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変換なしの雑食夢

ran

大谷兄妹と三成と私 7

いつからこう篭っているのか忘れてしまうほど没頭したのはいつの日か。春が泣かぬし障子の前にこぬところを秋に礼をせねばなるまい。
もう少しだ。もう少しで書き上げられると思った時無遠慮な足音と「出来たかぁ」と呑気な声。暗め…これほどの殺意を感じたことはない。



「開けるぞー!」
「死ね!」
「うげっ?!」





湯呑みを投げて割れる音がする。当たったらしいが浅かったかと舌打ちをしながら書き続ける




「お前?!」
「もう少しで終わる!帰れ!」
「だけど…わかった。帰るわ」
「…」






思いの外足音が普通だったのに苛立ちを感じながら筆を進める。霧散、せずに済んで良かった。





実際はなにも良くなかったのだが。









「やれ、書けた…ひひひ。書けた、書けた」




そう言って大の字になる。一週間で書き上げたのは初めてやもしれぬなぁと思いながら時計を見る。昼を回ったばかりかと思いながらふと思うのだ。何時も気配を消しながらやってくるあれがない。其れどころか割った湯飲みもそのままで。どこか行っておるのかと思案したものの朝食に差し込まれた手紙にはなにも書いていなかった。



「やれ、秋」
「終わったか?」
「ぬしは呼んでおらぬわ」
「そーかいそーかい」
「…にしても。ぬしは無傷よな」
「其れに対しちゃ話があるけどよ。取り敢えず、お前さん。此処は落ち着いて訊けよ」
「?」
「お前さんの投げた湯飲みは秋にぶち当たった」
「…は?」
「ぶち当たった…いでー!!!」
「暗、貴様…」
「お、俺が確かに悪いけど!」
「その独活の大木ごとき体は何のためにある!盾になれ!」
「む、無茶言うなよな!」
「秋は??秋は今どこぞ!」
「毛利の病院。待てってタクシー呼ぶ」
「…三成に連絡を」
「したした。今から向かってるそうだ。春は俺が迎えに行く」
「すぐに連れてこりゃれ」
「土下座しに行くからよー」
「ぬしは?!何故そう呑気に!」
「え?!ぎゃー!!!」










「帰れ」
「秋を出しゃれ」
「くどい。帰れ!」
「毛利よ!」
「ちょっ!落ち着けって。事情は聞いてる。大谷より締め上げるのは黒田だろう?」
「にしてもだ!額を2針ぞ!あの愛らしい顔に二針よ!!!」
「二、針?」
「おい待てって。あいつ自分で転んで5針縫ってんぞ」
「あれは隠れる!」
「隠れるっつーたって。分け目かえりゃ…」
「黙れ愚か者!」
「いてっ!てめっ!毛利!!!」
「たとえ擦り傷でも我は許さぬ!」
「わざとならそうだけどよ。静かにしろって必死に止める秋を無視して無遠慮に入っていった黒田が悪いだろ!お前なんか俺にメス投げるだろ!」
「貴様と秋を同列に置くな!」
「てめっ!」
「我は…もう二度とあの姿の秋を見たくはない!」
「ま、そりゃ…でもよ。あれとこれとは」
「其れでもだ!」
「…またしゃれ。話がずれておる。何の話ぞ」
「貴様、聞いてないのか?」
「?」
「秋の奴、昔の恋人から暴力振られてな。俺たちが無理やり別れさせたら逆上しやがって」
「我と吉良を待たずにするからよ!」
「すまねぇ。其れから吉良もこいつも過保護でな。」
「うるさい!実兄がそうだからいけないのだ。黒田は極刑よ!貴様は面会謝絶よ!」
「何でお前が決めるんだよ?!」
「…やれ同胞よ」
「ん?なんぞ」
「その男は今何処よ」
「後で教える。…貴様、秋には合わせんぞ」
「意地でも会う。会うて詫びる。許しを得るのに土下座も厭わん!」
「あの、大谷が?!」
「我をどう思うておる、西海。我とて気に入っておるものには礼を尽くすわ」
「?!」
「あれはまだ嫁にやらぬわ!」
「ま、待て。それは俺の台詞だ」
「気の早い男よ。まだそこまでではないわ。まだ、な」
「うるさい!!!」
「ちょ、お前落ち着け。」
「これが落ち着いていられるか!」
「いい大人なんだからよぉ。秋に嫌われんぞ」
「?!」
「まだ寝てんだよ。それでもいいか?」
「当たり前よ。はよ、案内致せ」
「このやろう」



からりと開けると包帯を巻いて寝ている秋がいて立ちすくむ。麻酔をしたせいよ。よく寝てるだけだからといわれて少し安心するが頬を撫でながらすまぬなと囁く。
久しぶりに見た顔よなぁ。こんな白いものは似合わぬわというと西海にそこまでひどくないから安心しろと言われて椅子に座る。




「寝てねぇんだろ?起きたら言うから横になってろよ」
「いい」
「体に触るぞ」
「構わぬわ」
「秋が悲しむ」
「其れでもだ」
「?」
「我はここにいる」
「…長曾我部」
「石田?」
「こうなっては梃子でも動かん。…刑部」
「何ぞ」
「飲み物くらいは取れ」
「済まぬなあ」
「…良いのかよ」
「良いも悪いも。其れこそ子供ではないからな」
「ちげぇねぇ」









大谷兄妹と三成と私 7









「んー…?」
「?!」
「よしつぐさん?」
「無理に声を出すな。痛いか?」
「もう大丈夫」
「済まぬ」
「え?!あ、謝らないでくださいよ!私のせいだし」
「暗のせいよ」
「其れは否定しない」
「…然し、我のせいよ」
「違いますって!落ち着いて!」
「…」
「避けれたらよかったんだけど、反応遅れて…怪我も大したことなくて!2針で」
「縫うたのなら大した怪我よ」
「う…」
「しかも女の顔に」
「大した顔じゃありませんから!大丈夫」
「大した顔だ」
「…へ?」
「我にとっては大した顔だ」
「っ!」
「責任は取る」
「?」
「安心しりゃれ」
「ん…うん」
「ひひひ」
「吉継さん?」
「意味をわかっておるのか?」
「えー…と」
「まぁいい。おいおいよ。」
「???」
「ひひひ」
「あ!」
「ん?」
「書けた?」
「ああ」
「途中で邪魔が入って…よかった」
「主のおかげよ。春は?」
「いっぱい遊んだから。でも寂しそうだよ」
「そうか」
「吉継さん元気になったら…遊びに行こうね」
「ひひひ」
「?」
「ほんに、なぁ」
「?!よ、吉継さん?!倒れっ?!誰かー!!!」
「ふん。」
「三成さん?!仕事は?」
「貴様が怪我をしたと聞いたからな。これはさやかからだ」
「スタンガン?何で?!」
「変質者かと思ったらしい。あいつも珍しく慌てていた」
「?!」
「秋お姉ちゃん!」
「天使!」
「兄様嫌いになった?嫌いにならないで!兄様秋お姉ちゃんのことうぐっ」
「???」
「それ以上は言うな。春は怒ってお前がいなくなると思っているらしい」
「いなくならないでー!!!」
「どうしよう。天国??此処天国?!」
「くだらん!早く答えてやれ」
「怒ってないよ!全然!わざとじゃないし!」
「本当?」
「そうだよ!ほら!この間手が滑ってお皿割ったとき吉継さんに土下座していたら」
「そんなことしてたのか」
「高そうなんだもん!あのうちのもの!100円のボールペンでも高そうに見える!まぁ店値段聞いて落ち着けたけど…其れでも高かった」
「…」
「蔑みやがって!まぁいいや。その時も吉継さんわざとではないから致し方ないって言ってたでしょ?そういうものよ」
「本当に?」
「私が春ちゃんに嘘つく?」
「うんん」
「目下黒田さんは?」
「ああ」
「?」
「締め上げられてる」
「まぁ…いっか」
「いいのか?」
「しつけ的にいいかなと」
「まぁ、な」
「吉継さんは?寝てる?」
「いつもなら寝るのにだ。貴様のことが心配だったのだろう」
「わー…担がれてる」
「三成兄様私も!」
「ん?」
「…」
「そんな目で見るな」
「羨ましい!両手に花!」
「ん?」
「何?」
「刑部もか?」
「大谷兄妹かわいいもん!」
「…おい、毛利。秋がおかしいこと言っているぞ!」
「何?!」
「えー?可愛いじゃん。猫みたいで」
「やはり検査をもう一度」
「いーよ。大丈夫。大袈裟だなぁ」
「貴様の愛らしい顔に…うう」
「誰かー鎮静剤!」
「黙れ!」
「ひゃ。っと吉継さん?」
「これは我のぞ。…触るでないわ」
「貴様は寝ていろ!」
「ひひひ。三成」
「長曾我部。秋を頼む」
「おー」
「明日も来るのだぞ!傷が残ったら…わかったか」
「はいはーい」

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