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変換なしの雑食夢

ran

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芯を真に清して進す 5

「思った以上だ」
「?」
「寝ていろ」
「これが、済みましたら」
「先ほど聞いた」
「ですが…殿下のおわす大坂において」
「今は滞りない。心配するな」
「…」
「筆は洗っておく。寝ていろ。」
「石田様」
「何だ?」
「寝ておりますから…その」
「そう言って寝ないだろう。嘘を言うな」
「本当に休みます。…石田様こそ休息を」
「?!」
「如何、いたしましたか?」
「何、でもない」
「あ、の」
「が、他のものの前では言うな」
「?」
「感違いする輩が出てくる」
「…」
「寝ていろ。机を借りる。あちらで書類を纏める」
「え、はい」
「(気が付いていないか)」
「……あ、の」
「?」
「石田様」
「何だ」
「私がここに来た理由をご存知で御座いますか?」
「いや…何の話しだ?」
「私は、貴方様にそう大切にして頂けるほどの価値がないです」
「?!」
「私は」
「…」
「…」
「おい」
「?!」
「昔の私は、脆弱だった。だが今は秀吉様の一兵卒として存在している。…昔は昔。今は今だ。言いたくないことまで言わなくていい。」
「っ」
「私は私が知る限り、お前のことを良いと思う。それで十分だ」
「わ、たしは」
「…ああ」
「私は」
「泣くな…落ち着け」
「おもちゃ、でした」
「…は?」
「男の、玩具でした」
「…」
「年端もいかぬ女の子を集めて、甚振り、切り刻み、悦にいる。そんな男の玩具でした」
「っ」
「ある人、私は攫われたそうです。と言っても私の初めての記憶は臭く汚い小屋で徒と泣いていたことですから攫われたと言われても最初はよくわかりませんでした。…目の前で幾人もの徒が、殺されました。私は…何故か気に入られておりましたから。食事や日々の世話をしていましたので気分で殺される事は有りませんでした。…ただ、毎夜毎夜が恐ろしかった。」
「…」
「子供ではなくむりやり暴かれて女になるこの身体が今でも憎いのです。あの日、あの時、唯嵐が去るのを堪えるしかできなかった己が憎い。生父母の嘆願によって秀長公が動いても居所が掴めるだけでした。殿下と竹中様が助けてくれて初めて私は私の生父母の顔を見ました。あの時の事は今でも忘れられません」
「そうか」
「一年、療養と教育の為彼方でお世話になりまして大坂に参りました。後は貴方様のご存知の通りです」
「…」
「私は」
「…」
「貴方様に嫁げるような者ではありません」



そう言って私は布団の上で座り、平伏をする。この話をした以上ここにはもういられはしないと思いながら。
すると石田様は何故が立ち上がりもせず、私の顎に触れ、無理やり顔を上げられる。息を飲む。自分の喉が鳴るのが聞こえてくるようだった。私は、ここに居てはならないのだろう。出て行けと言われても仕方がない。
銀色の瞳が細められる。恐ろしい反面、美しいと思うのだ。この人は。只々白く清く美しい。






「月瀬は」
「は、い」
「お前の名だ。恐れ多くも初陣の褒美として私が秀吉様に御願いして付けた名だ」
「は?」
「…余りにお前が秀吉様が付けてくださったと喜ぶものだから言い出せなかった。許せ」
「い、え。それは…その。あまり良い思い出が有りませんでしたから」
「月は私を初めて会った折お前が似ていると言ったからだ。」
「?!」
「瀬は私の故郷の湖だ。それでだ。…月ヶ瀬にしようとしたら刑部に露骨すぎると。がを隠して月瀬にと」
「え、ええ。私もそうとは聞いております。理由は聞いておりませんが…元々月ヶ瀬だけど月瀬にしようと言われましたから。月ヶ瀬は梅の名所だから、大和の梅が大坂にと」
「瀬は背…でもある」
「!」
「色々他にあるが…要約すると私がお前の伴侶でありたいとある意味願を掛けた名だ。」
「あ、」
「重いだの露骨だの散々言われたがそれ以外思いつかなかった。秀吉様も同じ梅ならいつかは大阪の梅になろうと。そうなったら名実ともに妹背となるだろうからと…そう思っていた」
「知りませんでした」
「当たり前だ。今初めて言った」
「でも、如何して?」
「私はお前に会った時より、お前を好いている。それは今も変わらん。」
「ですが…」
「変わらんと言っている。」
「…」
「あれが、離反した折」
「石田様?」
「憎悪にまみれ、雨の中慟哭しか出来ない私の元へお前はなれない馬に乗って迎えに来てくれたのを覚えているか」
「迎えに行ったというか…ご迷惑をおかけして」
「…否定は出来んが、抱きしめて泣いてくれた時。私がどれ程救われたか」
「…」
「私の道は秀吉様と半兵衛様が示してくれる。その道を刑部が案内してくれる。…その道に立って前を向いていられるのはお前がいつの後ろにいるからだ。出会った時から、何度もお前に救われた。その事は紛れもない事実だ」
「!」
「お前が私を厭うのならば仕方がない。が、そうでないのなら」
「石田様」
「私の妻になってほしい」
「…」
「…」
「…」
「無理か?」
「あ、」
「…すまない。体調も戻らないうちに。…横になれ」
「う…」
「刑部によく言われる。堪え性がないと。すまない」
「ち、が」
「?」
「ちが、うのです。私が!」
「如何した?」
「私が、あなた様の隣にいても、いいのでしょうか」
「?!」
「石田様?」
「隣に、いろ。私自身が望んでいる」
「!」
「早、く肯定しろ。出なければ」
「でなければ?」
「刑部に相談してしまう」
「っ?!くっ…ふふふ」
「笑うな。仕方がないなろう!これ以上私には対処できない!」
「だっ、て。ふふふ」
「…お前は笑った顔の方がよく似合うな」
「私も柔らかなお顔が好きですよ」
「貴様しか知らんだろうがな」
「それは…ふふふ」
「貴様はよく笑うからな。」
「泣き顔は秀吉様と半兵衛様、刑部に貴方様しか知りませんよ。唯、大人になってからは貴方様だけですけど」
「お前の泣き顔は心の臓に悪い」
「そうですか?」
「笑わせたいが方法がよくわからん。だから側に居てやることしかできない」
「其れが一番嬉しいですよ」
「そうか」
「はい」
「…」
「…」
「…おい」
「はい?」
「答えだ」
「…貴方様の側に居てもいいのならば」
「良い!」
「…ならば。正室は無理でも」
「正室だ!無駄な事を考えるなら素直にハイと言え。良いか?」
「石田様」
「私の妻に」
「はい」
「…」
「石田様?」
「…嘘偽りないな」
「ありません」
「っ!!?と、とりあえずだ。横になれ。寝ろ。良いな」
「はい」
「…早く元気になれ。私より一秒でも長く生きてくれ。良いな」
「其れは…はい、と言い難いですけど」
「お前のやつれた顔はもう二度と見たくない」
「はい」
「…その、だ」
「?」
「大切にする。ついてきてくれ」
「はい」








芯を真に清して進す









「…寝た、か?」
「やれ、三成」
「刑部か。漸く肯定した」
「誠か?!」
「早、く。秀吉様、の許可を」
「やれ、三成…ひひひ。寝てしもうたか」
「如何だった?」
「やれ賢人よ。首尾よう行った」
「ふふふ。其れは良かった。新居を用意しないとね」

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