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変換なしの雑食夢

ran

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蛍火

前世って信じる?という雑渡さんの顔が信じられない程真面目で驚く。私越しに見ている人。きっと雑渡さんが一番好きな人を聞き出すために残ったのにと心のどこかで思ったものの怒るに怒れない。そんな顔ではない。 答如何でこの恋に終止符を打つつもりだ。
産まれて、ずっと雑渡さんが好きだ。小学校の時には父さんにも母さんにも雑渡さん以外と結婚するつもりないと言っていたくらいだから筋金入りだと思う。 芸能人のイケメンでもなければ隣の席のモテ男でもなく、このだらしなく背広を着こなして悪いことをする、雑渡さんが好きなのだ。涙が出るほどに。雑渡さんも優しい。山本さん曰く、私のこと以外は人でなしらしい。優しさなんてある男じゃない。そう言って私の頭を撫でてくれた、その言葉に騙されたのかもしれない。父の側近だから。ただそれだけかもしれない。そう思ってしまって、綺麗な人と歩いていたその姿を見た瞬間から疑いは確信になって、幸せは不幸に変わる。 だから断ち切らないといけないのだ。そう、思っていたのに

「前世の恋人?」
「そう」
「で、私が勝手に死んじゃったから」
「土葬が主流な時代に火葬させたからね。私なんて死に顔見れなかったし、なにより全部燃やすしね。本当に綺麗さっぱり君がいなくなった時の私の気持ちわかる?」
「知らないです。」
「狂うに狂えなくて。まぁ、人でなしだったからみんなにはわかんなかったかも?」
「じゃあ今と変わりませんね。」
「…ねぇ。それやめて」
「?」
「敬語」
「…」
「今も、昔も。君ほど愛した女はいないよ。産まれた時からの付き合いはどっちも同じだけど、愛しさは増したもんね。号泣してみんなドン引きさせたし。どんどん綺麗になっていって、他の男のとこに走って行かれたらどうしようって思ってたし。なに、より。」
「雑渡さん」
「また、君が」
「泣かないで」
「私の前からいなくなったら、その時」
「泣かないで」

自他共に認める人でなしの涙はこんなにも美しいのか?ポロポロとこぼれるそれにキスを落として抱きしめる。頭を撫でてやると背中に腕を回される。草臥れた背広はタバコとコロンの匂いがする。


「モテる癖に」
「うん。」
「否定して」
「いやだって。飲み屋のお姉ちゃんにはモテるよね。地位的にも、財布的にも」
「…」
「凄く疑ってるのがわかるわぁ。でもね、向こうも遊びかどうかくらいわかるし」
「朽ちろ!」
「口悪いねぇ。」
「雑渡さんは私越しに見てる昔の私が好きなんだよ。」
「ん?」
「愛情じゃなくて、執着だよ。」
「否定しないけど、違うね。」
「…」
「姫は裸馬に乗って敵を倒す人だったし、私は…まぁ変わりないか。人でなしな時代に見合った仕事してたかね。決して結ばれない、普通に愛してやることなんてできないもの。そんな中、二人っきりになるとあどけない女の子になる姫があの時の私はなによりも誇らしかったし愛していたよ。ただ、ね。それは昔の私たちの話だから。」
「…」
「今の私は、素直に可愛く育つ君が好き。恐る恐るここに来て私の名前を呼んで、甘い物頬張る君が好きだよ。」
「なんか慣れてる」
「慣れてないから。おじさんのことどう思ってんの?」
「高坂さんみたいな女の敵」
「…あいつと一緒かよ」


そう言うと顔を肩口に埋められる。あいつと一緒は嫌だなぁと言っている辺り本気だろう。本気で嫌がっている。

「ねぇ」
「ん?」
「今の私が間違いなく好きって言い切れる」
「うん」
「…返事が軽い」
「あのさ」
「?」
「嬢が見てる面は私の一番綺麗なところだからわかんないかもしれないけど、私が義理や人情に流されると思う?」
「…」
「悪いけどそこまで甘い男じゃないよ。昔の執着だけで一人の女に満足するわけない…ああ、違うから!泣かないでよ」
「満足してないからぁ」
「違うから!そう言うと斜め上の解釈やめて!!!」
「…」
「っていうか信じてる?」
「前世のくだりは…正直」
「まぁ逆ならそうだもんね。」
「でも今の人生の中でこんなに真面目な雑渡さんは初めて見た、から。信じたい」
「うん」
「私は雑渡さんが凄く好き。」
「本当に?」
「…」
「に、睨まないでよ」
「死ね」
「直接的?!」
「じゃないとこんなちゃらんぽらんな男を選ばないよ!」
「…褒めてる?」


蛍火



「付き合うなら結婚前提だよ」
「重い」
「なにそれ。」
「けけけけけけけ結婚だなんて」
「ん?」
「…余裕綽々なのがムカつく」
「何か言った?」
「…」
「嬢?」
「好きとは言ったけど雑渡さんのものになるとは言ってないよね」
「…は?」
「と言うわけで」
「ちょっ、待って!なに、え?!」

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