落ち着かない三成 1 落ち着かない三成 2016年06月20日 「左馬とは懇ろのご様子ですね」「…は?」「?」「何故、」「以前より知っておりましたが…」「?!」美しい小姓と懇ろなのですねと言えば殿様の目がまん丸に見開かれるので、逆に驚いてしまう。冷静な方だからまさかこんなに狼狽されるとは思いもしなかった。別におかしい事は言っていない。男色は普通だし、高貴だとも言われているわけだ。女の私から見ても、左馬は美しいし文武両道だ。旦那様の若衆にするのに何の不服もない。逆に私は綺麗でも美しいわけでもない。家と家との繋がりで父上と旦那様の上司である竹中様との話し合いで決まっただけだ。その程度の間柄だから寵愛されている訳でもなく、1日一度程度。何らかの形でお会いしているだけなのだ。「席を、外す」「え?ああ。はい」「…」「?」「失礼する」地雷を踏んだのかもしれない。そう思いつつも冷めていく朝食をじっと見つめる。如何すれば良いのかしら。まぁ、此処は旦那様の私室だし。明日には私は佐和山の城下屋敷に帰るわけだし。少し、大阪の街でも見て回り義父上様や義兄上様。皆のお土産でも買ってこようかしらと腰を上げる。「奥方様?」「少し、大阪の町を見て回りたいわ」「それは…」「いけない事なのかしら?」「殿様の御許可を頂いておりませんから」「そう…では私は此処で控えておけば良いのかしら?」「い、いえ!その様な事はありません!!!」「大阪城も勝手に歩けませんし。…歩いて良いところはこの二ヶ月で行き尽くしました。」「そ、そうで御座いましたね。殿様は大変御忙しい方ですから…奥方様の御相手は中々難しいのです。」「?」「女人だけで歩ける場所は限られておりますし…えっと。草子!草子でも御読み遊ばされたら如何でしょうか」「はぁ…」「誰かあるか!奥方様は大変御暇にされてある。草子を持って参り…奥方様?!如何致しましたか?」「やはり部屋で休みます。お休みなさい」「え?!あの!しかし」もう面倒臭い。面倒くさすぎて席を立つと今回の滞在で使わさせて頂いている部屋に帰ろうとする。この道中で旦那様と左馬の関係を知ったわけだけれども。まぁ忘れた頃にやってきては私を抱いてそのまま居なくなる殿様だからいつかは側室を置かれるのだろうなぁとは思っていたからあまり悲しくはない。そんなものだと思いながら休む支度をしよう。明日はかなり歩かなければならないし、逆に都合が良いわ。「寝、るのですか?先ほど起きたばかりですよ」「良いでしょう?明日はかなり歩かなければならないし」「そうでございますが…殿様と御過ごし遊ばなくて良いのですか?これからは中々お会いできませんよ」「あの方は大変御忙しい方ですから。」「そうだとしても…」「私などに時間を割いていただく事は出来ません。あなた達も少しお休みなさい。明日はかなり歩かなければいけませんよ」「…わかりました。」小袖を脱いで手渡すと渋々ながら受け取ってくれる。皆様にと言って書いておいた文を渡して私が出て行った後お渡ししてねと言いながら布団へ入っていく。眠たくは、ないのだ。ただ、読み続けた草子も見続けた庭もこの部屋も煩わしくていけない。瞳を閉じて寝たふりをする。がやがやと聞こえる人の動きが耳にたつ。一層のこと耳栓でもすれば良かった。落ち着かない三成結局寝てしまったらしい。夜に目を覚まして失敗したなと嘆いてみる。仕方がない。寝直すかと瞳を閉じると外から声が聞こえる。「やれ、寝ておられるのか?」「ええ」「嘘、ではないな」「先ほどは確かに」「左様か…」「っち!」「やれ三成」「何もしない女が何故早々に寝るのだ!」「口が過ぎよう。落ち着きゃれ」「明日、佐和山に立ちます故」「昼間も寝ていた!まさか」「お身体は元気であられます」「少し日延べをしたら如何か?この様に寝続けらるるのもちとおかしい」「ですが…」「そ、そうだ!何日か先延ばしにして医師に診てもらえ!も、し何かあれば」「何か、でございますが?」「病を得ていれば困る!」「ひひひ、病を得ても郷に返せぬかえせぬ」「なっ!」「それは…どういう意味で御座いましょうか?奥方様ではお気に召されないと」「はてさて…それは」「私は元気でございますよ」「「?!!???!?!?」」「申し訳ございません。おやすみ中でございましたのに」「いいえ。良いのですよ。」「お、奥」「明日佐和山に立ちます」「あ、だが」「出立は早う御座いますから、今此処でご挨拶させていただきます」「日延べをしたら」「御息災であられます様。彼方では義父上様と義兄上様の言うことをよく聞いて仕えます故。ではお休みなさい」「?!まっ…おい!行ってしまった!!!」「我に言うな我に。」「っち!」「中々もってなかなかよの」 PR