体を拭き再び服を着せてくれる。至れり尽くせりね言えばいつもしてやっているだろうと帰ってくる。うん。抱き潰すあんたが悪い。そう思いつつも力が入らない私はくたりと三成に凭れかかる



「熱いな」
「暑い?寒いよ」
「そちらの暑いではない。体温が高い」
「ああ。熱いか」
「横になれ」
「ん」
「座っている方が楽か?」
「三成と居たいだけ」
「…」
「?」
「刑部が言っていた」
「そうだ!なんでこんなところにいるのよ?吉継の見張り!」
「はぁ」
「野猿のような私より吉継!」
「その刑部よりも先に熱を出す奴が野猿なら私はどうなる。」
「だって。吉継すぐ無理するもん。熱出てても隠すもん」
「お前よりわかりやすい。…刑部はまた後で見に行く。落ち着け」
「本当?」
「では聞くが」
「?」
「私がいなくても良いのか?」
「…嫌だけど。吉継がまた倒れる方が嫌」
「この頑固者が」
「わっ!」
「刑部がお前を致命的な甘え下手と言っていた」
「酷!」
「それに対しての私の返答を聞きたいか?」
「どうせ頑固者と言ったのでしょ?」
「違う」
「?」





「優しく辛抱強い良い女だと答えておいた」






「…」
「寝ていろ。刑部も心配している」
「三成」
「こういう時くらい甘えろ」
「…ん」
「早く良くなれ。お前が嫌な様に私達もお前が不調なのは好かん」
「三成」
「なんだ?」
「大好き」
「知っている」
「可愛くない」
「別に構わん」
「ふふ」
「早く良くなれ。」




ありがとうと微睡む意識の中、伝えると三成は優しく笑う。
これは甘え得かなと少し笑って意識を手放すのだ








優しい三成










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風闇光

血まみれだ。私も家康も。婚礼道具や白無垢はもうボロボロだ。父母のいない私に代わりとして幼い折より半兵衛様が用意してくださった品々。君が嫁ぐ折と思っていたけど相手が三成くんだからより、嬉しいよと笑ってくださったのに。なににも変えがたい品々だったのに!
このやろうと思いつつも上がらない腕に辟易する。本当に嫌になるわと独白すると顔を掴まれて持ち上げられる。けっ!それしていいのは秀吉様だけだろうが!



「おい」
「痛いだろう。考えていた以上ひどくなった」
「誰のせいだよ」
「わしのせいだな」
「当たり前よ。私明日で武士辞めるはずだったのよ!」
「それは無理だな」
「あん?!」
「お前は三成の側から離れられんよ」
「あは」
「だからだな」
「あのさ」
「ん?」
「頭痛い!」
「すまんな」





いつも通りすぎて恐ろしい。
だからこいつ嫌いなのよ。笑ってても笑わない男。三成みたいなまっすぐではないぐちゃぐちゃに絡まった男。ほんと嫌な男に好かれたもんだわ。溜息をつくとくくっとわられる。んとうに。

家康が謀反を企てるのは三成以外皆知って居た。ただ。今日するかよ。嫌な男だ。明日、三成のもとに嫁ぐはずだったのになぁ。
三成の女に。たった一人の正室になるはずだったのに。最後の最後で邪魔しやがって。
三成も吉継も秀吉様も半兵衛様も大坂城にいるからここまで来るにはまだかかりそうだし。きっと本田が邪魔してんだろうし。多方からの攻撃ならば私は無理っぽいな。間に合わない


三成。



「また、三成のことを考えて居たのか?」
「そうね」
「…」
「旦那様と呼べなくて辛いわ」
「そうか…では」
「?」
「わしのこと呼んでみるか?」
「やだ」
「つれないな」
「私あなたのこと嫌いだもの」
「そうか?三成と対だと言って居ただろう?」
「面は光で中が闇。三成はその逆。私の最愛と最悪。」
「好きも嫌いもというからな」
「バカ言わないで」
「…さて、と」
「?」
「愛している」
「?!」
「これからはずっと一緒だ」
「絶対に嫌」
「そういうお前が愛おしいな」
「私は大っ嫌い」



三成


ごめんね。



『明日ー…』



明日は来ないみたい。あなたに手を取ってもらって貴方の側で笑えるって。夢見すぎたみたい。
こんな人殺しが人様以上に幸せになろうと欲を出したせいだね。ごめんね。本当にごめん。



泣かないでね。
私以上に貴方を愛している…あ、嘘。ごめん。貴方の横で他の女が笑ってたら呪うかも。最後の最後まで我儘だわ、私。

でもさ、貴方に幸せになってほしい。誰よりもずっと。





まっすぐで
真っ白で



意地悪で
優しくて




愛しい貴方だから











(み つ な り)







「?!!!!」








愛してる






風闇光




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光風闇

「家康はいいね」
「?」
「光に変わったじゃない」
「あ、ああ。」
「いいなぁ」
「変わったことがか?案外大変だぞ」
「そう?でも」
「!」
「羨ましい」
「…そうか」




そういうと彼女はにこりと笑う。いつものことながら美しく笑っているのに心底笑っていない。
目が笑って居ないとかういう話ではなくて、現に目も何もかも笑っているのに。のに中身はちっとも笑っていない彼女をわしは愛している。羨ましいとどろりとした感情がまとわりつく。それを表に出さないのは彼女が腹に隠すせいではない。隠すのならばもっと可愛い感情を生むだろう。嫉妬とか単純でかつ面倒な感情表現を彼女はしない。もっと不可解で純度の高いそれをわしは絆と呼ぶのだと知った時それが欲しくて仕方なくなった。
彼女とわしの絆。ありしないそれ。わしが愛した彼女は三成を愛している。

風のようにわしの手では掴めない彼女は三成のもので。なにより彼女の行動原理は三成なのだ。だから私の光が羨ましいとそういうだろう。表裏一体で対たるわしの光が。





「だか大谷殿には言わないな」
「刑部?」
「同じ闇だろ?」
「ふふふ」
「?」
「刑部には敵わないわよ。一対ではなくて一体だもの。本体を羨ましがってって笑われるのがオチだわ」
「そうか?」
「この間なんてお守りが増えるって」
「言いそうだ」
「嬉しいくせにね」
「ああ」




婚礼まであと僅か。乙女心を理解できぬ三成と三成さえあればあとはどうでもいい彼女。それに振り回されて喜ぶ大谷殿。この絆はそう簡単には綻びはしない。きっと誰かが欠けたとしてもだ。それほど強固な絆を羨ましがるのは他でもない。わし自身。





「家康?」
「ん?」
「どうしたの?」
「どうもしないさ」
「ならいいわ。にしても三成とあなたは一対のようで羨ましいわ」
「え?」
「秀吉様と半兵衛様のよう。」
「そう、か」
「妻で一対なら良かったのに」
「わしに言われてもだ…」
「いいな」
「おい」
「私も獲物変えようかしら」
「暗器の達人だろう」
「光になればいいのに」
「私が特別変わっているだけで、普通はもって生まれたものだ。」
「まあ私は光にはなれそうにないけどさ。ならせめて闇なら良かったのに」
「?」
「ならどっぷり三成に浸かれて離れることないでしょ?」
「言っていることが怖い」
「あら?そう?」
「だがわからなくもない」





手に入らない彼女
もうすぐ他の男のものになってしまう彼女



このまま閉じ込めてわしのものにしてしまいたい。どっぷりと依存させて奥の奥に閉じ込めてわしが居なければ生きて行けなくなればいい。三成に向ける蕩けるような笑みを浮かべてわしだけを見ればいい。わしだけと話してわしの手からしか食さずわしの腕以外で寝なければいい。
今の彼女と三成のように

それが無理なら一層のこと。たとえその頭だけでもいい。わしのものになればいい。





「家康?」
「ん?」
「ふふふ」
「どうした?」


三成とお前が番うその日。わしは豊臣に反旗をひるがえす



「やっぱり羨ましい」




嗚呼、あいつが羨ましい







光風闇



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