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変換なしの雑食夢

ran

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東雲色

「箏の音?」
「うん。姫が弾いているのだろう?」
「…」
「やれ三成」
「申し訳ありません。こちらが次の作戦立案書です」
「…いいね。異存はないよ。」
「身にあまるお言葉。不肖三成身命をとして当たらせていただきます」
「その勢いで姫と婚約してくればいいのだけどもね」
「其れは」
「残念だね。前の君と同じ様に今と君も後継者ではなく左腕として生きるつもりの様だ」
「…」
「この世は前とは違う。前ならとっくに死んでいる僕ですら元気だし、吉継君も昔とは違う。何故君はそうまで頑ななのだい?」
「姫様は?」
「覚えていないよ。不自然な程に。一度僕も訝しんでみたけれども…ね。全然尻尾を出さないもの。あれで隠しているのなら其れは達人の域だ。あの子にそんな芸当はできないよ。嘘をついたら泣くんだから。きっと忘れてきているのだと思うし。思いたいね」
「そう、ですか」
「だから昔の姫に操立てしなくていいんだよ」
「あの時」
「ん?」
「姫が事切れた時。彼女は私の腕の中においででした。悲しそうに微笑んで。御苦しかったでしょうに。辛かったでしょうに。其れなのに元凶である私に恨み言ひとつ言わずに亡くなりました。あの」
「三成」
「暖かい、柔らかな姫様が冷たく固いものになっていく様をこの腕は忘れられずにいるのです。尊眼を開けられる事もその口唇で言葉を紡がれなくなる事も。」
「そうだね」
「もう、あの様な事になるのは耐えられないのです。如何かお許し下さい」
「まぁまだ急ぐことではないからね。」
「…」





箏を運んでいると自分の非力さがよくわかる。松は悠々と運んでしまうのにと思えばすごい形相でこちらに向かってくる石田様を見つけてしまう。怖い!自分が一兵卒になった気がして戦々恐々してしまう。



「お貸し下さい」
「え?あ。」
「この様な重いもの。お一人で運ばず誰かにお言いつけください。」
「えっと。はい。わかりました」
「…姫様?」
「ありがとうございます」
「っ!」
「でもどうしてここが?」
「半兵衛様と彼方で執務をしておりましたらお姿をお見かけして…」
「し、執務をなさっていたのですか!申し訳ございません!お邪魔をしていたのでは」
「?」
「箏の音も耳障りではありませんでしたか?」
「いえ。」
「あー…もう私は本当に気が利かなくて。本当に見苦しいところばかり見せてしまいます」
「その様な事はありません。」
「何かあったらおっしゃってくださいませ。もう。家族の様にものなのですから」
「家族?!」
「はい。私は兄様以外同腹の兄弟はおりませんので。家族というのには縁がなかったのです。その折、半兵衛がえー…と同じ釜のご飯を食べて同じ屋敷に暮らしたら血の繋がりなどは関係なくて家族だと言ってくれました。すごく嬉しくて。家族はこうやって増やすことも出来るのだなぁって。本当に本当に嬉しくて…あ!ですが石田様がお嫌でしたら」
「いえ」
「では」
「…資格がないのです。私には」
「資格?」
「箏はどちらへ?」
「部屋、に」
「では先に持って行っておきます」
「…ありがとうございます。」







東雲色








「石田様」
「…松殿。その顔は覚えている、か」
「ええ。貴方が禍々しいまでに狂兵になっていく様まで全て」
「そう、か。なれば」
「何故姫様に辛く当たるのです」
「姫様を私に近づけてはならない。貴方が一番理解しているはずだ」
「ええ。ですが…貴方は姫様を守るといい慈しむといい家族になるといいました。唯一の妻として生涯愛するという契りすら何一つ守りませんでした。」
「知っている。」
「何度貴方を恨もうとしたか。何度姫様の後を追おうとしたか。其れを偏にしなかったのは事切れる最期に貴方を殿と呼んだからです」
「…」
「その時まで貴方の唯一でいたいほど貴方を愛していたのですから。貴方が思っているよりずっと。姫様は貴方の妻になれる事を喜び、力ないご自身の事で苦悩なさっていたのです。」
「そんな事も私は知らなかったのだな」
「また今生においていかがする気ですか?」
「私は」
「先ほど姫が泣いておいででした。」
「なっ?!」
「弱き私がいては目障りなのだろうと。今の姫は昔の姫とは違います」
「…」
「家族にならぬつもりなら中途半端な優しさはあの方を傷つけるだけです。もし、」
「?」
「今生においても貴方が姫様を泣かすのであれば私は貴方を許しはしない。どんな事が起きたとしても貴方を殺します」
「心得た」

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