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変換なしの雑食夢

ran

嫌われるダリューン 4

「またやってしまった」
「別に構わないだろう。」
「姉者は熱を出すとすぐあれですから。いないと泣くしナルサス様ではダメでダリューン様呼ぶんですから」
「知らない…本当に頭が痛い」
「熱を出さないようにすればいいんですよ。適度な休憩と食事を心がけてください」
「そうなんだけど…」
「まぁ、ダリューンも手馴れたものだったし」
「そ、れ、が。困るのです」
「…ここまで砕けたサクラは珍しいな」
「…姉者の反省会はいつもこんなものでございます」




ベッドの上で頭を抱えていると殿下に笑われる。が、今は致し方ないと思いたい。また、やってしまった。私がダリューン殿を兄にぃと呼び妹のように可愛がられていたという暗黒時代を彷彿とさせてしまう行いをまた、やってしまった。




「兄にぃか」
「殿下」
「ぶっ!」
「笑わないでくださいませ。かなり悩んでおりますのに」
「いや、いつも冷静なサクラがこうも狼狽えるとは…すまない。つい、な」
「鉄仮面との落差が酷いのですよ。姉者は」
「エラム〜」
「姉者が寝込むたびにこのやり取りです。いい加減成長して下さい」
「そう言っても聞いてくれるエラムが私は好きよ」
「はいはい」
「仲が良いな」
「姉者は集団戦法の師でもありますから…付き合いは長いのです」
「サクラは集団戦法の達人と聞いた」
「達人ではありません。ただ、我が家は悲しいかな単騎で攻めきれる猛者が生まれにくくて、生き延びる為に研鑽を重ねて来ました。父は餓狼将軍と呼ばれましたが万騎長の中では一番単騎としての実力が乏しい人でもありました」
「そうなのか?父君は多くの首を挙げた英雄と聞いていたが」
「全員がダリューン殿の様に怪物ではないのでございます。ですが戦さ場ではその怪物と戦い、勝ちを収めなければなりません。私の行うものはその被害をなるべく減らし、収める。それを特化させたので御座います。強弓がないのなら正確無比な集団の矢を射る。剣が届かなければ最小被害かつ最大の効力を持って我らの剣を届かす。それを日々研鑽しております」
「成る程。…絶対的に被害が出るのも考慮してか?」
「相手によります。ただ、一人として無駄死にはさせませんし手柄は皆のもので御座います。研鑽を怠れば自然と淘汰されてしまいますし集団戦法は連携が要なので処断することもあります。本来なら兵が皆万騎長の実力であれば私の行うものは必要ありませんし我が師が計画を立てるのもやりやすいと思います。が、現実としてそれは不可能で御座います。殿下」
「?」
「良き統治者は最小被害で最大の効果を出し続けなくてはなりません。そうしなければ民は疲弊してしまいます。然し乍ら、被害なく統治することは絶対にできません。我々は勿論。殿下ももうその恩恵を得ております。少しの命を惜しみ多大な被害を出す統治者は慈悲に満ちておりません。ただの無能です。被害と利益のバランス。その見極めができる様になって下さいませ」
「そこの見極めはわかるものなのだろうか」
「きっと。研鑽を重ね良き王であろうとすれば自ずと見えてくるものでございます。現に今の戦いはそれそのもので御座います。我が師は頭の良い人でございますが、人の上に立つ器ではございません」
「姉者」
「彼の方は根っからの策士ですから。王としてはいくつか欠ける。ダリューン殿もそうです。王は頭が良ければいい強ければいいというものではありません。器の大きさです」
「器?」
「他人の才を妬まず受け入れ適材適所に配置する。まずこれができる人は少ないのですよ?王が強ければ強いほど賢ければ賢いほど妬み退けようとするものです。現にあの二人は憂き目にあっております」
「…すまない」
「ああ。違います。批判ではなく…そうですね。ああ」
「サクラ?」
「使うのではなく、遊ばすのですよ。好きなことをするのは一番楽しいですから。殿下の器の中で皆遊ばせてやれば良いのです。居心地が良いほど皆守ろうと思います。集団戦法もその様なところがあります。私のひいお爺様は部下に殺されました」
「?!」
「集団戦法の戦勝を独り占めしたからです。居心地の悪い器は壊されてしまうのです。優秀であればあるほど頭を垂れる相手を値踏みいたします。妬まず、褒め時に叱咤し正当に評価する。殿下はその器がここにいる誰よりも大きいので御座います。…嫌いでございますがラジェンドラ陛下も」
「あれがですが?」
「まぁ嫌いですからね。私も。ですが彼ほど自分を高く売り込む者も少ないでしょうね。彼の方が売り込む相手は自国の民です。ですから信じてはなりませぬよ」
「サクラ」
「はい?」
「体調が戻ってからでいい。そなたの知る集団戦法を教えてはくれないか?」
「殿下がお望みであれば」
「ありがとう」
「熱を出さない様にして下さいよ」
「エラム!」
「まぁ、あれはあれで」
「絶対嫌です!」
「そうか?仲睦まじくて良いと」
「…私にも意地がございます。一兵士として立った時よりダリューン様には甘えないと心に決めております」
「頑なだなぁ」
「『強い妹を持って誇らしい』と褒められた次の日に『弱い女が戦さ場に出るのは目障りだ』と言われたからといって根に持っているのです」
「エラム」
「その話延長線上に婚約を持ってこられて以来ずっとこれです。…姉者もそろそろお許しなさい」
「嫌です!」
「器の小さい」
「私の器は極小です!」
「サクラ…先ほどと言っていることが」
「良いのです!私は狼の群れの中の器であれば。それ以外を入れるつもりはありません!何より!」
「何より?」
「私は軽い男と同じぐらい自分の言に責任を持たない男は嫌いです」
「そうか」
「ナルサス様も?」
「師のしては尊敬しますが男として最低の部類です。アルフリード殿にも言ったのですが…ギーヴ殿やクバート殿のうに分かりやすいとそれはそれで良いんですが」
「良いのか?」
「無視すれば良いだけなので」
「そうか」
「姉者嫁入りはまだ先の様ですね」







嫌われるダリューン







「…」
「…」
「立ち直って下さい」
「ナルサスとダリューンをここまで落ち込ませるのはなかなかできないな」
「二人して大層可愛がったと聞いてますから。」
「そうか」
「師としてナルサス様に妻としてダリューン様にという計画は失敗になりそうですね」

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