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変換なしの雑食夢

ran

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罌粟の花

その日がやって来たのは本当に突然で。婚儀が済んで程なくした頃だった。



「つい殿」
「ん…」
「起きてくれ。つい殿」
「誰?」
「わしだ。ああ。怒らないでくれ。礼を欠いているのはよくわかっている。」
「徳川様?…何かが燃えているのですか?」
「大阪が落ちた。もう此処も時間の問題だ」
「え?」
「先の出兵で秀吉公たちが負けた」
「?!」
「話は後だ。此処から逃げる!さぁ!」
「まっ、てください。伯父上や半兵衛様。大谷様に」






『ちい。すぐ帰る』







「旦那様は?」
「…三成は、もう。」
「っ!」
「だがわからん!一先ず浜松に入る。」
「旦那様…」
「っち。火の回りが早い。つい殿!失礼する」









燃えている此処はどこなのかと思案したところで結論は変わらない。あの人が死んだ。死んで、しまったのだ。






「…」
「忠勝!」












罌粟の花






「う、」
「起きられたか?」
「っ?!」
「急に起きるな。あれから丸一日寝続けていたのだからな」
「徳川様」
「豊臣との盟約で貴方を保護する。此処は浜松城の奥の奥。滅多なことは起きんよ」
「三成様は?」
「大敗と聞いている。三成が秀吉公亡き後生きているとは思えないな。」
「そう、ですか」
「ああ」
「誰が、」
「わからんのだ。」
「?!」
「わしは留守居だったせいでな。奇襲としか考えられん。」
「…」
「泣かないのだな。」
「はい」
「気丈だな」
「…」
「あと、考えていて欲しい」
「?」
「保護という名の下だが長くは続かない。わしは徳川の存続が一番だからな。貴方にこういうことを言うのは躊躇われるが、何の関係のない女となってしまったのだ。故に、家臣がまだ分からん敵に貴方を差し出すと言っても止めるすべはない。だから」
「貴方の側になれと…あの人が死んでいるかわからないのに?」
「だからこそだ。」
「…」
「?」
「良いです。わかりました。側室でも何でもなります。ただ、」
「ただ?」
「私は生娘ではありません。農村の生まれですので三成様とお会いする前に、経験しております。」
「そう、か。でもどうして?」
「貴方がそういうものに価値を見出しているのならと…でもそれはずっと昔の城いあがるまえのはなしです。あの人は私に指一本触れませんでしたから」
「そう、か」
「子が出来たら、縁を結んだと。もう、お許し願えますか?」
「ああ。わしと貴方の子が出来るまでの話だ。心苦しいがこれも貴方を守る為。許してくれ」
「はい」
「つい、殿」
「っ!」
「罪深いわしを、許してくれ」







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