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変換なしの雑食夢

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死屍累々 8

「貴様は!心配してやってきたものへの態度か!」
「夢でなければ貴方様が私と二人きりになりませぬよ」
「ぐ…」
「旦那様」
「何だ!」
「短い婚姻でしたが、ありがとう御座いました」
「?!」
「起きる事があれば、次は里か…良しばんで最北にある座敷牢でございましょう」
「貴様は罪人か」
「あなた様にとっては」
「っち!」
「もう少しでお別れですからお礼だけでも言っておきたかったのです」
「まだ早い。なにより夢で言うな」
「現は貴方に必要以上近づいたり話しかけたりするなと言われておりますから。目障りだと」
「…」
「結婚の儀式の折。些か大きなお声で」
「ああ」
「忘れてなさった」
「知らん」
「夢でも酷い話ですね」
「いちいち覚えきられるか」
「貴方にとって無数ある花の中の一番出来損ないでしょうが私にとって唯一の旦那様ですから」
「…」
「何か?」
「貴様でもそう愁傷なことを言うのだな」
「夢ですから」
「…そうか」
「ええ。そういうものです。ああ、ついでに」
「なんだ?」
「刑部様にお伝えした通り、あの侍女を大事にしてやってくださいませ。貴方様たちの衣食住の癖は伝えてありますから、ご不便をお掛けせずに済むと思います」
「お前がすればいい」
「出来なくなったらの話です。」
「なら無用な話だ」
「死ぬまで勤めはいたしますよ」
「死にたがり屋め!」
「私も死を求めるほど老成しておりません。ああそれと」
「何だ?」
「妹をお願いいたします」
「妹?」
「五島。あれは私の妹です」
「な?!」
「言いましたけどお聞きにならなかったのですね。」
「知らん!」
「そうですね。まともに話した事御座いませんでしたし。父や兄にすればそちらの方が都合が良かったと思います。あれは末娘で大層可愛がられておりましたから。なにより実際、五島は美しいですから…手違いというか何というか私が妻になってしまった方がおかしいのですよ。ですから気にしてはいませんし、そういう事になるだろうなと思っていました」
「…」
「私としても継室が妹なら安心でいけます。ただ、家才はありませぬからしっかりとした侍女をつけてくださいませ。衣食住を保つのも室の仕事ですから。安心していけるように手は打ちましたが…貴方様も頭の隅に」
「おい」
「?」
「死にたいのか?」
「…」
「生きたいか?」
「さて…わかりません」
「後悔、しているのか?」
「本当に夢ですね。貴方様が私にそういう事を言うだなんて」
「答えろ」
「…大変と言えば、大変で。苦しいといえば苦しい人生でした」
「…」
「ですが、楽しい人生でもありました。私としては精一杯生きましたから…ここで生死別として別れたとしても未練はありません。ただ」
「ただ?」
「後悔は…。そうですね。貴方様に申し訳なく思っていることですね」
「何がだ」
「好みでもない。いえ、嫌う女が正室になってしまったことです。本当に申し訳御座いませんでした。もう少しましな嫁でしたら貴方様のお心も安らかでしたでしょうに」
「馬鹿か」
「あら、泣かないでください」
「嫌うていない。」
「あら、優しい夢だ事」
「冷やかすな」
「でも最後の夢としては良い夢ですね。こうして」
「?」
「貴方様とお話ができました」
「此れから沢山にできる」
「怒られるの違いでしょうね」
「おい」
「夢の旦那様、現の旦那様に侍女と妹の事だけ伝えて下さいね」
「知らん!」
「あら、優しくない夢だ事」
「好きに言え!良いな、死ぬ事は許さない!」
「何ですか?これは」
「守り札だ。良いな!気合いで治せ」
「ふふふ。」
「なっ?!」
「本当に優しくない夢だ事」
「きさ、ま!」
「?」
「笑えるのか?」
「笑っておりましたか?」
「…」
「久方ぶりですから、忘れてしまいましたけど…私もまだ笑えるのですね」
「また!!!表情を作れ!!!」
「無理をいう夢ですね。さて、もうそろそろ現に帰ってください」
「な?!」
「こう見えて…些か疲れました」
「熱が高いな」
「昔から倒れるまで実の母でも気がつきませんでしたよ」
「…」
「ねむ、い」
「寝てろ」
「…は、い」
「起きたら、いう事がある」
「里、に帰る?」
「違う」
「?」
「起きた時の楽しみだ」







死屍累々 8







「…」
「何だ?」
「…い、え」
「完全に信じていたな」
「…」
「騙された奴が悪い」
「熱のせいでございましょう…はぁ」
「ため息をつくな」
「いえ…目眩がしただけです。」
「おい」
「…」
「話せ。黙らなくて良い」
「ですが」
「散々話した後に何を言っている!話せ!拒否は許さん」
「…はぁ」
「辛いか?」
「医師は?」
「風邪に過労に、栄養失調。よくここまで我慢したと呆れた」
「いつもの事です。寝ていれば…旦那様も感染るといけませんので」
「にしてもこの部屋はひどい」
「…あの」
「日陰しかない」
「話を聞いていただけますか?」
「部屋を戻す」
「は?」
「明日移動だ」
「…」
「何だ?」
「…いえ」
「考えている事は違う。罪人の引き回しではない。あちらの方が都合が良い」
「意味がわかりません」
「貴様の顔を見に通うのには遠い」
「は?」
「正室だろう」
「五島は?」
「姉妹を娶るつもりは無い。有事ならいざ知らず…道に反する故、帰した。貴様の親にもきつく言ってある」
「な!?」
「あれは散財したかったのだろう。部屋いっぱい着物の山だ。どうにかしろ…治ってからだぞ」
「…」
「遊び女も整理した。」
「では側室に?」
「いや、刑部が家才をみて才の無いものは放逐、または縁組をさせた。使えぬものはいらん!」
「…」
「殆ど残らんかった」
「酷い話ですね」
「何がだ」
「お捨て遊ばすのが」
「遊びで終わるより正室の方が良いと皆嬉々として嫁いでいった。」
「…」
「そういう顔も出来るのだな」
「呆れた顔ですが…夜の相手はどうするおつもりですか?」
「貴様の仕事だ」
「…」
「不服か」
「…いえ、色々ありすぎて着いていけませぬ」
「考えを改めた」
「?」
「貴様でなくてはならないらしい」
「…は?」
「その無表情を改めさせる。長曾我部から聞いた。昔はよく笑っていたらしいではないか!」
「そうでしょうか?姫和子ほどではありません」
「…」
「松寿丸様も良く…旦那様、歯ぎしりが!」
「貴様は!毛利が!!!好きなのか!?」
「え?ええ。」
「!!!」
「良き幼馴染…旦那様?!」
「貴様は私のだ!」
「何が何やら…何か悪いものを食したのですか?」
「何?!」
「正反対で…嘘くさいです」
「きさまぁ!!!!」

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死屍累々 7

「あの!」
「ん?」
「私は奥方様の侍女です!」
「え?ああ。如何したの?そんな切羽詰まって」
「お手打ち…覚悟で申し上げます」
「何それ!スゲッ!物騒」
「奥方様に医師を」
「は?え!!奥方様調子悪いの?!」
「一昨日より何も食されていないのです。咳もひどく…でも医師は要らないの一点張りで」
「ちょ、待ってな!刑部さんに言ってやるから!」
「はい」






「暗いのう」
「…あら」
「気がついたか?」
「大谷様?」
「もうちと驚きゃれ。我は主が危篤と聞いて馳せたのよ」
「まあ」
「賢人と太閤も見舞っておった。3日よ。昏睡しておった」
「あらまあ」
「三成も来ておったが」
「大谷様」
「ん?」
「いくら優しい嘘でも嘘はいけませんよ」
「ひひひ」
「五島と睦まじいですか?」
「あれが睦まじいというのならな。あれは子供よ。哀れな子供。己の感情に振り回されておるだけよ」
「また優しい嘘を」
「ちと寝りゃれ。まだ熱が高い」
「…」
「ぬしに看病してもろた恩を介さぬ間に儚くならしゃるな」
「ならば」
「?」
「そこの」
「?」
「行李を」
「5つほどあるが…どれぞ」
「右から、殿下、竹中様、旦那様、刑部様の衣装の直し。左端は皆様の単衣です」
「…また、主のする仕事では」
「侍女を家柄と顔で選んだ弊害ですよ。皆、針仕事が…」
「左様か」
「私が居なくなったら、この部屋の外に控えている侍女に。あの子は上手くしてくれます。全て伝えております」
「主がすれば良い」
「さて、もてばいいのですが」
「これだけ喋れれば、大丈夫、大丈夫。主は体を愛いしゃれ」
「ありがとうございます」
「ぬしの笑みを見るまでは死なせぬよ」
「それはまぁ。無理難題ですね」




そういうと奥方は少しだけ瞬いて「治るまでは見舞いの方にうつすといけませぬ故結構ですとお伝えください」と言って瞳を閉じる。顔色が悪く、息が浅い姿を除けば一寸も変わらない。それは憎らしいまでに




「三成」
「寝たか」
「起きて居る間にいかしゃれ。ちと、まずい」
「まずいものか。あれはずっとあのままだろう。」
「死の凶星がか?」
「は?」
「死に支度をしておる様よ。」
「何を言っている?!」
「ぬしも見舞いしゃれ」






あの日。目の前に座した瞬間から憎からず思っていただろうにとは言ってやったほうがいいのかもしれない。欲を彼女に向けず四散したとて満たされる筈はないと。己の知らぬ彼女を知り、剰え抱きしめた時に起きたその感情こそ嫉妬である事を。

それを知らぬほど主は子供である事を




「出る」
「左様か」
「…悪いのか?」
「運よければ生きれるが、実際綱渡りよ」
「そうか」
「見舞いも看病も要らぬとてなぁ。医師が日に一度参るのみよ。」
「何故だ?!」
「看病の出来ぬものばかりらしい。唯一できるものは、自分がもしもの時にいなければ立ち行かぬからとてな。」
「馬鹿か!此処には数十の侍女が」
「主は奥方以外に衣類を整え、部屋を整え、食事を整えているものを見たことがあるか?」
「…」
「顔と家柄で決めたのがまずかった。と言っても急に召抱えると間者が入る。故に何かあれば奥方していたと、我も今気がついた」
「しかし」
「三成」
「っ」
「我の口は嘘を紡ぐ。しかし、ぬしには紡ぐことは無い。我は今より医師の元へ行く。ぬしもいかしゃれ」










死屍累々 7






今何時かしらと目覚めて初めに思う。随分と寝込んでしまった。食事も喉を通らないほどの病は未だかつてない。困ったと思う反面、これで良かったとも思う。これで色々と解放されるだろう




ただ、障子をあけて月が見たかった。月でも星でも太陽でも。この天井以外の何かが見たかった。


死ぬのが怖いのか?いや、辛いのか?




私にはそれすらわからないし、考えることもできない。





「おい」





声のする方を見る。思わず声が出そうになったものの表情は変わっていないのだろう。舌打ちをされた





「少しは驚け」
「…」
「これは、夢だ」
「ゆ、め?」
「一々黙るな」
「旦那様が夢に立つのですから…いよいよ危ないのですね」
「おい」




そう言って憮然の表情で座るのだ。成る程




「本当に夢の様ですね」

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死屍累々 6

「漸く、ご本復ですね」
「これも奥方のお陰よな。しかし」
「!」
「ぬしの顔は未だよな」
「別に気になさいますな。別段どうということではありません」
「…」
「これで私のお役御免でございます。」
「これで部屋に帰れるなぁ」
「帰る部屋がございません」
「は?」
「…」
「西の。ぬしの部屋があろう?」
「冗談で御座いますよ」







大谷様も知らなかったのだろう。あの後五島に部屋を下賜して私の荷物は北の離れに押し込まれてしまっていることを。私自身まだ聞いていないから致し方ない。此の儘元部屋に帰って仕舞えば五島が可哀想だ。取り敢えず北に向かおうかと思っていたら、島様が困った顔をしてこちらに来られる。




「痛そうっすね」
「見た目ほどではありません」
「あの」
「北に行けばよろしいですか?」
「!」
「貴方様が気を重く持つ必要はございません。」
「止めたんっすけど」
「聞く耳を持つ方ではないでしょうに…殿下たちには?」
「流石に」
「言わないほうが良いかもしれませんが…大谷様に任せましょう」
「奥方様は良いんっすか?!」
「良いも悪いも。」
「五島って奴正室見てぇな顔を」
「島様」
「!」
「本当にご正室になるやしれませんから悪言はおよしなさいませ」
「奥方様が言えば良いんっすよ!」
「…」
「?」
「悪言も恨みも何もかも。願望があるから起こるのですよ」
「…奥方様にはないんっすか?」
「さぁ。遠い昔に無くしたのかもしれません」











死屍累々 6







「どういうことぞ」
「五島を抱くのに便利だからだ」
「…主らしくない。如何した?乱痴に走るぬしではあるまい」
「…」
「確かに無表情な奥方よ。ただ、中身は良い女子だ。我だけではなく太閤も賢人も一致しておる。ぬしだけ目の敵にしておるのは…些か合点がいかぬ」
「私はあれが好かん」
「…」
「好みで、ない」
「旦那様、大谷様」
「「?!」」
「失礼致します」
「奥…」
「やれ奥方。何時からおった!」
「先程でございますが?荷物を取りに参りましたので…そのままお暇しようと思いましたら五島に挨拶に行くよう言われましたので」
「何故五島が?ぬしの侍女よな」
「今は旦那様の寵妃ですから。それでは失礼致します」
「おい!」
「?」
「怪我」
「ああ、見た目ほどで走るございません」
「…」
「旦那様?」
「跡になるか?」
「大丈夫で御座いましょう」
「…毛利とは」
「十年ぶりに会った幼馴染で御座います。」
「内通など」
「…」
「やれ三成!」
「内通など…私のようなものには不可能でございます。それに手紙など里にすら書いてはおりませぬから…私は嫁いでこの方ここのもの以外口を聞いておりませぬ。あの日あの時御前で毛利様と長曾我部様と話したのみで御座います」
「…」
「それでは失礼致します」

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死屍累々 5

「やれ来よったか」
「通夜と聞いたがな」
「貴様!!!」
「毛利!お前言っていいことと悪い事を考えて言えよ!石田も!落ち着けって」
「ふん!」
「ひひひっ。して何用よ?」
「竹中に呼ばれたついでだ。」
「これは俺から。しっかり食えよ?大阪の奴らはくわねぇからな」
「こんなに大量の魚!どうしろというのだ!」
「奥方が良きようにしてくれよう」
「あ!そういや、結婚したんだてな」
「こんな輩に嫁ぐとは…物好きか人柱だな」
「黙れ!恐れ多くも秀吉様のご命令だ。無表情の辛気臭い女だ」
「やれ、三成。」
「あんたに言われちゃお終いだな」
「それは誠人間か?」
「知らん!」
「確かに表情はないが良い女子よ。今は我の看病をしておる…来たか」
「失礼致します」
「お茶を」
「姫…?」
「…松寿丸様?」







ガチャンという音で私は松寿丸に抱きすくめられていることに気がつく。危ないですよと言うものの腕を退けてくれる気はないらしい。
どうしたものかと思案していたら肩越しに大谷様が見える。この世の終わりと言わんばかりな表情をして、何度も瞬いた後急いで旦那様を見ていた。唖然とした表情は初めて見た。




「姫和子?」
「姫か…?まさかおい!こんな所で会うだなんてな。」
「ようやく殿方になれたのですね。ようございました」
「おい!言うに事欠いてなんつーこと言うんだよ!」
「私の後ろに妹と二人でびーびー泣いていたのが嘘のよう」
「ぐ…」
「松寿丸様も。お元気そうで。」
「姫!」
「取り敢えず、御退き下さいませ。足元危のうございますゆえ」
「こんな所で…漸く」
「あの毛利が泣く?!」
「杉様は御変わりありませぬか?」
「元気だ。お前を見たら喜ぶであろう」
「それはようございます」
「そして、私の正室に」
「こら!毛利!!!お前さん嫁貰ったばっかりだろう!」
「それは姫が死んでしまったと思ったからだ!生きているのなら話は違う!!!」
「松寿丸様」
「さあ、支度をしろ」
「私、嫁ぎました」
「…は?」
「まじかよ!三国一幸せな花婿だな!どこのどいつだ?」
「…さん」
「?」
「許さん!お前は私の正室と決まっておるわ!どの捨て駒よ!我が直々」
「彼方で話についていけぬ、石田様です」
「…」
「まじかよ」
「お茶を入れ直してまいります。」
「姫!」
「冗談でも懐かしい話を聞けてようございました。それでは」





取り敢えず部屋を出るとう叫び声が聞こえる。何をそんなに怒っているのだろうと思いつつお茶を入れていると凄い足音がこちらに近づいて来るので顔を上げる。途端、頬に痛みが走り叩かれたことを知る。




「このっ!」
「三成!」
「貴様…許さんぞ!!!」
「毛利!抑えろ!」
「淫婦め!」
「っ」
「その辛気臭さで何人の男を!!!」
「…」
「申し開きがあれば聞く!」
「申し訳ございません」
「っ!」
「奥方!三成止めりゃれ!!!」
「いい覚悟だ。頭を垂れろ!その首叩き落としてやる!」










死屍累々 5








「痛いです」
「そこも無表情よな。」
「旦那様は?」
「太閤と賢人に絞られておるわ。」
「首を落としてくだされば良かったのに」
「やれ、冗談にしてはタチが悪い」
「…そうですか」
「ぬしは…いや、ぬしとて寝耳に水よの。」
「まぁ私のことは良いのです。大谷様」
「ん?」
「熱は?申し訳ありませんでした」
「今はぬしが大惨事よ」
「私の顔が歪もうとも大したことではありませんよ。さ、もう御休みください」
「そうもいくまい」
「自分で冷やす事くらい出来ますよ」
「はてさて…ではきちんと冷やしゃれ」
「はい」




そう言って私は手ぬぐいを濡らす。大谷様の額に乗せると少し目を細めて閉じられる。少ししたら寝息が聞こえてくるので私は席を立つ。
台所に布団を引いて休む支度をすると徐々に痛みが増してくる。明日腫れることだろう。致し方ないと思いながら軟膏を塗る。



「疲れた」





そう言って布団にはいるとどっと体が重くなる。明日からは出来るだけ御前に行かないようにしようと思いながら頬に伝う涙を無視して私は眠るのだった

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死屍累々 4

「包帯まで洗うたか」
「それが?いけませんでしたか?」
「…」
「なんですか?」
「…」
「大谷様?ご気分が優れませんか?」
「ぬしは」
「?」
「もうちと笑えば見れたものよの」
「取り立てて必要なことではありませんね。」
「左様か」
「私は貴方様に嫁いだわけではありませんし、旦那様にもご寵愛たれたいわけではありませんから。薬は飲まれましたか?」
「いつもながらにまずい」
「そう言うものです。あら?」
「刑部!」
「三成?」
「医師から許可を得てきた!文句はあるまい」
「…」
「おい!っち!また話さぬ気か!あの女」
「洗濯を干しに行ったのであろう。ひひひっ。すまぬな、ぬしの妻を」
「知らん!半兵衛様の采配だ!役に立っているか?」
「とてもなぁ」
「なら、いい」
「ぬしはあれが好かぬのか?」
「好きも嫌いもない。秀吉様のご命令で貴様と半兵衛様が決めたのだろう?」
「それはそうよの」
「無口で表情の乏しい女だ。正室には丁度いいのだろう?」
「故に伽をさせぬのか?」
「聞いたのか?」
「ひひひ。ぬしの乱痴騒ぎが聞こえてきたのでなぁ」
「あれは女子というより、正室だ。」
「それは役割よの」
「その役割をする人間だと言っている」
「左様か…ん?」
「失礼致します。」
「奥方?」
「…お茶とお菓子を置いておきます。積もる話もありましょう。私は夕食の支度をしておりますので。何かありましたら」
「ふん!」
「…」








ぱたりと閉めて私は台所へ向かう。女でもない、か。それはそれでいいのかもしれない。私に向いている気がする。
今日の夕食は何にしようかと思っていたら竹中様が框に座っていて思わず目を見開く。この方は神出鬼没だ。なぜここにと尋ねたところで意味をなさらないだろうからご用件はとだけ聞いておく。するともっと驚いてくれてもいいのにねと言われるので、十分驚いていることを伝えておく。




「にしても表情が」
「お茶とお菓子です。体調は如何ですか?」
「今はいいよ。…これは何?」
「旦那様の衣装でございます。今のうちと思ったのですが」
「このお菓子おいしいね」
「ありがとうございます」
「君、無駄に能力高いのにどうしてそう表情だけないかなぁ?少し笑えばいいと思うんだけど」
「今日大谷様にも言われました」
「はは。何て答えたの?」
「私は貴方様に嫁いだわけではありませんし、旦那様にもご寵愛たれたいわけではありませんから。と」
「君らしいね。三成君も三成君だ。君をほったらかして」
「私は正室という役割の人間ですから。」
「彼らしいね。」
「その通りだと思います。何を好んで私など」
「まーねー…あ、漬物をもらいに来たんだよ。」
「漬物ですか?」
「君のが美味しくてね。秀吉も欲しいそうだ。あるかい?」
「あちらの甕ごとお持ち下さい。」
「助かるよ。それと」
「?」
「夕食の前に来客があるから茶菓子の準備を頼めるかい?見舞いが来ているからね」
「はい」
「夕餉はこちらで用意するよ。…さてと。吉継君を見て僕もお暇するよ。」




甕を担いで出て行くのだから目的はこれなのだろう。自由な殿方であり姑殿だ。
来客の支度をしなくては。明日にと羊羹を作っておいたからあれを出そう。洗濯物も取り込んでおかなくてはならない。そう思いながら私は外に出るのだった








死屍累々 4









「何とか乾いた」
「やれ、奥方」
「?!寝ていなければ熱が上がりますよ」
「ひひひ。厠ついでよ。その客の話よ」
「?」
「少々面倒な男ゆえ最低限の会話にしりゃれ」
「心得ました」
「もうじききりゃる。三成も暴れてはならぬゆえ…茶を出した後、こちらに引っ込んでおれ。危ないゆえなぁ」
「はい」
「怒うておるか?」
「いえ?…薬を先に飲んでおきましょう」
「…」
「ささ。」
「不味い」
「飲まないと治りませんよ。」
「左様か…ん。不味い」

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