忍者ブログ
変換なしの雑食夢

ran

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

露草色

「少し疲れが出たのでしょう。薬を出しておきます。」
「ありがとうございます、先生」
「姫様も少しはお控え遊ばされませ。女子の遠出でも体が堪えますのにその上開城や同盟の交渉など…寿命を縮めてしまいます」
「私の行く場所は既に半兵衛や刑部に地ならしされた場所ですから。この間の甲斐は良き場所でしたよ。今度温泉に案内して下さるそうです」
「湯治ですか。いいかもしれませんね」
「ですが、私より兄様や半兵衛に刑部に治部。この四人の方が休んでほしいものですが…」
「皆様休息を取る方たちではありませんが」
「中国の平定を行っている最中ですからね。あ、先生」
「何ですか?」
「何日分か頂けますか?明日から四国に参ります」
「…」






ざばんと海の音が聞こえる。けれども私は船旅が会わないらしい。先生に怒られながらも薬を作っていただいたが船酔いで飲む事すらできずにいた。だらしねぇなぁと笑われてしまう。長曾我部元親その方に



「…長曾我部、様」
「良いって。初めての船旅だって聞いたからもしかしてって思ってたんだが…流石豊臣の姫でも海にはてんで弱いらしいな。可愛い嬢ちゃんだぜ。」
「たぶん陸地でもてんで弱いですよ」
「ははは!その通りだな。船着き場に来た時は何かの冗談だと思ったぜ」
「その冗談のような私に皆優しくしてくださいました。お礼申し上げます」
「いや気にすんな。如何だ?困ったことねぇか?」
「いいえ。本当に長曾我部様の軍は素晴らしいですね」
「お、わかるかい?」
「怠けている人が居ませんし、皆様は親切です。何より」
「ん?」
「船酔いすらされないみたい」
「は!ちげぇねぇな」



そう言って豪快に笑われて私の頭を撫でられる。ふふふと眼を細めるもののやはりいけない。船の揺れが厳しい。交渉の場を船上にしなくてよかったと呟けば今ならいい話し合いになりそうだと悪い顔をして笑われる。朗らかで豪快な方。そう思いながらキラキラと光る銀髪を見る



「珍しいかい?」
「?」
「銀の髪」
「いいえ。豊臣に2人いますから」
「へーそうかい」
「ええ。羨ましく思います。」
「そうか?困った事はねぇがよ。助かった事もねぇ。逆に鬼だとか言われるくらいだな」
「それは素敵な鬼がいたものですね」
「やめてくれ。男所帯だから、そういう切り返しに慣れちゃいねぇ」
「ふふふ。」
「あんた、不思議な女だな」
「単身で鬼ヶ島に来る愚かな女と?」
「いや、どっちかというといい女の部類だな」
「初めて言われました」
「いや、さな。あの能面面の毛利が危険を冒してまで奪いたかった女っていうのが気になってな。俺は四国で待つ約束だったんだがよ。きちまった」
「あら」
「竹中や大谷の野郎にいわねぇでくれたら助かる」
「言いませんよ」
「本当か?」
「ええ。先程迄弟君様がいらっしゃいまして貴方様がいるからこの船は揺れないのだと教えてくださりました。逆にこれ以上揺れるのかと戦慄しましたのよ?」
「そりゃあ、死にかけるな」
「いいえ。死んでしまいます。私が死ねば誰が悲しまなくても戦という遺恨がうまれます。それだけは避けたいのです。ふふふ。最悪の事態を回避できたお礼ですわ」
「普通、戦がしたいもんじゃねぇのか?」
「長曾我部様」
「?」
「貴方は私が鬼のように見えますか?」
「は?」
「如何ですか?」
「そりゃあ見えねぇな。あんたは親切で礼儀正しい。優しいし、うちの野郎どもにもすぐ人気者になっちまった。まぁあの豊臣の姫とはおもえねぇぐれぇにお日さんみたいなやつだと思ってるぜ」
「私も」
「は?」
「長曾我部様は皆様から深く敬愛されて慕われておいでです。他家の私にも親切にして下さるし、こうお話ししていても快い方だと。其れこそ海のような方だと思います」
「嬉しいこと言ってくれるぜ」
「ですが、もし私が恐ろしい顔をしていれば貴方様はきっとお戦い遊ばすことでしょう?」
「船酔いの女を?」
「嘘なのではないかとお疑い遊ばすはずです。」
「そりゃあなぁ。」
「私は万民が幸せであってほしいのです。勿論、一人一人を笑わすのは各々の努力によるところが大きい。何でもかんでもは出来ないのです。ただ、戦で家族を土地を全てを失うのは上の度量次第でしょう。上に立つものとしてそれだけのことは守っていきたい。私は兄様はこの国を平定できる力がおありと思っております。」
「ふーん」
「ですが、全てを焼き払った後の民のいない国に何の意味があるのでしょうか。あの方はそれが出来てしまう。全てに遺恨を残すことを厭わずに…それは何としても避けたい。私は、戦の無き世を作る兄様の思想に賛成しております。ただ、その世が来た時、一人でも多い民に安らかな状態で迎えてほしいのです」
「あんた」
「お解りください。戦いの世は哀しきものを増やすだけです。中国は豊かなまま。兵は少し編成いたしませんといけませんがよっぽどのことがない限り、命を奪う事はいたしません。民は何一つ変わらず。ところによっては歓迎していただけました。」
「そうかい」
「上が戦や何かで死んだ後、兵は安定を失います。長曾我部様」
「お、おい!座るなって。すごい顔色になって…」
「お願いでございます。我が豊臣にいらしてくださいませ。兵も民も。貴方様も。安らかな世を共に迎えましょう」
「頭上げてくれ!」
「お願い致します」
「…」
「私はこの船の方たちが好きです。だから死なせたくはない。誰一人として」
「…あんた以外とじゃじゃ馬だな」
「…」
「良いぜ。」
「!」
「但し、あんたのだ」
「は?」
「あんたの旗下なら馳せ参ずる。っていうので如何だ?」
「私は戦に出ませんよ?」
「出なくて良い。俺があんたの盾と剣になってやる」
「!」
「四国は豊臣でも太閤のものでもない。あんたのものだ。あんたが豊臣にいる間は傘下に入る。が、あんたにもしもの事があったら如何によって考える」
「ありがとうございます」
「はぁー。毛利が惚れちまうのも無理ねぇな」
「…」
「毛利の首実検したのか」
「はい」
「そうかい」
「丁重に供養させていただきます。」
「そりゃあなかなかこの世から旅立てねぇな」






露草色







「矢張り、熱が出ましたな」
「吉良、様」
「お休み中申し訳ありませんが、今長曾我部として豊臣に恭順の文を書き認めました。貴方も一筆と思ったのですが」
「書き、ます」
「おいおい!無理すんなって」
「紙と筆を…」
「はい」
「にしても別嬪な奴の字は別嬪だな」
「うふふ。お褒めいただいても何も出ませんよ」
「兄上の字は雄雄しすぎるのです」
「うるせー」
「初…」
「「!?」」
「文を。」
「御意。お言伝は」
「過労だから半兵衛のせいだと恨みごとは書きましたよ。ふふふ。衣食を長曾我部様が恙無くご用意してくださっていますのでよろしくと言っておいてください」
「は」
「…忍びか?」
「ああ。すいません。違うのです」
「忍びではない?」
「一緒に来ていた侍女です。私の生死だけ見届けて文を持って行ってくれる。この城の内情とか調べたりはいたしません」
「生死だけ…」
「本当に非力で。死地から実力で脱出など私は無理ですので…申し訳ありませんでした」
「あん?」
「お嫌でしたか?」
「そう見えるか」
「はい…ならば私の侍女をすべてお返ししてくださっても構いません」
「如何して?」
「それが今の私にできる唯一の誠意なのです」
「くくく。いいって。あんたがそういうのなら俺はあんたをじんじる。ただな」
「!」
「辛くねぇか?」
「辛くありませんよ。私は女子ですが奥に居て知らぬ殿方に嫁いだり人質に差し出されたりするよりもずっと幸せです」
「そう言えば姫君ご結婚は?」
「ふふふ。行き遅れですの」
「許嫁は?」
「いません、が」
「が?」
「昔いました。」

拍手

PR