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変換なしの雑食夢

ran

好みではない夫の三成 11

「奥方様」
「しの?」
「文が来ておりますよ」
「私に…吉継様から?」
「ええ。あと殿から」
「そう」
「代読いたしましょうか?」
「お願い」
「では…あら」
「?」
「お二人とも…奥方様。これなら」
「まぁ…紙を無駄にさせてしまったわ」
「ですが」
「?」
「本当にお二人とも奥方様をお思いなのですね」
「それはわからないわ」
「?」
「飽きたらお終いだもの。寵愛は恐ろしいものね。…兄様のような方は居ないわ」
「…あの方は誰にでもお優しい方でしたから。」
「ええ。兄様が怒っている姿なんて見たことなかったもの。少し…徳川様に似ているわ」
「ああ。そうかもしれませんね」
「…」
「奥方様?」
「ねぇ、しの」
「?」
「今の私を見たら兄様はどう思われるかしら?」
「…奥方様」
「復讐の魍鬼とお笑わいになるかしら?」
「いいえ…きっと御先代様も同じ事をなさりますでしょう」
「…ありがとう」
「…」
「お返事をお願いしても」
「…良いのですか?」
「ええ。」






つれぬなぁという台詞が手紙をもらった瞬間に出たのは刑部だった。右筆の字を見た途端興味は失せたらしく、それでも苛立ちながら目を通す理由はあれの目のせいだろう。



「代筆でも無いな」
「ひひひ、本に」
「可愛げの無い」
「左様か?」
「可愛いか?」
「我にはなぁ」
「物好きめ」
「ひひひ」
「10日うちには帰るのだがなぁ…帰りにくいか?」
「さあな」
「本に似た者夫婦よな」
「?」
「幼い折の主に似ておる」
「知らん!」
「の割には最速よな」
「早く終わらせて秀吉様の元へ帰るだけだ!」
「為れば我が先におうてもよいか?」
「?!」
「ひひひ。冗談よじょうだん」
「す、好きにしろ!」
「つれぬなぁ」
「私は…あれの夫だが心まではもらって居ない」
「我とて同じよ」
「大切と言われただろう」
「はてさて。」
「私とは違う」
「主の初恋は手強い、てごわい」
「初恋?」
「あれは何も信じて居らぬようにして、実のところ主と同じ寂しがりやよ」
「…」
「始めが酷いゆえ…もうちとよりそりゃれ」
「だ、が」
「我と主で愛でればよかろ?」
「ぐ…」
「我とて手放す気は無い、奪う気もない」
「!」
「我は主と共によ」
「そう、か」
「そうよ」





好みではない夫の三成







あれはあの男に向けるように私に笑うのだろうかと思案して、絶望する。
例え刑部には笑いかけても私には笑いかけない。それは今までの行いのせいだから私が全て悪いのだがいたたまれなくなる上切ない。その理由が初恋なれば、なんと酷い話だ。



何より、あれは私の本質を見抜いている。
遠からぬ間にあれの里を焼き尽くすだろうし、秀吉様のご判断であれの首が必要ならば私は嬉々として差し出すだろう。秀吉様の為ならば、あの細首を叩き斬ることは厭わない己に戦慄を覚えてしまう。しかし、贖うことのできない絶対なのだ。私にとっての秀吉様は。



「明日には帰城よな」
「ああ」
「月はどうしておるか」
「どうせ澄まし顔でいるだろう」
「そうよな」
「怪我はして無いか?」
「我も主も。」
「なら、いい」
「三成?」
「明日はあれの夫の月命日だ」
「…左様か」
「迎えは無いだろう」
「死人に対抗するのは草臥れるな」
「知らん」

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