忍者ブログ
変換なしの雑食夢

ran

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

梔子

「…父上はお帰りになるかしら?そうね。貴方は心配しなくても父上が守ってくださいます」



腹を撫でるとお腹を蹴られて思わず笑う。勿論だとあの人が言っているようでおもわず笑ってしまう。
喧騒が酷い。焦げた匂いが近づく。これが真実の戦なのだろう。そう思いながら私は立ち上がる。此処には刃物がない。短刀すら危ないと言って下げられた。恭順の意を込めて過ごしていると断ち切りハサミだけは許された。貴方の着物を御支度したいと言えば早かった。今私のただ一つ。身を守るものだ。袂にそっとしまう。


「ないより、ましね。」




どちらが来たとしても私は無事で済まない気がする。だけれども




『ちい』




あの方がもし生きていてちいと呼んでくださるのならどんなお叱りでも受けよう。殺されても冷たくされてもいい。浅ましく生きてしまった科は償わなければならない。
生きておらず違うものとの戦いならばまた帰ってきてしまう。秘密が、気づかれては困る。
だから出来るだけ平素のままに。戦に怯えていなければいけない。何も知らない無垢な女のままで。




「つい」
「家康、様」
「ふふふ」
「傷だらけではないですか!?包帯を」
「いや、いい。もう長くはない。…貴方の居場所、を吐かすつもり、だろう。だが一つ…貴方に、聞きたい」
「?」
「三成が、生きていると言えば如何する」
「…」
「つい」
「…今は傷の手当を。いや、忠勝様は?」
「死んだ。全て無くなってしまった」
「?!」
「貴方を、手に入れるために。全部。」
「な、にを」
「一緒に死んでくれ。腹の子も。楽土で共に育てよう」
「う、」
「細い首だ」
「かっは」
「今楽に」
「っ!」
「ぐ!!!!!」






急いで距離をとる。手には鋏。血にまみれているそれを私は握りしめたままだ。絶望の目で見ている。それでいい。半年もの間恥辱の中でこの機会を待っていたのだから。私一人ではこの男を倒せない。だから、この時を夢にまで見ていたのたから




「遺言は?」
「…何故?」
「私が愛したのはあの方だから」
「そう、か」
「…」
「くくく。わしの」
「?」
「わしの子を宿してどこに行くつもりだ!!!」
「ふふふ」
「?」
「誰が貴方のこと言いましたか?」
「まさ、か」
「その顔が見たかった。この子を。あの方の子を守るためなら私は道化にでもなんでもなる。恥辱をうけ穢れようとも。」
「…酷い。女だ。」
「ふふふ。もう御休みなさい。」
「つ、い」
「さよなら」












血だまりの中ただ呆然と私は蹲る。終わった、のだろうか。
安らかとは言い難い顔。 業ねと呟いて庭を見る。




「ちい!!!」
「…石田様!」
「馬鹿者」
「っ」
「三成でいいと、言っただろう」
「は…い」
「ちい」
「三成、様」
「泣くな。済まない、遅くなってしまった」
「いいえ、いい、え。貴方が生きていて。私の名を呼んでくださるのなら
それで良いのです」
「…家康のとどめを刺したのか」
「はい」
「…手を出しみろ。」
「っ」
「ゆっくりで良い。」
「…」
「湯あみの支度をさせる。こんな汚れた血に染まり傷付く必要はない。」
「はい」
「子も…よく守ってくれた」
「ですが、私は」
「…」
「貴方様以外の。それもこんなっ」
「落ち着け。ゆっくりで良い。この城には用がない。秀吉様の指揮で灰燼に帰す。」
「伯父上も半兵衛様も生きておられますか?大谷様は?!」
「刑部!」
「っ」
「どのような状態がわからぬと言ってな。控えていた。」
「もう良いか?」
「大谷様…よくご無事で」
「ひひひ。猛獣を二人宥めるのは大変大変。ぬしが無事でよかった。」
「刑部が気づかなければ貴方を馘いていたかもしれんからな」
「?!」
「?」
「やれ三成」
「!私がではない!!!この男がだ!逆上してだな」
「…良いのです。そう言われのには十分なほどの事は」
「やれ違う、違う。三成は愚直というか…ぬしの子にこやつの子があると言った時。普通は腹の子を殺したのかとか言うと思いしゃるなぁなのに」
「刑部!」
「それが如何した!と言い切りよってなぁ。無事ならそれで良いと。ひひひっ。愛されておるなぁ」
「…」
「見るな。いや、そういう意味ではない…刑部」
「ひひひ。では行くかのぅ。もう一人の猛獣を止めなくては太閤が困る故」




そう言うと大谷様は私の頭を撫でる。ほろりと涙が溢れると三成様が困ったような顔をなさって私を抱き上げる。この身躯の何処にこんな力が有るのだろうか。不意にあの男の声が聞こえてくる。
見捨てるのか、と。
元より見ておりませんでしたので捨てるとは言わぬでしょう言えば恨めしそうに笑うのだった





梔子





「つい!」
「伯父上。半兵衛様。ようご無事で」
「君こそ。ああ。三成君との子も無事のようだね。」
「よく気取られず…誤魔化し切った。」
「…はい」
「何はともあれ。本当に無事で…三成君も大谷君も。ありがとう」
「もったいなきお言葉!」
「さぁ帰ろう。とは言ってもだね。」
「?」
「ここからは少し大阪が遠い。竹中の屋敷で見てもらうことになった」
「!?」
「勘違いならしゃるな。いつに無く賢人も舞い上がっておってなぁ言葉が足りぬ足りぬ。帰っても男所帯故。お産の知識の無い物ばかりでもしもがあれば一大事と最初から決まっていたのよ。今回このようなことがあってなぁ。竹中殿始め御家中が早く保護して連れて帰れと矢の催促よ。産後の肥立ちを加味しながら大阪に戻る予定。新しき棟も作って今か今かと待っておる。間引くなどと一抹も考えておらぬから安心しりゃれ」
「…三成様」
「私の子を間引くと?!そんな愚行断じて許すか!」
「何もお聞き遊ばさないのですか」
「あ、ああ!そうか。君こそお産の経験どころか女体について知らなかったね。あのね。子が出来て生まれ方は如何としても再びの出産は月日がかかるものだよ早くて3月。私の姉は半年以上かかっていたかな。だから。そのお腹の子が如何見ても三月以下の子に見えないのでね。間違いなく君と三成君の子だと言えるんだよ。」
「!」
「ひひひ。初々しい。」
「わたし、てっきり」
「本当に今まで心身ともに疲れていたと思う。実家ではないけど気心知れた場所だ。上げ膳据え膳で休みたまえ。お産もその後も大変だからね。ああ。そうだ。三成君も。お目付役は大谷君に頼もうか。砂羽衣殿にも手伝ってもらいたい。乳母は彼女が良いと前々から思っていたんだ。」
「は?」
「心配だからね。良いよね。秀吉」
「ああ」
「後の始末は僕たちに任せて。ああ。お産が始まったら言ってよ。お祖父上は言わないかもしれないからね。」
「…」
「うん!俄然やる気が出てきた!」

拍手

PR