忍者ブログ
変換なしの雑食夢

ran

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

小豆色

「やれ姫。」
「あ、刑部様…で良かったのですか?」
「ん。我はそちらの方が反応しやすい。にしても」
「?」
「まるで親の仇の様な顔をして何を見ているのかと思えば…菓子か」
「ええ。牡丹餅です」
「の様よなぁ。」
「そうなんです」
「で何故牡丹餅を苦虫つぶした顔で睨んでいる?」
「いえ、ですね。侍女たちと話していたらですね。石田様が」
「三成が?」
「すっごく食が細くて。あの半兵衛でもかなり食べるので…最初は味や好き嫌いがあるのではと思ったのですが…どうもそうでもなさそうですし。このままでは倒れてしまうと勝手に心配してしまい。昔、兄様に石田様と徳川様がお餅で喧嘩したのを思い出して。ああ、甘いものならと結論が出たのです」
「ああ。あったなぁ。そんな事が。で、牡丹餅か」
「作って後にはたと。私、あの方に嫌われておりますので…」
「は?」
「作ったもののどうしたものかと。侍女たちに頼めば必ず私の名が出るでしょうし。こういう時に兄様も半兵衛もいませんし…」
「ひひひ。」
「こう言う処が駄目なのでしょうね。お気に触るのだと思います」
「そういう訳では…姫」
「はい?」
「自らお作りなさったといったが」
「ええ。下手の横好きですが」
「ひひっ。なれば我が持って行こう」
「本当ですか?」
「あれの体調管理も我の仕事故礼を言うのはこちらの方よ」
「大変ですね。」
「以前は最終太閤に頼んでおったが。ひひ。時折姫に頼まなくてはな。あれば欲に疎い故睡眠もないがしろにする。生き急ぐなというのだがなぁ」
「…息災でいて下さればいいのですが」
「?!」
「刑部様?」
「いや、何。本にそうだと思っただけよ。では持って行こう」
「はい。お願いします。あっこれは刑部様のです」
「我の?」
「はい。…お嫌いでしたか?」
「いや…」
「無理はなさらないでくださいませ。あの」
「ひひひ。本に姫は良いお子だ」
「まぁ。此れでも一応成人済みなのですよ」
「膨れなさるな。まるで頬がお多福よ」
「もう。」
「では行ってこようかのう」





そう言うといそいそと箱の蓋を閉め、風呂敷を包み始める。姫の紋をあしらった其れ。こう言う処が前の姫より抜けていて愛らしい。賢人曰く、情操教育を見直したらしく、豊臣のために人柱となれなど口が裂けても言わなかったらしい。礼を重んじ作法に精通する。学をよくよく行う。其れで今の姫がある。本当に幸せそうに笑う。純朴で素直。あの姫もそう育てていたらあの様なことにはなるまいにと思案して止める。実に馬鹿げた話だ。己が身に降りかかる不幸と同じ。ただ、三成も姫も其れを厭わぬだけだ。今回も下宿を辞退する口実に使おうと思案したものの無意味なことと知る。根が変わっておらぬのだ。姫も、三成も。ただ、片方は朗らかに片方は弱腰になっているだけだ。




「やれ、三成。入るぞ」
「なんだ刑部」
「…また食べぬか。」
「今はいらん。」
「左様か。なれば此れは如何する?」
「何だ其れは」
「さる方がぬしのくわぬ様をいたく心配されてなぁ」
「?」
「此れを我に渡してくれと。」
「…牡丹餅か。左近に与えろ。」
「いいのかえ。」
「何がだ」
「其の紋」
「!」
「御自らお作り遊ばれたものを」
「なっ?!」
「ぬしが食の細いのが心配でいそいそと拵えたものを。良いのだな」
「…」
「我も頂いた。では左近めに持って」
「待て!」
「ん?」
「こちらに渡せ」
「いや何。無理をせずとも」
「刑部!」
「ひひひ。すまぬすまぬ。本にぬしは面白い」
「人を揶揄うな」
「姫が好きなら好きと言って差し上げればよかろう。」
「また傷つけてはいかん」
「左様か」
「…旨い。」
「本に困っておいでであった。ぬしに嫌われていると思っていたからな。昔のままよ」
「だが」
「歪なものが歪なままで続けるより素直になれば活路も開こう。二度と手を離さねば良い話だ」
「貴様だから言うが」
「何」
「私は姫を通してあの頃の姫を見ている。其れはきっと死ぬまで続く。だから」
「其れは今の姫に近づいておらぬ故。今の姫そのものを知らぬのに表面だけ比べてどうする気だ?あの方と根は一緒。姫は姫よ。難しく考えしゃるな。あれはぬしだけの所為ではない。引き金は確かにぬしだったがなぁ。其れに影響する要素が多々ありすぎた。」
「…」
「もうちと大切にしりゃされ。添う添わぬを度外視して。せっかくの縁よ。姫がぬしを嫌うのであればこの様なもの作らぬでなぁ」
「ああ」
「後で礼を考えようなぁ」
「そうだな。…そうしよう」





小豆色






「やれ、姫」
「刑部さ…石田様も?!」
「姫様」
「あ、の!その。私。向こうにいますので」
「お待ちくださいませ」
「っ!」
「す、すいません。その。」
「はい」
「お礼を申し上げたくて」
「刑部様?」
「すまんすまん。ついぽろりと」
「そんな…石田様も申し訳ございません。」
「いえ!その…とても美味しくて」
「は?」
「お礼申し上げます。」
「…」
「手を出し下さいませ」
「え?」
「お気に召すかどうか分かりませんが。」
「髪飾り」
「その美しい御髪によくお似合いかと…姫様?!」
「やれ姫。如何した?」
「なぜお泣きに?お気に入りませんでしたか?私のどこかが恐ろしかった」
「嫌われていると知っておりましたから…食べずに捨てられていると」
「は?」
「すべて食べよったよ。左近にも誰にもやらぬとけち臭く」
「刑部!恐れ多くも姫様が御自らお作り遊ばれたものをあれに渡せると思うか!」
「ひひひ。なぁ。嫌っておらぬよ。ただ、不器用を拗らせているだけよ」
「刑部!」
「本当に、食べてくださりましたか?」
「勿論です」
「嬉しい」
「っ」
「ありがとうございます」
「また、何か作られた折には…是非」
「勿論です!」
「っ」

拍手

PR