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変換なしの雑食夢

ran

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銀英伝

本当に嫌になる程いつも通りだった。
朝起きてパウルさんが隣にいて。閣下の容態の話をして。産まれてきた可愛らしいアレク公の話をして。いつかは私も母親になりたいと言ったのだ。そうだなと言わず無理だとも言わず、お前に似たらやかましく泣くのだろうなと淡々と言っていたのに。これはないんじゃないか?私は他の誰でもなく。貴方の子供が欲しかったのよ。


「泣く、な」
「泣くわよ。」



爆破に巻き込まれたと聞いた時、心臓が止まるかと思った。側近の方が連れて行ってくれる間、何かの間違いであってほしいと何度も祈った。けど、貴方は素人めにみてもこと切れる寸前でベッドに横たわっている。


「パウルさん」
「…」
「ねぇ、何か喋って」
「…部屋」
「部屋?家の貴方の部屋?」


コクリと頷いて手が伸びてくる。
愛しい手。誰よりも愛しく何よりも大切なパウルさんの手。
いつもの様に強く握り返してこない。私の頬に手を置いて両手で包むと少し困った様な顔をしてそして笑った。


「す、」
「?」
「き」
「パ」
「追う、」
「あなた…」
「な」
「ん」
「たの、んだ」


そう言うと力が抜ける。どんなに繋ぎ止めてもどんなに泣いてももう貴方は帰ってこない。


「死を閣下には秘匿にと」
「わかってる」
「葬儀もうち内で」
「ん」
「最期まで御心配していました」
「王朝を、でしょ?」
「…」
「この人らしくて。」
「夫人」
「ごめんなさい。一人にして」
「ですが」
「追ったりはしない。彼の人に言われているから」
「…」
「また笑って閣下に会いに行かないと。」
「はい」
「でも今日は無理。ちゃんと立ち直るから、お願い、します」



かちゃりと部屋を出て行った事を確認して私は泣いた。
声を出さずに、泣いた。何回泣いたかわからない。もうこのまま死んでしまえたらどんなに楽だろう。
汚れた顔を拭いて彼の顔を見る。悔しいけどいつ寝ている姿のままだ。



「好きよ。大好き」


帰ってこない返事。もう二度と彼の声は聞けないのだろう。暖かな手も何もかも。私は全部を失ってしまったのだ。



唯一残ったのは金色の指輪。ドレスとこれと。貴方からもらった目に見えるものはこの2つだけだけれども。見えないものは数え切れないほどある。



「ありがとう。私を愛してくれて。」


そう言って私は彼の唇にキスを落とす。
いつもとは違う冷たさにまた泣いてしまうとわかっていても。


せずにはいられなかったのだ。



深淵を覗く

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