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変換なしの雑食夢

ran

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片思いの三成 4

「何をしている?」
「い、や。奥に、と」
「いつもいつも買っては渡せぬ終いよな」
「言うな…」
「無欲で欲しいものがはっきりしている割には…側が増えるばかりよな」
「…」
「妹御は全然似ておらぬなぁ。顔だけよ。」
「はぁ」
「これを預かった。」
「奥にか?!」
「側によな。これは産着。妹御には文と侍女を」
「侍女だと?!あれの周りは如何なる?!」
「致し方ない。里に返されるのが普通故。大体一年の殆どを大阪と戦場にいる主の室は佐和山ではなく大阪屋敷の方になるのを分かっているのか?」
「?!」
「いやはや。主は糞真面目というか馬鹿というか…」
「私の室は奥だけだ!」
「左様か。主には薬と菓子を。本にできた女子よ。泣きもせずに居るわ」
「…」
「ヒヒヒッ」







殿のお帰りらしく城が俄かに活気付く。私は如何したものかと思いながら門まで行くと騎乗した殿が見えてきて一礼すると顔を顰められる。まだ居たのかと言わんばかりに。よく顔に出る人だ。と苦笑していると左近様に手を振られる。相も変わらず、明るい方だ。




「奥方様ぁ!」
「左近様。お帰りなさい。」
「只今帰り、ぶへら!」
「ヒヒヒッ」
「大谷様もおかえりなさいませ。」
「元気そうと言いたいが。如何した?」
「?」
「顔色悪いっすよ」
「あら?そうですか」
「熱が…ないか。」
「それで…」
「「?」」
「殿のお顔が。」
「あ、ああ。それはのう。」
「お、俺。無事かなぁ。」
「死なぬようになぁ」
「刑部さん?!」
「後で部屋に行くのはやめておきます。どうぞよろしくお伝えくださいませ。あと」
「部屋も言っておくが…良いのか?」
「変わりましたけど以外と心地よいものですよ。」
「左様か」
「部屋って…三成様の近くでしたよね?手狭になったんすか?」
「逆よ逆」
「こちらの側室も懐妊いたしましたから。部屋が手狭になってしまいましてね。私の部屋も使ってもらうことにしたのですよ。」
「は?!なら奥方様は?」
「西の離れが空いていましたから。そこに。」
「彼処は暗い故やはり東の離れの方が」
「彼処は若様に。本当は城下の下屋敷と思っていたのですが大谷様にもこちらの方にも大反対されて…」
「それはなぁ。主は格式とかに疎い故…どこの国に下屋敷に室を入れるものか」
「名だけですから…っと」
「奥方様?!」
「大事ないか?やはり医師に」
「大袈裟ですわ。大丈夫。少し横になれば治るものですから」
「だけど…刑部さん」
「一応なぁ」
「ふふふ。長の旅の後私事にお手を煩わせるのは些か。ほらお休みになって。お湯を用意させていますから」
「ぬ…ん」
「何かあったら言ってくださいよ?」
「はいはい。」






こちらを心配げに見つつも2人は行ってしまう。手を振って私は一息をつく。お湯と食事の支度と。後は皆に任しておけばいい。側には挨拶しておいたし、少し休もうかと思いながら部屋に行く。
すると、なぜか部屋の前が騒がしい。如何したものかと思っていたら殿が居て驚いてしまう。




「殿?」
「何故こちらにいる?!」
「文に書いた通りです」
「文に?」
「大谷様に」
「あ、ああ。そう言えば」
「…私の荷物を出したのですか?」
「あ、ああ」
「打ち出されるのなれば御心替わりですね」
「は?」
「…里に帰る支度を致します。」
「な?!待て!!!」
「?」
「誰も帰れとは」
「ですが、それもこれも嫁入り支度でございます。それを壊すのですから」
「は?え!?」
「さて、と。片付け致します。誰か。長持を」
「ま、待て」
「殿も。皆様も。屋敷に食事を用意しておりますので。お体お休みさせてくださいませ」
「奥!なっ?!」
「…申し訳ありません」
「な、何故泣く?!」
「…これは母から頂いたものです。」
「あ…」
「形ある物はいつかはなくなるものですから。気になさらないで」
「お、く」
「さぁ、早く。殿が居ないと皆食事が出来ませんわ」
「…すまない」
「ふふふ。それでは」







片思いの三成 4











『辛いことがあっても辛抱しなさい。恐ろしい方と聞いておりますから…このお守りを』




犬の陶器で出来たお守りは粉々に砕けていて今の私のようねと笑ってしまった。父様母様にご迷惑をおかけしていると改めて思い知らされる。
父様の文には私を哀れんで早く帰ってくるようにと書かれていた。外聞的には恐ろしい武将だが家族には優しい面もあった。御怒りしていたのが飼い殺しになっている今の現状は憐れみの情に触れるらしい。帰ってきなさいという言葉をそのまま聞いていいものか否かわからないけども。今の状態は帰らざる得れない。




「父様。母様」





ふらりと立ち上がる。そして私は歩き始める。



もう此処にはいられない。居てはならないのだ。

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