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変換なしの雑食夢

ran

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銀英伝

あれから半年。陛下も崩御された。ヒルダとは「未亡人になっちゃたわね。」と時々言う。緩やかな様な慌ただしい様な。ただ、皇帝亡き後の人事は滞りなく済んだらしい。私には関係ないけどといえばキョトンとされた。
ここを去るつもりだった。というより去らざる得ないだろうと。そう言えば今回の人事辞令書を手渡される。


「何これ?」
「あなたの分よ」
「…私の楽しい隠居生活は?」
「何話かしら?」
「宮廷画家と相談役って?私に何相談するの?何もわからないわよ。」
「いいの。貴方はそこにいて今みたいな感じでお茶をしてくれれば」
「…」
「私を見捨てる気?」
「ラインハルト閣下より貴方が怖いわ」


そう言って私は頭を抱える。今頃あの人たちは何してるんだろう?敵味方なく戦ったりしてるのかしらといえばそうかもねと。そこでアルク皇帝閣下が泣くのでお暇する。



「遅いぞ!」
「あー…今日はビッテンフェルト提督を描く日だ」
「嫌そうだな」
「ムサイ」
「どういう意味だ」
「そのままです」



そうかと言って椅子に座る。それ、私のといえば不服そうにソファへ行く。いや、硬い椅子に座って満足しないでよ。そう言いたいけどこの人に何を言ったところで通じないだろう。

「何をしてたらいい?」
「談笑でも」
「誰を相手にだ」
「副官は?」
「置いてきた」
「連れて来てって」
「まぁ貴公聞きたいことがあってな」
「?」




不意に顔を上げる。わざわざあの出来た副官を置いてきたのだかわ相当な理由だろう。


「ミュラー提督とどうだ?」
「やっぱり描くの辞めようかしら」
「どうして」
「あの人が亡くなって半年。再婚する気は毛頭ありません。大体如何してミュラー提督なの?」
「そ、それはだな」



たじろいでいるのでその姿を絵にして差し上げましょうか?といえば不服そうになる。本当にこのひとは…。そう思って鉛筆を滑らす。



「ミュラー提督は高官で武勲もあります。何処ぞ良縁を結ぶ様に皇妃殿下にも言っているのですけどね。」
「皇妃は何と?」
「意中の者が居るからほっとく様にと」
「そ、そうか」
「だから、ビッテンフェルト提督もほっておいて差し上げましょう」
「…だがな」
「大体貴方も未婚でしょう?早く相手を見つけて」
「ぐ」
「この手のネタで女に言い勝てると思ったら大きな間違いですよ。」
「分かっている。後だ」


まだ有るのですが?言うと今何処に住んでいるのだと聴かれるので横の部屋を指す。帰ると嫌でも思い出してしまう為、何よりも墓が近いのだ。公の夜泣きの手伝いも出来るしと言えばゆっくりとうなづかれる。それが余りに不穏で夜這いに来たら高くつきますよとだけ伝えると何故か憤慨される。理由は正々堂々と夜這いするから姑息な手は使わないだそうだ。あいも変わらず面白い人だと思う。


「私は変わっているけど貴方はズレているわね。」
「どういう意味だ」
「そのままです。まあまあかなぁ?」
「ん?」
「此れ如何する気ですか?」
「自室に飾る。貴公の絵は魔除けになるからな」
「そんな用途?!」
「嫌な奴がすごすごと帰ると」
「なんか怖いなぁ」
「良いだろう?それだけ雄々しくかけているということだ」
「…」
「如何した?」
「いや、貴方に抛められるとは」
「?」
「貴方のそういうところは良いと思うのですがね」



そう言って鉛筆を置く。
今は陛下の絵を描かないといけないかわ少し待っていてくださいねと言えばドアをノックする音が聞こえる。今日もいらっしゃったのかしらとビッテンフェルト提督に開けてきて欲しいと言う。両手を見せて。さすがに真っ黒なそれを見せたら従ってくれた。今から茶を淹れるし。お茶に誘おうかなと密かに思う。

「ビッテンフェルト提督?!」
「ミュラー提督。」
「肖像画のデッサンです。今ひと段落つきましたからお茶します?」
「宜しければ」
「俺は帰る」
「なにを言ってんですか?まだ描かないといけないのに!」
「だ、だがな」
「良いではないですか。」
「すまん」


誰に謝ってんだと思いながらテーブルにティーセットを置く。お菓子は食べるのかなぁと思いながら取り敢えず置いておく。


「コーヒーはないのか」
「みんなそういいますね。」
「夫人は御嫌いなのですか?」
「飲めないんです。昔から」
「そう、ですか」
「飲みます?コーヒーが良いなら持ってきてもらいますが」
「いや、たまにはいい」
「この間、ヘル ユリアンと話す機会がありまして。彼は無類の紅茶好きだったな。」
「あら良い趣味だわ」
「その時少しだけ教えてもらって、此れを」
「?」
「夫人にと思いまして、その」
「わっ!こんな高いお茶。どうしたんですか?」
「おいしいお茶らしいです。良かったら」
「本当に…。この間も頂いたばかりで申し訳ないです。」
「此の間?」
「ええ。よく顔を出して下さるんですよ。」
「いや、その」
「余り無理をなさいませんように。只でさえ忙しいのですから」
「…貴方に会えれば大丈夫です」


そう言って微笑まれるものだから、私も微笑み返す。



「貴方に想われる人は幸せですね。」
「は?!」
「でもあまり私を相手にすると勘違いされてしまいますよ」
「「え?」」



そう言ってお茶の葉を手に取る。これで入れてきますねと言えば返事がない。ビッテンフェルト提督に至っては珍しく憐憫の眼差しでミュラー提督を見つめている。ああいう表情も出来たのねと思いながら嬉々として水屋に向かうのだった




黒い服のワルツ

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