忍者ブログ
変換なしの雑食夢

ran

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

鳩羽色

『随分と勝手な話ですね。私を捨てて三の姉様と添おうとした男が何を言うのです。守るも唯一もと散々仰った讒言を今生で償うおつもりかしら?』


違うのです。まだ記憶を思い出していない折より私はあの姫様に恐れ多くも懸想していたのです



『前世でもそうおっしゃた貴方は私を裏切ったのよ。己で己の首を掻っ切るまで追い込んだ貴方の言うことをどうやって聞けばいいの?』


しかし、私は貴方を捨てる気など…


『子を成せぬ体にした上。あの離縁状。女としての幸せを奪い母として妻としての喜びを奪った貴方が捨てる気がなかったというのですか』


!?



『浅ましい男!今生においても私を苦しめる忌々しい男!!!さぁ私と同じ苦しみを味わうがいい』



姫、様



『恨み申し上げます』










恨めしそうに姫様が此方を見てたじろぐと目が覚める。…ここは内府の執務室か?息、が苦しい。背筋に冷たい何かが走る。夢、なのだろうか?にしては生々しい。不意に暦を見ると彼岸が近い。成る程。冥府よりお戻り遊ばれたのやもしれん




「やれ、ぬしが転寝とは珍しい…が。如何した?」
「…刑部」
「顔真っ青っすよ!どうしちゃったんですか?」
「左近…?」
「取り敢えず横になりましょう。俺、水を持ってきます」
「三成?」
「姫、様が」
「姫様?…生きてる方ではあるまいに」
「ああ。あの時、首を搔っ切られたそのお姿のまま私の前に現れなさった」
「それは夢よ」
「にしてはあまりにも生々しい」
「…三成」
「己が罪を隠して、あの方と添おうとすること。浅ましくも幸せになろうとしていること自体烏滸がましいのやもしれん」
「と言って姫を」
「ああ。今、別れを告げれば姫様を深く傷つけてしまう。姫様との誓約をまた、果たせぬのは…」
「ひどい熱だ。左近!水より医者を呼べ!」
「手を離す事の出来ない私をお許しください」





鳩羽色






女学校から内府までは些か時間がかかる。制服のまま闊歩するものだから仇目立ちしてしまうしと思う前に体が動く。
三成様が高熱でお倒れ遊ばした。其の報を聞いた瞬間全身の血が凍ってしまったのかと思う程に体が動かなかった





「刑部様」
「やれ姫。有難い」
「三成様は?」
「熱が高くてな水もろくにとれん」
「松」
「着替えは此処に」
「私が側で看病いたしてもよろしいでしょうか?」
「太閤と賢人は?」
「…」
「我が今から行ってくるゆえ。少しまたしゃれ」
「…ですが」
「姫に何かあればそれこそ三成が傷つく。」
「は、い」




そう言って通された部屋は三成様の執務室で奥からは少しだけ唸り声が聞こえる。苦しいのだろう。そばに行きたい。何が出来ずとも。側に




「松」
「止めても無駄みたいですね…私も同室致しますゆえ。ともに怒られましょう」




入りますよと言って入ると簡素な部屋で少しだけ寒い。侍者に火鉢か何か持ってきてくださいとお願いして私は石田様の側に寄る。顔が赤いのに手が冷たい。まだ熱が高くなってしまうかもしれない。
手拭いを濡らして額に置くときつく瞑られた瞳が薄っすらと開く




「姫、さま?」
「申し訳ございません。居ても立っても居られず…お叱りは後で」
「申し訳ございません…」
「え?」
「申し訳、」
「石田様」
「浅ましい私を断罪する許可を」
「?」
「熱で錯乱し始めているみたいです」
「石田様」
「お許しを」
「…」
「姫、さま」
「許します」
「!」
「たとえ貴方が恐ろしい人だと言われようとも。ひとでなしと言われる所業や人の に後ろ指を指されるようなことを行ってしまったとしても…全て私が許します」
「あ…」
「もし貴方に何か言うものがあれば私がやっつけて差し上げます。貴方を傷つけるものがあるのなら私が蹴散らして差し上げます。悩み苦しむことあれば共に悩みます。貴方を生涯支えるのは私の使命です」
「姫様?」
「すべて私が許します。だから」
「…」
「そんなに一人で抱え込まないでください」
「っ」
「まだ違いますが。私は貴方様の妻ではありませぬか」



そう言って頬を撫でて手を繋ぐ。まだ意識は朦朧としているようで宙を何度か見て、再び目を閉じられる。ただ、健やかな寝顔に変わって一安心をする。



「姫様」
「何ですか?」
「本当に石田様が好きですね」
「当たり前です。」
「そうですか」
「姫!」
「あら、半兵衛」
「君ね!」
「お静かに。今落ち着かれたところですから」
「え?」
「本に顔色が」
「半兵衛。今日此処に詰めてもいいかしら?」
「本当に君たちは」
「何方かに今から書くものを調達してきてもらってください」
「あいわかった」
「まぁ君も無理しないように(無理だろうけど)秀吉には僕から言っておくよ」
「お願いします」

拍手

PR