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変換なしの雑食夢

ran

一期と二の姫と三成と薬研

「姫様は?」
「小康状態だ」
「そうか」
「なぁ、石田の旦那」
「なんだ?」
「姫さんはこの事」
「言ってはいない。が、気づいておいでだろう」
「そっか」
「それでも貴様が来て顔色の良い日が多い。礼だ」
「?」
「一期一振に聞いた。外国の医療書もある。」
「マジかよ!」
「?」
「ありがとう!」
「いや、いい」
「姫さん、今寝てるけどどうする?」
「お顔を拝し奉る。」
「うん…あれ?」




三成さんと呼べばいつもはつり上がった目が少し垂れる。成る程。石田の旦那も姫さんには滅法弱いらしい。姫さんは少し嬉しそうに笑って起き上がる。半年ぶりの逢瀬なのだから致し方ないかと思っていたら一兄がいて驚く。






「一兄」
「ただ今」
「お帰り」
「姫様は?」
「今、石田の旦那に言った。小康状態。」
「そうか。これを」
「?」
「竹中様が貴重な薬だと言っていた。」
「そっか」
「煎じて出して差し上げて欲しい」
「ん」
「?」
「いや、さ。姫さんはみんなに愛されてるなぁって」
「?」
「その左手の花は一兄からだろう?」
「ああ」
「さっき鯰尾達も来て色々話しして言ったんだぜ。」
「そう言えば…帰って早々どこかに」
「殿下も竹中の旦那も。このあと落ち着いたら来るつもりだろ?大谷の旦那は手紙で許可が下りれば来るって言ってたな」
「彼の方は気になさっておいでだったからな」
「大丈夫っつてももしもが嫌だからってな。あー見えてお優しい」
「本当にだ。…薬研?」
「取りこぼしたくねぇな」
「…」
「もう少ししたら火が消える。」
「そう、か」
「そうなった後が俺っちは恐ろしい」






「一期さん。薬研君」







「「?!」」
「ちょっと来て。手、出して」
「早くしろ」
「?」
「はい」
「こりゃ」
「石田様?」
「礼だ。姫様と話して私が調達した。」
「飾緒?」
「そう」
「すげぇ色の量だな」
「金が父様紫が半兵衛。藤色が三成さんで赤茶が吉継さん。」
「紅が姫様だ」
「へぇ」
「本来下賜出来ぬ色ばかりだ。…感謝しろ」
「ありがとうございます」
「よっと。似合うかい?姫さん」
「ふふふ。とても」
「今度は姫さん一色がいいな」
「薬研!申し訳ございません。姫様」
「いいの。薬研君のこれが本気だとは思ってないもの。…ね、薬研君」
「へへ」
「三成さんもありがとう」
「?」
「これ」
「え?あの」
「父様に無理を言ってしまいました」
「秀吉様に?」
「陣羽織?」
「いい色じゃん」
「頼んだ人より張り切っていたもの。三成さん無欲だから。父様も便乗したいみたい」
「恐れ多い」
「これで…私を忘れないでね」
「!」
「姫さん」
「何を」
「こうやって話したりできる時間も短いですもの。ね、一期さん。薬研君。私がいなくなっても、三成さんをお願いね。」
「姫様!」
「三成さんも。一期さんや薬研君を守ってね。」
「…はっ。」
「俺っちはあんたの短刀だ。あんたがシワシワのおばあちゃんになったら棺桶の中に一緒に入ってやる」
「あら。それは寂しいわ」
「寂しくねぇよ。な。そんなこと言うな」
「ふふふ。一期さん」
「はい」
「貴方も貴方のご兄弟はとても優しいわね」
「ありがとうございます」
「だからもう、怪我をして欲しくないの。…三成さん」
「…」
「泣かないで」
「…申し訳ございません」
「私だって嫌よ。あなたの子を産みたかったものでも。もう無理なの。あなたも知っているでしょ?」
「…」
「お願い。貴方も、吉継さんも。父様も半兵衛も。一期さんも薬研君も鯰尾君も骨喰君も。みんな、傷つかないで。怪我しないでね。心配してあの世に行けないわ」
「行かなければいい…」
「わがまま言わないの」
「うるさい」
「昔みたいな話し方」
「…姫様」
「死んだら今みたいに抱擁が出来なくなるのは寂しいわね」
「っ」
「一期さん、薬研君。この人をお願い。本当は誰より優しい人なの。不器用で優しい人で私の愛した人だから」
「はい」
「わかってるよ」
「はぁ。肩の荷が少し降りたら眠くなって来た。三成さん」
「…」
「手を握ってて」
「ああ」
「ふふふ」
「許可しないからな!」
「はいはい」
「私より長生きしてくれ」
「ふふふ」









一期と二の姫と三成と薬研







「姫様」







姫さんが儚くなったのはそれから間も無くのことだった。








「如何してだよ!俺は姫さんと」
「薬研」
「じゃないとあんな…一人で。寂しすぎるだろ」
「姫様の厳命だ。許可は下りていない」
「だけど!」
「もしお前が入ったら後の世に墓が暴かれる時が来る」
「?!」
「そうなっては姫様がお辛い。何より」
「石田様」
「…なんでもない。これは決定事項だ。わきまえろ」
「畜生」
「明日、納棺だ。」
「石田の旦那は辛くないのかよ!」
「薬研!」
「…辛い?」
「もうこの世に姫様はいないんだ!」
「馬鹿馬鹿しい」
「?!」
「滞りなく式を行う。それが秀吉様のためになる」
「この!」
「薬研!」
「やれ、三成。ここにいたか…如何した?」
「問題ない。なんだ、刑部」
「副葬品の話よ」
「すぐ行く」
「おい!待てよ!」
「薬研!」
「ひひひ。荒れておるなぁ」
「申し訳ございません」
「主は三成の次に姫に近かった故。致し方ない。」




そういうと小さな箱を我々の前に差し出す。怒っている薬研に姫からよと言えば静かにそれを受け取った。






「手紙?」
「式が終わったら読むようにと言われておる。ひひひ。我も致し方なく待つ次第よ」
「石田の旦那は悲しくないのかよ」
「はて」
「死ぬ前から涙ひとつ流さねぇ」
「我らは武士故…主がちと羨ましい」
「…」
「三成は泣いておるよ。慟哭は聞こえぬがな。ああするしか己を保てぬ」
「?」
「姫との約束よ。『泣かないで。父様をお願いね』誠、呪いのようよ。故に泣けぬ」
「そん、なこと」
「姫に言われておろう?恐ろしく不器用で優しいと。悲しみは人それぞれよ。きっと何もなければあれは後を追いかねぬ。それ程愛しておったからなぁ」
「…」
「哀れよ。あわれ」





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