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変換なしの雑食夢

ran

片思い男とクラッシャー女 5

〈寝てるか?〉
というメールを見て私は笑う。寝てないよと返せばドアが開く音がする。家の前まで来て律儀な人だ。見た目と態度とは正反対の紳士さを持ち合わせている人だわ。




「仕事中か?」
「ええ。試合帰り?」
「ああ」
「お風呂用意してくるわ」
「自分でする」
「うちのは混合栓じゃないから温度難しいわよ?休んでて。すぐ用意できるから」
「すまん」
「丁度やめようと思ってたところだったし。構わないわ」
「葵」
「ん?」
「勝ったとかきかねぇな」
「聞いたほうが良いの?」
「そりゃ」
「勝った?」
「3位」
「そう」
「それだけかよ」
「だって私が何言っても気に入らないと思うよ?」
「あ?」
「慰めも激励も。あなたにはまだ必要無さそうだもの」
「そうかよ」
「ええ」
「腹減った」
「何か作るね」
「明日また来ても良いか?」
「客間で寝てくれても良いわよ」
「は?」
「何?」
「いや…お前。良いのか?」
「?」
「俺が泊まるんだぞ」
「ふふ」
「何だよ」
「本当に、紳士ね」
「…笑っていうなよ」
「そういうところ好きよ」
「葵」
「な、っん!」





ちっちぇーなと不届きなセリフを吐くものだから私は舌打ちをする。ファーストキスを奪っておいてそのセリフはあり得ない。




「は?」
「何?」
「初めてかよ」
「なんか文句ある?」
「…」
「絶句しないでよ。むかつくわ」
「葵」
「何!」
「好きだ」
「…其れいったらごまかせるとでも思ってない?」
「葵」
「仙石君?」
「名前で呼べよ」
「嫌よ」
「…このあいだの男も呼んでたくせに」
「幼馴染だもの。…ふふふ」
「笑うなよな」
「みんなの前では暴君なのに」
「んだよ」
「可愛い」
「っち!」
「要くん」
「?!っん!」
「ふふふ」
「おま?!」
「可愛い」
「…ぜってぇ鳴かす」
「初めてだから優しくしてほしいかな」
「悪女かよ」
「プレイボーイが何言ってるのよ」
「葵」
「?」
「飯も風呂も後からだ。寝室どこだよ。運ぶ」
「あら優しい」
「理性が持ってる間に言えよ?じゃねぇと」
「あっちですよ。要くん」







片思い男とクラッシャー女








グカーという盛大な鼾で目が醒める。ギュウギュウと抱きしめてくれたせいで背中が痛い。寝返りくらいうたせてほしいものだ。と思いながら手を噛んでやる。



「ん…」
「そっち向きたい」
「きゃ!大胆!」
「そういうの良いから」
「ちぇっ。ノリが悪りぃな」
「要くん」
「んー?」
「(機嫌良いなぁ)朝ごはん作ってるくるわ」
「もうちょっと良いだろ?」
「お腹空かないの?」
「今はな。」
「ふーん」
「ピロートーク楽しめよ」
「何其れ?」
「セックスした後の会話」
「初めてだからわからないわ。」
「くくく」
「何?」
「照れてる」
「当たり前よ。要ちゃんは嬉しそうね」
「当たり前だ」
「8年越しに漸く手に入れたんだからな」

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