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変換なしの雑食夢

ran

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雲海 2

「大阪を去るのか?」


そう告げると大きな目を一層大きくして私の方を見る。驚いているのだろうが静かに筆を置く程度の理性は残っているらしい。私とは違うようだなと嘲笑しながら部屋を見渡す。



「何時だ」
「明日です」
「そうか」
「石田殿…っ?!」
「私を裏切る気か!?」
「いた、い」
「大阪で!秀吉様の為に!貴様は!」
「自領に帰るだけです」
「…は?」





そこの机の文をと言って押さえつけていない手でそれを指す。
自領?手紙と思案すれば、「半兵衛様からの命なのです」と続けられた。





「どういう事だ?」
「自領の管理を妹夫婦に任せていましたから。…北条攻めの前に一度帰っておくようにと。」
「…そう、か」
「腕を」
「す、すまない!」
「いえ…あと。左近殿にお渡しできませんでしたので」
「あ、ああ!」
「申し訳御座いませんが明後日の件」
「わ、わかった。すまん!」
「石田、殿」
「気を、つけて帰れ。」
「ええ。あなた様も無理を、なさらぬように」
「私は!私の事は構うな。…失礼する」







「短慮よな」と帰室した早々刑部に言われ、ぐっと唸る。言い返しはできない。





「自領にでも帰りゃるか?」
「な?!」
「考えればすぐにわかる。あれは能吏故なかなか帰らぬからなぁ。主やわれ。賢人に続くほどよの。」
「そう、なのか?」
「ひひひっ。誠ぬしは面白き男よの。」
「刑部!」
「とっとと想いを告げれば良かろ?何なら我が賢人に言うてやろうか?」
「必要ない!」
「左様か」
「…後で打ち身の軟膏をわけてくれ」
「ひ?!」
「何だ?」
「打ち据えたか?」
「な?!違う!…腕を押さえつけてしまった。力加減をしていない、からだ」
「あい、わかった」
「…これは書き直しだな」
「急いで行った故。ひひひ。」
「?」
「軟膏を運ばそう。然し、」
「何だ?」
「本に我のでいいのか?」
「何故だ?貴様の薬は良く効く」
「ひひひ」






雲海 2







「刑部殿?」
「ひひひ。三成からよ」
「石田殿から?」
「痛々しいなぁ。それの手当のためよ」
「え?ああ…すぐに治りますよ」
「左様か?」
「刑部殿の薬は高価と聞いております。私如きに勿体無い」
「我の薬はいらぬか?」
「…含みがありますけれども。少し打った程度で高価な薬はいらないという意味です。落馬などしたらありがたく頂戴致しますよ」
「なれば落馬と思うて受け取るのが吉よ」
「刑部殿?!」
「…あとになると三成が哭く故な」
「そのような事は有りますまい。」
「ひ?」
「あ、そうです」
「水鳥」
「書類。お渡しします。」
「…主、」
「っ」
「如何した?」
「…ふふ」
「?」
「何もありませんよ。刑部殿」
「ん?」
「ありがとうございます」
「脈絡のない。」
「薬」
「主のためではないわ」
「ええ」
「…本に如何した?」
「何も御座いませんが?」
「…」

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