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変換なしの雑食夢

ran

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障子越しの三成

障子越しに私の気配を感じられたのだろう。影が少しだけ動かれる。其れでもこの場を立ち去らないのは伯父である太閤殿下の命の所為だろう。伯父の言うことは絶対である彼らしい。
そっと彼の背中に手を置く。障子紙一枚…いや、彼は凭れて居ないのだから実際体温など感じるはずはないのに暖かいと思ってしまう。そして私は其処に頬を寄せるのだ。





「何、を」
「静かに」
「姫様」
「あなたの鼓動が聞こえるかと思ったのです」
「お戯れを」
「…障子紙に頬を寄せるなど。無作法に過ぎますものね」
「そうでは」
「ありがとうございます」
「…は?」
「寝ずの番は身に堪えますのに」
「いえ」
「でなくともあなたは忙しいのです。人の何倍も休息を必要とするのに」
「姫様の身に何かありましたら…其れこそ一大事ですから」
「ふふふ。他の者を寄越していただいてもいいのですよ」
「成りません!」
「貴方が倒れてしまいます」
「私のことの心配など無用でございます」
「貴方の事だから。心配なのです」
「…」
「鼓動が聴こえないわ」
「許可を」
「!」
「貴方の手に触れる、その許可を」
「障子紙一枚隔ててなのに…相も変わらず律儀ですね」
「…」
「暖かいですね」
「はい」
「治部と」
「?」
「私などが呼んでもよろしいのでしょうか?」
「身にあまる事でございます」
「治部」
「…はい」





ありがとうございますと言えば指が震える。
厭うてなのか否か私にはわからない。たった一枚の薄い紙に隔たれて、彼の表情を知ることができずにいる。




「…姫様、お休みくださいませ」
「ええ」
「風邪を召したらいけません」
「そうね。そうすれば貴方がここに来なくなってしまうかしら」
「?」
「如何したの?」
「風邪なら尚更。」
「うつってしまってはいけないわ」
「貴方様の大事をお守りするのは私の仕事です」
「…治部」
「ですから、もう。横に」






名残惜しいのは私だけかもしれない。この恋慕を孕んだ感情を知れば治部はどのような顔をするだろうか。この心のうちは隠さなければならない。
彼の其れは伯父への忠義心なのだから。




衣擦れの音が止む。寝具に包まれたまま、治部の方をみる。





「おやすみなさい」
「おやすみなさいませ」
「治部」
「はい?」
「私、貴方には休んでいただきたいの。息災であるために」
「大丈夫でございます」
「…怒らないでね」
「?」
「其れなのに、あなたが不寝番の日はゆっくりと休めるの」
「は?」
「貴方ほど信用出来て安心出来る人はいないからかしらね」
「…」
「変なことを言ってごめんなさい。」
「い、いえ」
「おやすみなさい」
「おやすみなさいませ」






障子越しの三成









「姫様」
「ん…」
「おはようございます」
「おはよう。治部は?」
「私の顔を見て自室に帰られました。」
「…大丈夫かしら?」
「大丈夫なのでしょう」
「ねぇ」
「はい」
「…やっぱりなんでもないわ」
「?お召し替えを」
「はい」

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