銀英伝 銀英伝 ある女の一生 終 2015年07月08日 「ミュラー夫人」「あら、皇妃殿下。どうしたのですか?」「フロラインに会いに来たの」「まぁ陛下まで?」「ミュラー夫人!赤ちゃんはどこ?」「今寝ているところです。あちらの籠に」「寝てるの?」「ええ。だからお静かに」やんちゃな陛下が静かに動いているのが面白い。籠にいる娘をじっと見ている様など侍女泣かせで通っている陛下にはありえない姿である。皇妃殿下と顔を見合わせて笑っている。可愛いわねと言って椅子に座る皇妃殿下を無視してじっと見ているのだからすごい。「ミュラー提督に似てるわ」「私に似るよりそちらのほうがいいわ」「そう?」「父親似の方が幸せになれるって」「そう?」「溺愛してますよ」「確かに可愛い。女の子はいいわね。」「陛下はアクティブなご両親の血を受け継いだのね」「否定できないわ」「お茶は如何?」「ええ。」「陛下は」「…」無視である。珍しいなと思いながら椅子を出していると無言で座る。どうしたのだろうか?「ミュラー夫人」「はい?」「…」「陛下。ケーキは如何?」「ユリアパウラを妃に欲しい」「…」「…」「まるで天使だ」うっとりとした顔でみる。いや、幾つだ?5歳?「まだ早うございます」「許嫁だ」「まだ話したこともないのですよ。性格が合わないと如何するのですか?」「天使なのだから心配ない」「陛下、」「母上も良いですよね」 「良くありません!」「如何してですか!」「貴方が王としてしっかりしてからの話でしょう」そう言うとぐっと言葉を詰まらせる。お可愛い。「夫人」「大きくなりまして口説き落としたら良いのです。」「ちょっ」「良き皇帝になれば良いのだな」「それも一つの要因です。後は」「?」「誠実に好意を伝えたら」「良いの?」今は良いんじゃないかしらと言えば苦笑される。「あ」「あら」「…強ち」「ええ」目を覚ましたユリアパウラを見て真っ赤になる陛下とキラースマイルを浮かべている彼女。ああ、ナイトハルトさんが泣くなと思いながら苦笑するのだ。キラースマイル
銀英伝 銀英伝 ある女の一生 終 2015年07月07日 閣下のご帰還ですと言われたのはユリアパウラを生んで、2週間だった日だった。急な遠征で出産に立ち会えなかったナイトハルトさんは映像ですら彼女の顔を見ていない。会戦の真っ只中なの為、勝利報告の際皇妃殿下に伝えて頂いたのみなのだから。忙しかったのだろう。メールも断片的だ。焦らずおかえりした時にお話ししましょうねと連絡したのが最後だったはず。多分部下の人から連絡は言っているとおもうけど「ファータがお帰りになったわよ」と愛娘を抱きかかえる。少しむずがっているところを見るとお腹がへったらしい。そろそろ母乳の時間かと思いながら侍女にその旨を伝える。飲み始めた瞬間、バタバタと言う足音が聞こえてくる。侍女が困ったような顔をして私を見てどうすればという。タイミングの悪い人だわ、と溜息をついて外にいる憲兵の騎士にお任せしましょうと言う。「マインシャッツ!」「…お帰りなさい。取り敢えず落ち着いて」「嗚呼!無事で良かった!!!」「それはこちらの台詞です。」「私たちのベービは?」「今、おっぱい飲んでるわ」「…」「ナイトハルトさん」ジーと見ていたのでどうしたのと尋ねると小さいと言われる。最初の台詞としては不合格といえばキラキラした顔でそばに行ってもいいですかと尋ねられるので笑ってしまう。遠足か旅行か。とびきり楽しいことのある子供の顔のようねといえばその様なものですと返される。そうか。それはそれで嬉しいなぁ。「髪は私似ですね。」「目は黒いんですよ」「見たいけど今は無理そうだ。」「もう少ししたら大丈夫」「ファータですよ。覚えてください」「ふふふ」「天使だ」「ナイトハルトさん」「んー?」「本当にいい父親になれそうですね」「そうですか?」「ええ。」「貴方との子供ですから」「ふふふ」げっぷをさせると抱いて見ますというと軍服を脱ぐ。金具とかで怪我をさせたら一大事というと。成る程。やっぱり良い父親になれそうだ。「軽い。壊しそうだ」「優しく」「分かっているが、嗚呼。美人だ」「貴方に似て優しい顔をしているわ」「そうかな、君に似て上品な顔をしていると思うけど。」「あらお上手ね」「事実だよ」「ナイトハルトさん」「ん?」「ありがとう」「それはこちらの台詞です。ありがとう」そう言いながらキスをくれるだった。家族が増えました
銀英伝 銀英伝 ある女の一生 終 2015年07月05日 我が娘、ユリアパウラ・ミュラーが生まれて、7日。王宮で産気づいたものだから未だ王宮に留まっているものの早く家に帰りたいと思う。ナイトハルトさんの部下からパウルさんの元部下たちが四六時中やって来るのだから面倒臭い。フェルナーさん曰く仕方がないという事。どこのどの辺りが仕方がないのだと思いつつもやって来る憲兵の人たちを見ていたら言う気が失せた。良く夫と共にいた人ばかりだ。本当に将校には嫌われた人だったけど部下にはそれなりに好かれた人だった。あの、憲兵が花やケーキや産後に良いとされる食べ物を手に入れては日参し遠巻きに見るのだから面白いものだ。ケーキを食べてそう言うと、毒が入っているなんてこれっぽっちも頭に過ぎらない奥様だから未だに皆、慕っているのですよと言われ、納得する。成る程考えつかなかった!「昔から閣下が心配されたままの貴方で感無量です」「だって」「…」「今も皆さんが見張っていてくれているでしょ?夫がいない時とか。特に食事なんか」「気づいていたのですか?」「まぁ、それなりに」「…だから未だに差し入れに来るのですね。」「死んでもなお、守られているわね、私」ええと言ったあとフェルナーさんがユリアパウラを見る。砂色の髪と黒い瞳。ニコリとこの人でも笑えるものかと思いながら、それを指摘すると昔からよく笑ってましたよと言い返される。そう言えばそうだった。「奥様」「ん?」「愛らしい」「うん」「よく、ユリアパウラとつけましたね。」「夫が」「提督がですか?」「物凄く強運で守られそうだからと。」「あー」「多分この子にロクでもない事をしたらミュラー提督に殺されて、あちらでオーベンシュタインに殺されるわね。」「…」「考えただけで恐ろしいわ。」「ええ」すやすやと眠るこの子は知らない事ですけどと言えば頷かれる。「私は」「?」「閣下と奥様を見るのが好きでした」「初耳ね。」「あの閣下が優しくなられる瞬間は貴方の前だけだからです。」「そう?」「ええ」「誇らしい事だわ」「実は」「?」「閣下が生きていらっしゃた間から今まで貴方をお守りするのは閣下の命ではないのですよ」「やっぱり」「え?」「あの人が私心で護衛をつけるとは思わなかったから。…何かあったのかしら?」「いえ」「?」「我々の自主的な護衛なのです」「…は?」「休日返上ですから」「待って!休み返上なの?休めてる???」「ええ。大丈夫ですよ。」「でも、如何して?」「憲兵の女神ですから」「…」すごい顔だと言って笑われる。プクーと頬を膨らますとケラケラ笑って、一息ついて膝をおられる。「忠信を」「フェルナーさん?」「貴方と、愛らしいユリアパウラ様に」「待って」「良いですね」「良くないわ!」「護衛しますから」「貴方は…昔から!いいわ。但し!」「?」「大切な友人としてよ。」「…」「何?」「貴方らしい」「なんとでも言って」「では奥様」「ん?」「憲兵の騎士としての忠信と友情を捧げます」ありがとうと言うと締まらないなぁとぼやかれた。忠信と友情