不幸娘と三成 12 不幸な娘と三成 2016年06月09日 彼女が居なくなって早1年。武田との婚儀も恙無く終わったが、結局三成は頑として妻を受け入れなかった。事前に言っていた上、三成の其れをよく知っていた真田や忍びのおかげで大事にはならなんだが、破綻していた婚儀の後武田の姫は病を得てしまった。…と言っても風邪程度の話だが、これは良いと口実にして、病気を得たとして早々と帰えし婚儀を白紙に戻した。太閤も賢人も其れを否とも言わなかったのは居なくなってからの三成の変わりようのせいだろう。彼女を捜すために戦いに明け暮れ、今となっては天下泰平の原動力になったが…果たして其れが良かったのか否か。わからない。初めの数ヶ月は事の重大さをしった太閤と賢人も捜していたが今となっては夜半に出て行ったため獣に襲われたのだろうと探すのをやめた。「やれ、左近」「駄目っすね。裏の方を見てもいないみたいっす」「三成は?」「此処にいる」「やれ、如何だった?」「良い街だ…些か五月蝿いが」「左様か」「だが」「…」「此処にもいない」「はてさて。隠れん坊の上手い事よ」「あとは…何処を探していない?」「すべて探したなぁ。もう一度くまなく探した上で号令を出すか…賞金をかけたいが無体が起きてはいかぬしのう」「…何処に、いる」「旅の一座や移動のする者を探すか」「ああ」「あっ!」「どうした左近?」「待ってくださいっす!」「何だ、早く言え!」「一箇所忘れてますって!」「?」「佐和山の!三成様の居城は探してないっすよ!」「!」不幸娘と三成 12「おーい、酒」「梅の間にあてを作って」「はーい」「お篠ちゃんのところも」「はいはーい!」「あいも変わらず元気だねぇ」「表出て客取ったら一番になれるのに」「成れませんって!私の傷跡みればみんな逃げちゃいますよ」「其れを度外視しても…まぁ初見であんたの良さはわかんないか」「じわじわくる感じだもんねぇ」「なんか煮しめみたい…」あれから早1年。流れて着いた先に見つけたのは殿様の御城下なのが因縁めいていて少し怖い。ただ、この城下は大阪に比べて小規模だけれども皆穏やかで優しい人ばかりだ。あれから、御正室様はご病気になられたそうだしこの破竹の勢いの天下統一は皆さんのお体に負担となっては居ないだろうか。刑部様はお身体が弱いし、殿様はああだし。左近様も無理をなさっておいでだろう。大丈夫かな?と思いつつも一遊郭の料理人が何も出来ないのが現実です。「出来た?」「もう少し」「あんたの料理に代わって皆よく食べる様になったよ!」「そりゃ良かった」「大阪から流れてきた時にゃ役に立たないだろうって思ってたけど」「…そういう本音は隠しましょうよ」「隠してどうなるのさ。…でも本当に馴染んだねぇ。後で高里が礼をしたいって」「高里姐さんが?」「あれも年期明けで、良いとこに身請けされるから」「はぁー…綺麗でしょうね。高里姐さんのお嫁姿」「さてねぇ。見れないもんで喜ぶなんて。あんたらしいわ」「ふふふ。はい、出来ました」「あ、そうそう!今日上から検査が入るらしいのよ」「は?」「よくわからないのだけどね」「何時ですか?」「夜見世の前。」「姐さんたちだけですか?」「と、思うんだけどねぇ。私たちの顔見てどうすんのか」「私、裏山行こうと思ってたんだけど」「今日は諦めな」「はーい」検分って大変だなぁと他人事の様に思っていたら女将さんが凄い勢いでこっちに向かってくる。何事と皆が驚いていたら例の検分が今からになったそうだ。えー…と言っても上の命令は聞かなくていけない。ので急いで手をか洗う。「面通しって言ってたよ」「わー!若いねえ」「にしても傾奇者だね」「姐さんたちがからかってるわ」「真っ赤にして可愛い」ざっざっと足音が近づいてくる。私の前にその音が止まる。見慣れた靴だと思っていたら顔を上げろと女将さんに言われる。おずおずと顔を上げると懐かしい顔が目をまん丸にしているからおもわず笑ってしまう「お久しぶりです、左近様」「!?!!!!?」「あれ?お忘れになっ…っ?!失意致しました」「見つけた!!!!!!!」「は?え!?」「女将!この子!!!ようやく見つけた!」「な?」「刑部さーん!!!三成様ー!!!居ましたよ!此処に!!!」「っ?!」「あ?!ど、どうしたの?」三成様、という単語を聞いて思わず手を振り払う。会ってはいけない。いや、あの折の太閤殿下の声が聞こえてくる。『貴様ではあれの支えにはならん!即刻出て行け』あの人には会えない。会ってはいけない! PR