黒百合 戦国 三成 終 2015年12月18日 「つい、殿?」「は、い」「貴方の肌を見ることなく三成はいなくなったのか…」「いわ、ないで。」「うつく、しい」「早く、終わって。」「つれないな」「ん」「貴方は何も心配しなくて良い此処に居れば何も恐ろしい事はない」「は、い」良い子だと言って私を撫でる手は無骨で傷だらけだ。あの、細い美しい手ではない。三成様と心で反芻する。ちいと私を慈しんでくれる声は聞こえない。ついと私を誑かす声が此処には満ちている。あの日、あの人が死に豊臣が倒れたといったあの日。城内にあったのは葵の紋ただ、一つだった。そしてこの柔らかな監獄で私は人形のように生きている。この男の目的はわからない。伯父上や半兵衛様を屠ったのがこの男か否かもわからない。ただ確かなのは生死を別しても私から三成様を奪ったのはこの男の狂気だ。「お前を抱いて早2ヶ月。よく、孕んでくれた」「…子を成せばお役御免でしたのに、ね」「つれないことを言うな。ああ待ち遠しい。」「意外と早いかもしれませんよ」「ん?」「母も祖母も早産だったそうですから」「?!なら産衣の支度を急がさないとな」私はどうなっても良い。ただ、この子だけは生み育てないといけない。私の愛したただ、一人の方の子なのだから。どんなことがあっても産み落とさなくてはならない。誰を欺いても、誰に蔑まれても。今は生きてこの子を、この子だけを産まないとならない。「貴方はわしを叩いたことがあったな」「ええ。でも昔の話ですわ」「それ、でも。わしはあの時より貴方が欲しくて欲しくてたまらなかった。」「…」「此処には私と忠勝しか来ない。貴方は」「家康様?」「わしだけのつい殿になればいい」「っ?!」くくくと笑うこの男は狂っている。やけに不可視な不安は此処にあったのだろう。そう思いながら私の腹を撫でる男をみつめるのだった黒百合「忠勝様?」「…」「食事、ですか?」「…」「ありがとうございます。ですが悪阻がひどくて」「?!」「水は飲めておりますから。ああ、そうだ。家康様は進軍ですか?」「…」「申し訳ありません。私のようなもののせいで貴方のような忠臣で武に長けた方を戦さ場に馳せ参じさせれないのは心苦しい限りです」「…」「子のことですか?まだわかりませんが落ち着くまで大人しくしておくようにと家康様の御下知です」「…」「少し横になっても?ご無礼をお許しください」「…」「正室は築山様が。私は元々農民ですから。徳川の名を貶めるわけには」「…」「ふふふ。あら?」「?」「向こうに人影が…」「!」「気のせいでしたね。…忠勝様」「?」「私はどのようなことをしてもこの子を守らなくてはなりません。大層な身分より、その事を案じているとお伝えください」「…」 PR