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変換なしの雑食夢

ran

両片思い

難儀だなと言って三成が私の横に座るのは月に何度かある見慣れた光景だと吉継は言う。体力は多少自信があるのだが如何せん化け物じみた男たちについていくことはできず疲労困憊で座り込む時や外の訓練が祟って日射病や寒さに負けて風邪をひきかけた時。そして今のようにありがたくもないのに判を押したごとく規則正しくやってくる月の物に閉口している時。三成は必ず手に何か持ってきて私の横にやってくる。
いい奴なのだ。私同様、無理をするなと言葉をかけられる吉継にあれでモテない意味がわからないと伝えるとホクホク顔で同意を得られる。但し、あれが常にあれなればなあと断念な事実を付け加えて。
三成はとても良いやつで顔いい。真面目で単純な戦力としても群を抜いている。何より秀吉様の覚えもめでたい。所謂出世頭なのに致命的にモテない。花街に行ったところを見たことないし献上された(たまにある)美女はすぐに下賜してしまう。部下たちは美女が手に入るから士気が高い。左近くん曰く身分の上下に関わらず美女が手に入るからみんな死に物狂いで頑張るのだそうだ。美女だけではない。袖の下的な物品もすぐに下賜してしまう。美女を手に入れたものや許嫁の居るものはそれ目当てに死ぬ気で頑張る。無欲の勝利だよねと言った半兵衛様の言が当たっていて妙だ。だから半兵衛様、ひいては秀吉様は言葉で労いを表したり下賜しやすいものを授けたりする。そうだと言っても先月の紅はやりすぎな気がする。困ったように貝を持ってきて私はいらないからお前にやると言った三成の微妙な顔が忘れられない。





「おい」
「あー」
「なにを考えていた?」
「ん?」
「ぼうっしている。薬湯は効かないか?」
「んーん。少し血が足りないだけよ。」
「…ハシタナイ言い方をするな」
「えー…」
「温灸をするか?」
「ん」
「おい」
「三成のこと考えてた」
「…は?」
「この優しさを全員に向けたらモテるのに」
「…馬鹿か」
「そう?吉継に言ったら常ならモテると断言してたよ?」
「私も相手くらい選ぶ。」
「そう?勿体ない」



そういうと三成は少し怒ったような。それでいて諦めたようにため息をついて私の名前を呼ぶ。呆れて居るのかもしれないな。声にその色が含まれて居る。それでも三成は家康や左近くんのように私に刀を向けたことはない。怒って呆れて私の名を呼ぶのが最大の非難の現れなのだ。



「ごめんね?」
「謝罪を疑問で呈すな」
「ごめんなさい」
「…いい。それより腹は?横にならなくていいのか?」
「良いの」



三成、私の部屋にこないじゃないと言うと本日何度目かのため息をついて当たり前だと返される。真面目で紳士だ。家康とは全然違う。あいつは夜這いだと言って忍び込みやがった。エロ狸め。



「?」
「家康のこと考えてた」
「何?!」
「あのエロ狸と紳士な三成は雲泥の差だなと。」
「…」
「結局、三成のこと考えてたわ」
「…あの後も来るのか?」
「たまに。でもその時は三成が助けに来てくれるでしょ?」
「当たり前だ」
「ふふふ」
「?」
「三成」
「なんだ?」
「肩貸して」
「ああ」
「三成は無味無臭だね」
「食べたことないだろう」
「そうだけど。半兵衛様の部屋は墨匂い。吉継は薬草の匂い」
「そうだな」
「三成は無味無臭」
「お前は花の匂いがする」
「そう?」
「ああ」
「ふふ」
「なんだ」
「初めて言われた」
「…少し目を瞑れ。寝て居なくていいが倒れる」
「ん」
「側にいる。安心しろ」
「三成」
「どうした?」
「大好きよ」
「…私もだ」






きっと私の大好きと三成の大好きは違う。生涯を独身で秀吉様のために生きていくだろう三成の大好きは友愛だろう。操立てするだけ無駄かもしれない。
でも今はこの関係で十分だと自分に言い聞かせて私は意識を手放すのだ







両片思い







あれを己が膝に寝かせて書類に目を通す三成をニヤニヤして見ていると少しだけ眉を寄せ刑部と我を呼ぶ。勿論、あれの寝顔を隠しながら。
あれの気持ちもこれの気持ちも知る我としては至極自然な動きで益々笑みを深めてしまう。もうとっととくっついてしまえ。






「何だ?」
「いや、なに。いつになればこの顔を拝めるかとな」
「黙れ」
「太閤も首を長くして待っておるわひひひっ。女子には無慈悲な主が唯一の慈悲を持つか」
「勘違いをするな。私は元々これにしか興味はない。後の女など蛞蝓のようで薄気味悪い」
「左様か」
「何が言いたい?」
「蛞蝓の揶揄が媚を指しておるのか行為そのものを指しているのかちと気になってなぁ。前者なら別段良いが…主が好色どころか筆下ろしの相手すら聞き及んだことはない」
「…」
「不能かはたまた男色家か」
「これ以外に勃たないだけだ」
「誠主らしい、が」
「?」
「初手でしくじれば嫌われるやもしれぬなぁ」
「?!」
「己を律せることができず…嫌われるやもしれぬなぁ」
「それは!…刑部」
「やれ唸るな。初々しいのでなついよ。つい」
「これいかいとは契らん。夫婦としてのみだ。」
「その段取りは?」
「…」
「はてさて。致し方ない。我も一肌脱ぐか」
「すまん」

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