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変換なしの雑食夢

ran

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青藤色

「…」
「やれ三成。ここは同盟の。姫傘下の城ぞ。決して短慮を起こすな」
「わかっている」
「左様か。なれば、良いが」
「失礼いたします。石田様、大谷様」
「!」
「ご案内致します」






そう言うとどうぞ草鞋をお履きくださいと侍女が言う。姫様は奥の離れにておやすみ遊場されておりますと言った瞬間ぴりりとした空気が発せられる。奥に反応したのか、姫に反応したのか。わからないが至極わかりやすい男だ。奥というのは客間で一番景色の美しいところですという侍女の言葉はきっと届いていないだろう。




「ぢょうそかべさま」
「ん?」
「ごめんなさい」
「いや良いって。すげぇ声だなぁ。少し寝てろよ」
「ありがとうございます」
「…おうよ。みかん食うか?」
「たべ、ます」
「にしても。ちゃんと食って寝ねーとそりゃあこうなるわな」
「おいし」
「魚はまだ無理か…果物だけじゃ力でねぇしな…」
「もうひとつ。」
「ほれ口開けな」
「あーん」
「ん。手がつめてぇな。火鉢増やすからな。」
「はい」
「ん?来たな」
「失礼いたします。よろしいですか?」
「ああ。通してくれ。すまねぇな。本来俺の方が行かなきゃならねぇが」
「良い良い」
「あんた等が姫さんの迎えか?」
「石田三成と大谷吉継よ。西海の鬼。以後お見知り置きを」
「へーあんたたちが。」
「姫様は!」
「あんまデケェ声出すなって!頭もかなりいてぇはずだからよ。」
「っ」
「ぎょうぶ?じぶ?」
「!!!」
「やれ、姫。迎えに来たが…はてさて。ひどい様よな」
「ふふふ。」
「今すぐ大阪に帰り、ご養生ください」
「あー…そりゃやめたほうがいいな」
「何?!」
「じぶ」
「やめしゃれ。三成。姫に心配かけるでないわ。西海の、理由は?」
「ひでぇ船酔いすんだとよ。来た時も凄惨だった」
「船酔い?」
「ぬしは舟に酔うか…なれば無理に動かさぬほうが良いか」
「な?!」
「太閤と賢人には私的な文を預かっておる。姫をここで療養したいが良いか?」
「ああ。と言うより、動かせねぇのが正しいな」
「のようよの。やれ、そんな辛そうな顔をなさるな。安心して良いからのう。ぬしも働きすぎ故こうなるのよ」
「刑部!」
「落ち着きゃれ。太閤も賢人も姫の体調如何で柔軟にせよと申しておったよ」
「しかし…わかった。我らは今回の血判書を作って秀吉様に献じてくるという大任がある。刑部」
「それも明日にいたそう。我もクタクタよ。姫」
「ん」
「熱が高いな。西海の。姫は何を食された?」
「今は白湯と果物だけだ。重湯も粥も気持ち悪がって食わねぇ」
「ヒヒヒッ。砂糖水でも啜らすか。」
「私は行く。」
「つめてぇな。おい!お前も姫さんの兵だろう」
「私は秀吉様の兵だ。おい女。休息する。案内しろ」
「はい、ただいま」
「じぶ」
「何か」
「いえ…ありがとう」
「…では明日」
「あーあ行っちまった。姫さんも良いのかよ」
「ん?ええ」
「何でかわいく笑うかね…うっし。砂糖水持ってくるわ」
「ありがとうございます」
「良いってことよ」
「…ヒヒヒッ随分好かれたな」
「ありがたいことね。…ふぅ」
「随分と病んだものよ。太閤、賢人共々心配していた。理由が理由故我が言っておく。取り敢えず全快するまでここで療養されよ」
「はやくかえったほうがいいのでしょ?」
「そうだとしても、だ」
「ぎょうぶ」
「ん?」
「じぶにあやまっていたとつたえて。それとけっぱんしょをしたためるから。ここでいい?」
「今はゆるりと休まれよ。大体どんなに早くとも明日まで帰らぬ故。我とて主が心配よ。」
「ありがとう」
「ヒヒヒッ」
「わたしもあにさまのようならよかったのに」
「…それはちと、愛らしさに欠けるなぁ」





青藤色




「…」
「お?いたいた。宴の準備出来てるぜ」
「黙れ。今姫様はお休み中だ。それに私も刑部も姦しいのは好かん」
「そうかい。じゃあ左近っつうのはいいな。」
「他のものにも休息は必要だ。好きにさせて構わない。左近!!!」
「はいー!!!」
「うるさい黙ってこい」
「酷いっすよ。三成様」
「兵の半分は宴に興じても構わんが半分は待機。酒は飲み過ぎるな。節度を守れ。その他は許さない。わかり次第斬首と伝えろ。あとは任せる。行け!」
「はい」
「…信用されてねぇな」
「信用の如何ではない。そういうものだ。」
「へーへー」
「感謝している」
「は?」
「姫様だ。」
「好きでやってる事だ。礼なんていい。大谷は?」
「刑部は今は姫様の横で安ませている。看病していたが寝たからな。…あれも体が弱い。」
「そうか…なぁあんた」
「何だ?」
「昼間と感じが違うな」
「私は私だ」
「姫さんに対する態度だよ。素っ気なかったから嫌々来てんのかと思ってた。飲むか?」
「頂く…私は姫様の御前に侍る事を出来るだけ控えている。ただそれだけだ」
「ふーん」
「私は人の機微がわからない。お心を害されたらいけないのでな。」
「そういうの気にするような小さな器には見えねぇけどな」
「お優しい方だ。私はあの方が幼少の折より兄君であらせられる秀吉様にお仕えしているが…あの方が泣いたところなど一度しか見た事がない。いつも微笑んでおられるような方だ。…長曾我部」
「ん?おいおい!頭上げてくれよ!!!どうしたんだ?」
「ここにあの方がおられる間。あの方を頼む。刺客や禍からあの方を守ってくれ。」
「…あんたいいヤツだな」
「私の事はどうでもいい」
「ん。わかった!任せなって」
「…?」
「ん?」
「魘されておいでだ」
「は?何も聞こえねぇ…まじかよ」
「姫様。私も刑部も側に居りまする。ご安心くださいませ」
「…よく気がついたな」

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