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変換なしの雑食夢

ran

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日常 8

かぽりと蹄の音がする。陽気に誘われてやってくる睡魔を迎合するようで困るわと思いながら目を擦っていると頭上から視線を感じる。ただ、この方はあまり話はしない。だから褒められたりすると他の方より価値のあるような気がするのだろう。…気、ではないか。ありがたいし、尊い気がするのだ。視線を上げると視線が交わる。目を細められてさも大丈夫かと言っておられるようだから私は笑みで返す。何時もの無言の会話に納得されたようで視線を外され前を見据えられる。私と言えばやはり陽気と治部様の暖かさでやってくる睡魔と戦う羽目になりそうだ。




「…」
「…」
「…あ」
「如何した?」
「あれ」
「桃、か」
「はい。春でございますね」
「ああ」
「梅園はあまり咲いてなくて残念でしたね」
「つまらなかったか?」
「いいえ。楽しかったです。満開の花も好きで御座いますが数輪の花も幼くて好きで御座いますよ」
「そうか」
「あの後茶会でご覧になりましたか?」
「いや」
「勿体無い。美しいものですよ」
「見ていないとは言っていない」
「?」
「あの後咲いたのだろう。床にさしてくれていたな」
「あら」
「それ位は気がつく」
「ふふふ。茶会の後は御忙しかったですものね。」
「今と変わらん。が、順は悪かったな」
「桜が咲きましたらまた宴があると聞き及んでおりまする」
「そうか」
「?」
「私はあまり参加しないからな。専ら刑部の役割だ」
「あら。残念ですわ」
「?」
「桜の宴では私が女楽を致しますから。お耳汚しかとは思いますが」
「な!?」
「未婚の侍女が行う習わしがありまして。副官で未婚なのは私だけなのです。もう若いものだけでしていただければいいと思うのですが佐渡様の指名で。若いものだけではしまらなかったそうです」
「…それ、は」
「?」
「出ないといけないのか?」
「これもお務めで御座いますので。ふふふ。浅ましい話、若い者は縁談が増えると喜ぶのですよ。」
「な?!」
「治部様?」
「…縁談が」
「?」
「来たら受けるのか?」
「私にでございますか?」
「ああ」
「佐渡様や刑部様が受けるようにとおっしゃれば。以前申しました通り私には実家と呼べる家がありませんからお二人が決めてくださるのです。ありがたいのですが…出来ればこのままがいいので御座いますけど」
「?」
「佐渡様が憧れなのです。」
「そう、か…あの女が…」
「はい」
「…」
「治部様」
「?」
「お口を開けて下さいませ」
「甘い」
「ふふふ。朝あまり召し上がっておられませんでしたでしよ?羊羹を持ってまいりました。」
「礼を言う」
「いえ。共乗りさせていただいておりますもの」
「それと」
「?」
「恐れ多くも、秀吉様のお側に座るよう言付かっている」
「え?」
「花見だ」
「ああ。」
「気が変わった。その日の宴には出る」
「まぁ!」
「…」
「頑張って練習いたしますわ。」
「楽しみにしている」
「はい」
「何を演じる?」
「ふふふ」
「?」
「お楽しみになさって下さい。」
「!」
「きちんとお聴き遊ばされたかお聞きいたしますから」
「そうか」
「…わっ」
「ほう。」
「此方は桃を植えているのですね。ふふふ」
「満開には程遠いが…美しいものだな」
「はい」
「…相模」
「?」
「好きな花木は何だ?」
「私ので御座いますか?」
「ああ」
「梅に桃。杏も好きで御座います」
「実が成るものばかりだな」
「ふふふ」
「私の庭に植えよう。」
「!」
「来年はわからないが…咲き誇るのを共に見るか?」
「はい。是非」
「そうか」
「?」
「いや、何でもない。相模」
「はい」
「寒くはないか?」
「はい。治部様は?」
「お前がいるから。暖かい」
「ふふふ」




日常 8




「佐渡」
「あら、お目覚めですか?」
「三成の夢を見た」
「仲のよろしいことで」
「相模を嫁にもらうと嬉々として帰ってくる夢よ」
「正夢にはなりますまい」
「そうよなぁ」
「きっと道中夫婦のように過ごしても思いも伝えませんでしょう。ああ。焦れったい」
「ひひひ。言うてやるな」




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